104歳の教会でクリスマスを：セント.メアリー.オブ.ザ.エンジェルズ.カトリック教会

2023/12/25 - 2023/12/25

ダウンタウンにある教会の中で最も美しい教会の一つと言われ、かつ歴史的建造物（104歳）でもあるSt. Mary of Angels Catholic Church (セント.メアリー.オブ.ザ.エンジェルズ.カトリック教会)の訪問記です。ここはシカゴ周辺の開拓史の中でも比較的早く開けた地域で、大きなポーリッシュコミュニティがありました。19世紀前半のことです。当時のポーランドは政治的にも経済的にも混乱しており、農業国でありながら、自国内の農業だけでは生活できずドイツなどへ季節労働者として出稼ぎしなければならない多くの貧農を抱えていました。これらの人々は政治上の安全と生活向上を目指して新天地、新大陸に移民してきたのでした。工業化に向かって躍進していたシカゴにはそれらの人々を受け入れる余地がありました。物質的安定が得られると、いやそれと並行して彼らは精神のよりどころとしての教会を必要とします。また、教会は新参者の移民に互助の手を差し伸べる機関でもありました。このような背景があってシカゴにはポーランド系の教会が多いのです。ポーランド国以外で最もポーランド人が多いと言われるのはシカゴであることはあまり知られていません。しかし時の流れとともに、コミュニティーの構成も変化し郊外に転居したポーランド系移民のあとをうずめるようにラティーノの人々が入ってきます。なのでこの教会では、英語、ポーランド語、スペイン語のミサが別々の時間帯にセットアップされています。今日は自宅からノースアベニューを東に向かって1時間ほどドライブすればいいという低難度の道なのでiPhoneのMapsアプリがあれば大丈夫。マイカーで行きます。では出発！

エリア シカゴ(アメリカ)

• 旅行の満足度: 5.0

自宅から50分位ドライブ済。ノースアベニューを左折しハーミテージ通りに入ったところ。クリスマスで道路は空いていて非常に走りやすい。＃＄％！！

ハーミテージ通り。目指す教会はこの隣。

セント.メアリー.オブ.ザ.エンジェルズ教会到着。

シカゴカトリック大司教区は6つの司教区を管轄しており、セント.メアリー.オブ.ザ.エンジェルズ教会はその3番目の司教区（Vicariate III、セントラルシカゴ）に属する。ローマンルネッサンス様式のこの教会は1911年に着工するも第一次世界大戦下で資材不足、ロジスティックの分断などで工事が中断。1914年に工事が再開され6年後に献堂された。125フィートのドームと2つの鐘楼をもつポーランド大聖堂スタイルになっており、全米の中でもローマンルネッサンス様式の教会の最高傑作の 1 つとして高く評価されている。外装はダークブラウンのブリックとテラコッタの建材にベージュの石灰岩がアクセントに使われている。
セント.メアリー.オブ.ザ.エンジェルズ教会のウェブサイトは
https://www.sma-church.org/

ドーム部分をズームイン。ヘンリー W. ワースマンとジョン G. スタインバック(Henry W. Worthmann and John G. Steinbach)によって設計されたこの構造は、ローマのサン ピエトロ大聖堂をお手本にしていると言われる。1960年代には信徒数の郊外への流出と建物の老朽化で解体の危機に瀕したが、当時シカゴ大司教だったベルナディン枢機卿と教区の信徒がメディアを使った'Save the Dome'キャンペーンを大展開し、一般市民の賛同と募金で修復資金を賄った。現在目にするこの教会の姿は1992 年にホラバード & ルート(Holabird & Root )によって修復されたものである。

教会を守護する26の天使像。教会の名前（セント.メアリー.オブ.ザ.エンジェルズ）はこれらの天使に由来する。

教会のファサードは修復続行中でプラスティックシートで覆われている部分もある。何しろ築104年なのだから。。。正面丸窓に教会の盾が見える。

内部に入ろう。3階建てで会衆席は2階、パイプオルガンと聖歌隊席は3階になっている。

教会前室（ナルテックス）の天井部フレスコ。

教会前室（ナルテックス）の銘板。この教会のモットーである’聖母を通してイエスに’の言葉が彫られている。

教会前室（ナルテックス）。剣とQuis Sicut Deusの盾を持つ大天使聖ミカエルのペインティング。
*Quis Sicut Deus というのは Michael の名をラテン語で示したもので「Who is like God? 誰が神のようであるか？」の意味。
*キリスト教において天使はおしなべて「無性 もしくはユニセックスunisex」ということになっているのだが、ミカエルは禿げ頭の堕天使などを踏みつける武闘派、腕力派なので、ここでは男性的に描かれている。私的には羽のある軍神マルスのように見える。%*!!

ちょっと寂しげな聖水盆と献灯台。

（アシジの）聖フランシスコ像。この教会の聖職者はフランシスコ修道会に帰属する。

身廊部入口で礼拝者を迎える天使像。

内陣（主祭壇、聖櫃）とアプス。この美しいアプスの天井画、および教会内部の’十字架の道行き’を含む全ての絵画のデザインと描画は当時の著名な教会芸術家兼装飾家であったジョン A. マリン(John A. Mallin)の手になるものである。1948 年、教区の50周年記念日の準備として描かれたもので、天上の世界や地上におけるキリストや聖人の生涯の数々を美しい筆づかいで表現している。

アプスのフレスコ画は聖母被昇天図。ジョン A. マリンの作品は 100 を超える教会や礼拝堂、その他個人の邸宅、銀行、劇場でも見られるという。 彼は米国に移民する前にウイーンで教会装飾や宗教画の技法を学び実際の仕事も数多く手がけていた。米国でのキャリアは、1907 年にチェコ系移民としてシカゴに来てから 1963 年に引退するまで、なんと約 60 年にも及んだ。主にローマ カトリック教会の装飾を担当したが、ギリシャ正教やプロテスタントの教会の装飾も手掛けたようである。
https://www.sacredarchitecture.org/articles/john_anton_mallin_ecclesiastical_artist_and_decorator_in_twentieth_century_

アプスのフレスコ画拡大。セビリア大聖堂で見たムリーリョやスルバランの聖母被昇天を思い出したが、ジョン A. マリンのこのフレスコ画はこの教会の名に相応しく数多の天使が聖母を囲むように雲上に配置され、柔らかく気品ある色使いになっている。

125フィートの高さの中央ドーム部分を下から見上げたところ。

ドーム部分を違ったアングルで#1。

中央ドームを違ったアングルで#２。

聖櫃と主祭壇。

3階聖歌隊席を見上げる。

かつて世界一のパイプオルガンメーカーと言われたシカゴベースのW. W. キンボール 社製のパイプ オルガン(WW. Kimball Pipe Organ)。1923 年に 23,750 ドルの費用をかけて設置されたという。 1962 年に大規模なオーバーホール、チューンアップを経て現在も活躍中。
＊キンボール社は現在インディアナに移っている。

側廊祭壇前に設けられたネイティビティー（聖家族）。

側廊祭壇天井のメダリオン。

側廊壁面のフレスコ画。

パルピット(pulpit=説教壇）

側廊祭壇とフレスコ画。

側廊部ステンドグラス#1.

側廊部ステンドグラス#2。

側廊部聖母マリアのイコン#1。

側廊部聖母マリアのイコン#2。

側廊部祭壇、聖母子。

側廊部祭壇、キリストを抱くマドンナ。

側廊部入口側。大天使ミカエルとキリスト。

側廊部入口側。十字架降下、ピエタ。

側廊部、天井部の装飾。

側廊部天井部のクロースアップ。

身廊（会衆席）、中央通路、主祭壇およびアプス。

側廊部、壁画。おそらく’山上の垂訓’。

側廊部、壁画。キリストの磔刑。

クリスマスミサの開始5分前。エレクトロニクス類をシャットダウンするようにとのアナウンスがある。約４０分くらいのミサはアレルヤ唱、クリスマスの聖歌と司祭の祝福とクリスマスメッセージ、聖体拝領などがその内容である。

ミサの後、駐車場からドームと天使像を撮影して帰路につく。

ハーミテージ通りにはこのような長屋風の同じようなスタイルの建物が並ぶ。左2軒はシカゴバンガロースタイルと呼ばれ、シカゴが重工業化に向かって躍進した時代、ブルーカラーの人々の住居用に量産された建物である。今はこうした建造物は取り壊されることなく改修してオフィスやギャラリーとして使われているケースが多い。

ノースアベニューをもと来た道を戻り自宅に向かう。

そして2023年の終わりに。
最後までご覧くださってありがとうございました。皆さん、暖かくしてよいお年をお迎えください。
Happy New Year!!
Nora