2019/04/23 - 2019/04/23
75位(同エリア629件中)
ベームさん
杉花粉の季節が過ぎ、私の蟄居はようやく終わりました。その間に梅も桜も咲いて散っていきました。ここ何十年来お花見には無縁です。
さて今回は前回の田端に続き北区を歩きました。北区には観光名所が少ないと書きましたが、王子界隈はその一つでしょう。もっとも桜の時期の飛鳥山を除いて平生は観光客は多くないと思います。
文学的にも、坪内逍遥が「当世書生気質」で飛鳥山や音無川の畔の料理屋の事を書いているほかはあまり文学作品に登場していません。しかし日本の近代小説の嚆矢である「当世書生気質」の巻頭を飾ったということは自慢しても良いのではないか。
写真を整理していると意外に枚数が多いので3回に分けました。
写真は名主の滝公園の男滝。
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その1で周った所。
王子駅から右上の装束稲荷神社、北トピアの横で線路を潜り王子稲荷神社、名主の滝公園、王子神社と周りました。 -
スタートはJR京浜東北線王子駅。9時40分ころ。
脚に不安があるので痙攣予防の薬を飲み、ふくらはぎにサポーターを巻き出発です。 -
駅のホームの横は飛鳥山公園です。
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王子駅前風景。
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まず目指すのは駅前にある商業ビル、サンスクエア。
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この建物の足もとに記念碑があります。
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洋紙発祥の地の碑です。
明治6年、渋沢栄一の主導のもとこの地に日本最初の製紙工場「抄紙会社」が造られたのです。明治26年王子製紙と改称、今の王子製紙、日本製紙のもととなった会社です。
明治の初め、近代的な製紙工場は東京名所の一つともなりました。
紙の歴史は飛鳥山公園にある紙の博物館でたっぷり知ることが出来ます。あとで訪ねます。 -
戦後過度経済力集中排除法により王子製紙は苫小牧、本州、十条製紙の3社に分割されます。王子工場は十条製紙が引き継ぎました。昭和28年、創立80周年記念として十条製紙がこの碑を建てました。
その後苫小牧と本州製紙が合併し今の王子製紙、十条製紙が今の日本製紙です。 -
明治時代の東京名所図会に飛鳥山公園と製紙工場が描かれています。
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飛鳥山公園で踊る花見客と製紙工場。
製紙工場は名所の一つでした。 -
北本通りを少し歩き右に入ると、
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装束(しょうぞく)稲荷神社があります。
王子の狐物語の場所です。 -
昔この辺りは一面の田畑で、その中に大きな榎の木が立っていました。毎年大晦日の夜に関東各地から狐の代表が集まってきてこの榎の下で衣裳を改めて狐火を灯しながら王子稲荷神社に参詣したという言い伝えがあり、榎は装束榎と呼ばれました。
農民は狐の灯す火影で明年の豊凶を占ったそうです。 -
昭和4年、道路拡張のため榎は切り倒され、装束榎の碑がこの場所に移され装束稲荷神社が創られました。
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玉を咥える狛狐。
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鍵を咥えたスマートな狛狐。
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王子の狐の歌碑。大田蜀山人。
「いざあけん えび屋扇屋とざすとも 王子の狐かぎをくわえて」
えび屋、扇屋は王子稲荷神社の参道にあった料理屋だと思います。 -
装束榎の碑と榎。勿論元の榎とは違います。
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歌川広重「王子装束ゑの木 大晦日の狐火」。名所江戸百景、1857年。
白く浮き出た狐が幻想的です。右奥に見える木立は王子稲荷神社でしょう。 -
狐の行列。
広重の浮世絵をもとに平成5年から地元の商店の人たちが始めたのが王子狐の行列です。
除夜の鐘と共に人が狐に化けて紙の裃や狐のお面で装束を整え、提灯の灯をかざし王子稲荷神社に行列を組んで参詣します。来年の豊作と火防、商売繁盛を祈願するのです。 -
向かいのヤマワというお店ではきつねグッズが売られています。もともとは陶器類を商う老舗だそうです。
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ウインドー。
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狐のお面がウインドーを飾っていました。。
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北とぴあ。
北区の産業発展と区民の文化水準の高揚を目的とする施設。
各種ホール、会議室、研修室、多目的ルームなど。 -
地下道でJRの線路を潜ります。上を走るのは新幹線。
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地下道を出ると王子駅から続く森下通り、岸根町Ⅰ丁目あたりです。
中央工学校の校舎が集まっています。 -
王子稲荷神社に向かいます。
正門(神門)はこの先ですが、いなり幼稚園の所で左の坂道へ曲がれ、との標識がありました。正門は平日はクローズだそうです。 -
いなり坂。
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それで神社には横から入ることになります。横からといっても立派な鳥居です。
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王子稲荷神社は平安時代に遡る古社で、当初は岸稲荷と称した。1060年源頼義が奥州追討(前9年の役)のさいここに祈願し、関東稲荷総司と崇めた。
1323年、この地域一帯の領主の豊島氏が紀州の熊野神社を勧請し王子神社を祀ったところから地名が王子となり、岸稲荷も王子稲荷神社と改称。 -
狛狐。賢そうでもあり、ユーモラスでもあり。
江戸時代徳川家の祈願所として代々の将軍の崇敬篤かった。今の社殿は文政5年(1822年)11代将軍徳川家斉の寄進によるものです。
神仏習合時代の別当寺は隣にある金輪寺でした。 -
神楽殿。
社殿修復中で無粋なトラックが邪魔をして本殿の写真が撮れません。 -
史料館。
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境内の燈籠。
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手水鉢。
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拝殿。
八棟造りというそうです。 -
拝殿は文政5年、11代将軍徳川家斉寄進のものです。
本殿は戦後の再建。 -
極彩色の華麗な社殿は江戸文化の最高潮、文化文政時代の粋を伝えています。
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こういう飾をなんと言うのでしょう。
ある人に教えて頂きました。獅子頭というそうです。 -
眩い金色です。
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狛犬もいます。。
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神門から上ってくる石段。
神門は平日は閉鎖されています。 -
社殿の奥にあります。
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途中牡丹と小さな狛狐。
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毎年大晦日の夜関東の狐が近くの榎の下に集まり、衣裳を着かえて王子稲荷神社に参詣したという狐の行列のほか、狐にちなむ伝説はいろいろありますが、料理屋と狐を舞台にして人を化かすと言われた狐が逆に人に化かされる話、落語「王子の狐」もその一つです。
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本宮です。
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本宮から奥に続く鳥居。
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鳥居の奥に社があります。
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御石様といわれます。
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御石様。
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お石様を持ち上げ、思ったより軽く感じたら願い事は叶いやすく、重く感じたら叶いにくいそうです。
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小さな狐が一杯供えられています。
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願い事がビッシリ書かれています。あまり幾つも欲張らないように。
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御石様/おもかる石。
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狐も供えず何も念じずに持ち上げようとしましたがビクともしません。しょせん不信心者には無縁です。
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隣りに亀山稲荷神社、嬉野森稲荷神社、北村稲荷神社3社の合祀殿。
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最後、一段高い所に御穴様といわれる社がありました。
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御穴様。
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これが狐の穴ですか。最近パワースポットばやりですがここもそうだそうです。
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王子稲荷神社は火防(ひぶせ)のご利益があるとしても知られています。
火事の多かった江戸時代、高く舞い上がる凧は風を切るという処から火事を防ぐお守りとされました。
2月の初午の日には凧市が開かれ、「火防守護の凧守」が授与されます。 -
もと来たいなり坂を戻り森下通りに出ると幼稚園の先に神門があります。
平日はクローズ。平日は併営の幼稚園の運動場になっているので参詣者を通さないのです。どちらが本業でどちらが大切なのか。 -
いまはどこの寺社でも幼稚園経営など商売熱心です。信者のお賽銭よりずっと儲かるのでしょう。
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門の横に社宝の柴田是真(ぜしん)作「額面著色鬼女図(がくめんちゃくしょくきじょず)」の説明があります。
謡曲「羅生門」を題材にしたもので、源頼光四天王の一人、渡辺綱(わたなべのつな)が羅生門に住む鬼の腕を切り落とした。のち鬼は綱の伯母に化けて現われ綱から切り落とされた腕を奪い返した。とたんに伯母は鬼の姿に戻り地をけって空に舞い上がり逃げ去った、という場面です。 -
1840年天保の改革時、当時の砂糖問屋組合が幕府に取り上げられた商権(腕)を取り戻そうとして画家柴田是真に依頼し王子稲荷神社に奉納したものです。
国認定重要美術品に指定されています。
縦190㎝、横245㎝の大きな絵馬だそうです。
正月三が日と2月の初午の日に公開されます。 -
北区のホームページより。
まさに鬼気迫るものがあります。 -
神門。
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王子稲荷神社の神門のすぐ先に王子山金輪寺(きんりんじ)があります。
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さかのぼれば平安時代、源義家が奥州前九年の役で勝利し、帰途甲冑を奉納したとされる古刹。
明治政府の神仏分離政策により今は寂れていますが、それまでは王子稲荷神社と王子神社の別当寺として盛んでした。 -
弘法太子像。
真言宗の寺です。 -
本堂。
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江戸時代、王子村の名主で名主の滝の持ち主だった畑野孫八の墓があります。
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古い板碑。
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庚申塔。
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その先に緑が茂る一画があります。
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名主の滝(なぬしのたき)公園です。
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入口の薬医門。
ここから入りましたが正門ではありません。正門はもっと先です。 -
安政年間(1854~1860)に王子村の名主畑野孫八が自邸に滝を引き樹木を植えて開放したのが始まり。その後所有者も変わりながら公開され続けましたが戦災により焼失。ようやく昭和35年都の公園として再開されました。
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左下薬医門。左上に女滝、独鈷の滝。右奥に男滝。
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武蔵野台地の突端である王子近辺には湧出する滝が多く、「王子七滝」と呼ばれましたが、今残るのは名主の滝のみです。
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公園内は鬱蒼と草木が茂り、斜面を巧みに利用して自然の風景を取り入れた回遊式庭園です。街なかの公園としては珍しいほど静かな憩いの場所です。
王子稲荷神社、名主の滝公園とも坪内逍遥の「当世書生気質」に出てきます。 -
茶室。
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シャガの盛りでした。
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東屋。
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古木。
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足もとの小さな燈籠。
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都内とは思えない幽谷の趣があります。
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小さな滝がありました。
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湧玉(ゆうぎょく)の滝です。
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溪のせせらぎ。
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流れを渡る木橋も所々に。
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案内図の右端、男滝まで来ました。
左下薬医門、左上女滝、独鈷の滝。中央に湧玉の滝。右上男滝。右下正門、管理事務所。 -
男滝。
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落差8m。
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残念ながら湧水ではなく、地下水をポンプでくみ上げて落しています。
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それでも近づくと迫力があります。
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緑にむせるよう。
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名主の滝老人いこいの家、名主の滝公園管理事務所です。
先心亭、緑陰亭などの集会施設があります。 -
ここが正門になるのか。
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茶室の入り口。
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来た道と溪の流れの反対側を薬医門の方に戻りました。
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独鈷(どっこ)の滝です。
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湧水は枯れてしまったのか水は流れていません。
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独鈷の滝。
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続いて女滝です。
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女滝。
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これも枯れています。
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溪にかかる橋。
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同。
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瓦が埋め込まれた道。
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外に出ました。公園の周りの道。
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茶室。
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森下通りを王子駅、王子神社の方に戻ります。
岸町ふれあい館。
岸町の名も昔ここらは水辺だったからです。 -
通り沿いに石鍋商店というお店があります。
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明治20年創業の久壽餅/くずもちの老舗です。
くずもち、あんみつ類、ところてん、赤飯などを扱っています。製法は明治時代より変わっていないそうです。 -
王子神社から王子稲荷神社にかけてこの辺り料理屋、水茶屋で賑わったことが書かれています。
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店内、写真を写してもいいとのことでしたので。
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狐のお面。
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メニューに赤飯とあります。丁度昼時だったので食べました。もちもちしていて美味しかったです。小豆でなく特別の備中ささげ(インゲン豆の一種)を使用しているそうです。おみおつけが付いて580円。
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土産に買いました。650円。
食事中にも次々とお客があり買い求めていました。有名なのでしょう。 -
通りの店のシャッターにも狐の絵。この町はまさにお狐様々です。
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王子神社に来ました。
本郷通り側が正面ですが音無親水公園からも入れます。 -
創建時は不明ですが、源義家が11世紀中頃、奥州征伐/前九年の役の折戦勝を当社に祈願したという伝説がある。
1323年、この地の領主豊島氏が紀州熊野3社の若一王子(にゃくいちおうじ)を勧請し改めて王子神社を創った。王子の地名の由来です。 -
東京十社の一つです。私が行ったことがあるのは根津神社、富岡八幡宮と今回の王子神社だけです。
江戸時代に入り徳川将軍の崇敬篤く、将軍家祈願所となる。三代家光は新たな社殿を造営し、林羅山に命じて「若一王子縁起」絵巻を作らせ当社に寄進している。 -
王子神社由来。
別当寺は江戸時代末まで王子稲荷神社とおなじく金輪寺でした。 -
「若一王子縁起」絵巻。摸本。
三代将軍家光が林羅山に命じ作らせ奉納した。実物は飛鳥山公園にある紙の博物館にあります。 -
手水舎。
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権現造りの拝殿。
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先の大戦で焼失し、昭和39年、57年の2度にわたって再建された。
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朱を含んだ狛犬。
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同。
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境内の隅に末社の関神社があります。
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蝉丸法師、姉の逆髪姫を祭神とし、理容業関係に信仰されている全国でも珍しい「髪」の祖神です。
戦災で焼失し、昭和34年再建。 -
逆毛で悩む姉の逆髪姫のため蝉丸は鬘やかもじを考案した、として髪の毛の神とされています。
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髪の毛を扱うのを業とする人たちの信仰が篤いようです。
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こういう業界団体もあるのですね。
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これは床屋さん。
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毛塚。
毛髪報恩と供養のため。 -
拝殿前のクスノキの巨木。
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境内は巨木に取り囲まれているといった感じです。
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王子神社のイチョウ。都指定天然記念物。
音無川左岸の肩の部分にそびえる大イチョウです。幹回り5.2m、高さ24.2m。樹齢600年と推定される。
音無親水公園から石段を上って来た天辺に立っています。
その1はここまで、石段を降りて音無親水公園に行きます。
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この旅行記へのコメント (2)
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- hide-bachさん 2019/04/30 12:01:49
- 獅子頭
- 我が家から近いので何時でも行けると、40年も経ってしまいました。
王子の狐稲荷神社、
詳しくご紹介頂き有難うございました。
今度こそ、本気になって訪ねて見ます。
旧中山道の日本橋から二番目の一里塚の浮世絵に、
「ここからおうじ」の案内標柱があり、いつかは辿って見たいと思って居ました。
話が飛びますが、稲荷社の柱の両脇にある黄金色の獅子の頭の飾り、
(何て言うのでしょう)とありましたが、
単に「獅子頭」の言うようですよ。
間違っていたらごめんなさい。
- ベームさん からの返信 2019/05/03 17:11:56
- Re: 獅子頭
- hideーbachさん、
メッセージいただき有難うございます。うっかりしてお返事遅れ申し訳ありません。
王子稲荷神社のお近くにお住まいとは素晴らしいですね。そういう歴史のある処に住んでみたいものです。身近なところに疎遠になるのはよくあることですね。
寺社の柱の飾り、教えて頂き有難うございました。獅子頭と言うのですか、一つ知識が増えました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。 ベーム
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