生きた建築ミュージアムフェスティバル（イケフェス）2017 in 大阪　③

2017/10/28 - 2017/10/29

イケフェスの内部見学には、当日自由に見学できるもの、ガイドツアーでの

見学に限るもの、事前の予約が必要なもの、人数限定で抽選のもの・・な

ど、いろいろあります。

長瀬産業ビルは事前申し込みの人数限定ガイドツアーのみの見学で、事前申

し込みをして、幸運にも見学することができました。

エリア 心斎橋・淀屋橋(大阪)

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

四ツ橋筋に面する長瀬産業ビルは、左から１９２７年建築の本館、１９８２年の新

館、１９８９年の立体駐車場棟からなります。

なお、本館は１９５５年に４階部分を増築しています。

本館は当時流行のスクラッチタイルが貼られ、シンプルなアーチ窓が連続する壁面

の２階にはアクセントとなるバルコニーがあり、玄関周りに装飾を集中させたデザ

イン。

本館２階の旧役員室に残るステンドグラス。ちょっと奇抜な模様がおもしろい。

旧役員室。木製扉や腰板がレトロな雰囲気。

本館も内部はずいぶん改装されていましたが、この旧役員室はあえて古いまま

残しているように見受けられました。

正面玄関２階部分のバルコニーへはこの役員室から出ることができます。

もっとも、バルコニーは装飾的なもののようで、扉を開けるといっぱいいっぱい。

味わい深い石造りの階段のてすり。

大理石の手すりとタイルの腰壁がいい感じですね～。

この大きな柱が本館と新館のつなぎめ。

外から見ると二つの建物は別々のようですが、内部では一体化しています。

奥の柱の左手の壁に継ぎ目がうっすら見えますね。床にも本館新館の継ぎ目が

見えます。

見学途中、長瀬産業の会社案内ビデオを見ました。

長瀬産業は１８３２年京都で創業した染料卸問屋が起源の、老舗化学系商社・メーカーです。消費者に直接製品を売っているわけでないので、ちょっとなじみがないですが、昔なら長瀬産業といえばコダック、現在は林原を傘下に持っています。
林原といえば、岡山のトレハロースで有名な会社です。
（お土産にトレハロースをいただきました。トレハロースが入った食品などは
食べた事ありますが、そのものを見たのははじめて。サラサラの粉でした。）

玄関ホールにはメセナに熱心だった林原が収集した化石が飾られていました。

長瀬産業の斜め向かいにあるイケフェス参加の立売堀ビルディング。「いたち

ぼり」と読みます。

右側が１９２７年（昭和２年）建設の旧館。左側は１９６１年（昭和３６年）建設

の新館です。新館といっても、もう築５６年ですね。

旧館は垂直線を強調したシンプルな外観です。

入り口にある受付の部屋がレトロでいい感じでした。

この賃貸ビルは建設当初から所有者・用途（賃貸オフィスビル）が変わっていません。

賃貸ビルなので普段は部外者は中に入れませんが、イケフェスの期間中は内部見学

ＯＫ。休日なのでテナントの各オフィスはお休みのようでした。

旧館と新館は玄関・廊下・階段は共用で、内部は一体化しています。

木製のドアがいい雰囲気を出しています。

扉の色はまちまちで、白をはじめ、グレー、水色、なかにはド派手なオレンジ色も

ありました。

登録有形文化財の北野家住宅。

こんな木造の３階建て住宅が御堂筋から一歩入ったところに残っているなんて

驚きです。大阪ガスビルのすぐ近くです。

イケフェス期間だけの限定公開です。

むちゃくちゃ急な階段。

内部は自由見学です。

空襲で焼き尽くされた戦後の淀屋橋付近の写真を見ると、黒く塗られた大阪ガスビ

ルとこの北野家住宅がぽつんと焼け残っているのがよくわかります。

延焼を免れたのは、２階と３階に付けられているうだつと袖壁のおかげではないか

という話でした。

大きな床の間のある座敷。

鶴の模様の欄間

竹を一本だけ使った欄間。

古～いスイッチ(電気？）も残っていました。

北野家住宅からすぐの大阪ガスビルへ行きました。大阪では｢ガスビル」で通ります。昭和８年竣工で、現在大丸心斎橋店が建て直されているので、御堂筋に残る唯一オリジナルのままで残っている近代建築、御堂筋のランドマークといっていいでしょう。

御堂筋に面した白いタイルの建物は安井武雄の作品です。

水平線を強調した、アールデコとモダニズム建築の中間のような印象がします。

２階の連続窓の窓枠は当時は珍しかったステンレススチール製で輸入品です。

旧館のエレベーターホールは壁はイタリア産のトラバーチン、床は琉球産トラバー

チンをふんだんに使った、シンプルながらとても贅沢な空間です。

エレベーターの扉の模様もアールデコっぽいですね。

新館のエレベーターホール。

旧館のテイストを受け継いでいます。

階段のてすり。

丸窓にはガスビルをかたどった模様が。

８階にあるガスビル食堂。

今日は休みですが、見学者のためにテーブルセッティングがなされていました。

御堂筋を見下ろしながら食事ができます。

昔は大阪城も見えたとか。

食器にはすずらんの花が描かれています。

すずらんの花の形が、ガス燈の覆いに似ていることから、すずらんは大阪ガスのシ

ンボルフラワーになっています。

ガラスのついたてにもすずらんの花。

窓枠は昔のものが今も使われています。

この鍵など、いかにも時代を感じさせますね。

外壁は勿来産の黒御影石と稲田産白御影石が貼られています。

休日だったのでシャッターが閉まっていましたが、ビルの一階は柱廊にそって、大

きなショーウィンドーになっていて、気軽に一階に入れる設計になっています。

地下の灯り取りのために歩道に作られたガラスブロック。

大阪ガスの象徴・ガス燈がゆらゆらと灯っていました。

さて、見学も終わり、駅前第一ビル地下一階にある喫茶店「マヅラ」にやってきま

した。コーヒー一杯２５０円の安さです。

普段は日曜日は休みですが、イケフェス期間は特別営業しています。

安さも魅力ですが、なんといってもこの昭和感満載のインテリアがすてきです！

鏡があちこちにあり、異空間が広がります。

ガラス窓の内側に取り付けられたパネルがいいですね～。Ｅｘｐｏ　７０のどこか

のパビリオンみたい。

イケフェスとは直接関係ありませんが、途中、気になる建物を見つけました。

近代建築に興味のない人からしたら、それがどーしたと思われるかもしれません

が・・、角に入り口を持ってくるのは古い建物の証拠。

玄関周りの天然石、丸く造った石の階段、レトロなシャッター・・。

探せばまだまだ無名のレトロ建築が眠っているのかもしれませんね。

横に回れば通用口の上にはかわいらしい庇が付いていました。

この建物は長瀬産業の向かいにありましたが、正面が顔みたいなこの建物も、ちょっとだけ見える柱のデザインが目を引きました。トタンの覆いをはずせば、何かが現れるかも。