坂出・瀬戸大橋周辺旅行記(ブログ) 一覧に戻る
備讃瀬戸は響きの良い語感だ。間に海を挟んでいるが、備前の備の国と、讃岐の讃を総評した一体で、昔から交通、文化共に親しい関係になっている。間の瀬戸内は海というか内海、大きな川のようなものだ。江戸時代には備前岡山の下津井の港からここ坂出、丸亀に渡し船が頻繁に往来し、近年になっては、宇野港と高松を結ぶ宇高連絡船が、瀬戸内大橋が開通するその時まで、海上交通の大動脈だった。大型フェリーは鉄道列車まで乗せてピストン輸送していたが、それは丁度青函連絡船のようなものだった。遠い昔、本四架橋工事が始まる遥か以前に宇野港から高松までやってきたこともあったが、今目の前に本四架橋の巨大な橋桁を見ていると、今昔の感が一入だ。<br /><br />本土と四国、いや沖縄北海道の人は本州を本土と呼ぶのが通例となっているが、前回愛媛を訪問した時、今治フェリー乗り場の係の人が本土の尾道、本土の三原、等々本州の各都市を本土、本土と呼んでいて、その時四国の人々も沖縄県人同様に、本州を本土と呼ぶのかと、新たな発見の思いをしたが、彼はもう既に初老近くの人、今の若い人が彼等高齢者と同じように本土、本土と呼ぶかどうかは知らないが、今自分は愛着を込めて、敢えて本土と呼ぶが、その本土と四国に連絡橋を造る計画が持ち上がったのは、今から30-40年も前で、3本の橋を掛けようとするものだった。その内、一番最初にできたのが、この岡山ー香川ルートで、瀬戸中央自動車道、通称瀬戸大橋と呼ばれた。今から30年ほど前の話である。次いで鳴門海峡をまたぐ明石海峡大橋、それから最後にできたのは尾道ー今治を結ぶしまなみ海道だった。<br /><br />最初にこの橋を渡ったのは、と言っても渡ったのはその時の往復1回切だが、今から18年前の2003年3月のことで、鳥取に住む山の知人と岡山空港で待ち合わせ、彼の運転でこの橋を渡ったのだが、渡る直前、岡山サイドの児島のパーキングで、その近くにある鷲羽山展望台からこの長大橋を眺め、ずっと先の四国の陸地まで伸びている景観には感動した。手元のすぐ下には、江戸時代以来賑わった昔おかし町の下津井の港も見えた。橋は2階建てになっていて、上の階が高速道路、下の階が備讃線の線路になっていて、時々ゴトゴト大きな音が響いてきたが、それは下を列車が通過している走行音だった。橋を走行していると、四国の島がどんどん大きくなり、正面に小山のような塊が近づいてくるが、それが五色台だった。一昨日五色台の白峯寺に参拝した後、五色台展望台まで足を延ばし、その時のことを思い出したが、今日は又、この海峡橋の下から高速を眺め、当時を思い出した。<br /><br />海峡大橋の坂出サイドは番の州工業地帯になっていて、周辺は綺麗な公園に整備されている。総事業費1兆円を超える巨大プロジェクト、当時の日の出の勢いの日本は金持ちで、お金もふんだんに使えた。瀬戸大橋記念公園の中には、お決まりの箱物、記念展示館が作られたり、海に面して野外劇場なども作られている。瀬戸大橋記念公園はこのコロナ禍で、殆ど人影も見えず、それが却って賑わいの絶えた淋しさを感じさせたが、ギリシャ円形劇場風の野外コンサートホールの端に佇み、向かいの海を眺める。<br /><br />全長400キロを超える瀬戸内海で、この辺りの備讃瀬戸が最も穏やかな海域で、海峡の向うには大正時代の美人画家竹久夢二が生まれ育った牛窓もある。「うしまど」という地名だ。嘗て自分もどんな窓のある町なのか、行ってみたのだが、そこは海に面した牧歌的な海岸の集落で、成程、ここに牛が放牧されていても不思議ではないし、海と空と海岸全体を大きなフレームとすれば、誰が付けた名前か知らないが、牛窓もあり得たかと・・。又、この近くには大伯島(おおく)があって、嘗て、白村江の頃、大宰府へ向かう途次、天武天皇の娘、大伯皇女(おおくひめ)がここで生まれ、後年、伊勢神宮の初代斎宮になったという、歴史的な海でもあった。巨大な海峡大橋の真下で、上を通過するトラックのタイヤ音、或いは列車のレール音を耳にしながら、時間の止ったような目の前の海を眺め、いろいろな過去の事、歴史の事を想起した。<br /><br /><br />

四国霊場最後の巡礼(66)瀬戸大橋と備讃瀬戸。

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2020/11/09 - 2020/11/14

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ちゃお

ちゃおさん

備讃瀬戸は響きの良い語感だ。間に海を挟んでいるが、備前の備の国と、讃岐の讃を総評した一体で、昔から交通、文化共に親しい関係になっている。間の瀬戸内は海というか内海、大きな川のようなものだ。江戸時代には備前岡山の下津井の港からここ坂出、丸亀に渡し船が頻繁に往来し、近年になっては、宇野港と高松を結ぶ宇高連絡船が、瀬戸内大橋が開通するその時まで、海上交通の大動脈だった。大型フェリーは鉄道列車まで乗せてピストン輸送していたが、それは丁度青函連絡船のようなものだった。遠い昔、本四架橋工事が始まる遥か以前に宇野港から高松までやってきたこともあったが、今目の前に本四架橋の巨大な橋桁を見ていると、今昔の感が一入だ。

本土と四国、いや沖縄北海道の人は本州を本土と呼ぶのが通例となっているが、前回愛媛を訪問した時、今治フェリー乗り場の係の人が本土の尾道、本土の三原、等々本州の各都市を本土、本土と呼んでいて、その時四国の人々も沖縄県人同様に、本州を本土と呼ぶのかと、新たな発見の思いをしたが、彼はもう既に初老近くの人、今の若い人が彼等高齢者と同じように本土、本土と呼ぶかどうかは知らないが、今自分は愛着を込めて、敢えて本土と呼ぶが、その本土と四国に連絡橋を造る計画が持ち上がったのは、今から30-40年も前で、3本の橋を掛けようとするものだった。その内、一番最初にできたのが、この岡山ー香川ルートで、瀬戸中央自動車道、通称瀬戸大橋と呼ばれた。今から30年ほど前の話である。次いで鳴門海峡をまたぐ明石海峡大橋、それから最後にできたのは尾道ー今治を結ぶしまなみ海道だった。

最初にこの橋を渡ったのは、と言っても渡ったのはその時の往復1回切だが、今から18年前の2003年3月のことで、鳥取に住む山の知人と岡山空港で待ち合わせ、彼の運転でこの橋を渡ったのだが、渡る直前、岡山サイドの児島のパーキングで、その近くにある鷲羽山展望台からこの長大橋を眺め、ずっと先の四国の陸地まで伸びている景観には感動した。手元のすぐ下には、江戸時代以来賑わった昔おかし町の下津井の港も見えた。橋は2階建てになっていて、上の階が高速道路、下の階が備讃線の線路になっていて、時々ゴトゴト大きな音が響いてきたが、それは下を列車が通過している走行音だった。橋を走行していると、四国の島がどんどん大きくなり、正面に小山のような塊が近づいてくるが、それが五色台だった。一昨日五色台の白峯寺に参拝した後、五色台展望台まで足を延ばし、その時のことを思い出したが、今日は又、この海峡橋の下から高速を眺め、当時を思い出した。

海峡大橋の坂出サイドは番の州工業地帯になっていて、周辺は綺麗な公園に整備されている。総事業費1兆円を超える巨大プロジェクト、当時の日の出の勢いの日本は金持ちで、お金もふんだんに使えた。瀬戸大橋記念公園の中には、お決まりの箱物、記念展示館が作られたり、海に面して野外劇場なども作られている。瀬戸大橋記念公園はこのコロナ禍で、殆ど人影も見えず、それが却って賑わいの絶えた淋しさを感じさせたが、ギリシャ円形劇場風の野外コンサートホールの端に佇み、向かいの海を眺める。

全長400キロを超える瀬戸内海で、この辺りの備讃瀬戸が最も穏やかな海域で、海峡の向うには大正時代の美人画家竹久夢二が生まれ育った牛窓もある。「うしまど」という地名だ。嘗て自分もどんな窓のある町なのか、行ってみたのだが、そこは海に面した牧歌的な海岸の集落で、成程、ここに牛が放牧されていても不思議ではないし、海と空と海岸全体を大きなフレームとすれば、誰が付けた名前か知らないが、牛窓もあり得たかと・・。又、この近くには大伯島(おおく)があって、嘗て、白村江の頃、大宰府へ向かう途次、天武天皇の娘、大伯皇女(おおくひめ)がここで生まれ、後年、伊勢神宮の初代斎宮になったという、歴史的な海でもあった。巨大な海峡大橋の真下で、上を通過するトラックのタイヤ音、或いは列車のレール音を耳にしながら、時間の止ったような目の前の海を眺め、いろいろな過去の事、歴史の事を想起した。


旅行の満足度
5.0
同行者
一人旅
交通手段
レンタカー JALグループ

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  • 海峡大橋の坂出サイドには大きな公園が出来ている。展望タワーは現在休業中。

    海峡大橋の坂出サイドには大きな公園が出来ている。展望タワーは現在休業中。

  • 海峡大橋は1兆円を超える巨費を投じて建設され、このような周辺施設も贅沢に作られている。

    海峡大橋は1兆円を超える巨費を投じて建設され、このような周辺施設も贅沢に作られている。

  • 大きな資料館、記念館も建設されている。

    大きな資料館、記念館も建設されている。

  • 中には数人の係の人がいるだけだ。

    中には数人の係の人がいるだけだ。

  • コロナ禍でどこの観光施設もばったりだ。

    コロナ禍でどこの観光施設もばったりだ。

  • ギリシャ風野外劇場の前から海を眺める。

    ギリシャ風野外劇場の前から海を眺める。

  • 備讃瀬戸。穏やかな海で、この地方の歴史文化を育んできた。

    備讃瀬戸。穏やかな海で、この地方の歴史文化を育んできた。

  • 海峡を横断する長大橋。

    海峡を横断する長大橋。

  • 殆ど誰もいない公園で、静かな時間を過ごすことができた。

    殆ど誰もいない公園で、静かな時間を過ごすことができた。

  • さてそろそろ引き返そう。

    さてそろそろ引き返そう。

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