2017/06/02 - 2017/06/02
513位(同エリア1903件中)
ころたさん
美術館巡りをしていると、たまに「OH!!!」という作品・作家に巡り合える時がある。今回の八王子で出会ったカッサンドルはまさにそれだった。前回のMuchaのアールヌーボポスターが「柔」なら、カッサンドルのデザインはまさに「剛」。見覚えのあるポスターの前後に散りばめられたカッサンドルの直球な思いを、ドンと受け止めよう。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 徒歩
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5月のMucha展ではスラブ叙事詩が圧倒的だったが、Mushaを世に送り出したのはパリのポスター。19世紀末のパリを彩ったMuchaのポスターは、アールヌヴォーの華麗な世界を見せてくれた。(http://4travel.jp/travelogue/11240803)
そして今回のカッサンドルはアールヌーヴォーから30年後のパリの町を、硬派なデザインで埋め尽くしたアールデコの寵児。カッサンドルはまだ20代前半だったという。
(写真は夢美術館のある八王子駅) -
な~んて偉そうに語っているが、実はカッサンドルについての予備知識は皆無に等しかった。有名なポスターの数点を見たことがあるレベル。それが今回の展覧会を見てひっくり返った。そうか、現代のデザインは彼が創造したんだ!
(夢美術館へ続く八王子ユーロードは元気な商店街) -
アールデコとして知られるカッサンドルのデザインは、まさに現代のグラフィックデザインそのもの。鋭角的でダイナミックな構図、計算された色彩、時に遠近法を無視し時に協調する変幻自在さ。アールデコって言葉は掴み処がなくて好きじゃないのだが、彼がその時代を代表する作家であることは疑いない。
(夢美術館の入るビル。マンションの2F)八王子市夢美術館 美術館・博物館
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これよ。見たことあるでしょ、このデザイン。"NORD EXPRESS"という最新の高速列車の宣伝ポスター。単純な構図で機関車の力強さと速さを伝えている。カッサンドルはこれを20世紀初頭に発表し、瞬く間にパリを席巻した。当時の人々の衝撃は分かるわぁ。
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ビルの足元までやって来た。夢美術館はR20すなわち甲州街道沿いに建つ。「八日市宿跡」の石碑が。
八王子市夢美術館 美術館・博物館
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この色気も素っ気も無いビルに八王子市立の夢美術館が入っている。
八王子市夢美術館 美術館・博物館
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エントランスがまた素っ気無いこと。気にせずエレベータで2Fに上がる。
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金曜日の午前中、客は俺の他に3,4人。ゆったりと見学できた。
八王子市夢美術館 美術館・博物館
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題名は「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」 まさに!
人は少ないけど、いい展覧会だった。人に知られないのがもったいないくらいに。強くお勧めするな。
http://www.yumebi.com/index.html八王子市夢美術館 美術館・博物館
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入場料は700円也。約100点におよぶカッサンドルのポスターを中心に展示されている。
パリを拠点にしたカッサンドルだが、生まれはウクライナだと言う。なのでポスターの言語は当然フランス語。で悔しい事に、俺はフレンチを解さない。 -
フォントの創始者と呼ばれたカッサンドルの文字を理解できないのは悔しすぎる。仕方がない、カタログを買おう。作品も紹介できるし。
その表紙にはカッサンドルのポートレートとNORD EXPRESSの原画。 -
1901年1月、20世紀の到来と共に生を受けたカッサンドルは、若干20歳の時のこのポスターで早くも脚光を浴びることとなる。パスタの宣伝用だというこの作品のオリジナリティを見よ!100年後の現代で何の違和感なく受け入れられるよね。
でポスターの語句は「私には本当のパスタ Garres 」だと。翻訳アプリは便利だよね。 -
カッサンドルの評価を決定づけた家具店のポスター。見よ、この躍動感!
「装飾家具の Au Bucheron百貨店. メトロ セントポール駅」だと。翻訳アプリ、楽しいぞ。
この作品はなぜか建築家のコルビジェの批判を受けている。キュビズム過ぎると言うのだ。そうかな?あえてそういうデザインにしているのであって、無理やりキューブにしてはいないよね。 -
そして代表作「NORD EXPRESS」。遥か彼方の消失点に向かう機関車の力強いこと!そして線路(?)と機関車の消失点を敢えて変えていることにも注目。
下のロゴで指しているパリ→ブリュッセル→ベルリン→ワルシャワへの路線図もしゃれている。 -
右はこれも見覚えのある「NORMANDIE」。当時最大の客船だったらしい。
「定期的なサービスによって贅沢な巡洋艦と一つのクラス」
う~ん、無料アプリの限界か。
「定期運航する大型客船で贅沢な船旅を」ってところかな? -
「自動車・航空機用オイル Orange」
「安全のために Spidoオイル」
なんてシンプルで美しいんだ・・・。たった2色のリトグラフだよ。
ちなみに展示されているポスターはだいたい1*1.5mくらいの大きさ。 -
化粧品のポスターは上が油絵の原画、下がポスターになったリトグラフ。版画にするための色の単純化だったんだろうが、断然油絵がいいね。この時、カッサンドルは29歳。
カッサンドルは「私の手法は幾何学である」と言った。たしかに原画にはコンパスの中心跡や定規の跡が残っていて、工学的に描かれたデザインだと分かる。 -
これも好きだなぁ。CASINOというレストランのポスター(左)と金属板の看板(右)。
「私はどこででも何でも販売する」
って書いているから、ケータリングの店かも。 -
ユーモアも忘れていない。DUBONNETというワインのポスターでは、ワインを飲む毎にワイン色に染まっていくオジサンキャラがかわいい。トリスのオジサンはここからパクった?
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カッサンドルはこのキャラを気に入ったらしく、いろんなグッズにしている。灰皿とか帽子とか缶ケースとか。
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そんなカッサンドルにも転機が訪れる。35歳でアメリカに渡り、雑誌「ハーパーズ・バザー」の表紙を担当したのが1936年から39年。その間に最愛の妻マドレーヌと離婚、第二次大戦に応召される。
激動の中でカッサンドルの作風は変貌していく。並べられた表紙デザインの後半は、もはやシュールレアリズムと言っていい。 -
これなんかもうグラフィックデザインからドローイングに変わってしまった。町田版画美術館で見た横尾忠則にも同じような時期があったよね。グラフィックデザイナーの宿命なのかな?
横尾忠則展は、
http://4travel.jp/travelogue/11236206 -
カッサンドル50歳のこのポスターでも、かつての幾何学性は影を潜めた。40歳以降の彼は舞台芸術やファッションの分野を主な活動範囲にしていく。何が彼を変えたのか?ピカソを筆頭に芸術家は変貌しなければ生きていけない業を体に宿しているのか。
そして67歳の夏、パリのアパルトマンで自らの命を絶った。新作の書体が出版社から斬新的過ぎるとして発行されないという手紙を受けた直後だと言う。 -
そう、カッサンドルが最後までこだわり続けたのが書体。タイポグラフィにおいてもカッサンドルは先駆者だったんだ。
「ラディカルであるがリーダブル」
つまり斬新で芸術的であっても理解しやすいという。かっこいい! -
ミュシャもカッサンドルもフジタも、芸術家って生き物は繊細で時代に翻弄される宿命のようだ。いや、繊細でなければ一流にはなれないんだろうな。
などと考えつつ、夢美術館を後にした。カッサンドル展は6/25まで、お勧めだよ! -
外へ出て甲州街道を上っていくと、八王子には老舗がいっぱいある。八王子の新井呉服店と言えばほら、ユーミンの実家ですよ!さすが100年も続く呉服屋にはユーミンのユの字もない。娘で売ろうなんて思ってないよ。
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並びの山田屋はオシャレな陶器屋。
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もう少し行けば団子の伊勢屋。お団子や稲荷寿司など、買ったものを中で食べられるよ。
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ユーロードに戻って来た。ここは中町公園。たしかこの辺に八王子芸者と遊べる花街があるはずだが?
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ここ?分かりずらいなぁ。中町公園から南に入る路地だ。
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あったあった、黒塀通り。なになに、スマホでキャラクターが動く?時代だねぇ。
かつての八王子は200人も芸者衆がいたんだそうだ。いまは20人足らず・・・ -
花街も廃れる一方だったが、H21年に観光地として再整備したようだ。確かに黒塀は真新しい。
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おっ、その向こうに綺麗どころが歩いてるじゃないですか。歩き方が粋なんだよねぇ。
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彼女はこの料亭から出てきた。
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正直、お茶屋はそんなにずらっと並んでいる訳じゃない。中町界隈でも居酒屋や普通の住宅に並んで数軒を数えるばかり。
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でも頑張っているよ。応援したいけど芸者遊びってどうやるの?
いけね俺、酒を飲まないのを忘れてた。 -
カランコロンという下駄の音が似あう街並み。
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花柳界ってくらいだから、柳の木が似合うよね。
花柳界は中国語の「花街柳港」が語源で、おそらく柳はそれにちなんで植えられたのだろう。でも芸者の帯結びを柳結びって読んだり、柳腰なんて色っぽい言葉もあるよね。名は体を表すってか? -
ちょいと見には普通の家のような料亭の造り。
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おやぁ、ここは何だ?
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「座敷でござる」なんてぇデカいポスターも貼ってある。しかも遊んでいるの外人だし。
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なるほど、八王子三業組合「中町俄」か。
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玄関脇にはお稲荷さん。定番だよね。
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小さな花街だけど、大事にしたいな。八王子の旦那衆、頑張って支えてね。
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マンホールも粋じゃあないですか。能?狂言俄?
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さて、そろそろ帰りに向かいますか。
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新しい商店街のユーロードにも老舗が多い。ここは染め屋。その他にも鰹節屋とか仏具屋とかが並んでいる。
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「昔ながらのラーメン竹の屋、お腹が空いてたら食べようや」
by ファンキーモンキーベイビーズ
そっか、ここにあったんだ。 -
「カジュアルウェアのキクマツヤ、きっと何か欲しくなるさ」
in 八王子純愛物語 -
でキクマツヤで欲しくなったのがコーヒー。この2階がコーヒーショップになっている。
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これが1杯120円でちゃんとしたテーブルでゆっくり休めるんですよ。
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カッサンドルから花街まで、八王子は懐深いよ~。
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