2019/01/30 - 2019/01/30
126位(同エリア531件中)
motogenさん
- motogenさんTOP
- 旅行記391冊
- クチコミ1件
- Q&A回答3件
- 382,076アクセス
- フォロワー45人
眼下に広大な茶園、かなたに大井川や南アルプスや富士山が見渡せる粟ヶ岳は、標高532m。
掛川市の北部にあり、ハイキングの名所となっていて、デートコースの一つにもなっていた。
婚約時代の女房とドライブしたこともあり、その前にはお見合いした女性とハイキングしたこともあって、思い出多き山なのに、何があって、どうなっていたなんてことは、なぜか忘却のかなたに飛んでいってしまっている。
この日は、冬にはめずらしく穏やかな日だった。
女房は朝から用事があってお出かけ。
退屈しのぎに、一人この粟ヶ岳に出掛けてみようと思い立った。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車 徒歩
PR
-
今回のスタート地点は,国1バイパスの八坂インターで、
ここを降りるところから話が始まります。
まずは、粟ヶ岳山頂までの動画で、どんな場所なのかご覧ください。
https://youtu.be/-PtBPAjO7d4 -
駐車場に到着。
車の窓からチラリと目に入った大井川流域の景色を眺める。
「こんなに高い場所まで登ってきたんだ・・」と感激するが、
「これを、昔、見たんだろうか?」
過去の記憶は一向に戻らない。 -
見上げれば巨大なアンテナがあるが、あの時もあったのかなあ?
と、ぼう然とした気持ちになる。
山頂にある休憩所は工事中のようで、その下に臨時のトイレがあるだけだが、粟が岳売店 無間の鐘 グルメ・レストラン
-
阿波々神社があるようで、
-
ちょっと進むと、
-
「天皇陛下御在位三十年奉祝」と書かれた阿波々神社と、
賽銭を供えて両手を合わせる女性。
こんな神社、あったかなぁ・・?
本当に、ここに、来たのかなぁ・・? -
神社の裏には「遠州七不思議・無間(むげん)の井戸」。
良きも悪しきも何でも叶える「無間の鐘」があって、その鐘を欲望のままに何度も突いて、地獄に落とされた者がいたという伝説が書かれている。
鐘は地中に埋められたというが、それがこの井戸だ。 -
井戸の穴をのぞくが、真暗で深いのか浅いのか分からない。
粟ヶ岳にこんな井戸かあったという記憶も全くなく、 -
近くには「磐座(いわくら)」と呼ばれる巨岩群があるが、これにも覚えがない。
「磐座」は、神が天上界より君臨された場所だと説明されている。
巨岩を神の象徴とすることは、これぞ日本文化だと納得し、大切にしなくてはと思うものの、
紀伊半島ジオパークの巨岩を思うと、これは巨岩ではないと気持は沈む。 -
巨岩とペアとなる黄泉の国まで続く『地獄穴』もあると案内がある。
それはどこだろう、と探していると、 -
山の下からにぎやかな女性たちの声が聞こえてきて、
-
トレッキング姿の3人の女性たちが現れた。
-
「え~! 地獄穴ってどこよ?」
「鐘を突きすぎて、地獄に落とされた穴なんだってよ~」
「本当に、そんな穴、あるの?」
と元気が良い。 -
「あっ、ここなんじゃない?」
「どれどれ・・」
と覗き込み、 -
「でも、こんな小さな穴じゃ、片足が入るくらいで、人は落ちないよ。」
「でも、これしかないじゃない。」
「伝説なんだから、それでいいのよ。」
「写真でも、撮っておこうか。」
と話はまとまった。 -
陽気な山ガールたちに励まされて、私ものぞくと、巨岩と巨岩の隙間に小さな穴が空いている。
“神道には地獄・天国という思想はなく、亡くなった者は『黄泉の国』に行き、清められ後に神となって昇天する、と言われ・・”
との説明もあり、
“仏教が日本に渡来すると、神社にも像や鐘が置かれ、神仏が混ざり合い・・”
と日本の宗教に関する興味深い説明が続いている。 -
『松葉不動滝』へ案内する立札があった。
トレッキングコースが伸びている。
マップにはこの道は載っていないが、滝までの直線距離は700mほど。
これは近道だろう。
10分もあれば到着するだろう。
と確信し、 -
では、ちょっくら行って来るか。
とばかりに歩き出した。
往復20分もあれば十分だと、食料も飲み物も車内に置いたままで、
持ち物はカメラ類だけだ。 -
松葉の滝は予定していたポイントで、
グーグルマップて調べると、遊歩道があって、4kmほどはあるが、
トレッキングコースにすればずっと近道になるぞ、と気分が高揚。 -
だが歩いてみると、細かな砂利が一面に浮いていて、滑りやすい急傾斜の坂道で、
いや、道ではなく崖と呼ぶ方がふさわしい危険な場所だった。
「杖が必要」との注意書きも立っている。
その通りで、二度ほど足を滑らせて尻もちをつき、そのまま滑り台のごとく滑走しそうになった。
持っていたカメラの1脚を杖にして、3本足で歩くことにした。
歩幅を普通にとると、ズルリと滑ってしまうので、歩幅を30センチたらずに制限し、グズグズ歩きに徹しなくてはならない。 -
大きな誤算は、滝は山の上部または中腹にあると思っていたことだ。
コースは崖下に向かって下る一方で、ますます傾斜がきつくなっていく。
尾根にコースができていて、右も左も深い谷だ。
おお~!怖い! -
滝はどこにあるんだ!
危険個所(ほとんどがそうだ)にはロープが張られいて、それにつかまらざるを得ない。
手の平が傷つき、痛みだした。
手袋がないことを後悔するが、後悔はまだまだこんなものではなかった。 -
岩や根でつまづいたり、ズルズルと足を滑べらせたり、散々な目にあいながら下へ下へと降りていく。
写真ではそれほど危険とは見えないだろうが、これはたまにある安全な場所で撮ったからで、
ほとんどはカメラを構える余裕など微塵もなく、必死にロープにつかまっているだけなのだ。
脚がガクガクしてきたか、それさえ忘れる危機が続く。 -
時折見える外の世界は、まだこんな高い場所で、
滝のありそうな場所などどこにも予感させず、
「まさか・・滝はこの山のふもとにあるのでは・・?」
と疑心暗鬼になる。
ふもとまでには、まだまだ想像するだに恐ろしい坂道が続くわけで、 -
「この辺りで、引き返そうか・・」
と思うものの、いつもこの手で引き返すと、目的地は目の先だったなんてことが多く、
「その手は、くわないぞ!」
と淡い希望をもって、というか、疲れすぎて冷静な思考が停止していて、 -
そのまま進み続けると、行き止まりの看板が立ちふさがる。
滝へは右に下ると書いてあり、
それならば滝は近いだろうと、これまた楽観的に思い込み、 -
尾根から谷間に下り始めた。
それもこんな滑り台のような急な坂道で、
そんなに甘いものではなく、 -
谷の底近くまで降りるには、相当な時間がかかった。
沢にはアルミやら丸太やらの橋が架けてある。
出発してから人の声は1回も聞いていない。
孤独を噛みしめながら歩いて行くと、 -
やっとのことで、道らしき道にぶつかった。
左方向に『松葉の滝』の標識があるが、右方向には何もない。
(もしかしたら、右の登り道がマップにあった頂上まで4kmの道だったのかも・・) -
歩きやすい道となって、嬉しがあふれてくると、(おおげさではありません)、
すると途中で「不動の滝 天井覗き」の標識があり、 -
ガサガサと山の中に入っていくと、沢(沢といっても水はない)の先が消えている。
滝の真上まで来たのだ。
滝壺を覗き見したいが、危険過ぎてできない。
ちらっと見るところ、その高さ、およそ7~8mはあるだろうか?
沢に水はないのだから、当然滝にも水はない。 -
元の道に戻ってしばらく歩くと、「不動の滝には右に降りる」の立札があり、
-
近道の看板につられて、ズルズルと降りて行くと、
-
岩がゴロゴロしている沢となった。
その先に滝と滝壺がある。
70分もかかって、やっと目的地に着いたのだ。
(10分の予定だったのに)松葉の滝 自然・景勝地
-
水が流れ落ちていれば、ばかにできない滝だと思う。
神秘的だ。
雨が降れば、今立っている場所は冷たい急流の中だ。 -
滝の前には小さな社があった。
杉林と岩に囲まれた仏像は、大自然の霊力を一身に浴びているようだ。
立札を読むとお地蔵さんではなく不動尊だった。
その由来伝説の説明板もある。 -
目的を達したが、山道を引き返すことはやめて、沢を下ることにする。
人里は近くにあり、粟ヶ岳までの歩きやすい道もあるに違いない。 -
駐車場か現れた。
何だ、ここまで車で来れたのか。
ほっとするが、虚しい気持ちも沸き上がる。
俺の苦労は何だったのか? -
民家も見えてきた。
倉真(くらみ)温泉近くの集落のようだ。
みんながハイキングで登る、反対側に来てしまったのだ。 -
自動車が通る舗装された道に出た。
(右の道が今下りてきた道で、左の道が粟ヶ岳の北側を迂回しながら大井川に出る道)
-
迂回するこの道を歩いて戻ろう。
距離はあるが、崖を登るよりもこの道の方が早そうだ。
しかし何キロあるんだろう・・
大変なことになってしまった。
自分を励まそうとするが、落ち込む気持ちはどうしようもなく、 -
力なく歩きだす。
可哀そうに思って乗せてくれる車が通らないかな・・
などと淡い期待を持ったりするが、そんな車など通るはずもなく、
道路脇の廃虚を見て、こんな山奥に見捨てられた自分をあわれに思うだけ。 -
「山歩きに挑戦するぞ」と覚悟して来たのならいざ知らず、「ちょっとそこまで・・」と軽い気持ちで歩き出したのがいけなかった。
予想もしなかったこの状況が、情けなさと、悔しさと、寂しさを掻き立てるのだ。
ポツポツと人の住んでいそうな民家が見えるが、人の姿はない。 -
もう、嫌だ!
でも、歩かなきゃ!
弱い自分がもろに出てくる。
「お茶の駅」なんて書いてある野外カフェがあった。
昭和初期の雰囲気漂う味な店だったが、誰もいない。 -
「人だ! 人がいるよ!」
と喜んだが、人間そっくりの案山子だった。
その時、遠くで聞こえる動揺のオルゴールの音色。
お昼ご飯の合図だ。
しかし食料は車に置いてきてしまっている。 -
坂道が延々と続いている。
ここで道は二又に別れ、直進する道には「道幅1.7m・軽自動車可」の注意書き。
もちろん直進する。 -
振り向けば、こんなに高い場所まで登って来ていた。
でも、山頂はまだまだ高い場所にあって、
「本当に、この山頂まで登るの?」
「腹が空いたよ~」
「のどもカラカラだ~」
と実に情けない。 -
小型車がやっと通れる道幅なのに、こんな落石があったら、車でも大変だ。
-
前方にアンテナ塔の立つ山が見えた。
え~~、あそこが粟ヶ岳なの?
この山の上じゃないんだ。
ということは、谷を降りて、再び登るのか?
絶望感に打ちひしがれて、 -
それでも歩くしかない。
ラオスやベトナムやタイでは、もっともっと歩いたのに、なぜこんな泣き言をはくのか?
毎日4km以上の散歩を、午前午後と2回も日課とし、体力作りに励んでいるのに、この根性なしは何なのだ?
自分で自分が分からない。 -
それでも何とか足を止めずに動かしていると、明るい空を背景に歩く人を発見した。
あそこは見覚えのある場所・・数時間前に車で通った道だ。
(最初の動画で指摘した別れ道です)
ああ・・帰ってきた。 -
滝から歩いた道はこんなだった。
滝からの道のりはおよそ8km、高低差380m。
しかし頂上まではまだ1km以上はある。 -
車を停めてある頂上で、グビグビとお茶を飲み、ムシャムシャと唐揚とバナナをたいらげ、ドーナツをほおばると、元気が出てきてドローンを飛ばした。
なんと素晴らしい景色だこと。
3時間半以上の冒険を終えて、戻って来れた喜びをヒシヒシと感じている。
その喜びの空撮映像(パノラマ写真と動画)をご覧ください。
パノラマ写真は、拡大してグリグリ動かしてください。
https://theta360.com/s/dbAxw9z7B9iMS6cwa3Ix0rpxs
https://youtu.be/XD9S4cHPYYk
※翌日から二日間、階段下りや坂道下りをすると、太腿が悲鳴をあげました。
こんなことはめずらしく、崖下りがいかに過酷だったのか、思い知りました。
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
この旅行記へのコメント (3)
-
- trat baldさん 2019/02/14 10:46:27
- 見た事有る様な気がする、、、、、、
- YouTubeにUPされてる猪や鹿の狩猟をする山じゃあないですか?
新東名の長大トンネル(粟ヶ岳)が有る山でしょ?
- motogenさん からの返信 2019/02/14 16:40:47
- RE: 見た事有る様な気がする、、、、、、
- はい、地図を見ると真下を新東名のトンネルが通っています。
鹿や猪はいるかと思いますが、熊はいないと楽観してます。
めったなことでは、人は入らない崖のような山でした。
この山、狩猟で有名なんですか?
- trat baldさん からの返信 2019/02/15 11:11:37
- やっぱ有ったね。
- > めったなことでは、人は入らない崖のような山でした。
有害鳥獣駆除の時期を知らないけど餌が少なくなる冬かしら。
景色があまりに似てたのでmotogenさんが見かけたかなと思って、、、、、
> この山、狩猟で有名なんですか?
掛川市に担当する部署が有って地元の猟友会に所属すれば許可が出るみたい。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったスポット
この旅行で行ったグルメ・レストラン
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
3
53