2014/07/19 - 2014/09/25
1位(同エリア2件中)
のまどさん
柔らかな色彩で芯のあるメッセージを作品に込めたベルギーの芸術家フォロン。今回は子どもから大人まで誰でも親近感が沸くその世界に迫りたいと思います。
前半ではブリュッセル市内の作品をめぐり、郊外のフォロン美術館を訪ねながら、フォロンの生い立ちと芸術的思想を私なりに読み解きます。後半では晩年の作品であるアルデンヌの小さな村にある教会のステンドガラスをご紹介しようと思います。村はデュルビュイから車で30分ほどです。
<参考資料>
http://www.jean-michel-folon.eu/
(今回はほとんど苦手なフランス語の資料を元にしたので、訳があやしいです・・・)
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通手段
- 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
まずはブリュッセル市内EU本部近く、モンゴメリー(Montgomery)駅にあるフレスコ画。
『マジック・シティ』(Magic City) 1974年
暗く無機質な地下鉄駅に彩りをという意思が165平方メートルのキャンパスいっぱいに表れています。未来がテーマになっていますが、太陽を取り巻く虹は希望と雲は不安の象徴です。このようにフォロンの作品には二重のメッセージが込められています。 -
続いてブリュッセル南西にあるカンブル修道院にやって来ました。
フォロンはこの近く出身で、修道院の敷地内にあった美術学校で学びました。
ウィキペディアではこの建物の写真が元美術学校と紹介されています。
ここは市民の憩いの場になっていて、小生も夏は青空の下ピクニックシートに寝っ転がりながらビールを嗜んでおります。(←書かなくていいこと) -
では、お口直しに雪景色をどうぞ。
今回は独断と偏見でBGMを選定しましたのでよかったら聞きながらご覧下さい。
サティ作『ジムノペディ3番』
http://www.youtube.com/watch?v=3h4vGRiNYLo -
さて、フォロン美術館への交通機関での行き方をご案内します。まずはDe Brouckereあるいは中央駅からバス71番Delta行き、Flagey(フラジェ)下車。20メートル離れたこちらのバス停からRixensart行きの別会社のバスに乗り換えます。
1時間に最大3本。時間つぶしには近くのアイリッシュ・パブDe Valera辺りで何か飲むといいと思います。週末には市場が出るので回ってみるのもいいかもしれません。ただし氷点下になる冬に自力で美術館に行くのはお勧めしません。 -
ブリュッセルの南東に広がるソワーニュの森。ラ・ユルプ村入り口部分は本当に美しいです。池二つを過ぎて丘の上に見えるのがラ・ユルプ城。
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この領地は貴族が所有していたようですが、現在も存続している化学品会社ソルヴェの創業者エルネスト・ソルヴェ氏が1893年に購入しました。アール・ヌーヴォー旅行記中(11)の館の主です。この城の改修作業を担当したのも同じ建築家のオルタです。
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反対側から。
幼少期のフォロンは毎週末両親とこの森を歩きながら感性を研ぎ澄ませて言ったようです。ラ ユルプ城(フォロン財団) 城・宮殿
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更に奥にあるのが美術館。銅像が迎えてくれます。
白い建物は元々農家だったようです。設計したのはブリュッセルのアーケード、サン・テュベールを手掛けたクラウセナール(Cluysenaar)です。2000年に美術館がオープンしました。 -
無題 1994年作
コートに身を包み、帽子を深く被って鞄を持つ男はフォロンの彫刻のモチーフとして頻繁に登場します。フォロンは内向的な性格だったのかもしれません。 -
中は撮影できないので、うちにあった葉書を撮影。
内部の様子は下記日本語サイトをご参照下さい。
http://www.bel2.jp/tourism/article/musee_folon.html
『暁』(L'Aube)1984年
夜明け前の闇に差す光の中心にはっとさせられる赤い目が見つめています。赤い目は太陽を表しているのでしょうか。 -
『大雨』(Grande Pluie) 1996年
美術館内の中庭にあります。噴水の水を傘と雨に見立てたチャーミングな作品です。
更に奥の森を歩いてみましょう。 -
池を舞う鳥も
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重要なモチーフになっています。
『自由』(La Liberté) -
『世界人権宣言のポスター』1988年
出所
http://www.bel2.jp/tourism/article/musee_folon.html -
『鳥女』(Femme Oiseau) 1993年
フォロンの作品は童心をくすぐるような親しみやすさがありますが、彼の死亡時のニューヨークタイムズの記事によるとその本質は安らぎを欠いた現代生活における孤独感だそうです。
http://www.nytimes.com/2005/10/22/arts/design/22folon.html?_r=0 -
エンデの『モモ』を思い出しました。二人の巨匠は別々の表現方法で現代生活に疑問を呈したのだと思います。
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本日の主題になっている教会に出かける前にもう一点だけ紹介させて下さい。
『海と巨像』(La mer, ce grand sculpture)1997
フォロンの幼少期の思い出の地クノッケの海にある作品です。北海岸オステンドの北にあります。海の中に佇み続けるコートの男。これほどまでに孤独を表現できるのは鬼才です。
出所(Source of the photo)
http://www.jean-michel-folon.eu/friendsclub//index.php?option=com_content&task=view&id=18&Itemid=30 -
こんな看板を見ると思わず言いたくなりますよね。ワーハッハと。
教会のあるワア村はマルシュ・オン・ファメンヌ(Marche en Famenne)駅から徒歩20分ほどです。ブリュッセルから電車で2時間、1時間に1本の割合です。
ここからのBGMはグノーのアヴェ・マリア。ハープとヴァイオリンのアンサンブル。
http://www.youtube.com/watch?v=5hlEbOZBL_s -
作品から受ける優しく繊細な印象とは対照的に絵画、彫刻、ポスターなどフォロンは多様な作品に精力的に挑んでいきました。彼の最後の作品となったステンドグラスがこの小さな教会の中にあります。
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外から見たステンドガラスです。
美の巨人たちでフォロンはまだ登場していないようなので是非この作品を取り上げてほしいです。 -
ベルギーに現存する唯一の石造りのローマ式教会。その歴史は1050年まで遡ります。
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地元の観光客の団体がいたので後ろで掃けるのを待っているとガイドが「どうぞ気兼ねなく写真を撮って下さい」と言ったので撮影を始めます。更に参加者の一人が祭壇の左横に手招きしてくれました。
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行ってみると小さな部屋があり、木像が置いてありました。
木像は15-16世紀に造られたもので、作者は「ワアの職人」とされていますが、人物の詳細は分かっていません。
右上から時計回りに、聖ジャン、聖ユベール、聖ジャック、カルバリーの聖人もしくは聖女となっています。 -
堂内は穏やかな青い光に満ちています。
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午前中の太陽に照らされてステンドグラスがまばゆい光りを放っています。
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上の部分の小さな窓にはおなじみの自由の鳥が描かれています。
ガラスは合計16枚。大きなガラス6枚には -
この教会が祀る聖エティエンヌ(英:スティーヴン)の挿話が表現されています。聖エティエンヌはギリシア系ユダヤ人で、ユダヤ教の権力者を非難したことで石打の刑に処せられました。キリスト教最初の殉教者です。
フォロンは聖書の黙示録に書かれた記述をステンドグラスに表しています。教会で買ったパンフレットより以下抜粋します。
①エティエンヌが生まれた日、家を訪問した司教が白い雌鹿に餌付けをされている赤ん坊のエティエンヌを見つけました。当時司教という職業はなかったのでこれは架空の話ですが。 -
②成人したエティエンヌは人々の前で奇跡を行ったため、ユダヤ教を冒涜した罪で捕えられ、尖り帽をかぶった裁判官から尋問を受けます。それでもエティエンヌはシナゴーグを非難し続けたため、裁判官たちは憤慨し石打の刑が言い渡されます。
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③裁判官たちの尋問に応えるエティエンヌの頭上では天使と聖なる魂を持つ鳩が見守りました。
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④判決通り無数の石がエティエンヌに投げつけられ、その苦しむ涙は雪となって舞いました。石打についての黙示録の記述は簡潔なもので、フォロンはこの場面を想像で描きました。
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⑤エティエンヌはギリシア語で冠を意味します。自らの信仰を貫き命を犠牲にしたエティエンヌに対して、神の手がエティエンヌに栄光の冠を授けました。
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⑥400年後エティエンヌが埋葬された地から3つの金の杯と1つの銀の杯が発見されました。金の杯の1つには赤いバラが咲き、残りの3つには白いバラが咲きました。赤いバラは殉教者の尊厳を象徴します。
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フォロンの言葉を引用して教会訪問を締めくくりたいと思います。
「僕の作品は僕が創り出したものではない。(中略)僕が自分自身の夢をイメージに託したように、みんなが各々それぞれの夢を託してもらえることを希望するだけだ」
何て謙虚な言葉だろう。
出所
http://www.manneken.co.jp/story/column/vol_12.html (原語は見当たらず) -
更に車を30分ほど走らせると日本人に人気のあるデュルビュイなので、ついでに行ってみました。1331年に村として登録され、現在の人口は1万人弱。世界で一番小さな村らしいが、その根拠を問い詰めたい。小一時間ほど問い詰めたい。
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目玉になるべきデュルビュイ城は9世紀に建てられ、現在は私有なので中に入れません。
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駐車料金が高く、カードが使えず手持ちの小銭で支払えたのは約1時間。川を見ながら持参したおにぎりを食べます。
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本当は地ビールを飲みたかったのですが諦めます。
秋の午後の太陽と牧歌的な風景が眠気を誘いそうになりましたが、無事故で帰ってきました。
アルデンヌ地方はベルギー人にとってハイキングやキャンプなど自然とのふれあいを楽しむ場所です。古城や洞窟など見所が多いので車で回ると色々と見られます。
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