三原のまちなかのお寺を行く

2025/02/18 - 2025/02/18

　広島県三原市を半日弱歩いた。瀬戸内によくある海に面した坂の街だが、城下町であることが最大の特徴だろう。城跡と街道の要所に固められた寺院群を見ていると、緊急時に備え、寺町を砦に使おうとした意図が見えるようだ。現代はその寺院群が観光資源、街の味わいになるから不思議だ。

エリア 三原(広島)

　新幹線こだまで三原駅に到着。久し振りに乗ったが、存外快適。「のぞみ号」にこだわることもないのかなと思った。

三原駅 駅

　三原駅と三原城址は隣接しており、駅の構内から窓越しに見えるよう設けられた城跡の案内板が。

三原駅 駅

　三原駅から三原城へ。駅のコンコースを行き着くと、お城の入り口がある。

三原駅 駅

　駅から続く階段を上がると、三原城の天守台へ。建物はなく、空間が広がる。

三原城跡 名所・史跡

　三原城は浮城と呼ばれた。現在の城跡でも三方を水に囲まれている。堀の向こうは城下町ではなく三原市街地が広がる。

三原城跡 名所・史跡

　ここの石垣は築城年代の割には技術が高く評価が高いという。例えば、角が算木積みになっていない。

三原城跡 名所・史跡

　街角にはこんな看板が。地元の英雄を大河ドラマの主役にという願いは全国共通だ。

　三原城跡の西側にある「隆景広場」。小早川隆景の像や三原城跡の堀と石垣が一望できる。バスの停留場もある。

　小早川隆景の像。毛利元就の三男で、のちに豊臣家五大老に選ばれた。三原城を築城した武将だ。

小早川隆景像 名所・史跡

　浮城の異名がうなずける。

三原城跡 名所・史跡

　三原城跡の堀を囲むように広がる三原城歴史公園。

　歴史公園の一角にある古地図。三原城を中心に西側、東側に街の拠点を設けた様子がうかがえる。

　ここから三原の町並みへ。西国街道沿いに店が並ぶ本町商店街。昔ながらの店が軒を連ねる。

　訪ねたときは、町並み一帯でひなまつりイベントが開かれていた。店舗、事務所、神社仏閣などが軒先にそれぞれのひな飾りを展示していた。

　西国街道の駅 mihola。二階はコワーキングスペースaricaだ。

　本町通りから少し北に上ると、三原四カ寺の一つである大善寺に行き着く。三原浅野家三代目当主の浅野忠真の側室月姫の菩提寺だ。月姫は江戸幕府三代将軍徳川家光のご落胤とされ、側室での輿入れは極めて異例。

大善寺 寺・神社・教会

　大善寺は浄土宗のお寺。同じ像が法然ゆかりの誕生寺（岡山県久米南町）にもある。

大善寺 寺・神社・教会

　月姫の異例の輿入れで、さまざまな特典が与えられた。大善寺は将軍家の菩提寺である増上寺の寺号を贈られ、増上山大善寺と山号を改めたほか、三つ葉葵の使用が許された。同寺だけでなく、その恩恵は浅野家全体に。藩は財政的に潤い、そのおかげで三原は栄えたとされる。

大善寺 寺・神社・教会

　境内の墓地には月姫（月渓院）の墓所が。門があるひときわ立派な宝篋印塔だ。案内柱には「側室」ではなく「四代当主の母」とある。

大善寺 寺・神社・教会

　大善寺から少し下ったところに宗光寺がある。小早川隆景が両親である毛利元就夫妻の菩提寺として建立した。山門は隆景の居城だった新高山城の大手門を移築したものとされ、国指定の重要文化財。

宗光寺 寺・神社・教会

　町並みのひなまつりの一環だろうか。山門前から本堂に向かう参道に、長々とひな飾りが展示されていた。

宗光寺 寺・神社・教会

　ひな人形のアップ。手作りの「石びな」だ。子供たちや地元の有志たちがこしらえたものだという。

宗光寺 寺・神社・教会

　本堂。もともとは高山城内に建てたお寺だったが、三原城築城の際、城下の西側を守る砦も兼ね、この地に移された。

宗光寺 寺・神社・教会

　境内には七重塔がある。石工の名が刻んであるが、こうした例は珍しいという。三原市の指定文化財。

宗光寺 寺・神社・教会

　墓地には三原浅野家の二代目当主・浅野忠長の墓が。威風ある五輪塔だ。

宗光寺 寺・神社・教会

　近くには福島正則の養嗣子・正之の墓がある。法筐印塔だ。

宗光寺 寺・神社・教会

　宗光寺から小路をたどって大島神社の連立鳥居へ。有名スポットらしく、小路のところどころに道案内の小さな標識が。

　連立鳥居に到着。インスタ映えしそう。

大島神社 寺・神社・教会

　一年のうちある時期を迎えると、ここの鳥居の地面に落ちる影が「市松模様」に見えるといい、テレビ朝日の番組『ナニコレ珍百景』に取り上げられた。

大島神社 寺・神社・教会

　連立鳥居を横から見ると、こんな感じだ

大島神社 寺・神社・教会

　現地にはこんな写真が。

大島神社 寺・神社・教会

　〝ナニコレ〟登録の記念碑も。

大島神社 寺・神社・教会

　インスタ映えの神社として有名だが、本来は三原の安泰、繁栄の守護神という。

大島神社 寺・神社・教会

　大島神社の近くにある妙正寺。三原浅野家の歴代藩主の墓がある。

妙正寺 寺・神社・教会

　多くの文化財があることを記す門前の標識。

妙正寺 寺・神社・教会

　本堂は端正な建物だ。

妙正寺 寺・神社・教会

　飾り窓というのか、ここの建物は独自の意匠。

妙正寺 寺・神社・教会

　本堂の背後には三原浅野家歴代当主の墓所が広がっていた。

妙正寺 寺・神社・教会

　妙正寺の参道を下り、少し西へ行くと正法寺に。古い市街地の中にあり、参道はこんなに狭い。

正法寺 寺・神社・教会

　本堂。三原四カ寺の一つで、大ぶりなお寺だ。

正法寺 寺・神社・教会

　正法寺の前の坂は「阿房坂」と呼ばれる。石碑には「秦の始皇帝の計画した一万人を収容する宮殿（前211年）阿房宮に由来する坂名か…」とある。本当か。末尾の「…」も刻まれているから不思議だ

　結構狭くて、急な坂道

　再び本町商店街へ。11時半頃から歩き始めて、14時前だ。三原の寺社巡りは道が狭く、自動車は向かないだろう。エリアはコンパクトなので歩けないことはない。