2016/11/03 - 2016/11/06
4位(同エリア158件中)
gyachung kangさん
- gyachung kangさんTOP
- 旅行記53冊
- クチコミ58件
- Q&A回答20件
- 71,516アクセス
- フォロワー51人
祝日に有給休暇1日を併せて4日間週末トリップをプランする。私が10年前に編み出した旅パターンだがこれ、旅程アイデアを組み立てるのが実は面白い。時には夏休み旅にも劣らない歯応えのある旅が出来上がる場合もある。
んで今年。仕事の手をちょいと休めて秋真っ只中、中国は福建省に飛ぶ。
旅の目的地は福建土楼。米国の偵察衛星がミサイル発射基地では?と慌てふためいたという数百年前に泥で塗り固められ今も現役の住居というアレだ。
私の世界遺産行脚通算第97弾となる今回の福建土楼。その破壊力は凄まじく大陸間弾道ミサイル級でありました。
ああ、中国、畏るべし畏るべし。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 5.0
- 交通
- 3.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 5万円 - 10万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 船 徒歩 バイク 飛行機
- 航空会社
- 中国国際航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
旅の基点は福建省の大都市アモイ。漢字で厦門、中国語でシアメン。
文化の日に羽田→北京乗継。毎度のこととは言え大混雑で肝を冷やす北京トランジットを突破し厦門には14時過ぎに到着。だが土楼エリアへはビザが必要かと思うくらい手間がかかる。強行して途中で日没の最悪事態だけは避けたい。
この日は市内一泊し翌朝早朝に鉄道の厦門北駅に向かった。写真のようなバカでかさ、空港にしか見えない。 -
行き先は南靖。窓口で今天一位をリクエスト。私が話せる数少ない中国語を駆使してチケットを購入した。
土楼で一番ポピュラーなのは永定県の土楼群だが今回私が狙ったのは南靖県エリア。こちらのほうがまだまだ観光客が少ないらしい。
それなら当然南靖チョイスでしょ。 -
待つこと2時間。9時19分発の和諧号が滑り込んできた。
中国の改札は常時開けていないので定刻15分前に乗客皆が一斉にホームへなだれ込む。まあ人が湧く程いる中国では安全対策上こうするのは理解できる。
実際に座席は満席。
当日チケットが買えてツキがあった。 -
40分足らずで南靖に到着。
中国版新幹線ここまでは早い。素晴らしく早い。さすが世界第二位の経済大国の面目躍如と感嘆。
なんですけど。。ここからが遠い。泣けてくる程に遠いのさ。 -
駅を出て右方向に歩くとくたびれたバスが待っていた。
行き先表示は聞いたことのない地名が。おばちゃん車掌に「塔下村に行きたいんだけど」と尋ねると大丈夫だからサッサと乗れとの返事。
私が苦手な中国公安を彷彿させる緑色のこのバスに乗り込む。百合子グリーンとはエラい違いだ。4元。
観光客?私以外にいるわけがない。他は全員地元南靖の方々。 -
窓の外にバナナ畑が広がる景色の中、緑バスで20分。まず南靖市内のバスターミナルに着いた。ここで下車し今度は田螺行きのバスを探して乗る。20元。
バスは街中を走り正午前、中途半端な繁華街に到着。ここでドライバーの昼飯休憩に付き合わされてから再出発。
やがてクネクネした山間部に入り山奥にたどり着いたのは既に14時近く。
目の前にやっと集落の入口らしきところが現れた。
すると何やら行手の先に‥… -
出た!
土楼。しかも堂々とした風格ある土楼。
このエリアでピカイチと評判の王様土楼的存在の裕昌楼ではありませんか!
私は心の準備が出来ていないまま不意打ちの初対面。いやいや旅にはこういう驚きがあってもイイ。 -
今すぐこの裕昌楼の中に入ってみたいところだが。
私はまだ今宵のお宿にチェックインしていない。数日前にサイトで予約を入れた土楼ホテル探しを優先する。
この塔下村のどこかにあるはずだ。 -
裕昌楼の前を流れる清流で犬を洗っている女性が。こんな牧歌的な光景はウチの近くの多摩川では見た試しがない。
のっけから土楼ワールド絵巻が展開。 -
舗装された道は一本のみ。
念のためスマホを開いて土楼ホテルの住所を確認するが肝心な時に受信状態が悪いのかマップが全く開かない泣。
もう標識に従って塔下村を歩いてみるしかない。 -
リュックを背負って道を進む。
ポツリポツリと家屋が並ぶこのあたり。やっぱりどこかしら土楼風。 -
バナナの木だらけ。予想外の景色だ。
ほぼ無人の一本道の途中に雑貨屋が現れて千載一遇の質問チャンス。店のオヤジに尋ねると「ああそこならこの先。サンコンリ。歩いて行けるよ」
ええっ!サンコンリって3公里?
それって3キロ先つーことですか?
なあ? -
3公里とは。
土楼、手強し。近年にない強敵である。朝5時半に起きてアモイのホテルを出発してもう午後3時近く。未だホテルにチェックインできないとは。ううう。
遭遇したアヒル一家に頂戴したアニマルセラピー効果も20秒しか続かない。 -
小学校らしいぞ。
-
ちょびっと寄り道した脇道にはこんな見事な石橋も。
-
おっと、こんなところに宿を発見。
しかしここではない。 -
生活の匂いは充分にあるんだけどねえ。
ホントに人の姿が見当たらない。
まだ先なのか。 -
と思ったら人間の代わりに行手にこの二匹が現れた。
私の後をついて来るのだがこっちが近づくとピョコっと逃げる。
よし、君たちは今日から土楼犬のクロとチャチャだ。私が名付け親。 -
川の向こうに祠堂が見えて
-
この橋を渡る。
もう2キロくらい歩いてるけど
私の土楼は、ねえ、どこに? -
あのなあ~
とうとうこんな景色になってしまった。中国交通網の最終兵器、頼みの綱のバイク白タクの音さえ聞こえない。
ホントにさあ、この先に人が住んでるのか。返事をしてくれ土楼。 -
中華人民共和国福建省の南靖県塔下村の山奥一本道を地元オヤジの言葉をひたすら信じて進むこと3キロ。
吹けば飛ぶような集落にようやくたどりついて私の目の前に予約サイトで見たのと同じ土楼ホテルが現れた。
やった、やったよ。 -
んだ。ここである。
到了 ダオラ! 到了 ダオラ!
もはや口をついて出る言語は中国語。
厦門の街からここまで来る間に地球半周できるんじゃないかと疑う奥地。
福建省のサンチアゴ・デ・コンポステーラ、この秘境に自力でたどりついた自分に植村直己賞を授与してあげたい。
そんな心境、ええ。 -
門を入るとドーン。
ここは写真で見なれた円楼ではなくて
四角い方楼である。
レセプションにスタッフが待ち構えている。そんなことを期待できるわけがなく私が土楼に入ると外でスマホいじりをしていた男性があ!お客さん?てな感じで追いかけてきた。
私の予約画面を見ながら「日本からの予約、大丈夫入ってるよぉ」と男性。
一泊188元。料金だけはしっかり合っておる。チッ。 -
ふーん。
こんな感じか。どうやら全て現役第一線の実用品。演出小道具ってわけではないようで。
飾りじゃないのよ酒壺はハッハ~ン -
言うまでもないがエレベーターはあるわけがなく階段で3階に案内された。
で、これが今夜の私の部屋。
土楼らしく壁は塗り壁、窓は小さいのが一箇所あるのみ。壁掛け液晶テレビと室内シャワーは完備。トイレは水洗で安堵する。
建物を維持しながらゲスト向け改造。これならOK。頑張ったじゃん笑 -
戸締まりはこうだ。
部屋内からは超原始的な木板のスライド式。確かに寸分のすき間もなく扉は動かないが何しろ一重セキュリティである。
因みに内線電話は無い。内線電話が無い宿はヒマラヤの山ん中以来になる。
塔下村はヒマラヤ級かよ。まあいい。
用があったら廊下に出て大声で叫べば何とかなる。 -
築265年が売りのこのホテル。
そのはるか上を行く強豪がひしめく土楼業界の中ではまだ若造の部類だろう。
が私にとってはこれほど古い宿にかつて宿泊したことはない。投宿ホテルの古さバッケンレコード更新、あっさりキャリアハイだ。
中庭を見下ろしてみた。
ゲストの影もカタチもゼロ。
今宵の宿泊客は間違いなく私だけだな。土楼貸し切り、生涯に残る体験。
それがいいのか悪いのかはとりあえず考えないことにする。
中国で旅行を楽しむ極意は物事を深く考え過ぎないこと。うん、私もたまにはいい事を言う。たまにね。 -
部屋でひと休みする。だがこれから再び来た道を折り返して裕昌楼まで見学に行くほど私の体力も残っていない。
ということでこのご近所にある、ガイドブックに載ったことすらないであろう無名土楼を訪問してみる。
私の土楼ホテルから徒歩5分にこの土楼があった。名前は徳昌楼。
おいおい、ちゃんと立派な名前があるですよ。こりゃまた失礼しました。 -
中に入ると。
4層の円楼。中庭に増築しまくっているあたり日常生活感がほとばしる。 -
階段を発見。上の階に上がってみよう。中庭には住人が数人いたが私が来ても誰も気にする素振りもない。オープンマインドなのか関心がないのか或いは私も住人に見えたのかは不明。
では勝手にお邪魔します。 -
ザ・カオス。でも想定の範囲内。
この程度では何も驚かない。これまで中国は十数省見てきたけど、漢族の人は基本お片付けには情熱を傾けない。あるがままにする主義だ。これが私の分析。
中国人のカリスマ収納アドバイザーなんて向こう200年登場することはないだろう。賭けてみる? -
2階廊下。窓格子の中で人の気配がする。やっぱり現役マンションだ。
ところがですね。この回廊を歩いていると、何やら臭ってきた。いや、これは確実に臭い。おかしいなー?もしやひょっとしてと床に置かれたツボを見ると…
Oh No! 黄色い液体で満ち満ちている。うおおおお。土楼は私の想定の範囲内をあざ笑うかのようにいとも簡単に跳び越えていた。ひぃぃ~ -
観光客向けではないから柱も戸板もお肌に艶がない。ま、仕方ないか。
-
土楼の入口を見ると住戸毎に分電された電力メーターが設置。使用分に応じて負担する仕組みならば普通に納得する。
けれど、そもそもスマホを充電する生活と小用のために廊下にツボを置きっぱなしにする生活が共存していること自体が 21世紀にあるとはなあ、おい。
世界の七不思議のうち実は五つくらいが土楼にあるんじゃないの?激しくそんな気がしてきた。
やい土楼、まだ何か隠してんだろ? -
ああ、そういや君もここにいたねえ。
犬にとって福建省に生まれたことはハッピーだと思う。ここは安泰だ。広東省で生まれていたら恐らくそんなノンビリしていられませんよ。 -
ご近所をウロウロしているうちに陽が暮れた。ここは塔下村の外れ集落。
外食できるところなんてあんのか?と焦り、灯りがともっていたこの店に押し入る。ガレージにしか見えないけど。
時刻は6時半だがシャッターを下ろしたところ無理を言って夕飯食べたいアピールをすると店主のお父さんは『有有!』ありがたくお許しが出た。 -
調理係はお母さん。
料理が出来上がるまでこの巨大な夏みかんもどきの果物がサービス。
写真では分かりづらいがサッカーボール位の大きさ。ホントですよ。私は初めて見た。味も美味。 -
で食後お父さんがお茶を淹れてくれる。ここは中国福建省。福建省と言えば世界にその名を轟かすお茶である。
地の果てのような山奥の土楼村。
そのまた外れで中国伝統の茶の道を慣れた手さばきで見せてもらえた。私はこういうのにグググ~ッと来る。 -
この店でたまたま私と一緒に夕食をとった2人。
遊びに来ていた厦門大学の学生カップルだ。少しシャイで真面目そうな2人は仲良く同じ麺を食べていた。初々しいな。私も昔を思いだすよ笑 -
さて食事についてこの日もう一つレポートがある。
塔下村の入口に到着直後バスを降りた私は裕昌楼のすぐ近くで営業していた食堂を発見、昼食を食べようと迷わずその店に飛びこんだ。
店のオヤジは腹が減っているオーラ満載の私に『烤鸡』あたりどうだい?と薦め私もオヤジの薦めに乗った。
まあ普通、鶏の炒め物を想像して待つ。
暫くしてオヤジがお待たせ~とアツアツの料理を運んできた。
おっ旨そうだわ、やったあ! -
料理に箸をつけようとしたその瞬間、
目に飛びこんできたものは。
え、にゃに?おいおい!もしかして
一羽まるごと?ア、ア、アタマまで入ってるんですけど~! 不要!不要!
正直5秒間くらい気絶していたと思う。
いやそれくらいの衝撃波であった。 -
この通り。
味付けは世界三大料理の国、さすが中国お見事。美味しいです。
だがね、私は日本人、トラじゃないんだからやっぱココは食べれんとよ、ね。
土楼の村塔下村から着いた早々に食らった強烈な先制パンチ。私もまだまだ鍛練が足りないようで。
ところで脚は一本しか入ってなかったなあ。もう片方はオヤジどうしちゃったんでしょうかね。食べちゃった? -
夕飯を食べ終えて外灯ひとつない真っ暗夜道を帰る途中、こんな時間に屋外麻雀に盛り上がる村民。
なんと雀卓は電動だった。あのさ、電動雀卓を買う前に外灯をつけませんか村民よ?ねえ?
でもこれだけは言える。
この土楼村は間違いなく平和である。
この光景で確信したね。 -
ホラー屋敷、あ、いや、お宿に着いた。
すんません、開けてくださあい、なんて大声を張り上げなくても大丈夫。
開いてるから。この村ではセコムもアルソックも営業しても無駄である。
扉の両サイドには毛主席と書かれていることに気がついた。まったくもう、
もうたくとう、と呟いてみたくなる。
兎にも角にも土楼の夜は静かに更けて
行くのでありました。 -
塔下村にも朝が来た。
夜中に得体の知れない魔物が現れとって喰われる確率も5パーセントくらいはあったと思うが平穏に夜は明けた。
土楼ホテル一館貸切宿泊、おそらく日本人初の快挙を成し遂げた私は目覚めもよく6時過ぎに起床。
よく頑張ったよ君。
土楼ホテルの門を出るとそこではリヤカー肉屋が朝の営業を開始。中国の朝は早い。村民の一日は始まっていた。 -
早上好、である。
この一本道が昨日歩いてきた道。この道を裕昌楼がある村の入口まで歩いて引き返す。塔下村の中では公共の交通機関が無いというのが私の結論。路線バスもタクシーも結局一台も見かけることはなかった。ここはそういう村。 -
文化大革命時代のスローガン?が朝日に照らし出されている。土楼ではない家屋も年季の入り方は相当なものだ。
-
やっと村の入口まで戻って来れた。
下坂革命老区村、とある。星マークが三つ。ミシュランの評価基準なら最上級だが人民政府基準ではいいのか悪いのかサッパリわからんの笑 -
来ましたよ。
裕昌楼に。
裕昌楼のキャッチコピーがまた笑う。
『東に歪んで西に斜めって700年』
なんちゅうコピーや。ホンマですよ。 -
中に入る。
典型的な円楼。広いし大きい。
中庭の中心にあるのがいわゆるお堂。
だが仏像はなく仏教のお寺でも道教寺院でもない。おそらくこの地方古来からの土着信仰だと推測する。 -
建築は1308年。てことは築708年の共同住宅、しかも完全なる木造住宅。
日本的な常識ではあり得ない。
確か日本では元寇が1274年、1281年。つまり鎌倉時代の末期頃に当てはまる。更に言えばアメリカ大陸がコロンブスに発見されるはるか以前からこの裕昌楼に人が住んでいることになる。
凄すぎる。中国の闇、あ、いや歴史は深過ぎて想像を絶する。 -
この裕昌楼が特別有名な理由は実は古さではない。アップで見るとよくわかるが建物を支える柱が垂直じゃなく右に左に傾いている。ハナから傾けて建てたのか長い年月の間に傾いてきたのか、どちらかは不明。長老にインタビューしたいところだが私の中国語力ではそれも無理。もし最初から傾きを企図して建てたのなら天才設計士か天才大工の為せる業と呼ぶしかない。
実際、鉄や金属素材による補強跡も無さそうだ。なぜこの危なっかしい木造建築が700年も耐え続けているのか謎が過ぎる。全くチャイニーズミラクル。 -
中庭はモザイク状の石畳
-
ミニ石橋は子どものため?お年寄りのため?
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上下階をつなぐ階段。
昨日見た徳昌楼とほぼ同じくらいのワイド。家具の上げ下げはこれで間に合うということだろうね。 -
洗い場もあるし
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料理の仕込みもこの中庭で。
昨日それと同じものいただきましたな。一部は残したけど笑 -
いろんな物が露天に並んでいる。
自家用か販売用か、全くもって区別はつかないがおそらく両方。
福建省の経済を四千年支え続ける?最強商材の茶葉。 -
生姜。
掘り立て。中国って本当にワイルドな世界だと思う。 -
これはアレでしょう
って日本語になってないス。
そうだ朝鮮人参。だよね。 -
奥にあるのは瓢箪に似ている。
手前のがわからん。サッパリわからん。
カタチだけ見れば明らかにインゲン豆なんだがこれがインゲン豆ならこの村にはガリバーがいることになっちまう。
やはり中国の闇、あ、いや自然は懐が深い、深過ぎて想像を絶する。 -
そしておばあちゃん。
ああ、おばあちゃんは売ってないですよいくら治外法権土楼自治政府と言えどもそれは無い。
でもこのおばあちゃん、朝から何やら瞑想に耽ってますね。いや眠ってるのか? -
おお
今や伝説の主席のポスターが。
生前最凶の権力を中国全土で振るいまくった主席もこの土楼だけは実は権勢が及ばなかったんじゃないですかねえ そんな気がして仕方がない。
そう言えば中国共産党中興最大の立役者である鄧小平は客家の生まれ、つまり土楼出身者である。土楼を目の当たりにして納得、持って生まれたタフネスさが違うのだと思う。
私たち日本人はへなちょこ精神を鍛え直すために土楼合宿を検討してみたらイイかも知れない。ウ~ン我ながらグッドアイデア。
どうですか文部科学大臣! -
規模が大きいため建物の内側からだと全景が一枚に収まりきらない裕昌楼。
でも円楼ならではの屋根のエッジが作るアーチの美しさはよくわかる。
土楼に暮らす人達の生活文化を初めて知り衝撃の連発であるが、建築作品として見ても土楼は世界屈指の異色中の異色では。
裕昌楼は700年生き残っている奇跡の建築、これに比べれば今話題のトランプタワーなど50年先あるかどうかも怪しいお子様ビルみたいなもんである。 -
裕昌楼を後にする。
最後に外観の様子を至近から。
元々土楼式住居を作った目的は外敵からの防衛と聞くからこの姿を見れば誰もが納得が行く。高さと壁の厚み、鉄壁の守備力と見える。これなら外敵や盗賊団のみならずクマやトラも突破できない。
土楼はとてつもなく手強い。いろんな意味で。 -
さて、裕昌楼の見学に満足しこの後はいよいよ究極の土楼銀座である田螺坑(でんらこう)土楼に向かうのだがここで大事件が起きた。
命とパスポートの次に大切な愛用カメラを不覚にも石畳の上に落としカメラは負傷。電源を入れてもウンともスンともアンとも言わなくなった。まさかの戦線離脱。塔下村の惨劇である泣。
不幸中の幸いで私は常にバックアップ用としてフィルムカメラ一機をバッグの底に忍ばせていた。ピンチヒッター起用で惨劇を乗り越える。
従ってここから後の写真は全てフィルム撮影版でお届けする。 -
塔下村の入口から3キロ程離れた山あいに田螺坑土楼がある。
ずっと登り道になるためここを徒歩で向かうのはしんどい。タクシーも皆無の中昨日私に衝撃の鶏料理を提供してくれた食堂のオヤジに相談したところ快諾。
50元で話しはまとまり店の車で送ってもらうことに成功。
こんな融通があっさり効いてしまうところが中国の闇、あ、いや社会の柔軟性。
柔軟性があり過ぎてこれでええんか人民共和国!と言いたくなるが、念願の田螺坑に着いたんだからま、いっか。 -
幹線道路から枝分かれする横道に入って300メートル位進むと土楼の集落が現れた。塔下村は山と山の間、谷底にある集落だったがこちらは山の斜面にへばりつくようにある土楼集落。
だから見晴らしが素晴らしくいい。
観光客が必ず訪れるホットスポットだ。 -
こんな風情である。
-
田螺坑は一つの方楼と四つの円楼が狭い場所にギュッとひしめき合っている。
その中で最も観光客を集めるのがこの写真の文昌楼だ。それにはちゃんと理由がある。 -
ご覧のように屋根のアーチが湾曲している。つまりこの文昌楼のみちょっと珍しい楕円形の土楼。
最初に作る時にどのカタチにするのか、それぞれ理由があったに違いない。
土楼の成り立ちを調べるのはかなり面白いかも知れないねえ。 -
中庭にたくさんの人がいる。
もちろん文昌楼の住人。
やや錆びれた徳昌楼、やや観光化された裕昌楼と比べてごく一般の生活シーンがライブ展開。ナチュラルな活気がある。イキイキしている。 -
真っ赤っかの赤唐辛子の天日干しや
-
バナナ。何で干すのかはわかんないけど
だが福建でこれほどバナナが取れるとは驚きだった。対岸の台湾産バナナは日本でも大人気。地理的近さを考えればなるほど~となる。
実際に福建省の気候の良さには正直惚れた。11月のこの季節でポカポカ、持っていったダウンジャケットは全く出番がなく半袖でも充分そんな温度感。 -
野趣に富んだキノコもあるでよ。
これね絶対高いと思う。 -
土楼内での子育て現場にも遭遇できた。
お年寄りは確かに多いが小さな子どもたちも多く元気良く遊んでいた。少なくとも見た感じでは日本的な限界集落のような暗さは微塵もなかった。 -
これが田螺坑の文昌楼。
そう言えば文昌楼の中庭にいた時、上空をドローンが飛んでいた。土楼の全景を撮影するためにはドローンからの撮影が最適だよね。間違いなく。
土楼でドローン
お時間が来ました。
笑点このへんでお開き! -
文昌楼の目の前には気持ちのいいパノラマの景色が広がっている。
この景色の中で毎日暮らしているここの住人がちょっと羨ましい。
ストレス?それは何?って感じだろうね -
田螺坑土楼に来た観光客はこの場所に立ち寄らなければ帰れない。
土楼の裏から続く階段を登りきると五つの土楼がいっぺんに見渡せる展望テラスがここ。一番向こうに見えるのが文昌楼 綺麗な楕円形の姿がわかる。
土楼を望むなら世界最高のスポットがおそらくここだろう。ウン、数々の試練を乗り越えて来た甲斐があったよ。
ついでに。この場所を軍事衛星で発見した米国の国防省がミサイル発射の秘密基地ではと感違いしたのは有名な話。
こんな壮大なトリックを企図もせず仕掛ける国、それが中国。
嗚呼中国、マジで畏るべし! -
山の階段を行き来したらくたびれた。茶屋で小休止する。
湿気もなくてこの爽快な気温。いい干し肉が出来上がるよ。
別荘を買うならこの田螺だな。
1万元くらいであれば購入は可能です笑 -
かようにして私の田螺坑土楼の探訪は幕を閉じた。濃密だった。
この後、帰路用のタクシーをチャーターしていない私は絶妙のタイミングで山道を通りかかったバイクを捕まえ交渉。日中の商談は僅か15秒で成立。運賃50元で真っ黒に日焼けした地元オヤジの後部座席に跨りバスが走る町場のバス停まで帰還。南靖市内→鉄道南靖駅と乗り継いで無事に!厦門の大都会へと戻ることができた。
サバイバルゲームじゃないんだけど生還できてよかった。
冗談ではない。本心であるよ笑 -
さてさてここからは番外編。
今旅の目的地は南靖県土楼群エリアであったが、その足掛かりとした街は厦門であった。そんなわけでこの機会に厦門についてプチご紹介しておく。
厦門の市内には結局2泊した。滞在した時間はごく僅か。観光らしい観光もしていない。だが先に結論を申し上げると観光客が気分よく滞在できるたいへん良い街であった。これが私の感想。
写真は市内の南にあるお寺、南普陀寺。千年の歴史がある厦門随一の古刹とのこと。着いた初日夕刻にお参りした。 -
見栄えのする千手観音と対面。ここで旅の一路平安をお祈りした。
私は世界どの地でも必ずお祈りをすることにしている。お寺でも教会でもモスクでも厭わない。今回もそのお陰で魔境のような土楼村から凱旋できた。 -
境内から見える風景。
これまで中国の古刹を数々訪れてきたがこの南普陀寺は湿っぽさが無い。欧米諸国や日本の共同租界地として発展を遂げた開放感と一年を通じて穏やかな気候の空気感がお寺の中までも漂っている、そんな印象。実際トロピカルな感じ、するでしょう? -
これは厦門市内で宿泊したホテル。
バルコニー付き。中国人の現代的センスは時として首を傾げたくなるような場合もある中でこのお洒落感は日本でも難なく通用する。ちょっと驚いた。 -
外観もイケてる。洋館をミニホテルに改築したような趣きだが港区の麻布や白金あたりにあっても全く違和感はないでしょう。
-
さらに。
厦門市のメインランドから船で30分程の海上に小さな島が浮かぶ。
これがコロンス島。一度くらい名前を耳にしたことがあるかも知れない。 -
コロンス島へは厦門島の埠頭からフェリーに乗る。
私は土楼から市内に戻ったその足で埠頭に直行、17時半発の最終の渡しに運良く間に合い飛び乗った。
居心地が良さそうな直感が湧きどうしても行ってみたくなったのである。
旅の道中欲張りは禁物と戒めているんだけど。まあ呼ばれたんだなあ。 -
コロンス島に上陸した時、島は既に陽が落ちていた。波止場周辺は真っ暗だ。
この島は環境保護のため高層ビルも無いし歩いて廻れる程の小島なので自動車も禁止。よって暗闇の夜道をホテルまで自力で行くしか他はない。
なんとか狙いをつけていたホテルを発見しチェックインに成功。ホテルのレセプションでこの旅初めて流暢な英語を耳にしてなぜだか感動した。
800元のバリューが心に染みる笑 -
コロンス島で朝を迎える。
写真がこの島で選んだホテルの外観。値段以上に格式を漂わせ雰囲気もなんだかホテル・カリフォルニアの世界である。昨晩の塔下村の土楼ホテルはまぼろしだったのかもしれないぞ。 -
ホテルの庭園からはコロンスの街並みが望める。緑に溢れふらっと寄りたくなるようなカフェも多く人もギスギス感がない。こんな島があの中国にもあるんだねえとビックリした。
-
この島には有名なランドマークがある。
巨大な銅像。人物の名前は鄭成功。
明の政権が滅び清朝を樹立した満州族の支配に対し最後まで抵抗した指導者。つまり中国の現支配民族である漢族にとっては英雄的存在の偉人。そして鄭成功の母親は長崎平戸の日本人。彼は日漢ハーフである。この史実は日本でももっと知られてもいいのではと思う。 -
足元から見上げる。とにかくデカい。
一年に何回かよく晴れた日には香港からも見えるらしい。
本気にしたらダメですよ。 -
この旅行記最後のレポート。
着いた初日、旅情豊かな厦門の街で夕食どころを探し歩いた私は一軒の店を見つけた。市内一番の繁華街中山路からはやや離れた路地の角地で営業している食堂である。 -
店の規模は小さいが煌々とした明かりに照らしだされて鮮度バツグンの食材がズラリと並ぶ海鮮食堂であった。
こりゃ美味そうだ。よし、今夜の夕飯はここに決定。 -
カニあり
-
ザリガニあり
-
カブトガニあり。
よりどりみどり。
甲殻類好きにはこりゃたまらん。ん?
ん、カ、カブトガニ?
それって日本じゃ特別天然記念物…ス… -
あ私?
私は甲殻類以外のシーフードを頼んだ。なんなんだよお前とかは言わないで。
旨かったからまあいいじゃ~ん。 -
このお店は軒先にテーブルを置く路上営業の店であった。私の料理が運ばれてくると少しばかり傾いていたテーブルを水平に戻すため地面と脚の間にササッと小皿を挟んでくれた。
『没問題吗? 問題ある?』
私の顔を見ながらニヤッと笑う店のおばちゃん。多謝、オッケーですよ。
こうして厦門の名店に決定となった。
え店の名前?申し訳ない。覚えてない。なんなんだよお前とかは言わないで。 -
そんなこんなで番外編もおしまい。
厦門の心地よい夜風に吹かれながら衝撃の連発であった土楼村の悪夢、あ、いや体験を思い出してみる。
こんな旅も案外悪くない。
いえいえ世界広しと言えどこの唯一無二感はそうそうない。特筆クラスかと思います。皆様いつの日か是非お試しの程。
それでは再見再見!
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この旅行記へのコメント (6)
-
- PHOPHOCHANGさん 2017/11/28 23:03:19
- またまたお邪魔しましたw
- 良いなぁ、こういうの☆メッチャ楽しかったです~っ、はい!
自分は昔(何だかいつも)土楼はツアーで行ったのです。データが見つからず、旅行記にはなってません。
厦門北から和諧号に乗ったのは先月でした。ホント馬鹿デカい駅でしたよね。
また、何処かでかぶるのを楽しみにしております♪
- gyachung kangさん からの返信 2017/11/29 22:07:09
- Re: またまたお邪魔しましたw
- PHOさん
再びご来訪いただきありがとうございました。
私も長い休みは年に何回もはとれないので貴重な4日間旅行は目一杯楽しもうと駆けずりまわる方ですがPHOさんには脱帽、チャレンジっぷりがお見事です。
おまけに観察力が私の10倍、和諧号が川重とボンバルディアの2タイプあるなんて知りませんでした。
中国の朝食が◎というのも全く同意です。
次の推奨スポット情報ひそかにお待ちしております。
-
- アルカロイド ダリルさん 2016/11/27 11:57:09
- はじめまして~!
gyachung kangさん、こんにちわ~!
はじめまして、ダリルです!
700年前の木造建築って、スゴいですね~!
太古に降り立った、宇宙船みたいな貫禄!
行きたいけれど、中国語のお勉強を五年くらいしないと、アクセスできなさそうですね~?
おはようと、いくら?しかできないダリルには、まだまだ遠そうです!
生まれて初めて、外国人の友だち(台湾人)ができ、スマホの翻訳機能を使って、必死にLINEしています! 2週間後に、彼女のコンサートを見に行く約束をしたので、それまで台湾語を少しでも、詰め込もうと知恵熱中です!
これからも、ちんとーとーくぇんちゃお!
よろしくお願いいたします!
- gyachung kangさん からの返信 2016/11/27 17:23:33
- Re: はじめまして~!
- アルカロイド ダリルさん
こんにちは
投票ありがとうございました。
またコメントもありがとうございます。
翻訳機を使って勉強されているとのこと、素晴らしい!
旅行してるとよく見かけますが外国の方は翻訳機の利用が進んでますよね。特に中国あたりは皆ガンガン使ってるように見えます。日本はかなり遅れてるのかなと、これは私も含めて痛い反省。
台湾、楽しみですねえ。私も随分ご無沙汰しているのでそろそろ行きたくなっております。
ダリルさんの旅行記もお待ちしております。今後もよろしくお願いします。
-
- mayたんさん 2016/11/26 20:05:35
- 宇宙船?
- こんばんは。福建土楼行かれたんですねー。
私も気になってるんです。
しかし木造建築のあのデカさで、700年も持つというのは、今の手抜き工事の中国からは考えられないですね。(日本も時々そっか…)
昔の中国の良さはどこにいってしまったんでしょう。
しかしあの形からして、秘密基地と米国が間違えたのは無理もないかも(笑)
カメラは復活しましたか?
フィルムカメラも味があって、いいですね!
- gyachung kangさん からの返信 2016/11/26 22:20:07
- Re: 宇宙船?
- mayたんさん
こんばんは 山の調子も良さそうで何よりです。
カメラは修理を相談したんですけど悲しいことに再起不能で引退となりました。幸いレンズは無事なのでボディだけ格安購入。ラッキーにも展示品のディスカウントがありました。まあね、物には寿命があるから。旅の記憶は永遠に残るけどね。
南靖土楼のワイルドライフ、期待を上回って面白かったですよ。永定や華安はまた違うのかもしれない。
人も素朴で南靖から高鉄の駅まで交渉制でタクシーに乗り、いいドライバーだったので約束より少し多く渡したら絶対ダメだと言って受け取らなかったり。
mayたんさんならこのエリアも適応できるでしょう、おそらく笑。
4日で宿泊までできることを証明したんでいつの日かのご参考に。
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