白金台の松岡美術館 2023.8

2023/08/17 - 2023/08/17

松岡美術館は，貿易商・松岡商店を設立し，冷蔵倉庫業，ホテル経営，不動産業，予備校経営の事業を行った松岡清次郎（明治27年―平成元年；享年96歳）が，自分のために蒐集してきた美術品を一般公開するために，昭和50年に新橋の自社ビル内に創立した．その後，遺族が平成12年（2000）に，国立自然教育園に隣接する白金台の自宅跡地に現美術館を建設した．

特別展示は「印象派の光―モネ，ルノアール」であった．モネ，ルノアールは他で幾つか観ているので特別な興味はなかったが，一度訪れたい美術館だったので，行ってみました．モネ，ルノアールを目的に行くと，モネは3作品，ルノアールは2作品のみだったので，落胆したと思います．しかし，常設展等で下記の充実した展示を観ることが出来，満足でした．

◇古代東洋彫刻，◇古代オリエント彫刻，◇現代彫刻，◇江戸の陶磁器（古伊万里）．

西洋画だけでなく，上記のように趣味範囲が広かったのですね．松岡清次郎のコレクションは日本画から始まり，中国，日本，朝鮮，ベトナムなどの陶磁器，西洋絵画，現代彫刻，古代東洋彫刻，古代オリエント美術へと広がった，とのこと．資金もあったのでしょうが，本当に多数蒐集してますね．
雰囲気の良い美術館でした．　写真可の作品が多かったので，写真多数です（現代彫刻は写真NGでした）．

松岡美術館HP: https://www.matsuoka-museum.jp/

松岡清次郎コレクション： https://www.matsuoka-museum.jp/collection/archeological/

エリア 白金(東京)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0
• 交通: 4.5

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 私鉄 徒歩

都営地下鉄白金台駅

白金台付近のマップと松岡美術館の位置．

ここの外苑西通りはプラチナ・ストリートとも呼ばれるよう．

松岡美術館入口

松岡美術館 美術館・博物館

特別展示「印象派の光―モネ，ルノアール」のポスター

創設者・松岡清次郎銅像

1Fロビーのエミール=アントワーヌ・プールデル「ベネロープ」

1Fロビーの右「ゼウス」大理石，ローマ期，2世紀頃

松岡美術館の庭．　右の鶴は人工物．その奥に松岡清次郎銅像あり．

2Fの特別展「印象派の光 ― モネ，ルノアール」の展示作品紹介から．

1874年に第1回印象派展が開かれた．モネ，ルノアール，ピサロ，シスレー，ドガ，セザンヌなど30名の画家が165作品を出品した．しかし，この展覧会は経済的に失敗し，保守的評論家から酷評され，嘲笑的に「印象派」の呼び名が付けられた．

印象派展は1886年までに8回開かれたが，参加メンバーは流動的で，全てに参加したのはピサロだけだった．

「サン＝タドレスの断崖」モネ（27歳；1867）．

第1回印象派展が1874年なので，印象派前夜．

「ノルマンディの田舎道」モネ（27歳；1868）．

第1回印象派展が1874年なので，印象派前夜．

「リュシアン・ドーデの肖像」ルノアール（38歳；1879）．

この絵画は今回のポスターに使われてますが，もっとルノアールらしい絵画は他にありますね．でもこれは当美術館の所蔵作品です．

「ローヌの腕に飛び込むソーヌ」ルノアール（74歳；1015）

モネとルノアールだけでは少ないので，他の印象派画家作品も載せます．

「海，水先案内人」ブータン（60歳；1884）

「カルーゼル橋の午後」カミーユ・ピサロ（72歳；1903）．

ピサロは印象派の最年長で，メンバーから慕われる存在だった．探求心があったピサロは，印象派に固執せず，若い世代のスーラやシニャックと云った新印象派や，ゴーギャンの技法を取り入れる柔軟さを持っていた．

「麦畑から見たモレ」シスレー（47歳；1886）．

シスレーは印象主義の概念を信じ，困窮生活にもめげずに，印象主義的画風で風景画を描き続けた．ピサロはそんなシスレーを「真の印象主義者」と称した．

「アリエ河畔のサン=ジュリアン=デ=シャーズ」アルマン・ギヨマン（54歳；1895）．

フランスの印象派画家で，主にパリの都市部や郊外の田舎町や風景画が知られている．鮮明な色遣いから後にマティスやデュフィに大きな影響を与え，”フォーヴィスム”の先駆けとも言われている．

「ドラモンの下手」アルマン・ギヨマン（54歳；1895）

「アゲ―灣，信号所」アルマン・ギヨマン（54歳；1895）

「ラ・ド・サン，フィニステール県」アンリ・モレ（55歳；1911)．

ブルターニュ地方の小村ボン=タヴァンには多くの芸術家が集まり，ボン=タヴァン派と呼ばれるグループを形成した．その特徴は，輪郭線の強調や大胆な色使いで象徴的な主題を描いた．

「ブルターニュの海岸」アンリ・モレ

「オレンジを積んだ船」シニャック（60歳；1923）．

シニャックは新印象派になる．

「ニンフの居る風景」イッポリート・プティジャン（47歳；1901）．

プティジャンも新印象派．

「入江，コリウール」アンリ・マルタン．

マルタンも新印象派．

「ムリヌーの池」マクシミリアン・リュス（46歳頃；1904）．

リュスも新印象派．

「水浴の女たち」マクシミリアン・リュス．

リュスも新印象派．

以下3枚は新印象派からフォーヴィズムへ．

「川辺」ルイ・ヴァルタ（26歳；1895）．

ヴァルタは鮮やかな色彩と力強いタッチが特徴的な風景画や静物画を描き，後にフォーヴの先駆者と見做された．

「水浴の女たち」ルイ・ヴァルタ（41歳；1910）

「黄色い背景と大きい花瓶」ルイ・ヴァルタ．　

これで「印象派の光」展は終わりです．

「古代東洋彫刻」展示品より．

中国仏教彫刻

中国仏教彫刻の説明

古代アジア仏教彫刻

ガンダーラ仏の説明

ガンダーラ菩薩像

ガンダーラ彫刻―破風仏伝図

仏陀説法図．ガンダーラ，3世紀頃

菩薩諸相像，ガンダーラ，3-4世紀頃

菩薩座像，ガンダーラ，3-4世紀頃

シヴァとバールヴァティー，インド・ラージャスタン，11-12世紀

シヴァとバールヴァティー，中インド，11-12世紀

ヴィシュヌ，南インド，12-13世紀．

ヴィシュヌはヒンドゥー教の神．特にビシュヌ派の宗教的信仰の中心として崇拝される．古くは太陽の活動を象徴するものであったが，次第に神としての地位を高め，三界を支配する諸神の最高神となった．

ヴィシュヌ，中インド，12世紀頃

ヴィヌシュとラクシュミー，西インド，12世紀頃

スーリヤ，中インド，10-11世紀．

スーリヤはインド神話に伝わる太陽神．天空神ディヤウスの息子とも，神アディティの息子たちアーディティヤ神群の一柱にして闘神インドラの兄弟ともされる．また，原初の巨人プルシャの目から生まれたとも言われる．妻にサンジュニャー，息子の一人にカルナがいる．

サラスヴァティ―，東インド，11-12世紀．

サラスワティーは，芸術・学問などの知を司るヒンドゥー教の女神．

楽女，西インド，13-15世紀

音楽の神シヴァ，南インド，11世紀頃

「古代オリエント彫刻」展示品より．

エネヘイ象，第19王朝(紀元前13世紀)，エジプト・サッカラ

セクメト象，第18王朝(紀元前18-13世紀)，エジプト・カルナック・ムト神殿

彩色木棺，中部エジプト，プトレマイオス朝初期（前4世紀頃）．

色彩がよく出ています．
エジプト政府は売却することはないですので，持ち出した英仏独辺りの国から購入したのでしょうかね．

彩色木棺，中部エジプト，プトレマイオス朝初期（前4世紀頃）

女性礼拝者像，イラク・シュメール初期王朝（紀元前2500年頃）

展示室4at2F「江戸の陶磁器・古伊万里展」： 多いですが載せます(全部ではないです）

東洋陶器コレクションの説明

色絵 唐人物図 太壺，有田・柿右衛門様式，江戸時代

染付 鳳凰文 八角大壺，有田，江戸時代

色絵 花鳥文 六角壺，有田，柿右衛門様式，江戸時代

柿右衛門様式の説明

五彩 花鳥図 八角大盤，中国・景徳鎮，清時代

色絵 花卉文 筒形瓶，有田，金欄手様式，江戸時代．

古伊万里金襴手様式は，中国明代嘉靖年間（1522-1566）に景徳鎮窯でつくられた作品群に祖形が求められる．金襴手と呼ばれたその絢爛豪華な磁器が，元禄年間の華美な装飾を好む人々に求められ，伊万里焼の新たな様式として取り入れられた．

色絵 花卉文 大壺，有田，金欄手様式，江戸時代

色絵 牡丹樹木図 大皿，有田，金欄手様式，江戸時代

色絵 花卉文 深鉢，有田，金欄手様式，江戸時代

色絵 鷲雉子図 大皿，有田，金欄手様式，江戸時代

色絵 楼閣美人図 大皿，有田，金欄手様式，江戸時代

色絵 花卉孔雀図 輪花鉢，有田，古九谷様式，江戸時代．

古九谷様式は，青（緑）・黄・赤・紫・紺青の五彩を使い，絵画的に完成された表現力で大胆な構図、のびのびとした自由な線描き，豪快で深い味わいが魅力となっている．

色絵 牡丹文 平鉢，有田，古九谷様式，江戸時代

色絵 唐人物図 鉢，有田，古九谷様式，江戸時代

色絵 芭蕉柳図 輪花鉢，有田，古九谷様式，江戸時代

色絵 四阿舟図 鉢，有田，古九谷様式，江戸時代．

これで松岡美術館はおしまいです．

帰りは目黒駅まで歩きました．