本陣と脇本陣が残る宿場町・矢掛　in 岡山

2022/03/20 - 2022/03/20

本陣と脇本陣の両方の建物が残る山陽道の宿場町、岡山の矢掛を訪れました。

全国でも両方残っているのが矢掛だけで、とても貴重。

思ってた以上に町並みの整備も進んでいて、オリジナルのお土産品も

あって、とても充実した街歩きでした。

井原鉄道に乗れるのも楽しみでしたが、車窓からは２０１８年の豪雨災害

の復旧工事が今なお行われている様子が見えました。

矢掛の宿場町も２０１８年の時は直撃の被災は免れたようですが、宿場町商店

街のすぐ横を小田川が流れており、昭和５１年には甚大な被害を受けたそうです。

今矢掛でイベントとして親しまれている大名行列も水害からの復興を目指して

始まったものだそうです。

エリア 井原・矢掛(岡山)

JR清音駅で下車して、井原鉄道に乗り換えます。

左側にあるのは金田一耕助の顔出しです。清音は横溝正史が疎開したところで
金田一耕助が活躍する推理小説の世界観にはここでの生活が大きく影響しています。疎開宅なども残っているそうですが、それはまた次の機会に・・。

清音駅 駅

こちらが井原鉄道の清音駅です。

井原鉄道に乗って矢掛まで向かいます。

清音駅 駅

一両編成でしたが、車内はロマンスシート。

高い場所を走る箇所が多くて見晴らしはよいですが、沿線は２０１８年の豪雨で被災

した地域で、今も護岸工事などが行われていました。

井原鉄道 井原線 乗り物

矢掛駅到着です。
下車するときにホームにいた女性が紙を配っていました。受け取った紙を見ると、駅前で開かれているマルシェで買い物すると帰りの井原鉄道が無料になるというキャンペーンをやっているとのことで、行ってみました。地元の方が運営しているみたいで、矢掛のゆるキャラ「やかっぴー」のクッキーなどを購入しました。
この駅舎では切符売り場のところでお土産（食べるものややかっぴーグッズなど）も売っていて、私も帰りがけに買いました。

矢掛駅 駅

矢掛駅から宿場町までは歩いて１０分ほどです、この細い小路を通り抜けると、

矢掛宿街並み 名所・史跡

思った以上に整備された町並みが現れました。宿泊施設もあり、ショップや飲食店も整っています。

矢掛宿街並み 名所・史跡

まずは、いきなりですが、昼食を。


街道沿いにある町家を利用したカフェ&雑貨SEEDS藤原家でいただきました。

店内の様子。

明太子のオムライス。絶品でした。

器も凝っています。

水のコップもよいですね～。

ランチは２種類だけでしたが、飲み物付きで、チャイをいただきました。

昼食を頂いた藤原家を含む建物は「妻入り五軒並び」といって、妻入りの建物が五軒

ならんでいる、矢掛の見どころのひとつになっています。

矢掛宿街並み 名所・史跡

食事を終えて、まず見学したのが脇本陣高草家住宅です。

こちらは土日だけの公開です。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

入口を入ると土間になっていて、そこで受付の方に入館料を払い見学します。土間の左手が母家になっています。
部屋に上がることはできませんので、土間からの見学という形になります。
板戸の部屋ですが、説明書きとかがほとんどないので、どのように使われていたのか詳しいことはわかりません。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

土間を進むと、竈がありました。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

土間をぬけると井戸がありました。

矢掛宿は自然堤防の上にあるので、きれいな地下水に恵まれています。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

その奥には全面なまこ壁の大きな蔵があります。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

全面なまこ壁というのは、なかなか壮観。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

母家と蔵の間は通路になっていますが、

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

蔵を利用するときはこの板を渡して、母家と蔵をつないで廊下にする仕組みになっているのかなあと思いました。
実際さわって試したわけではないのでわかりませんが・・。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

その母家と蔵の間をぬけると、左手に母家の室内を見ることができます。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

凝った狆くぐりや、床柱、床框など、この部屋が脇本陣の中で一番格式の高い
部屋だったことが伺われます。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

土間に近い部屋の板戸とは違って、優美な襖が目を引きます。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

右手に行くと、この門や建物の感じから茶室ではないかと思われる建物がありました。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

ここが待合ですが、これ以上奥は立ち入り禁止になっていました。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

茶室の奥へは別順路で行くことができ、そこには祠がありました。屋根を見ているとお寺のようですが、結界が張られているので神社のようです。でも、何が祀られているのかはわかりませんでした。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

きれいな陶器製の井戸の滑車。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

こちらの蔵はなまこ壁が要所に使われています。

手前の煙突とレンガはお風呂かと思われます。
後年になって蔵の外に付け加えたのかな？

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

昔の道具がそのまま残っています。

てこの原理。何を突いたんでしょう。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

脇本陣の裏通りは運搬や排水に利用された用水路（悪水通ノ溝）が流れていて、これが矢掛の町と村を分けていた境界だそうです。
工事中でこの道は歩くことはできませんでした。

旧矢掛脇本陣髙草家住宅 名所・史跡

宿場町を歩きます。

矢掛宿街並み 名所・史跡

黄色壁のおしゃれな建物を発見。

交護会館といって、１９２８年に公会堂として建てられたもので、

現在も町の寄合などに現役で使われているそうです。

左側に鎮座するのは由加神社といって、小田川の橋の架け替えによってこちらに移転してきたもの。

矢掛宿街並み 名所・史跡

小さい建物ながら、窓周りのデザインが凝っていてかわいらしい感じがします。

先ほど見学した脇本陣高草家の一人で、養子に出ていた梶原護氏の寄付と地元の人の寄付によってできたものなので、名前が交「護」会館とつけられました。

矢掛宿街並み 名所・史跡

本陣まで街道を歩いてきます。

矢掛宿街並み 名所・史跡

ところどころ、このような街道から横に入る小路があります。

こういう景色に心惹かれます。

矢掛宿街並み 名所・史跡

古い町並みの中に、ところどころアクセントのように近代建築もあります。

近代建築も古いといえば、古いんですが・・。

矢掛宿街並み 名所・史跡

大久保屋さんは元々は魚屋さんだったみたいです。今は洋服＆雑貨屋さんとして営業しています。

矢掛宿街並み 名所・史跡

宿場町の町並み。

矢掛宿街並み 名所・史跡

宿場町の町家。

矢掛宿街並み 名所・史跡

町家を利用したイタリアンのお店。訪問時は休みでした。

矢掛宿街並み 名所・史跡

歴史的な建造物にはこのように建物や由来や現在の状況などの説明書きが掲示されていて、とても親切です。

矢掛宿街並み 名所・史跡

矢掛は古い建物がかなり残っていますが、やはり更地になってしまっているところも

ところどころありました。

矢掛宿街並み 名所・史跡

やかげ町家交流館は観光案内のほかに、奥はカフェになっています。

もちろん、お土産品の品ぞろえもよかったです。

矢掛オリジナルの煎餅や、ゆるキャラ・やかっぴーのグッズなどは矢掛でしか買えません。宿場町にあるぼっこう堂さんの煎餅とやかっぴーの眼鏡クロスを購入しました。

それから、矢掛町は観光パンフレットが質・量とも充実しているのも観光客にはありがたい所です。

やかげ町家交流館 名所・史跡

さて、いよいよ本陣の見学です。

本陣を務めたのはは石井家といいます。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

御成門。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

御成門から続く唐破風の玄関。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

右にある門は大名行列のお殿様以外の人の出入り口。

御成門は殿様だけ。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

異常に細い廊下。しかも、微妙に段差があるのは、侵入者対策。

壁にあるボタンは音声ガイドです。
要所要所にこのようなボタンがあるので、これを利用すると自分のペースで見学できます。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

庇の屋根は２本の丸太でそれぞれ支えられていますが、それが交わるところに、その丸太を支えるべき柱が見受けられません。
柱もなく、上から引っ張るでもなく、行ってみれば宙に浮いている形ですが、いったいどうしてなのか、謎だそうです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

休宿泊する大名の名前を書いた板。大名以外に勅使の名前も見えます。

今でも旅館などに行くと「歓迎〇〇様御一行」などと掲げられていますが、この札は本陣側が用意するのではなく、各大名側が準備するものだったので、サイズがばらばらなんだそうです。時代が下って藩も金銭的に苦しくなってくると板が紙に変わったとか。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

岸田劉生の絵がありました。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

一番奥がお殿様が休憩・宿泊される上段の間です。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

欄間は安土桃山時代まで時代が下るそうです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

模様は、向かって左側は葡萄とリス。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

右はカラスウリとアゲハ蝶。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

襖絵は金箔・銀箔を用いた絢爛豪華なものです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

上品な襖絵です。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

襖の取っ手には菊の御紋が。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

こちらにも菊の御紋らしきものがありますが、江戸時代、京都の公家は京の絵師に絵を描かせて、それを地方に（法外な値段で）売って、その手数料を生活の糧としていたそうです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

上段の間に面しているお庭。

奥の白壁の部分は厠とお風呂ですが、共に、備え付けのものではなく、ポータブルのものを使用していたそうです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

外廊下の途中にこのような板戸があります。この向こうが上段の間なので
やはり侵入者対策でしょうか。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

反対側には板絵が。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

先ほどの戸をぬけると、上段の間を近くから見ることができます。

書院の造りは比較的シンプルですが、床の間などは漆塗りでしょうか、上質さを感じさせます。
狆くぐりの造作はおもしろいですね。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

山水画に色を付けたような絵。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

お殿様からの拝領の品々。

箱書きに「福山侯」「長州様」の文字が。

大名行列の一行はその費用の全額は払わなかったので、

かなりの部分は本陣・脇本陣の負担となったそうです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

ここからは石井家の主屋の見学です。

土間に平行して部屋が並んでいます。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

当然、座敷の書院造とは全く違った趣で、質実剛健な民家の造りです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

台所。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

石井家は酒造を生業としていたので、窯場や洗い場などの施設も残っています。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

酒蔵は展示場になっています。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

これが風呂桶です。

セキュリティ的に、固定した風呂桶は置かなくて、持参しましたが、これは薩摩藩から預かっていたものだそうです。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

食事が再現されていました。

長崎奉行つまり幕府の役人の食事は豪華ですが、大名（萩藩主）はお膳は一つだけで、意外と質素。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

矢掛本陣石井家住宅。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

米蔵、酒蔵などがそっくり残っています。脇本陣も広い敷地でしたが、こちらはもっと広い。

旧矢掛本陣石井家住宅 名所・史跡

本陣見学を終えて、さらに西へ向かいます。

矢掛宿街並み 名所・史跡

石井醤油店。

観光客相手の店だけでなく、この肉屋さんのように地元密着のお店があるのも矢掛のいいところです。
建物もかわいらしい。

矢掛宿街並み 名所・史跡

宿場町の西の端までやってきました。

昭和１３年に架けられた栄橋はリベットの鋲が時代を感じさせてくれます。

矢掛宿街並み 名所・史跡

橋のたもとには「高通川　徒渡し跡」という立て札が建っていました。

江戸時代は橋はなくて、宿場町への出入りは川を徒歩で渡らないといけなかったんですね。

矢掛宿街並み 名所・史跡

よく歩いたのでおやつを・・。

ｔ２labというカフェです。

ティーツーラボ グルメ・レストラン

とてもおしゃれな店内でいただくのは・・

ティーツーラボ グルメ・レストラン

「だんご行列」です。

抹茶、みたらし、柚子味噌、桜、ずんだなど、味も彩もいろいろな

だんごの盛り合わせです！

大名行列で賑わった宿場町矢掛らしいメニューでした！

ティーツーラボ グルメ・レストラン

帰りも井原鉄道とJRを乗り継ぎましたが、清音駅は、井原鉄道とJRが同じホームで、境に自動改札機が設置してあるだけでした。

岡山は倉敷が有名すぎますが、今回訪れた矢掛の宿場町や、以前訪れた高梁の城下町など、倉敷からそれほど遠くないところに、倉敷とはちょっとテイストの違う江戸時代の町並みを味わえます。

清音駅 駅