2019/03/08 - 2019/03/10
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鯨の味噌汁さん
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3月8日、金曜。
ハノイには前夜遅くに入った。
朝飯を食ってすぐ、市の西部にあるミーディン・バスターミナルまでタクシー。ここからサパ行きのバスが出ている。
昨年の春、昆明からハノイまでの旅で、国境に近いサパに滞在した。
あの町に、もう一回行ってみようと思う。
とにもかくにも、あの棚田はすごかった。
そのあとのことは…行ってから考えよう。
とりあえず、11日までにハノイに戻ってくれば、成田へのヒコーキには乗れるのだ。
-
チケットを買ってバスに乗り込もうとすると、若いベトナム人カップルに声をかけられた。
男の方が日本語をあやつる。日本に留学してて、3月卒業したばかりだという。
「埼玉に住んでました」
ワシも埼玉よ。(普段は「東京から来ました」ゆうてるけどな!)
「武蔵浦和です」
おんなじ駅だぞ。この世間の狭さっていったい。
「彼女はパリに留学してました」
彼女は色白細身のベトナム美人。ちょっと上を向いた鼻が可愛らしい。
なるほどー。地球儀をくるって回すくらいの遠距離恋愛だったのネ。サパで、久しぶりにお泊りデートかぁ。
今夜、頑張っちゃうんだろうなぁ。(→オヤジな感想)
だがしかし。
6時間かけてサパにたどり着くと、天からしたたり落ちるような霧雨の世界だった。気温9度。
しまった。サパは標高1600メートルだった。(気付くの遅いぞ)
重くじっとりした、コンデンスミルクみたいな霧だ。
田んぼどころか、通りの向こうも見えんぞい。観光どころではない。 -
ふたりと別れ、ホテルへ向かう。
去年は町中のホテルに飛び込んで、窓のない部屋をあてがわれたんで、今回は町外れに「全室マウンテンビューのホテル」を予約していた。
坂道を上り下りしてたどり着くと、霧の中、じっとり濡れた洋館がポツンと建っていた。
フロントにはベトナムの団体さんが到着したところだった。
宿泊客はワシだけじゃじゃないようだ。
案内された部屋は最上階のマウンテンビューだけど、窓からはトーゼンながら、霧しか見えない。まぁ霧はホテルのせいじゃねいけどね。
がっかりしつつシャワーを浴び、一階のレストランで食事を取ろうとしたら、
「オーダーしてから40分いただきます」
どうやら、近所の食堂からデリバリしてるらしい。 -
諦めて、町への坂道を登っていく。坂道の途中で、籠に押し込まれた黒豚が、かなしげに鳴いていた。
ぶひょ、ぶひょ、ぶひょひょひょひょーーーーー。
霧の中に悲鳴がコダマし、なぜだかシミジミする鯨である。
メインの通りにたどり着き、でかいホテルの入口に
「spa and massage」
なんて看板を見つける。
サパはリゾートの建てつけなんで、棚田トレッキングだけでなく、この手の店もいっぱいある。
霧雨でめっちゃ寒いし、この際、風呂に入ってマッサージってのもいいかもしれん。
とゆうわけで店に闖入し「サウナ&マッサージ100分コース」をお願いする。50万ドン、2500円。
すぐに部屋に案内される。カーテンで仕切られた半個室で、手前にベッド、奥に風呂桶とサウナ施設がある。 -
サウナは、昔の「トルコ風呂」にあったような箱型だ。(→行ったことないけど)
服を脱ぎ脱ぎし、フタを明け、中の椅子にすわる。
でもってフタを閉じると、首だけが上に出て、たいへん間抜けな格好になる。
…ほとんどさらし首だなこれは。これで横に高札でも立てて
「この者、強盗により打ち首」
なんて書かれたら本格的だなー。
…などと薄目を開け、無念の形相になって妄想していたら、年のころなら30、小柄なお姉さんが入ってきたので、あわててフツーの顔に戻す。 -
お姉さん、サパ出身でタイ系の少数民族だそうな。色白で小股の切れ上がった、いい感じの方である。
最初にオイルをたっぷり塗って、ゴシゴシこする。でもって筋肉なんぞにもしっかリ指を入れてくる。
痛い痛い、ふくらはぎなんぞを攻められるとマジ痛いんですけど。
ぶひょ、ぶひょ、ぶひょひょひょひょーーーーー。
先ほどの黒豚のココロがよくわかる。
そもそも、ワシなんて脂ぎってるからオイルはいらないんじゃないか。
これってホントに気持ちいいのかなぁ。
どっちかってゆうと肌がベタベタして気持ち悪いんですけど。
ハマムをイメージしてたんだけど、全然違う。
あれはイスラム方面のフロで、東南アジアってエステなんだな。ハマムのほうがよかったよー。
それでもけっこうリラックスできたのか、ホテルに帰ってビールを飲んだら、ストンと眠りに落ちた。
よって、それなりの効果はあったと思われる。 -
3月9日、土曜。サパ2日目。
今日も濃い霧雨。肌寒い。去年は晴れ間があって、棚田までバイクツアーできたのに、ついてない。
こんな天気でも白人客はどんどんトレッキングに出て行くけど、ワシは寒い中歩き回るのはまっぴら御免である。
とゆうわけで午前中はホテルでごろごろし、明日以降の旅程を検討する。
このままバスでハノイに帰るのも芸がない。(別に芸を磨くために旅してるわけじゃないけど)
地図を見ると、300キロほど南、ラオスの国境近くにディエンビエンフーとゆう町がある。
地球の歩き方には「対仏独立戦争の激戦地」とある。
小さいながらも空港もある。調べたら、1日2便、ハノイに飛んでいる。
つまりそこまで行けば、空路でハノイに戻れるわけか。
んーと、じゃあ行ってみるか。 -
午後、霧雨をついて、町のインフォメーションまで歩き、ディエンビエンフー行きのバスを調べる。
すると、バスは1日3便で、一番早いのが午前8時発だった。あとは夜行。おおむね8時間だという。
景色を見たいから夜行はナシだな。
8時の便に乗れば、暗くなる前にホテルに入れるだろう。夕方から町歩きをすれば良い。
とゆうわけで。
明日のディエンビエンフー行きのバスをホテルのフロントに依頼。
さらにあさって・ディエンビエンフーからハノイの航空券をネットで予約する。
写真はインフォメーションに張り出されていたバス時刻表。
ディエンビエンフー行は8:00、18:00、19:00、トラベルタイムは8時間、とある。
意外に各方面へのバスがあるんだね。 -
残りの行程が決まったんで、気分が楽になり、珍しく夜の町にぶらり出かける。
午後9時を回ってもサパのメインストリートは観光客でいっぱいだ。国内と海外が半々くらいか。
坂道が多い上に、通りが曲がりくねっている。おまけに霧が濃い。
ぼうっと歩いてたら帰れなくなるんで、角を曲がるたびに目印としてパンくずを落としていく。(→ウソ)
すると、なんだか夜の草津温泉を歩いてる気分になる。あそこも霧の多い町だ。
この通りをまっすぐ行ったら湯畑に出るんじゃないのか、なんて妄想が頭をよぎる。(そんなこと考えながら歩くから迷うんだよ) -
イチオシ
霧の中、道端に少数民族の子供達がお土産を売っている。それを観光客が手にとって見る。
子供達の母親は、少し離れたところから子供の商売を心配そうに見ている。
お土産は子供の方が売れるのだ。土曜夜、週に一度の書き入れ時。
昼間はガラガラだったマッサージ店、スポーツ洋品店、レストラン、どこも満員だった。
観光客に混じって、民族衣装のお母さんたちもぞろぞろ歩いてる。
平日は山で田んぼをやりながら刺繍をし、週末になるとカゴを背負ってサパまで歩き、お土産や野菜を売るんだろうな。 -
表通りには観光客向けのレストランが並んでいる。この旅に出てから、まともなレストランに入っていない。
中の一軒にぶらりと入り、生春巻きと野菜炒めをオーダーする。
すると、春巻きは白人の「マイ・グレート・サン」みたいなのが6本、野菜炒めも向こう側が見えないくらいの山盛りで出てきた。
こらこら。一人でどうやってこれを食えとゆうのだ。
かなり頑張ったけど、半分以上残してしまった。
一人旅のレストランはキビシー。だから屋台に行っちゃうんだけど。 -
霧の中、ホテルに帰り、ベッドにもぐりこむ。
そのままウトウトしていると、頭の上で、とつじょ、サンボマスターの山口くんがシャウトした。
「世界はそれを、ゲリと呼ぶんだぜーーーーー!!!」
…それが真夜中のライブのオープニングだった。
直後、ものすごーーーい勢いで、わが消化器官が蠕動し、華々しい16ビート。
間一髪でトイレに飛び込む。
おおおおおおお、これは。メコン源流の濁流にして激流ではないか。
たいへんたいへん。
どうやら生春巻が大ヒットしたらしい。
さいわいにして痛みはない。
だがしかし、括約筋を常に活躍させていないと、たちまちにしてメコン源流の濁流にして激流がうずまく。
クシャミなどが大変危険である。
鼻をかむなんてゆう行為も、油断できない。
のみならず、単にオシッコをする、とゆう際も、細心の注意を必要とする。
万止むを得ず、旅の後半は、おぱんつの中に、トイレットペーパーをたたみ、あてがうことにした。
これで「多い日も安心」なのであった。 -
3月10日、日曜。
今日は山道をディエンビエンフーまで300キロ、8時間の長丁場だ。
ホテルまで送迎用のクルマがやってきて、市場の横で降ろされる。
乗客はわずかに4人。ワシ以外はベトナム人。ツーリストではなく地元組だった。 -
サパを出たバスは、山裾を巻きながら、ゆっくりと高度を上げていく。
時々霧が晴れて、ぎょっとするほど高いところに山塊が見え隠れする。ベトナム最高峰、ファンシーパンだろう。
今はロープウェイで頂上までいけるらしい。
遠くの山肌に村も見える。朝市から帰るらしい親子連れが歩いている。 -
峠を越えると、クルマは長い坂道を、雲の中に沈むように下っていく。ときおり見える棚田が美しい。
遠くの山は高く、いくえにも連なり、そのぶん谷は深い。山肌に削られた一本道が、どこまでも続いている。
これが東南アジア最奥の風景なんだ、と思う。
あちこちで土砂崩れが起こっていて、その度に片側交互通行になる。舗装はされているが道路にかなりの凹凸があり、クルマは容赦なく揺れた。
ワシの前に座っていた若いカップルがすぐにダウンし、ゲーゲー始まる。
いっぽうのワシは、やんごとなき事情により、朝からミネラルウォーターを少量摂っただけで、胃の中はからっぽだ。
要は括約筋を緩めなければいいのだ。がんばれワシの括約筋。 -
高度を下げ、かつ南下するわけだから、気温はぐんぐん上がっていく。2時間ばかり走ると、もう暑くなってきた。
峠を越え、ダム湖を通り過ぎたところで昼食休憩になった。
そろりとバスを降り、食堂には向かわず、あたりをウロウロする。なんにもない、街道沿いの村の食堂。
ベトナム式の盆栽の横に、わんこがいた。東南アジアによくいる、毛の短いタイプではなく、モコモコで毛色も日本犬に近い。
そっと手を出すと、おとなしくなでられる。旅人に慣れているんだろう。その横では、お母さんが赤ちゃんにおっぱいをあげていた。 -
やがて、周囲がバナナとパイナップル畑になる。
田んぼが川沿いに広がり始め、見事な水田になる。エチゴの山里の風景とそっくりだな、と思う。
ちょうど田植えが終わったころの、静かでこのましい田園風景だ。 -
午後3時半、ディエンビエンフー着。なんとか黄門様は持ちこたえたが、ケツ付近の筋肉が痛い。
バスターミナルの前に建つ安ホテルにチェックインし、夕方を待って町に出る。
川に沿って開けた小さな町だ。もうちょっと南下すると、ラオス国境。バスも出ている。
行ってみたい気もするけど、今回はここまでにしよう。
旅に出ると、どうしても「もう一ヶ所」と思っちゃう。
だがしかし、帰国当日に空港の町に着くスケジュールを組むと、アクシデントが一回あったらアウトだ。前科もあるし。 -
イチオシ
町のあちこちに戦車や戦闘機の残骸が展示されている。
ディエンビエンフーの戦いは1954年。ワシの生まれる5年前だ。
ここで破れたフランスは、南シナ海に蹴り落とされ、ベトナムから出て行った。
次にやってきたアメリカも、やっぱり南シナ海に蹴り落とされ、ベトナムから出て行った。
ベトナム人はよく自慢するそうだ。
「中国とは2000年、フランスとは100年、アメリカとは10年戦って、全部最後には勝った」 -
川沿いの市場をのぞいてみる。
野菜も果物も魚も、赤土の地面の色を映すように光っていた。
売っているのは少数民族のおばちゃんたちだ。
魚屋にはエビやウナギがピチピチはねていた。
野菜も果物も、種類が多い。キノコもある。
ある屋台では、竹に挟んだ川魚を薪で焼いていた。
ショーユかけて食ったらうまいだろうなぁ。
このものなりのいい土地が、長い戦争を支えていたんだろう。 -
夕暮れが近づいてきた。
町の中央の丘まで歩いてみる。
長い階段の先に、戦勝記念像が建っていた。
旗を振っている兵士は、敵の塹壕に乗り込んだ旗手兵がモデルだという。 -
そういえば、もとになった写真が、ホテルのロビーに掲出されていた。
同じ写真を町の中でも見かける。
ベトナムの人にとって、記念の一枚なんだろう。 -
イチオシ
激戦の跡は、今、市民の憩いの場になっている。
体操をしてるおじいちゃんもいる。デートらしい少年と少女もいる。
中学生らしい女の子たちが、学校の課題なのか、お客さんにアンケートを取っている。ワシも話しかけられたけど、日本人だと告げると、後ずさりされてしまう。まぁ顔が怖いからしょうがないけどな。
高台から沈む夕日をゆっくりと眺め、目に焼き付ける。ここが旅の最後の土地だ。
さて、町に降りて、ビールでも飲もうか。
そして無事に日本に帰ろう。
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この旅行記へのコメント (2)
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- tabinakanotaekoさん 2019/08/09 23:44:06
- サパは霧でしたか
- 鯨さん、
ちょっとご無沙汰している間にポーランドや、ここは一体どこ?という国にも行っておられますね。鯨さんのブログは一本一本ゆっくり読むのが味わいですから、ボツボツ拝見していきます。こういう場合は自分が知っている場所のを見たいと思う物ですね。サパは私もハノイから深夜列車で行きました。もう一度、行きたい場所の一位です。
鯨さんはサパが二度目なんですね。せっかくの窓付きお部屋なのに霧が深くて残念無念でしたね。三度目もありえますか?
taeko
- 鯨の味噌汁さん からの返信 2019/08/12 15:23:57
- Re: サパは霧でしたか
- taekoさん、おあつうございます。
サパ、寒いし雨だし景色見えないし、散々でございました。でもあそこらへんは全体に好きなんで、通過することがあったら途中下車してまた寄るんじゃないかと。
陽気が良ければのんびり滞在したい土地です。食べ物もおいしいしー。でもマッサージはもういいや(笑)。
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