2018/07/02 - 2018/07/02
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watersportscancunさん
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皆様、こんにちは。メキシコ大統領選が一夜明けて12年越しのロペスオブラドールの執念が実を結び、ついにメキシコに左派政権が樹立されました。昨日、7月1日は投票会場となった多くの施設(市庁舎以外にも、自動車のディーラーやら町の診療所まで)は、長蛇の列が遅い時間まで続きました。すでに早い段階で当確となったオブラドールが勝利宣言を出して政権交代が決定的になりました。
店長吉田は、そんな投票日のなか、希望のグレードを仕入れることが出来なかったパナマ帽を求めて、ユカタン半島のパナマ帽生産地であるベカルまで出かけて来ましたので、それらを含めて本日は店長日記スタートです。
朝からとても静かな一日の始まり。滞在するホテルも人が少なく政府関係者も滞在していると見えてフロアにはボディガードが24時間体制で張り込む物々しく緊迫感のある投票日を迎える。
投票は日本なんかだと、そもそも地方選挙がベースになるので、市役所や町民会館などが利用されるが、直接選挙で国家のトップを決定するメキシコは、それでは施設が足りずに、街の診療所やら車のディーラーまで動員される。
朝はまだ静かだったが、午後、ボクがメリダまで出先から戻るとどこも長蛇の列が生まれていた。長蛇の列というけれど、本当に長蛇の列。。。投票するまでに2時間待ちという報道も出ていたが、それくらいメキシコの大統領選は皆の関心が高い。
昨日の日記にも書いたけれど、日本の選挙と違って、メキシコの場合は、政党が変わると全てが変わる。市の職員まで総入れ替えになるほどだから、どれくらい生活に直結するか分かろうというものだ。
どこが政権とったって一緒だという政治的な無関心は、メキシコではかなり少ないのはそうした理由による。
例えば、カンクンでは、今の知事カルロス・ホアキンはタクシーシンジケートの理事だった関係で、当選した途端に、メキシコの政府では認められているUBERをキンタナロー州では正式に全面禁止にしてしまった。今回の知事選では、UBER肯定派が当選するとみられているが、そうなると一転して、UBERは許可されると言われている。
条例だってなんだって、自分たちに都合が良いようにどんどん変わる。その過程で汚職が生まれて、政治的な腐敗が進む。最初はクリーンな地方行政を謡い、汚職を批判しまくって当選した前知事のボルヘにしても同様で、当選した途端に汚職まみれに至り不正蓄財30億といわれ、任期中であったにも関わらず逮捕収監されてしまった。。。凄いのは逮捕が分かった途端に自家用ジェットで逃亡を図り、コロンビアに潜伏していたところを逮捕されるとか、、、映画のなかの世界のようだ。
カンクンには高級なコンドミニアムが多く建設されているけれども、以前メディアにすっぱ抜かれた、ボルヘの前任であるグレッグサンチェス前知事の親族が軒並み高級コンドミニアムのペントハウス(最上階の最も高額な部屋)を所有しているなんて事もあった。
今回の現職大統領であるペニャニエトの地下資源開放政策は、メキシコにとって経済を発展させる非常に良いきっかけになり、おかけでメキシコの経済はこの6年上昇を続けた。メキシコは過去、ポルフィリオディアス政権の時代(19世紀から20世紀初頭の話(笑))、海外への市場開放により国内のインフラや市場経済が発展したが、その結果、海外資本にメキシコの市場を牛耳られる結果となり、大資本に土地が奪われ貧困格差が拡大した。その結果メキシコ革命が勃発し、共和制に移行して現在に至る。
この為、同じ轍を踏まないよう、特に地下資源や公共に関わる事業に関しては海外資本が一切かかわることが出来ない法律が現在まで引き継がれて来た。その中でも、メキシコの重要な地下資源である原油については、PEMEXという石油公社を設立し、国家主導で運営されて来た。
しかし、上がる収益は全て国庫に入れられるため、設備のインフラが進まず、50年以上前の老朽化した精錬所を騙し騙し操業するという状態が続いた。この為、現職ペニャニエト大統領が、石油公社の海外資本参加を許可する法案を通した結果、50年以上進まなかった精錬所の修繕が進み、稼働率が飛躍的に上がった。また、これまで進まなかった油田開発についても、こうした海外資本と提携し、新しい精錬所をトゥーラに設立、結果メキシコの国庫が更に潤うという相乗効果を生んだ。
因みに、メキシコは産油国だが、国内の経済が伸びている為、現在は輸出はせずに逆に輸入している状態であることはあまり知られていない。
つまり、国内の製油所が新しく稼働し、古かった精錬所が整備されて練度があがることで、国内で賄える原油が増え、それがそのまま歳入に反映されるという経済効果が生まれたわけだ。
ペニャニエト大統領のとった解放戦略はこれだけでなくオバマ大統領の時代に締結された貿易協定であるNAFTAについても、メキシコの経済に良い結果をもたらした。何せ、メキシコの貿易収支に占める隣国アメリカの比率は驚くなかれ80%に登るおんぶに抱っこの状態だから、この関税を異常に低く維持してくれる協定のおかげでどれだけの恩恵がもたらされているか想像に難くない。
日本の自動車業界が積極的にメキシコに工場を設立したのも、このNAFTAがあったからで、こうした優遇関税などの利点がなければ、工場誘致など夢のまた夢だったわけだ。
さて、すべてが良い方向に進んだペニャニエト大統領の評価は上々だったのだが、資本の拡大は格差も生むわけで、メキシコ国内では所得格差が拡大した。格差が拡大すれば、一部から不満も生まれる。恩恵が得られた人もいれば、そうでない人も出てくる。そうした中で、メキシコ政治にありがちな汚職事件が露呈する。
先の石油公社の絡みで海外の石油会社から10億の賄賂をうけとっていたり、大統領の奥さんに7億の別荘をプレゼント(実際は、自前で建設したと主張しているが支払いをしていないので、贈与だとされる)など、続々と出て来た。
汚職に関わって逮捕される地方知事はその6割にも登り。。。国内の世論は汚職撲滅へと突き進んでいく。そこに勢いを得たのが今回のロペスオブラドールであり、その彼が率いる国家再生運動MORENA党だ。
海外開放政策は間違いだった。メキシコを下に見るアメリカとの貿易交渉は見直しが必要だ。といった、今までとは真逆の政策を上げ、その実、メキシコの平均所得をアメリカなみに引き上げるという耳に心地よい公約を公言する。
その根拠の一つは、汚職を失くす事で生まれる経済的な余剰を再分配するというものだ。汚職を失くせば、経済もまともになり、その結果メキシコ人の平均賃金も上がると主張している。
しかしだ、、、せっかくの貿易協定も、トランプが見直すと言い出せば、感情的にメキシコ人の誇りを取り戻せとナショナリズムに訴える、海外資本の導入で、せっかく、まともに操業するようになった油田開発についても、海外資本の導入は格差の元凶だと非難をするような、感情に訴えるばかりの主張には、正直不安しか感じない。
挙句、汚職を失くして格差是正の財源に充てるなんて訳の分からない主張で更に不安は拡大するばかりだ。。。
今回の大統領選で、オブラドールが確定するのは仕方がないとして、ボクが心配したのは、今回は知事選も上下院選も全て一気に行われる一括選挙だという事だ。
正直、大統領が変わっても、上下院の過半数をリベラルな反対勢力が占めていれば、少なくとも、好き勝手することは出来ないが、今回の世論の後押しを受けて、上下院まで過半数をMORENAが取ってしまうと、一党独裁の状態が生まれてしまう。
しかも、オブラドールの率いるMORENAは左派勢力だ。。。中南米でポピュリズムに政権を取られて混乱しなかった国は皆無。。。そこが怖い。。。
もちろん、汚職や麻薬組織による殺人件数の増加といった治安改善に関しては、期待をしたいのだけれども、、、さて、、、これからのメキシコの行く末を見守りたいと思う。。。
こうしたなんとない不安を感じながら、ボクはパナマ帽の産地であるベカルに向かった。メリダからは1時間ほどで到着する、カンペチェとメリダのちょうど中間に位置する村だ。前回訪れてから、ずいぶんと日が経ってしまったが、久しく訪れる村の様子に少し心を躍らせながら車を走らせた。
途中、オシュキントク遺跡の一部が高速沿いに修復されているのを見学する。この辺りはプウク遺跡が多く、マヤ古典期の7世紀ごろにマヤ文明が全盛期を迎えていた場所だ。切り出された石灰岩をモザイクに組み上げた建造物はそれが中心に位置するものでないからこそ、こんな端にある建造物まで手を抜いていないことに当時の文明の高さを感じる。
今日は時間がないのでまた近くオシュキントク遺跡は訪れたいと思う。
さて、混雑もなく無事1時間10分でBECALに到着。村の入口にある村営の商店街は以前と違い一店以外は全てもぬけの殻になっていた。
何度も書いているけれど、パナマ帽の原料になるトキヤ草は、近年収穫高が激減している。この為、パナマ帽そのものの生産が難しく、また過酷な生産現場環境もあって近年職人の高齢化が進み、後人も育っていない為、更に生産高は下がる一方なのだ。
そんな不安をあおるかのように村営の商店はほぼ営業停止状態。。。売るものがないのだから仕方がないか、、、と思いつつ、村へと車をすすめたのだが。。。
以外にも前回来た時よりも道路はきれいになっているし、ソカロ周辺もかなり整備され、以前のような寂れた雰囲気は皆無になっていた。。。
驚くボクの車に平行して突如自転車にのった少年が話かけてくる。
「パナマ帽を買いに来たならいい店を知っている!」
まー、観光客相手の店ってのはどこにでもあって、こうした産地の村というのは、産地だからこそ安いだろうというイメージで訪れる観光客を相手にする商売が当然ある。
ただ、以前よりこうした店が増えている印象を受けたのは、それだけ生産が減って主要な町でも手に入らなくなっている事が原因なのかもしれないと感じる。
面白いので、レポートも兼ねて産地の村にある観光客相手のお店に、この少年の口車にのって出かけてみることにした(笑)
こうしたお店は自営のところと、共同で営業をしているところがあるのだが、今回連れていかれたのは自営のお店だった。だから、この店の裏でパナマ帽を生産してそのまま販売している。
こういうお店は、生産現場の見学などもさせてもらえるので、とても有意義だ。せっかくなので、見学をさせてもらう。暗い洞窟の中でせっせつとトキヤ草を編むお祖母ちゃんは、一つの帽子を作るのに4日。グレード2は2週間。グレード3は一カ月。グレード5は三か月くらいかかると話をしてくれた。
こんな暗くて湿度の高い場所で、今でも昔ながらの手編みで編み上げるパナマ帽は、工場での大量生産が主流の現代だからこそ、より貴重な付加価値が生まれるのかもしれないが、お祖母ちゃんのかける巨大な老眼鏡が、目への負担を感じずにはいられない。。。
詳細は写真の方で見てもらうとして、、、さて、ではお礼も兼ねて義理で高いパナマ帽を買っていこうかと店の方でいろいろと出してもらう。
驚くのはグレード5も一本だが在庫があったこと。まー、このクラスはこの店の技術力を見せる為のものでもあるので、あまり販売する事がメインで生産はしていない。久しぶりに手にするグレード5は素晴らしい手触りと滑らかさ、しなやかな仕上がりでうっとりする。
この帽体を完成品にするとアメリカなどでは2500ドルになるという代物だ。最近は作れる職人も減ったので、見ること自体なかなか出来ないので、こうした品に巡り合えるのは幸運ではある。
あるので、これはもらっていこうと思ったのだけれど、手持ちがなかった(汗)
失敗した。。。グレード5の在庫があるなんて思いも寄らなかったのと、今から書くがここまで高騰しているとは思いも寄らず今回は購入をあきらめざるをえなかった。。。
義理で購入すると決めてはいたが、グレード2も3もウチで販売している1.5倍の価格だ(汗)
観光客相手の値段だとしても、流石にビビってしまった。。
まぁ、連れて来てくれた少年には悪いが、事情を説明して、数をまとめて、今後の関係もあるからという部分も含めて卸価格まで下げてもらったけれどね。
聞けば、今は生産量の減少に伴い、直接観光客が買いに来たりもするらしく、グレードの高いものほど売れていくのだそうだ。まぁ、分かる気もするのだが。。。
まぁ、この値段でバンバン売れるなら、街も綺麗になるはずだ。それはそれで、こうした産業を絶やさない為にも、ある程度は仕方がない事なのかもしれないが。。。
ただ、言えることは、今では購入が難しいハイグレードの4や5といった工芸レベルのものについては、街ではもう買えないので、こうした産地までやって来て買うしかないのは間違いない。ボクも次回、グレード5を手に入れる為に、今からお金をしっかり貯めておこうと誓ったベカル訪問だった。。。
さぁ、今日は、ワールドカップ日本戦とメキシコ戦が二本立てだ!
気合を入れてこれから応援に行くぞ!
皆様の素敵な一日を願っています
店長吉田より
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今回連れてこられた現地パナマ帽の直営店
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裏庭でパナマ帽に関するちょっとした観光ツアーをやってくれます。
これがトキヤ草。これを乾燥させて編んでいきます。 -
因みに、、原料となるトキヤ草は、開いてしまっているものは硬くて使えないので、まだ葉が開く前の物を収穫して使用します。
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乾燥させて、炭でいぶして、更に表裏4時間かけて丁寧に仕上げていきます。
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これはチャチュという染料となる葉っぱ
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乾燥させて。。。
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煮沸して染料にします
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これで染め上げたトキヤ草で編み上げる色のついたパナマ帽は女性用や子供用のものが多いです。
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さて、出来上がったトキヤ草をもって作業場へ
こんなところにもセノーテが生活の現場に生きています。。。 -
階段を下りて行きます。
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中はこんな感じ。。。湿度が高くて暑いです。。。天然のサウナのようです。。。
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こうして毎日少しずつ編み上げて行きます。
グレード1で4日。グレード2で2週間。グレード3で一カ月。グレード5は三か月かかるそうです。 -
器用に編み上げて行きます。。。これは団扇ですね。。。
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村の中心にはカトリックの教会と、パナマ帽のモニュメントがあります。
産地ではありますが、値段は決して安くはありません。
ただ、街の方ではもう買う事が難しいグレードの高いものが手に入りますので、是非グレードの高いパナマ帽が欲しい方は行ってみてください(^^)
それにしても、どんどん綺麗な街になっていっています。。。
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