デニス・テン回想紀行４〜デニスに会いに行く〜

2018/09/12 - 2018/09/19

2018年７月19日。長年応援していたカザフスタンのフィギュアスケーター、デニス・テンがこの世を去りました。

私にとってデニスは単なる大好きなスポーツ選手というだけではなく、私の人生に色々な可能性を与えてくれた人だと思っています。彼に興味を持ったことでカザフスタンに興味を持ち、その興味は中央アジアやCIS諸国全体へと広がっていき、ロシア語を学び、キルギスに留学し、アスタナ万博に現地スタッフとして関わることが出来ました。

彼は若く、この先スケーターを引退したとしてももっと大きな可能性も希望もあったと思います。それなのに、窃盗犯に刺殺され25歳で強制的に人生を終わらせられてしまいました。おそらく何年経っても私はこの事実を本当の意味で受け入れることはできないと思います。でも、彼に感謝を伝えたくて、現地へ飛ぶことにしました。

航空券の関係で、アスタナ往復の中にアルマトイ往復を追加する形で、アスタナからアスマトイに来ました。この日は現地の人と一緒にデニスが眠っている所へ行きます。


今回の旅程

９月12日　東京→大江戸温泉→
９月13日　→羽田→北京→アスタナ
９月14日　アスタナ→
９月15日　→アルマトイ
９月16日　アルマトイ　★いまここ
９月17日　アルマトイ→アスタナ
９月18日　アスタナ→
９月19日　→北京→成田

エリア アルマトイ(カザフスタン)

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 10万円 - 15万円
• 旅行の手配内容: 個別手配

アルマトイ初日はほとんど寝ないまま動き回ったから、部屋に戻るとシャワーも浴びずに寝落ちしてしまいました。朝7時ごろに目覚めたけど、ブログ書いたりなんやかんやしているうちにお昼近くに。遅めの朝ごはん代わりに、昨日NEDELKAでいただいたケーキを食べました。

アイジャンが来るまでの間に、お土産を買い出しへ。いつもラハットのチョコレートになってしまうので他のものをと思っていたところ、事件現場の近くにラクダ乳の専門店があると教えていただいたので歩いて行きます。

お店はこんなラクダが目印のSYDYKというところ。カザフスタン名物であるラクダ乳の発酵酒シュバットや、ラクダのチーズ、ラクダ乳を使ったスイーツ、ラクダ乳やシュバットを使った石鹸などが売られています。中にカフェもあります。

マンションに戻るとロビーでアイジャンと、もう一人同行する日本センター勤務の日本人の方が既に到着していました。まずはお墓に供えるお花を買いに行きます。

日本人の方はロシア語の専門家で、共通の知り合いが多いのでSNSで存在は知っていましたが、お会いするのは初めて。特に誰のファンというわけではないですがフィギュアスケートもお好きで、今年のロステレコム杯を観に行く予定とのことでした。今年のロステレコム、デニスがエントリーしていたのです。平昌で思うような成績が残せず、このまま引退するかと思っていたら今年も続行とわかって嬉しかったのに。現役選手を引退する前に人生を引退することになるなんて…。

こちらでは献花の花は偶数本とのことなので、テンにかけてバラを10本、今回来ることが出来なかった方の分を含めて2つ作成して貰いました。

墓地はアルマトイ郊外のドゥルジバ村にあると報道されていました。すごく遠くて分かりづらいところにあると聞いていましたが、思っていたほどではありませんでした。後で調べたてみると行こうと思えば公共交通機関でも1時間半くらいで行けます。広い敷地内で、イスラム教のエリアとキリスト教のエリアに分かれていて、デニスのお墓はキリスト教のエリアにあります(ただ、墓地入ってからは場所分かる人が一緒でないと見つけるの大変だと思います)。

墓地の小径を歩いて行くと、大きな花輪に囲まれて一段と目立つお墓がありました。最近亡くなられた方なのだろう。と、その隣に、負けないくらいたくさんの花輪に囲まれたお墓があり、それがデニスのお墓でした。

おじいさま、おばあさまの隣で眠っているデニスの墓石はそのお2人に比べるとずっと小さかったです。ソチ五輪の時の写真のプレートが取り付けられ、鉄製の墓石は既に錆びて変色している部分もありました。そんな即席感が、本当に急逝だったことをうかがわせました。

また必ず来るから、また会おうね、そう言いながらお花を供えました。私たちの後に来たロシア人家族のおばあさまがハグしてくれました。「デニスはあなたが来てくれて喜んでると思う。きっと今空の上から見ているわ。どうかこれからのあなたに幸せが訪れますよう」と言われて号泣してしまいました。

アイジャンと日本人の方が、枯れてしまったお花を処分しに行くと言って、暫く私を1人にしてくれました。その下にデニスが眠っている土に手を当てながら、とりとめもなく話しかけていました。

２人が戻ってきて、みんなで、また来るね、パカー(またね)、と言って、その場を後にしました。

※なお墓石に関してはオフィシャルアウントを通じて表明されたご遺族の意向により、掲載を控えさせていただきます。

日本センター行きつけのカフェで遅めの昼食。カザフスタンではお墓参りのあとは亡くなった人の代わりに食事をするのだそうです。

ラグマンをいただきます。アイジャンから、デニスはカザフの伝統料理ベシュバルマックと、馬の腸詰カズィが大好きで、でもカロリーが高いから現役時代はあまり食べれなかったという話を聞いたので、代わりに食べようかなと思ったんですが、アイジャンに「ここのベシュバルマックは美味しくない。うちで作るものの方がずっと美味しいから」と言われたので次回に持ち越すことにしました。

それからバウルサック。

そして焼きマンティ。

と、やっぱりカザフスタンの料理は肉と油と炭水化物でできています。現役選手を終えたら我慢してたぶん食べたかっただろうな。デニスには実はかなりふくよかなお兄さんがいるので、引退後暫くしてから「あら随分ぽっちゃりしちゃったな～」なんて未来もあったかもしれないのに、もうそんな日も来ないんですね。

店内ではカザフ時間の午前中にあったゴロフキンの試合がありました。負けちゃったそうで、お墓に行く前２人は「デニスに良い報告ができない」とぼやいていました。デニスとゴロフキンは交流があり、葬儀の時もゴロフキンは参列していました。

日本人の方が今アルマトイ生活でハマっているのはサッカー観戦。ロシア駐在時代の推しの選手がまさに今アルマトイを拠点にするチーム・カイラットでプレーしているため、毎回応援に駆けつけているそうです。今日もこれからその試合だということで、スタジアムまで彼女を送って行くことに。

スタジアムの隣に、デニスの葬儀が行われたスポーツパレスがあります。デニスのショーの会場であり、去年はユニバでこことアルマトイアリーナを結ぶシャトルバスがあり、それ以外にもこの近くの店でご飯することが多かったのでこの5年間とても縁のある場所です。

アイジャンと私はメデウに向かいました。その途中に、デニスショーのオフィシャルホテルだったロイヤルチューリップがあります。

ロイヤル チューリップ アルマトイ ホテル ホテル

私はアルマトイでものすごい雨女で、着いた途端に土砂降りという経験を何度もしました。メデウも行くたびに豪雨か大雪。今回も最初の予報だと前後1週間中私のいる3日間だけ雨で、ああやはり…と思っていたのですが、今のところ天気に恵まれています。デニスは晴天をプレゼントしてくれたのかな…。

メデウ スケートリンク スタジアム・スポーツ観戦

メデウは標高が高くて寒いので、おきまりのカザフダウンを着ました。

マンションに帰ってきて、2日間お世話になったアイジャンとお別れ。次回はアイジャンの家に泊まって、彼女のホームリンクでスケートしようと約束しました。これからもこうしてカザフスタンとの縁は続いて行きます。

私はそれからもう一箇所、デニスゆかりの地を廻ることにしました。

出かけようとした時、花火が上がり始めました。デニスの追悼イベント的には谷間の時期(8月に展示会が行われ、この旅行の１週間後にデニスに関する舞台作品が上演される予定でした)に来てしまいましたが、今ここはアルマトイの日という周年祭の時期で、数々のイベントが行われています。

この噴水、デニスが幼い姪っ子ちゃんと遊んでいる動画投稿してたなあ。

目的地までパンフィロバ通りを歩きます。周年祭の飾りに食べ物の屋台、レストランのテラス席では生演奏が流れ、活気がありました。このオーシャンバスケットもデニスが食事しているのをSNSに投稿してたお店だそうです。デニスのおばあちゃんの家も、このお店も、事件現場も、みんな徒歩圏内です。デニスの行動範囲、やっぱりオシャレだなあ。でも本人はもうここを歩くことはないし、アルマトイのお祭り騒ぎも知らないんだ。

やってきたのはBurritoGoというブリトー屋で、デニスが最後の2ヶ月くらい入り浸っていた場所です。

サブウェイみたいな感じでベースメニューは決まっていますがお好みでカスタマイズできるようです。

デニスの死後に壁にこのイラストが描かれました。デニスと、デニスに関するもの、デニスの好きなものだそうです。

デニスのインスタの最後の投稿は、事件２日前にこのお店で友人たちと笑顔で写っている写真です。後の裁判で、事件当日、最後に食事したHEDONISTに行く前もここで仕事の打ち合わせをしていたことが明らかになっています。

席は8割がた埋まってましたが、運良くミニデニスの前が空いていて、デニスと向き合って座るような形になりました。でもここでは写真撮っただけ。遅めの昼食のラグマンが効いていて、お腹が空いてないんだ。だから持ち帰って、部屋で半分だけ食べて翌朝に持ち越すことにしました。

部屋に戻ってきて開封。ブリトー、すごいボリュームなんだけど具を豆腐にした(けっこういけます)ので案外食べれてしまい、残り2口くらいまでいってしまいました。その残り2口がどうしても入らなかったけど、無理はいけない。明日、また食べることにします。