2024/06/02 - 2024/06/03
88位(同エリア185件中)
国電さん
■はじめに
JR三江線は、その収支の悪化等の理由により2018年3月31日に廃線となってしまっている(廃止日は4月1日)。私の旅行記でも、廃止となる前に何度か乗りに行ったことがあるし(拙文「惜別『三江線』」 https://4travel.jp/travelogue/11278580 及び「惜別『三江線』part2」 https://4travel.jp/travelogue/11333656 参照)、通常の鉄道以外にバスを追加する実証実験を体験しに行ったこともあり(拙文「サンライズ出雲で行く『三江線増便社会実験』検証の旅」 https://4travel.jp/travelogue/10730733 参照)、廃線の話題が具体的に上がってきた段階で訪問したこともある(拙文「老婆心ながら三江線に乗っておく旅」 https://4travel.jp/travelogue/11087489 参照)。また、運行最終日に偶然広島に行くことになったため、その様子も見に行ったことがある(拙文「【どこかに鐡①】広島空港編」 https://4travel.jp/travelogue/11345157 参照)。
廃線後6年が経過し、その後の様子でも見に行こうかと思って旅程を考えたが、これが一筋縄では行かない。なにせ廃線直後から代替バスは数多の系統に寸断されてしまい、三江線跡を通しで乗ろうとするとかなりハードルが高いのである。結局、すべて乗ることは諦めて、廃線を利用して運行されているトロッコに乗ることと、レールバイクとして利用されている駅跡を訪問するだけにした。
土日では飛行機代が高くなるため、日曜出発、月曜戻り(月曜は勤務先全体が特別な休暇)という旅程にした。現地(広島)で使用する切符は、青春18きっぷが利用できない時期であるため、「広島ワイドパス」である。3日間有効であるが、値段は4,600円であるため、2日間の利用だけでも充分にお得である。
@口羽駅跡にて
- 旅行の満足度
- 4.5
-
■2024.6.2
7時05分の便で広島空港へ。広島市内行のバスは頻繁に出発しているが、件のパスを有効活用するため、私はJR白市駅に行く路線バスを利用する。
しばし待ち、9時00分発のバスで白市駅に向かった。
白市からは、JRでの移動となる。パスを有効化させて、9時27分発の各駅停車で広島に向かった。
@スマホ専用切符 -
10時13分に広島に到着。いったん改札を出て買い物をしたり(後述)所用で必要な電話をしたりして時間を潰して、11時02分発の芸備線の快速「みよしライナー」に乗るべくホームへと向かった。「快速」と言えば格好が付くが、オンボロのキハ47系である。
@国鉄の雰囲気 -
定刻に広島を出発。広島駅では「せっかくだから駅弁でも買うか」と思っていたが、あなごめしなどはかなりの高価である。そこでふと横を見ると、穴子や広島菜を使ったおにぎりがあり、元より昼食は無くても大丈夫なくらいなので「このくらいのボリュームが良いだろう」ということで、そちらを買ってある。
@広島っぽく -
のんびりと走り続け(「通過する駅がある」という意味での快速であり、快適な速度で走るものでもない)、三次には12時24分に到着した。
三江線代替バスの出発まで1時間くらいあるため、駅ではは待たずに徒歩で観光をして市内のバス停から乗ることにしている。
駅から歩き始め、江の川を渡る。遠くには、廃線となった三江線の橋梁も見えている。
旧街道には「うだつ」のある家などもあり、観光地として整備されているが、日曜日だというのに観光客の「か」の字もいない。
@寂しい -
街道を歩いたり神社を参拝したりして、尾関公園バス停から代替バスに乗ることにした。
しばしバス停で待ち、やって来た小さいバスに乗り込んだ。しかし代替バスと言っても、このバスの走行ルートの大部分は廃線跡から離れているのである。廃線跡は、江の川に合流するまでお目に掛かれない。三江線は江の川に沿った路盤であったが、「人の流れ」とは合っていなかったのであろう。
@小さいバス -
ちなみに、乗客は私を含めても2人だけである。元々、需要自体が少ないのである。
山道を走りトンネルを抜け、下作木で江の川と添うようになった。ここからやっと三江線跡と同じルートになるが、路盤跡は川の向こう側である。
@所々で見える -
14時20分、口羽大橋で下車した。トロッコの出発する口羽駅跡は、ここから歩いてすぐである。駅跡に向かい、仮設テントでネット予約してある名前を告げて料金1,300円を支払った(クレジット対応)。上述した社会実験の旅などで何度か訪問した駅なので、懐かしい限りである。
@久々です -
14時30分頃に前の便が戻ってきて、家族連れっぽい人たちが下車してきた。
続いては私の乗車であるが、なんと他の予約も入っていなくて私だけの貸し切りであるという。座る場所ではどこでもよくて、「なんなら運転席の横でも」ということであったので、最前列に座らせていただくことにした。
@小さいトロッコ -
14時40分となり、安全確認の後に出発した。速度は遅いが、衝撃が直に伝わってくるので体感速度はそれなりに速い感じもする。
しばらく走ると、トンネルに入って行った。影絵のお出迎えである。
@トンネル内は非常に寒い -
トンネルを過ぎると大きな橋になるが、風速15メートルを超えると橋梁上を走行できない決まりになっているため、トンネル出口でいったん停車して速度計の確認である(今日は5メートル以下で無事に走行可能)。
ゆっくりと橋を渡り始める。この橋の中間が、島根県と広島県の県境となっている。
@県境 -
橋を渡り終えると、その先にはまたトンネルがある。そのトンネルを抜けると「天空の駅」として有名な宇都井駅があるが、残念ながらこの先は自治体の許可が得られていなくてまだ走ることができないという(宇都井駅でもトロッコが運行されることがあるが、同様に橋を渡って広島県内に入るとその先は進めないという)。
よって、そこからバックで橋を戻ることになる。戻り終えると、いったん下車して橋の近くまで歩いて行くことができる。
@下車して撮影 -
乗客は私だけということもあり、橋梁やレールの製造場所や、信号設備を動かせるように調整していることなど、色々なお話を伺うことができた。
@トンネル内で停車中 -
再度トロッコに乗り込み、口羽駅跡へと戻る。トンネルを抜けてからは、かなりの速度で快走していった。
駅に戻ってからは、バスの時間までしばし時間があるため、以前も歩いたことがある古い家などがある集落の散歩である。
歩き始めると廃線跡が見えてきたので、そちらに向かってみた。当然のことであるが、使用されていない部分は草生してしまっている。
@無念 -
集落を散策してから駅近くに戻り、近くに三江線の開通記念碑があるバス停で待っていると、路線バスがやって来て反対側のバス停に停まり、「もう乗ります?」と聞いてきた。というのも、このバスは口羽大橋バス停から先ほど私が歩いた集落内をぐるっと走り、そしてまたこのバス停に戻ってきて三次方面に行くのである。
@三江線全線開通記念碑 -
有難くバスに乗り、先ほど歩いた街並みをバスで走り抜け、乗車したバス停に戻ってから三次方面へと走り続けた。
なお復路でも三次駅までは行かず、尾関公園で下車した。公園の近くにある尾関山駅跡に行くためである。
しばし歩き、駅跡に到着した。レールバイクの基地として再利用されているが、今日はもう営業終了である。
@駅跡 -
そのまま30分ほど歩き続け、三次駅へ。三次には何度か泊ったことがあるため、今日は初めて庄原に泊まることにしている。
17時24分発の備後落合行は、当然の如く1両編成である。それに乗り込み、備後庄原には17時59分に到着した。駅構内はなぜかカープの人形ばかりである(調べてみると、以前はマツダスタジアムに置いてあったものであり、これを作った企業が庄原にある模様)。
@カープだらけ -
駅から徒歩15分程度のところにあるホテルに投宿し、近くにあったスーパーで食材を買い揃え、三次で買ってあった「わに」(動物のワニではなくて魚のサメ)の刺身などで一献してから、就寝。
■2024.6.3
庄原に泊まることにしたのは、「庄原で途中下車して観光しようとしたが、芸備線の本数が少なくて諦めた」という意味もあった。7時頃にチェックアウトをして、市内をぶらぶら。大きな観光要素はないが、風情のある小道などもあり、雰囲気は良い。
@徒歩観光 -
備後庄原駅では少し時間があったので、展示物などをしばし見る。駅前にバス停があったので時刻表を確認すると、三次経由の広島行高速バスがほぼ毎時出発で1日に14本、三次行の路線バスが25本あり、合計39本である。対して、JRはたったの5本(昼間は皆無であり、広島に行く場合は乗り換えが必須)。これでは、「どうぞ乗らないでください」というようなものである。
駅前には芸備線をPRする横断幕などもあるが、宣伝よりも前に対策するものが多い気がする。
@笛吹けども踊らず -
ホームに入り、7時29分発の備後落合行の入線を待つ。反対側には同時刻に出発する三次行を待つ高校生が多数待っている。バスのほうが早くて便利であるが、値段的にはJRの定期券の方が安いため、1日に5本しかない鉄道で通学しているのである。帰宅時などは、狙った時間に帰らないといけないから、時間管理が大変そうである。
先に、三次行が入線してきた。40人くらいの高校生が乗り込んだが、あんなに混雑しているこの区間の芸備線を見るのは初めてである。
@中は超満員 -
備後落合行が入線してきたので、それに乗り込んだ。なお、こちらにも数人の高校生が乗り込んできた(備後西城駅近くに高校があるため)。定刻に出発。
その備後西城で高校生などは降りてしまい、車内は私を含めても2人だけになってしまった。あと1人も旅行者風であるから、地元利用はゼロである。
ここも比較的大きな町なので降りてみたいが、降りてしまうと次の列車がない。しかし、今日は備後落合で1時間ほど時間を潰して三次へ折り返す予定であったが、備後落合はもう何度も行ったことがあるため、よく考えたらこの駅で降りればよかったと思った。
しかし、そう思った時点でも列車は出発していた。諦めかけたが、次の比婆山で降りるのも一案である。ということで、ノープランで比婆山にて飛び降りてしまった。
@長閑な駅 -
駅舎も古くて味わいがあり、瀟洒な雰囲気である。ここから備後西城までは歩いても45分くらいなので、歩いて戻ろうと思う。
駅舎内の掲示などを見ていると、なんと駅前の個人商店で乗車証明などがもらえるという(駅スタンプもあるとのこと)。この時点でまだ8時過ぎであるため店の営業時間が気になったが、調べてみたら朝の7時から営業中。ということで、お店にお邪魔して乗車証明をいただいたりした。比婆山だけに、ヒバゴンのイラストである。
@ありがとうございます(鉄道で来ることが貰える条件) -
田舎道を歩き(しかし交通量は激しい)、備後西城まで歩いて戻った。駅には観光案内所や店舗などが併設されているが、乗車を待つ客は私だけである。
出発までまだ時間があるため町中の店に行って地場産の野菜を買ってから駅に戻り、9時31分発の三次行に乗り込んだ。もちろん、乗り込んだのは私だけであり、そして次の列車は14時59分発である。これはもう、公共交通機関ではない。
本数自体も少ないが、特に川沿いは25キロの徐行区間が多数あるため、速度でもバスには敵わない。
@景色だけ鉄道の勝ち -
今日は、この後は呉に行って展示されている市電でも見ようと思っていたが、正直そこまで見たいものでもない。そこで車内であれこれ考え、三次でもうしばらく滞在して廃線跡を確認することにした。
10時29分、三次に到着した。駅から西へ歩き、以前に宿泊したことがあるホテルの東側にある小さな橋のところへ行ってみた。三江線の部分は橋が外されており、「背の高い車を通しやすくするためか」と一瞬思ったが、奥にある芸備線の橋の方が低いから、そういう意図ではないようである。
@手前が三江線 -
続いては、迂回をして歩きホテルの西側方面へ。こちらにはコンクリートの路盤が残っており、道路を跨ぐ橋も残ったままである。先ほどの部分と比較してかなり大きな橋であるから、撤去するのに手間がかかるため放置しているのであろうか。
@そのまま -
その後は江の川まで歩いて、長大な橋梁を見渡して廃線跡の確認は終了である。利用価値がない鉄道を無理に「残せ」という主張をする気は毛頭ないが、以前は鉄道が走っていた部分が無意味な「長城」のように放置されているのは、少しく寂しい感じがする。
この後は、大人しく芸備線で広島に戻り、白市経由で空港に行って帰宅するのみである。
@長大な橋梁
*旅行記および私の詳細については以下で。
「鐡旅」http://www2u.biglobe.ne.jp/~kokuden/tetu.htm
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この旅行記へのコメント (2)
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- ASARIさん 2024/06/07 13:27:17
- 初めまして
- いつもお酒を飲む列車や外国の鉄道のお話しを楽しく拝見させていただいています。
私は去年の秋に三江線跡のトロッコに宇都井駅から乗ったのですが、口羽駅から出発のがあるのですね。
トロッコは山と川の自然の豊かさにとても癒されました。
その三江線に何度も乗られたとか、比婆山駅から歩かれたり三次の町をまわられたりと、
国電さんの行動力にはいつも感動します。
あと、朝の備後庄原駅は高校生が多いというのも知りました。
芸備線も残って欲しいと思うのですが、この感じだと難しいのかな、、
今回も楽しいお話しをありがとうございました。
ASARI
- 国電さん からの返信 2024/06/08 08:11:00
- Re: 初めまして
- ASARIさん
ご訪問ありがとうございます。
JRも初期の頃は路線単位で廃線を決めていたので、超絶赤字でも路線名で助けられていたところもありました(函館本線の上砂川支線など)。
ただ最近は、区間ごとに収支を発表していますし、部分廃線も厭わないので(留萌本線など)、芸備線も山間部はもう厳しいかもしれません。木次線も福塩線の山間部も。
乗客を増やそうとする努力すら、JRはしていませんし(庄原から三次に通う高校生たちも、本当はバスに乗りたいでしょう。友人に何か誘われても「JRが!」で帰らないといけないし(調べてみたら、三次発は17:24の後は19:29で、しかもそれが最終…)。
ASARIさんの「程よい鉄分」の旅行記も、よく読まさせてもらっています(三江線トロッコで宇都井駅発があることは、そちらの旅行記で知りました)。9月には韓国に行くのですが、海雲台ブルーラインパークを真似して乗ろうかと思っています。
またお暇なときにご訪問ください。
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国電
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