2017/12/09 - 2017/12/09
39位(同エリア54件中)
船尾唯智さん
宮崎県の夜神楽は全国的にも著名な観光資源となった。とりわけ高千穂の夜神楽が有名だが、実際は宮崎県内の各地で星の数ほど多く夜神楽をやっている。
私が夜神楽が好きなのは、夜神楽そのものや歴史が好きというのではなく、その雰囲気、そして見知らぬ地で地元の方と濃厚に触れ合えるという点だ。普通に見知らぬ地でイベントに参加しても、地元の方とそう気軽に会話はできない。しかし夜神楽は、民俗学者・柳田国男がその存在を広めた功績もあってか、他所者を受け入れるイベントとなった。
昨今は人口減少が著しく、夜神楽そのものの存続が危ぶまれている地区もある一方、西都市の尾八重神楽のように隣の地区(木城町中ノ又)から手伝いを貰うなど、ますます地区内だけで完結するような性質ではなくなりつつある。
そこで自分も西米良村の小川神楽、そして四年に一度の横尾産土神社大祭に参加してみた。
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宮崎県の夜神楽は11~12月の寒い真冬に集中して行われる。それも朝までぶっ通しだ。ゆえに防寒対策は必須だから、バスなどの公共交通機関の移動では毛布などは持てない。自ずとクルマでの移動となる。
最初の目的地は西米良村小川の小川神楽。まずはその前に、宮崎県綾町の観光スポット・酒泉の杜にある綾温泉で身を清める。 -
温泉を出た後は、西都市から国道219号を人吉市方面に走る。西都市杉安からは一ツ瀬川の山深い渓谷沿い。ダムが複数存在する。
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西米良村があるように、かつては東米良村も存在した。西都市と合併したが現在も市役所東米良支所、東米良診療所がある。
しかし日照時間が少ない深い山峡に民家は少なく、更に急激な過疎で空き家も多い。新築された家も見当たらず、時間が昭和で止まっている家ばかり。
東米良村はかつては林業で栄え、人口は数千人規模でいたが、西都市の一部となった今は数百人しかいない。平成の大合併のとき、西米良村はその東米良の激しい衰退ぶりを見て、合併しない道を選択した。 -
走っている国道219号は、少しずつは立派なトンネルがあるなど走りやすくなってきている。しかし西都市役所東米良支所がある西都市瓢箪淵から先は、1.5車線のクネクネした走りにくい道がそこそこ残る。
西米良村や西都市東米良地区は、総称して「米良荘」と呼ばれ、熊本県の五家荘同様に秘境めいた地である。普通は川沿いに集落が発達しそうなものだが、昔は川沿いでも急峻な地形で道路が作れなかったので、むしろ川から離れた高台に集落を作った方が勝手が良かったようだ。ゆえに、米良荘の他、五家荘や椎葉なども川から離れた高台に集落があるケースも多い。 -
そんな秘境めいた米良荘をますます奥に進む。
国道219号で西米良村に入った後、越野尾の集落で宮崎県道316号に入る。国道以上に細くクネクネしている。イノシシと遭遇し、クルマに体当たりされて板金屋に数十万円払う事故が起きてもおかしくはない。
この道路も当然、谷深いところで日照時間は少ないが、それでもちょこちょこ生活臭の漂う民家が見える。ここに暮らす人々はたくましいなあ、とつくづく思う。 -
西都市杉安からそんな心細いドライブをしはじめてから1時間強、ようやく目的地・西米良村小川に到着する。
意外にも広い盆地がひらけ、そこにそこそこの大きさの集落があったのでビックリした。
後で知ったが、江戸時代、米良荘を支配していた米良氏の居城があり、ここが米良荘の中心として栄えていたという。今、小川地区の人口は100人だが、西米良村の人口が1200人であることを考えると、西米良村では規模の大きな集落であると言える。 -
夜神楽の会場は、他所者の私でも一発で分かった。集落の入り口付近にある自治センターらしき建物の前に、多くのクルマが参集していた。その自治センターの横に米良神社の神殿がある。
自治センター前の空き地にクルマを止め、会場に赴いたら神殿の中で神事を行っていた。背広を着た村議だの、地元小川の自治連合会会長だの、地元のお偉方がスーツ姿で神主からのお祓いを受けていた。 -
神事が終わると、神殿内では舞台の飾り付けが行われた。なかなかインスタ映えしそうな舞台である(笑)
早めに会場入りした私は舞台の前の席を取ることが出来た。 -
この神楽では、初穂料3000円包んだ。会場の受付でこれを出すと、米良神社のお札と食券をいただいた。
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夕闇が迫り、真っ暗になると、神殿の隣に屋台の出店までできた。屋台の出店がある夜神楽を見たのはこれが初めて。地区それぞれの夜神楽に個性がある。
それにしても人口100人の小川地区、それも宮崎市からクルマで1時間40分はかかるであろうこの会場にまで、屋台が出るのは驚きである。 -
出店は他にも地元のご婦人方のテントもあり、地元の椎茸などを売っていたが、その横には客の休憩所となるテントの中に焚き火を燃やしていた。
確かに寒いのは寒いのだが、テントの中でストーブではなく、焚き火というのに驚いた。おかげで煙がテントの中に広がる(笑)
田舎らしいゆるい雰囲気が感じられて好きだ。 -
夕方6時になると、隣の自治センターの建物の中に人が集まる。村長らしい人などがあいさつをした後、夕食が提供された。
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食券を持っていた私も遅れて参加すると、仕出し弁当をお吸い物が出てきた。宮崎市の業者のものである。1時間40分はかかる西米良村の山奥まで配達するとは、なかなかのものだ。
ちなみに西米良村小川は、熊本県湯前町からはほぼ1時間のところ。西米良村中心部の村所だと、更に湯前町に近い。歴史的背景で言っても、米良荘は一時期人吉相良藩の領地でもあったので、宮崎県児湯郡とは言え、西米良村は熊本県球磨地方との繋がりが深い。そのため西米良村は球磨焼酎が飲まれる地域でもあるという。 -
仕出し弁当のふたを開けるとこのような感じ。
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夕食を終え、神殿内に戻ると人が集まり始める。さすがに夜になって日が落ちてきたので、ストーブがあるとは言え寒い。私も他の皆様も毛布を持参してきていた。
この日地元民放のMRTのスタッフの他、宮崎県も歴史保存のためにビデオを回していた。私の隣に座っていた人の話によると「高千穂などの夜神楽が一部、国の重要無形文化財に指定されているが、他の県内の夜神楽も国の重要無形文化財に追加申請するために、県も来ているのではないか?」ということだった。 -
夜7時半に待ちに待った夜神楽が始まった。
今日は西米良村内で他にも夜神楽をやってるせいか、人は少なめ、と思いきや、子供達が出演する舞台になると、満足に身動きが取れないぐらい観客ギャラリーが集まってきた。
なお子供達は全員が地元の子供達ではなく、地元小川地区に祖父祖母がいるものの、小川地区を離れて住む子供も含まれていたようだ。今日のために、ちょくちょく練習にこの山奥の小川地区まで足を運んでいたのだろうか?
夜神楽をやると、地区外からも人が集まり、初穂料も集まる。当然それが地元の活性化にもなる反面、それを催すのにものすごいエネルギーがいる。
特に踊り手の人材確保は、地区外に住む縁者にも頼らざるを得ない。それは去年私か見た西都市の尾八重神楽も同じである。
伝統芸能を残すのも大変なのだ、としみじみ思う。 -
なお、舞台の足元に落ちている白いものは、お金の入った「おひねり」である。観客が舞台に投げ入れるものである。
特に子供達が舞台で舞う時は、「おひねり」が次々と舞台に飛んだ。
縄で貼られた舞台の四隅付近に、紐で綴られた約8cm四方の白い紙が数十枚置かれたいた。観客が「おひねり」を投げる時、この白い紙を1枚取り、小銭を包んで舞台に投げ入れるのである。 -
子供達の舞台が終わり、大人達の舞台に変わると、観客ギャラリーの半数が退散していった。あっけないものである。
しかし身動きが取れないほどだったので、足が痺れてしまった。ゆえにホッともした。これが更に深夜になると、人が更に減っていくという。
ようやく身動きが取れたので、神殿の外に出て、地元のご婦人方の出店で、うどんを買って食べる。中には地元産の生椎茸。そして柚子の香りも漂う。
夕食の宮崎市の業者の仕出し弁当よりも、こちらの方がはるかに地元の味らしくて良い。 -
夜10時過ぎ、遂にお面を被った「八幡様」がお目見えになりました。ここまで待った甲斐があったというもの。
しかし、私の座っていた場所はポジションが悪かったため、無理な姿勢でカメラを撮っていたら肩が痛くなりだしてしまった。おまけに九州山地の奥深く、すごい冷え込みだったので、明日の朝になったら肩を痛めた上に路面凍結でクルマが動けないのはツラいと思い、夜11時前に撤収した。
今回は寒さ対策こそは毛布を2枚持ってくるなど、万全だったものの、次回は三脚を持ってくるだの、ポジションを考えるべきだの、また新たな反省点を持ち帰っての帰宅であった。 -
けどそのまま帰るのも勿体ない。そこで四年に一度の横尾の夜神楽も覗いてみることに。小川から20分強、決して近い訳ではないが。
しかし実際に行くと、四年に一度だけの神楽ゆえに小川よりも人の多さにも驚く一方、会場が地元の人の飲み会の会場になっていて、とても騒がしかった。観客の4分の1ぐらいは、神楽に目をくれることなくペチャクチャ話をしている。
小川の方は、舞台会場となる神殿と、飲み会専用の会場(夕食をとった会場)が別々だったため、夜神楽の静かで厳かな雰囲気が楽しめて良かったが、こちらの雰囲気はどうもいただけない。
横尾の方も雰囲気が良かったら、こちらにも初穂料3000円包んで少し長居してもいいかな?と思っていたが、結局ちょっと覗いただけで、初穂料も包まずにすぐ帰路についた。
宮崎県の夜神楽も千差万別で、運営の仕方も地区それぞれの特色がある。だからこそ楽しくて奥が深いと思う反面、「ハズレ」もあるのだなと痛感した今回の旅だった。
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