2017/10/07 - 2017/10/07
77位(同エリア113件中)
パオロさん
半クラッチの感覚を思い出して、エンジンをふかしクラッチをつなぎます。
ところが、つなぐとすぐにガタッときてエンストしてしまいます。
ギアを入れ、なんども試しますが、すぐエンスト。
如何ともしがたく、数メートル走ってはストップの連続。
これで、動揺してしまい、しばらく呆然とするパオロ君。
ローマ広場というのは、ベネチアの入口で、クルマはここまでですから、当然車であふれています。
いちおう路肩によって何度も試すのですが、うまくいかない。
とうとう、交通整理のお巡りさんが、大丈夫か?と声掛け。
レンタカーなので…、というと、すぐに誰か呼んでくるよ、といってハーツに行ってくれます。
ところがすぐにあきらめてまた戻ってきました。
ハーツはお客さんいっぱいでそれどころではないんです。
パオロ君も努力をして、どうもギアがローではなくサードに入って、サード発進していたらしいこと、エンジンがディーゼルでちょっとガソリン車とは勝手が違うことなどがわかり、慎重にギアを入れてなんとか前に出ることができました。
お巡りさんが手を振ってくれます。
しかし、これがトラウマというか、走行中突然停止するのではないかという恐怖になり、一日中半クラッチに気を取られることになりました。
もう一つ、エンストしてエンジンをかけるとき、ギアがニュートラルになっていてもエンジンがかからず、かならずクラッチを切らなくてはならないことや、サイドブレーキをかけるか、フットブレーキを踏んでおかないとエンジンがかからないことなど、今思えば当たり前なんですが、久しぶりのマニュアル車に面食らってしまったというのが、実際のところです。
それにサイドブレーキも電気式で、ボタンを上に上げるとかかるのですが反応が遅く、あれ?間違ったかなと下に押すとまた外れるというおまけもあって、クルマの操作を覚えるのに丸一日かかってしまいました。
実は、昔イタリアではフィアットアルジェンタという2000ccのマニュアル車に乗っていたので、おんなじだろうと高をくくっていたのが間違いでしたね。日本で予約したとき、小型だとオートマがあるけど、3人だから小型はしんどいかなと、マニュアルでいいから大型を予約したのですが、もう少し慎重にすべきでした。
というわけで、ローマ広場を出るまでにへとへとになり、ベネチアから橋を渡ってトリエステに向かうアウトストラーダ70号線に入るころには、なんとなく精神的なバランスが崩れかけていたのかもしれません。
この調子で、200キロもあるトリエステやその向こうのスロベニアまで行けるのだろうかという不安が先に立ち、その不安が同乗の家族にも伝わって、全員落ち着かないドライブになったのです。
暫くは70号線を東に突っ走ります。
ご承知のように、イタリアのアウトストラーダはトラックが110キロ、乗用車だと150キロくらいで飛ばしていて、それに合わせて日本よりもかなり速く走らないと流れに乗れません。そのことはよくわかっているつもりでしたが、最初の躓きで運転に自信を無くし、出来るだけ110キロのトラックのあとを追って走りました。 フィアット500Xは6段変速ですが、ほとんど5速までに抑制して、できるだけ安全運転を心がけました。
朝9時半ごろベネチアを出て。そのまま突っ走り、お昼前には、トリエステ近郊まで到達。
近郊でアウトストラーダを降りて、一般道に入り、トリエステの町を海岸沿いに縦断した後再度スロベニア方面へのアウトストラーダに入る予定でした。
このあたりは、同乗の息子のマルコ君のナビゲーション頼りです。マルコ君はもちろんイタリアは初めてですが、手持ちのタブレットで適確にナビゲーションしてくれて、助かりました。とりわけ高速道路を降りてからスロベニアの街を走るときのナビは圧巻で、もしマルコ君がいなければこのドライブは完遂されなかっただろうと心から感謝しています。
でも、最初はちょっと行き違いがありました。
ここで降りてという言葉に従って高速を出ると、どうもナビとは違う道。
予定地点からかなり手前で、パオロ君が看板を見間違えたようなのです。
普段でしたら、それならこうしようと軽くハンドルを切るのですが、何しろ動揺が続いていたので、なかなか落ち着いて運転ができません。
高速を出ると、そこは、海岸沿いの素晴らしい景色の道でした。海に迫ったがけの上に道路があるので、美しいアドリア海が手に取るように見えています。
ただ、トリエステに近づくにつれて次第に車が増えてきます。
周辺は郊外のリゾート地のようで、頻繁に横からのクルマの出入りがあり、そのたびにセカンドまでギアを落として発進する作業の繰り返しです。当たり前の手順なんですが、それがうまくいくかどうか不安。
後ろから見ていると、ノックしたり、左右にふらついたり、いかにも運転に慣れていないことがわかる姿だったのでしょうか。
トリエステに近い交差点で、ついにポリツィアに停められてしまいます。
イタリアは、大きく3種類の警察があります。
アメリカのFBI に当たるのが憲兵組織でもあるカラビニエーリ、通常の警察がポリツィア、そして交通警察がビジレと呼ばれています。
普通、車を呼び止めるのは交通警察のビジレで、ポリツィアが走行中の車を止めることはありません。
しかし、今パオロ君のクルマを呼び止めたのはポリツィア。
かつてイタリアに滞在したときもポリツィアとは縁のない暮しでしたから、パオロ君は、そのポリツィアに赤い棒で車を止められ、またまた激しく動揺してしまいました。オロオロするシモーナさんら家族。
歩道側の窓を奥さんのシモーナさんが開けると、お巡りさんが、「ドキュメントを出してください」と硬い調子。
あわてて、シートベルトをはずし、国際運転免許証と、パスポートと、日本の免許証の三点セットを渡します。
するとお巡りさんは、奥さんの分も出せと言います。
幸いシモーナさんも、何かあった時運転するかもしれないと、国際免許を取っていたので、パオロ君と同じように三点セットをお巡りさんに預けました。
その場で見るのかと思ったら、そのままそばに停めてあったパトカーにもっていってしまいます。
海外旅行中にパスポートを取り上げられることほど不安をかきたてられることはありません。パスポートがなければ、下手をすれば移動できない可能性もでてきますから。
昔、東ドイツに行った時、ニュールンベルグの国境で東ドイツの官憲にパスポートを取り上げられ、小部屋に呼ばれた時は心臓が凍り付きそうでしたが、相手がイタリアのお巡りさんとはいえ、こういう時はおおいに不安が増してくるものです。
5分、6分と待ちますがなかなか帰ってこない。
思い切ってドアを出て、パトカーのほうに近寄ります。
ちょっと待ってと手でパオロ君を制し、なにやら本部と電話連絡をしメモをつけているようです。
暫くして、ようやくお巡りさんが書類をもってこちらに来ました。
ニコニコ笑っています。
おお、これは助かった。
パスポートや免許証を返してくれたので、行っていいですかと聞くと、どうぞと笑顔で。
パオロ君に、お世辞だと思いますが、イタリア語上手ですねと言ってくれました。はい、昔ミラノに住んでいたんですが、もうすっかり忘れました、と答えると、
「良い旅を」(Buon viaggio)と声をかけてくれました。
あとでシモーナさんが言うには、ふらふら運転を見とがめた警察が、これはもしかしたら盗難車かもしれないと疑って停めたんだろうとのこと。なるほどそうかもしれませんね。あれこれ思いを巡らせる余裕もないパオロ君です。(続く)
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