2020/04/07 - 2020/04/07
18位(同エリア315件中)
かっちんさん
JR名松線(めいしょうせん)は、松阪駅と伊勢奥津(いせおきつ)を結ぶ43.5kmのローカル線です。
松阪を出発するとしばらく田園地帯を走り、家城(いえき)から急勾配・急カーブの続く山岳地帯に入り、終点伊勢奥津に到着します。
伊勢奥津は伊勢本街道の宿場町だったところで、この先に桜の名所「三多気の桜」が段々畑に佇んでいます。
名松線は、当初松阪と名張(なばり)を結ぶ計画でしたが、近鉄大阪線・山田線が別ルートで同区間を結んでおり、伊勢奥津から延伸する必要性がなくなりました。
現在は伊勢奥津から名張までは、三重交通バスが1日1本走っています。
平成21年(2009)10月の台風18号による風水害で名松線全線が全面運休となり、その後松阪~家城間が復旧し、家城~伊勢奥津間がバス代行となりました。
完全復旧が危ぶまれていましたが、沿線自治体の支援により平成28年(2016)3月、6年半ぶりに全線復旧となりました。
春になると桜の花が山あいを彩り、名松線の車窓から贅沢な気分で桜の花見ができます。
列車はJR東海になってから開発したローカル線用の気動車キハ11。朝の通学列車以外は1両で運転しています。
名松線には鉄道遺産と言うべき「SL給水塔」と「タブレットを用いた閉塞方式」を見ることができます。
終点の伊勢奥津駅には、かつてSLに水を補給していた「給水塔」がコンクリート製の架台の上に鉄製タンクが載せています。
現在は赤錆びたタンクにツタがまつわり、いにしえの風情を感じます。
名松線の信号保安システムである閉塞方式は、現在でも「票券閉塞式」と「スタフ閉塞式」が使われています。
閉塞区間の変わる家城(いえき)駅では、タブレットのキャリアを交換するため、駅員と運転士間の受け渡し風景が見られます。
キャリアとは円盤状の金属=タブレットや通票を入れた輪っかのことです。
今日は名松線を松阪から伊勢奥津まで往復し、車窓から桜の景色を眺め、伊勢奥津と伊勢鎌倉で下車して鉄道写真を撮ります。
三重県旅行中に首都圏を中心とした緊急事態宣言が出され、3密に十分注意して行動します。
<名松線の歴史>
JR名松線(めいしょうせん)は、もともと名張(なばり)と松阪を結ぶ計画だったので、両都市の頭文字をとって名松線と名付けられました。
昭和4~10年(1929~1935)に、松阪から伊勢奥津(いせおきつ)まで開業(43.5km)。
特に家城(いえき)~伊勢奥津間は急勾配と急曲線が多く、工事着手が遅れた経緯もあり、昭和8年に伊勢奥津から先の名張までを予定線に格下げされました。
また、昭和5年(1930)に参宮急行電鉄(現在の近鉄大阪線・山田線)が、別ルートで布引山地を「青山トンネル」で貫き、名張~伊勢中川~松阪間を開通させたことも、伊勢奥津~名張間延伸中止の理由になります。
国鉄時代の名松線は、赤字路線として特定地方交通線第2次廃止対象線区に選ばれていましたが、代替道路未整備のため廃止対象から除外され、JR東海に引き継がれます。
なお、旅行記は下記資料を参考にしました。
・東海農政局「世界かんがい施設遺産」
・三重県「君ヶ野ダム」
・観光三重「君ヶ野ダム公園」
・ウィキペディア「名松線」「閉塞(鉄道)」「JR東海キハ11形気動車」「伊勢奥津駅」
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- JRローカル 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
JR松阪駅
ここは三重県松阪市。松阪牛で有名なところ。
JR松阪駅は紀勢本線の途中駅であり、名松線の始発駅です。
また、近鉄山田線が乗り入れし、JRと近鉄の共同使用駅になっています。
これから乗車する名松線の列車が5番ホームに停車しています。 -
J名松線の路線図
名松線は松阪と伊勢奥津(いせおきつ)を結び、松阪駅から内陸部に入り、雲出川(くもずがわ)の渓流沿いを走るローカル線です。
松阪周辺は松阪市、伊勢八太(いせはった)から西側が津市になります。
近鉄大阪線・山田線が名松線の途中まで並行して走っています。 -
キハ11-304(松阪駅)
ローカル線用の気動車キハ11に乗車します。
1999年に新潟鐵工所で製造された暖地向けのキハ11改良車300番台です。 -
山あいの桜(伊勢八太付近)
松阪駅を13:09に出発し、田園風景の中を走っています。 -
カーブの先は落石注意(井関付近)
このあたりから雲出川沿いに走ります。 -
まもなく家城(いえき)駅
反対方向の松阪行きの列車がすでに到着しています。
ここで列車同士がタブレット交換のため、13分間停車します。 -
タブレットの受取り(家城駅)
家城駅の駅員が、松阪~家城間(閉塞区間)のタブレットを運転士から受け取ります。 -
タブレットの持ち運び(家城駅)
発車時間になると、反対列車にタブレットを渡しに行きます。 -
松阪行き列車にタブレットを渡します(家城駅)
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満開の桜並木(家城駅)
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伊勢奥津行き列車のタブレット(家城駅)
家城~伊勢奥津間のタブレットを受け取ります。
キャリア(わっか)の根元部分にある金属の穴の形が「四角」になっていて、家城~伊勢奥津間が通れる証です。
ちなみに松阪~家城間の穴の形は「三角」で識別しています。 -
雲出川に架かる橋梁(家城付近)
家城を出発してすぐ、枕木の並びが美しい橋を渡ります。 -
清流沿いの桜(家城付近)
この近くに南家城川口井水(みなみいえき かわぐち ゆすい)の頭首工があります。
南家城川口井水は、平安時代の1190年に開設され、雲出川を水源とした用水路で、農業用水、生活用水、防火用水など地域用水としての役割を果たしています。
「世界かんがい施設遺産」として登録されています。 -
線路沿いの桜(伊勢竹原付近)
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雲出川とヤナギの新緑(伊勢竹原付近)
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民家の庭を彩る桜(伊勢鎌倉付近)
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駅のまわりに咲く桜(伊勢鎌倉)
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伊勢鎌倉駅
のどかな雰囲気の駅なので、帰りに降りることにします。 -
花の楽園「伊勢鎌倉駅」
伊勢鎌倉駅を出発し振り返ったところ。 -
茶畑の中に佇む一本桜(伊勢鎌倉付近)
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次は伊勢奥津(車内の料金表示案内)
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まもなく終着駅「伊勢奥津駅」
このカーブを曲がれば終着駅です。
桜と背の高いSL給水塔が見えます。 -
ログハウス風の駅舎(伊勢奥津駅)
平成17年(2005)に駅構内南側に建てられた新駅舎で、八幡地区住民センターと兼用になっています。
改札口から駅前の町並みが見えます。
列車の折り返しまで35分あるので、SL給水塔の見学に行きます。 -
SL給水塔と鉄道施設跡(伊勢奥津駅)
かつてここに鉄道関係の施設があったのですね。 -
イチオシ
青空に映えるSL給水塔(伊勢奥津駅)
以前は線路が給水塔の下までのびていました。 -
イチオシ
終着駅を着飾る枝垂れ桜(伊勢奥津駅)
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赤やピンクの花に囲まれる名松線(伊勢奥津駅)
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ミツマタの花(比津駅前)
伊勢奥津駅から松阪行きで引き返し、隣の比津(ひつ)駅前のミツマタです。 -
雲出川沿いの桜並木(伊勢八知付近)
伊勢八知(いせやち)駅を過ぎると目の前に桜の群落。
顔を出している塔は、夏季期間に営業する「美杉リゾートファイアバレイウォーターパーク」で、ウォータースライダーなどのプールで遊べます。 -
「伊勢鎌倉駅」に到着
ここで列車を降り、鉄道写真を撮りに行きます。
集落が駅から離れており、牛山隆信氏の「秘境駅ランキング2020年度版」によれば、秘境度96位になっています。 -
イチオシ
桜咲く山間部を走る名松線(伊勢鎌倉駅)
乗ってきた列車をホームの端で見送ります。 -
駅を取り囲む「大島桜」(伊勢鎌倉駅) -
午後の光を浴びる「大島桜」(伊勢鎌倉駅)
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鉄橋を渡ったところは「桜の里」(伊勢鎌倉付近)
人が渡れる橋は近くにありません。 -
線路脇に咲く一本桜(伊勢鎌倉付近)
鉄道写真には絶好のポイントです。
でも、夕方になるにつれ、列車が木立の陰で暗くなるので、桜の近くまで行ってみます。
川を挟んだ向かいの場所なので、まずは渡れる橋を探します。 -
雲出川沿いの桜並木(伊勢鎌倉付近)
5分程歩き、人が渡れる橋を見つけました。 -
逆光に輝く桜(伊勢鎌倉付近)
ようやく対岸に渡り、一本桜へ向かっています。 -
一本桜の花吹雪(伊勢鎌倉付近)
一本桜に着き、列車を待つ間、花が風に吹き飛ばされて空を舞う景色に見とれています。 -
一本桜に近づいてくる列車(伊勢鎌倉付近)
列車の来る時間になり、シャッターを切っています。 -
イチオシ
名松線の一本桜(伊勢鎌倉付近)
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イチオシ
軽やかに過ぎ去っていくディーゼルカー(伊勢鎌倉付近)
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夕日の光を浴びるソメイヨシノ(伊勢鎌倉付近)
写真を無事撮り終え、駅に戻ります。 -
緑の杉林に映える桜の木(伊勢鎌倉付近)
このあたりは美杉町。杉林の綺麗なところです。 -
ピンクの枝垂れ桜(伊勢鎌倉付近)
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「飲んで乗る あなたは天国 家族は地獄」看板(伊勢鎌倉付近)
「あなたは天国」でなく地獄のような・・・ -
ホームからの眺めは杉林(伊勢鎌倉駅)
帰りの列車まで1時間ほどあるので、のんびりと景色を眺めます。 -
夕陽を浴びる「桜の里」(伊勢鎌倉駅から)
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扇形の樹木(伊勢鎌倉駅から)
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松阪行きの列車(伊勢鎌倉駅)
この列車に乗ります。 -
ガランとした車内
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君ヶ野ダム(伊勢竹原付近)
雲出川支流の八俣川を堰き止め、昭和47年(1972)に完成した「君ヶ野ダム」。
ダム上流に降った雨の洪水調節を行い、下流の雲出川の水位上昇を抑制し、下流域を洪水から守ります。
ダム湖畔には春に1500本の桜がダム湖に映り、観光スポットになっています。 -
奇岩の多い雲出川(伊勢竹原付近)
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列車を待つ駅員(家城駅)
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タブレットの受け渡し(家城駅)
伊勢奥津~家城間(閉塞区間)のタブレットを駅員に渡します。 -
イチオシ
タブレットの受け渡し作業(家城駅)
まもなくやって来る伊勢奥津行き列車にタブレットを渡すため預かっています。 -
反対列車の到着(家城駅)
駅員は先ほどのタブレットを伊勢奥津行き列車に渡し、松阪~家城間のタブレットを受け取りました。 -
松阪行きもタブレットを受け取り(家城駅)
キャリアの金属の穴の形が「三角」(松阪~家城間)であることを確認し出発します。 -
今日のお月様は「スーパームーン」(家城付近)
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夕暮れの風車と名松線(伊勢八太付近)
山の上に青山高原ウインドファームの風車60基が設置され、日本最大級の出力95,000KWを誇る風力発電所です。
中部電力グループのシーテックと津市、伊賀市が共同で運営しています。
今晩は東横イン伊勢松阪駅前に泊まり、部屋でコンビニ弁当を食べます。
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この旅行記へのコメント (2)
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- Akrさん 2020/05/01 22:01:41
- 素晴らしい風景。
- かっちんさま
こんばんは。Akrでございます。
久しぶりにコメントさせていただきました。
名松線、見事に復活しましたね。台風で不通になってからかなりの時間が経ったので、もしかしたらこのまま廃線になってしまうのでは?と思っていましたので復旧は嬉しいニュースでした。
沿線の風景がもう、最高です。
桜とのマッチングも良い感じですし。写真の構図も素晴らしいです。緩いカーブを描く伊勢鎌倉駅なんかは雰囲気がとってもいいですね。降りてみたくなりました。そしてタブレット。車両が国鉄型ならもっと良い雰囲気が出ますね。昔はローカル線に行けば、どこの駅でもキャリアを担いだ駅員さんを見かけたものです。とっても貴重です。でもキハ11って、私の年代ですと国鉄10系気動車のほうを連想してしまいます(笑)
先日、松阪駅を通った際に、名松線の文字を見つけていつかは乗りに来たいなと思ってた所にこの旅行記でしたので思わずコメントさせていただきました。
-Akr-
- かっちんさん からの返信 2020/05/02 10:22:41
- RE: 素晴らしい風景。
- Akrさま
こんにちは。
嬉しいコメントをいただき、ありがとうございます。
名松線は沿線住民、市、県も協力し、時間がかかりましたが復活させることができました。
三多気の桜を目的に訪れたのですが、名松線から見る車窓の桜が見事で鉄道写真が撮りたくなりました。
キャリアを担いだ駅員さんがいることを予想していなかったのですが、今でも残されており昔の思い出が浮かんできます。
機会があれば、ぜひ名松線を訪ねてください。
かっちん
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