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1月18日の午前中、熱海は凍てつくような寒さだった。前日からの雨はまだ止んでいなかった。雪の越後から春を求めてやって来たのに、どうして」、なんて天竺を恨んだが、私が期待していた、桜の花は咲いていたのである。街中の糸川という小川の両岸に所狭しと咲いていた。例年は1月下旬から咲き出すのだが、今年は12月が高温だったため10日も早く咲きだしたのだそうだ。<br />  「熱海桜」、これは熱海に咲く桜全部を指しているのでない。桜の品種なのである。熱海にこの濃いピンク色の桜が咲きだした由来が面白い。二つの説がある。 一つは明治30年代、、「カンヒ桜」と「山桜」が突然変異起こして新しい桜の品種ができたという説。 もう一つは、明治34年。インド原産の寒桜の苗木をイタリア人が持ち込んで植え、桜から種を採って増やしたというグローバルな説である。 外国の桜が大好きな私にとっては、こちらを支持したくなる。 熱海桜の特徴は開花期間が染井吉野より長いのだそうだ。<br />  熱海にもう一つ、国際色豊かな桜があるのをご存知だろうか。それは熱海高校の近くに咲く「ヒマラヤ桜」である。私は桜の起源はヒマラヤ説を支持しているので、「桜は今、世界のどこかで咲いている」を出版する時、是非、熱海のヒマラヤ桜を入れたいと2010年10月28日に訪れた。<br />  熱海のヒマラヤ桜の資料を集めている時、その経緯を知って感動し、そして、悲しんだ。ネパール国のビレンドラ皇太子は50年前。東京大学に留学されていたのだが、留学中、熱海を訪れた時、ヒマラヤ桜の種を数十個をお土産に下さった。その種を発芽させて、現在のような大木に成長したのだそうだ。日本からも染井吉野や八重桜を贈った。、皇太子は花が好きな優しいお人柄で、ネパールの国民からは絶対的な信頼を得ていた。やがて、国王に即位されて間もなく、暗殺されてしまったのである。宮廷に植えていた日本の桜は全部、伐採されてしまった。 私が熱海のヒマラヤ桜を訪れた日は晴天だった。抜けるような青空が広がっていた、ヒマラヤ桜に向かって、ビレンドラ王の冥福を祈ると、どこからともなく、「ピィッ ピィッ」という鳥の声がしたのを今でもはっきり覚えている。 その時、私が詠んだ歌が 「空に映ゆ ヒマラヤ桜の 優しさは ビレンドラ王の 心のこして」だった。<br /> 氷雨の中の熱海桜を観た後、タクシーでMOA美術館を訪れたのは11時頃だった。瑞雲卿と称する一つの山が美術品に満ちているのである。私は過去2度この美術館を訪れたことがある。スケールの大きさと大自然と調和した館(やかた)が好きなのだ。展示されているものも素晴らしい。国内の博物館や美術館でこれだけの規模の大きいものは少ないと思う。<br />  初めて訪れた多くの人は公立の美術館と思うだろが、これは私立美術館である。もっと詳しく言えば宗教法人世界救世教が運営する美術館である(教祖岡田茂吉氏) MOAの美術館名は Mokichi Okada Association のイニシアルから名付けたのだそうだ。<br />  この宗教の理念の一つに芸術活動がある。案内書によれば「美術品は独占すべきものでなく、多くの人に見せ、人間の品性を向上させることこそ、文化の発展に寄与する」(抜粋)と書いてあった。 国宝3点、重要文化財65点、を含む3500点で構成されているのだが日本の美術史で重要な物を揃えているといっても過言でない。<br />  MOA美術館に到着すと、入館のチケットを買う前に100メートルも天井にある円形ホールへとエスカレータで誘う。「他界して天国へ昇る時はこんな得心地かな」なんて思った。入館料は65歳以上1200円と相場の半分以下なのも嬉しい。ゆったりとしたスペースであまり混んでいないのがいい。所々に場内から外の景色が見える大ガラス張りの立体的な空間がある。 展示品もごちゃごちゃ並べ立てたり説明文を書き立てたりしていないので、その作品に時間をかけて思いを寄せることが出来る。 (優秀な学芸員が揃っていると思った)<br />  MOA美術館で最も有名なのが緒方光琳の「紅白梅図屏風」(国宝)だが私たちが訪れた時は「日本人形」特別展で展示されていなかったので、妻と娘は残念がっていたが、また来ればいい。(私は2度観ている)<br />  観終わって外に出るともう2時近かった。雨はすっかり止んで正面に虹がかかっていた。外の日本庭園がまた素晴らしかった。正に瑞雲卿であった。<br />  茶室でお茶を味わって、庭園内の蕎麦屋で食べて天ぷら蕎麦も美味しかった。<br />  熱海極楽旅行の2日間であった。1人で放浪する貧乏旅行も好きだが、親子3人の贅沢旅行もいいもんだ。元気で頑張ってまた行きたい。 

 あたみ桜とMOA美術館

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2016/01/17 - 2016/01/18

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ゆらのと

ゆらのとさん

1月18日の午前中、熱海は凍てつくような寒さだった。前日からの雨はまだ止んでいなかった。雪の越後から春を求めてやって来たのに、どうして」、なんて天竺を恨んだが、私が期待していた、桜の花は咲いていたのである。街中の糸川という小川の両岸に所狭しと咲いていた。例年は1月下旬から咲き出すのだが、今年は12月が高温だったため10日も早く咲きだしたのだそうだ。
 「熱海桜」、これは熱海に咲く桜全部を指しているのでない。桜の品種なのである。熱海にこの濃いピンク色の桜が咲きだした由来が面白い。二つの説がある。 一つは明治30年代、、「カンヒ桜」と「山桜」が突然変異起こして新しい桜の品種ができたという説。 もう一つは、明治34年。インド原産の寒桜の苗木をイタリア人が持ち込んで植え、桜から種を採って増やしたというグローバルな説である。 外国の桜が大好きな私にとっては、こちらを支持したくなる。 熱海桜の特徴は開花期間が染井吉野より長いのだそうだ。
 熱海にもう一つ、国際色豊かな桜があるのをご存知だろうか。それは熱海高校の近くに咲く「ヒマラヤ桜」である。私は桜の起源はヒマラヤ説を支持しているので、「桜は今、世界のどこかで咲いている」を出版する時、是非、熱海のヒマラヤ桜を入れたいと2010年10月28日に訪れた。
 熱海のヒマラヤ桜の資料を集めている時、その経緯を知って感動し、そして、悲しんだ。ネパール国のビレンドラ皇太子は50年前。東京大学に留学されていたのだが、留学中、熱海を訪れた時、ヒマラヤ桜の種を数十個をお土産に下さった。その種を発芽させて、現在のような大木に成長したのだそうだ。日本からも染井吉野や八重桜を贈った。、皇太子は花が好きな優しいお人柄で、ネパールの国民からは絶対的な信頼を得ていた。やがて、国王に即位されて間もなく、暗殺されてしまったのである。宮廷に植えていた日本の桜は全部、伐採されてしまった。 私が熱海のヒマラヤ桜を訪れた日は晴天だった。抜けるような青空が広がっていた、ヒマラヤ桜に向かって、ビレンドラ王の冥福を祈ると、どこからともなく、「ピィッ ピィッ」という鳥の声がしたのを今でもはっきり覚えている。 その時、私が詠んだ歌が 「空に映ゆ ヒマラヤ桜の 優しさは ビレンドラ王の 心のこして」だった。
氷雨の中の熱海桜を観た後、タクシーでMOA美術館を訪れたのは11時頃だった。瑞雲卿と称する一つの山が美術品に満ちているのである。私は過去2度この美術館を訪れたことがある。スケールの大きさと大自然と調和した館(やかた)が好きなのだ。展示されているものも素晴らしい。国内の博物館や美術館でこれだけの規模の大きいものは少ないと思う。
 初めて訪れた多くの人は公立の美術館と思うだろが、これは私立美術館である。もっと詳しく言えば宗教法人世界救世教が運営する美術館である(教祖岡田茂吉氏) MOAの美術館名は Mokichi Okada Association のイニシアルから名付けたのだそうだ。
 この宗教の理念の一つに芸術活動がある。案内書によれば「美術品は独占すべきものでなく、多くの人に見せ、人間の品性を向上させることこそ、文化の発展に寄与する」(抜粋)と書いてあった。 国宝3点、重要文化財65点、を含む3500点で構成されているのだが日本の美術史で重要な物を揃えているといっても過言でない。
 MOA美術館に到着すと、入館のチケットを買う前に100メートルも天井にある円形ホールへとエスカレータで誘う。「他界して天国へ昇る時はこんな得心地かな」なんて思った。入館料は65歳以上1200円と相場の半分以下なのも嬉しい。ゆったりとしたスペースであまり混んでいないのがいい。所々に場内から外の景色が見える大ガラス張りの立体的な空間がある。 展示品もごちゃごちゃ並べ立てたり説明文を書き立てたりしていないので、その作品に時間をかけて思いを寄せることが出来る。 (優秀な学芸員が揃っていると思った)
 MOA美術館で最も有名なのが緒方光琳の「紅白梅図屏風」(国宝)だが私たちが訪れた時は「日本人形」特別展で展示されていなかったので、妻と娘は残念がっていたが、また来ればいい。(私は2度観ている)
 観終わって外に出るともう2時近かった。雨はすっかり止んで正面に虹がかかっていた。外の日本庭園がまた素晴らしかった。正に瑞雲卿であった。
 茶室でお茶を味わって、庭園内の蕎麦屋で食べて天ぷら蕎麦も美味しかった。
 熱海極楽旅行の2日間であった。1人で放浪する貧乏旅行も好きだが、親子3人の贅沢旅行もいいもんだ。元気で頑張ってまた行きたい。 

同行者
家族旅行
一人あたり費用
3万円 - 5万円
交通手段
タクシー 新幹線
旅行の手配内容
個別手配

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  • 小川の両側は整然と桜が植わっていた。

    小川の両側は整然と桜が植わっていた。

  • 中ほどの十字路

    中ほどの十字路

  • 氷雨の観桜も粋なものだ。

    氷雨の観桜も粋なものだ。

  • MOA日日間の入口へ通じるえすかれーたー。正に天国への階段

    MOA日日間の入口へ通じるえすかれーたー。正に天国への階段

  • 美術館内の能楽堂

    美術館内の能楽堂

  • 館内の処処に大ガラス張りで外の風景が楽しめる

    館内の処処に大ガラス張りで外の風景が楽しめる

  • 敷地内の日本庭園から見た虹。(きっといいことありそうな)

    敷地内の日本庭園から見た虹。(きっといいことありそうな)

  • 敷地内散策。正に瑞雲卿

    敷地内散策。正に瑞雲卿

  • これがヒマラヤ桜。 私は日本で一番桜の起源に近い桜だと信じている。 ネパールぼビレンドラ王の冥福を祈る。 2010年10月28日撮影

    これがヒマラヤ桜。 私は日本で一番桜の起源に近い桜だと信じている。 ネパールぼビレンドラ王の冥福を祈る。 2010年10月28日撮影

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