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サンクトペテルブルクに滞在中の週末、北欧で唯一訪れていなかったノルウェー王国の首都、オスロを訪れた。小生にとって、ノルウェーで思い出されるのは何と言っても画家のムンクと、作曲家グリーク、そしてグリークが曲をつけた「ペール・ギュント」を書いたイプセンの3人である。ここではオスロで鑑賞することができた美術館、音楽、演劇などの文化活動を備忘録替りに書き留めておこうと思う。<br /><br />ノルウェーの首都オスロの人口は約60万人、スウェーデンの首都ストックホルムと並んで世界でも物価の高い都市と言われ、その物価の高さを実感した。まず空港と中央駅を結ぶエアポート・エクスプレスがわずか20分の移動で約4000円、ミネラルウォーターやコーラの小さいボトルが約500円、あらゆるものが日本の倍以上の感覚だ。とても長居ができる街ではない。スウェーデン、デンマークと同様ユーロは導入されておらず、ユーロを導入したフィンランドよりもかなり物価は高く、消費税率はスウェーデンと同じく15〜25%である。<br /><br />オスロ国際空港から中央駅に到着、まずはエドヴァルド・ムンク(1863 - 1944)の「叫び」がある国立美術館に向かった。規模としてはエルミタージュ、ルーヴル、プラド、メトロポリタン、ボストンなどと比較することはできないとしても、ルネッサンス、フランドル、フランス印象派の名作を所蔵し、鑑賞するには適切なサイズとも言える。先述の巨大美術館は一度に鑑賞するキャパを超えている。ムンクはノルウェーでは国民的な画家で、幼少から家族の死を目の当たりにし、孤独、嫉妬、不安などを見つめ、人物画に生と死を表現した。一生独身で過ごしたが、数多くの浮名を流したことでも知られている。<br /><br />小生は「叫び」を奇抜ではあっても、芸術的に優れた作品とは思っていなかった。しかし、原作を目の当たりにして、遠近法を強調した構図、血のような空の色、背景のフィヨルドの不気味な形、ミイラのように極度にデフォルメされた人物などが心を捉えて離さない。ムンクは、フィヨルドの近くを歩いている時に「自然をつらぬく、けたたましい、終わりのない叫びを聞いた」と言っており、その経験を絵画化したものである。この絵は「橋の上の男が叫んでいる」のではなく「橋の上の男が叫びに耐えかねて耳を押さえている」様子を描いた絵である。<br /><br />ここ国立美術館は写真撮影は可能なのだが、唯一ムンクの展示室だけは撮影が禁止されている。そのため、国立美術館を見終えた後、すぐにメトロで5駅ほど東にあるムンク美術館にも出かけた。しかし。ここでも「叫び」だけは光による劣化を防ぐため、薄暗い別室に所蔵されており撮影は禁止されていた。実はここに掲載した「叫び」の写真は、売店のポスターを撮影したものである。<br /><br />「叫び」は4点制作され、国立美術館に1点、ムンク美術館に2点、個人所蔵のものが1点ある。このうちムンク美術館に所蔵されていた1点が、「マドンナ」とともに2004年に盗み出され、2006年にオスロ市内で発見された。また国立美術館の「叫び」も、1994年2月に盗まれ、同年5月に発見された、など話題が尽きない。それほど心を捉えて離さないのか、それともオスロは警備が緩いのだろうか?なお、2012年には唯一個人所有であった1点がニューヨークで競売にかけられ、1億1990万ドル(約96億円)で落札された。絵画の競売落札価格としては史上最高額であるそうだ。<br /><br />音楽については、オスロオペラ、オスロフィルハーモニーは知られており、公演予定を調べたが、残念ながらいずれも前日の金曜日に今シーズン最終公演が行われていた。数年前に開館したモダンなオペラハウスでは「さまよえるオランダ人」、フィルハーモニーでは首席指揮者のペトレンコが登場して幕を閉じていた。止むなくオペラハウスでは英語のツアーに参加し、最新式のオペラ劇場の舞台裏を見学した。客席の最上部からステージを見ることができたが、昨年オープンした新マリインスキーと音響を比較してみたいものだ。またコンサートホールの方は、ホールの事務所に頼み込んで内部を少しだけ見学させてもらった。どちらかと言うと特に音響的に優れるとは思えない多目的ホールで、この日はロックのリハーサルが行われていた。<br /><br />オペラ、コンサートいずれも振られてしまったので、国立劇場の窓口で今日の出し物を聞いてみた。イプセンの「ペール・ギュント」がこの劇場の十八番であり期待していたが、この日はカフカの「変身」の英語字幕付きのノルウェー語の上演だと言う。驚いたことに窓口の若い女性は片言の日本語を話し、開演2時間前にはチケットは半額になると言う。「変身」はドイツ語の原文を読んだことがあるが、内容が暗いので好きな作品とは言えない。しかし他に行くところも無いのと、日本贔屓の女性から勧められたこともあり、半額のチケットを買うことにした。公演は1時間半ほどで、長過ぎることはなく、コメディタッチのユーモラスな演出で、それなりに楽しめた。グレゴールが死んでしまった後の妹グレーテ始め両親が清々しく将来を語る場面など深刻にならず、「変身」はハッピーエンドの作品と解釈すべきなのかもしれない。<br /><br />オスロその2に続く

ノルウェーの首都オスロNo.1 : ムンクの「叫び」、国立劇場のカフカ「変身」など

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2014/05/24 - 2014/05/25

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ハンク

ハンクさん

サンクトペテルブルクに滞在中の週末、北欧で唯一訪れていなかったノルウェー王国の首都、オスロを訪れた。小生にとって、ノルウェーで思い出されるのは何と言っても画家のムンクと、作曲家グリーク、そしてグリークが曲をつけた「ペール・ギュント」を書いたイプセンの3人である。ここではオスロで鑑賞することができた美術館、音楽、演劇などの文化活動を備忘録替りに書き留めておこうと思う。

ノルウェーの首都オスロの人口は約60万人、スウェーデンの首都ストックホルムと並んで世界でも物価の高い都市と言われ、その物価の高さを実感した。まず空港と中央駅を結ぶエアポート・エクスプレスがわずか20分の移動で約4000円、ミネラルウォーターやコーラの小さいボトルが約500円、あらゆるものが日本の倍以上の感覚だ。とても長居ができる街ではない。スウェーデン、デンマークと同様ユーロは導入されておらず、ユーロを導入したフィンランドよりもかなり物価は高く、消費税率はスウェーデンと同じく15〜25%である。

オスロ国際空港から中央駅に到着、まずはエドヴァルド・ムンク(1863 - 1944)の「叫び」がある国立美術館に向かった。規模としてはエルミタージュ、ルーヴル、プラド、メトロポリタン、ボストンなどと比較することはできないとしても、ルネッサンス、フランドル、フランス印象派の名作を所蔵し、鑑賞するには適切なサイズとも言える。先述の巨大美術館は一度に鑑賞するキャパを超えている。ムンクはノルウェーでは国民的な画家で、幼少から家族の死を目の当たりにし、孤独、嫉妬、不安などを見つめ、人物画に生と死を表現した。一生独身で過ごしたが、数多くの浮名を流したことでも知られている。

小生は「叫び」を奇抜ではあっても、芸術的に優れた作品とは思っていなかった。しかし、原作を目の当たりにして、遠近法を強調した構図、血のような空の色、背景のフィヨルドの不気味な形、ミイラのように極度にデフォルメされた人物などが心を捉えて離さない。ムンクは、フィヨルドの近くを歩いている時に「自然をつらぬく、けたたましい、終わりのない叫びを聞いた」と言っており、その経験を絵画化したものである。この絵は「橋の上の男が叫んでいる」のではなく「橋の上の男が叫びに耐えかねて耳を押さえている」様子を描いた絵である。

ここ国立美術館は写真撮影は可能なのだが、唯一ムンクの展示室だけは撮影が禁止されている。そのため、国立美術館を見終えた後、すぐにメトロで5駅ほど東にあるムンク美術館にも出かけた。しかし。ここでも「叫び」だけは光による劣化を防ぐため、薄暗い別室に所蔵されており撮影は禁止されていた。実はここに掲載した「叫び」の写真は、売店のポスターを撮影したものである。

「叫び」は4点制作され、国立美術館に1点、ムンク美術館に2点、個人所蔵のものが1点ある。このうちムンク美術館に所蔵されていた1点が、「マドンナ」とともに2004年に盗み出され、2006年にオスロ市内で発見された。また国立美術館の「叫び」も、1994年2月に盗まれ、同年5月に発見された、など話題が尽きない。それほど心を捉えて離さないのか、それともオスロは警備が緩いのだろうか?なお、2012年には唯一個人所有であった1点がニューヨークで競売にかけられ、1億1990万ドル(約96億円)で落札された。絵画の競売落札価格としては史上最高額であるそうだ。

音楽については、オスロオペラ、オスロフィルハーモニーは知られており、公演予定を調べたが、残念ながらいずれも前日の金曜日に今シーズン最終公演が行われていた。数年前に開館したモダンなオペラハウスでは「さまよえるオランダ人」、フィルハーモニーでは首席指揮者のペトレンコが登場して幕を閉じていた。止むなくオペラハウスでは英語のツアーに参加し、最新式のオペラ劇場の舞台裏を見学した。客席の最上部からステージを見ることができたが、昨年オープンした新マリインスキーと音響を比較してみたいものだ。またコンサートホールの方は、ホールの事務所に頼み込んで内部を少しだけ見学させてもらった。どちらかと言うと特に音響的に優れるとは思えない多目的ホールで、この日はロックのリハーサルが行われていた。

オペラ、コンサートいずれも振られてしまったので、国立劇場の窓口で今日の出し物を聞いてみた。イプセンの「ペール・ギュント」がこの劇場の十八番であり期待していたが、この日はカフカの「変身」の英語字幕付きのノルウェー語の上演だと言う。驚いたことに窓口の若い女性は片言の日本語を話し、開演2時間前にはチケットは半額になると言う。「変身」はドイツ語の原文を読んだことがあるが、内容が暗いので好きな作品とは言えない。しかし他に行くところも無いのと、日本贔屓の女性から勧められたこともあり、半額のチケットを買うことにした。公演は1時間半ほどで、長過ぎることはなく、コメディタッチのユーモラスな演出で、それなりに楽しめた。グレゴールが死んでしまった後の妹グレーテ始め両親が清々しく将来を語る場面など深刻にならず、「変身」はハッピーエンドの作品と解釈すべきなのかもしれない。

オスロその2に続く

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.0
グルメ
4.0
交通
4.5
同行者
一人旅
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
鉄道 高速・路線バス 徒歩 飛行機
  • ヘルシンキ空港からオスロへ向かうフィンランド航空機

    ヘルシンキ空港からオスロへ向かうフィンランド航空機

  • オスロ国際空港

    オスロ国際空港

  • オスロ国際空港と中央駅を結ぶエアポートエクスプレス

    オスロ国際空港と中央駅を結ぶエアポートエクスプレス

  • オスロ中央駅のファサード

    オスロ中央駅のファサード

  • オスロ中央駅前のカール・ヨハン通り

    オスロ中央駅前のカール・ヨハン通り

  • オスロ中央駅の目抜き通り

    イチオシ

    オスロ中央駅の目抜き通り

  • 市民の足、メトロ

    市民の足、メトロ

  • 数年前に開館したばかりのオスロオペラ劇場

    数年前に開館したばかりのオスロオペラ劇場

  • オペラ劇場のロビー

    オペラ劇場のロビー

  • オペラ劇場のロビー

    オペラ劇場のロビー

  • オペラ劇場のステージ

    オペラ劇場のステージ

  • 国立劇場の側面の像

    国立劇場の側面の像

  • 国立劇場の横で演奏する音楽家の卵たち

    国立劇場の横で演奏する音楽家の卵たち

  • 国立劇場の側面

    国立劇場の側面

  • オスロ大学の堂々たるファサード

    オスロ大学の堂々たるファサード

  • オスロ大学正面に立つムンクの伯父の像、ムンクに「ローマのP. A. ムンクの墓」というリトグラフがある<br />

    オスロ大学正面に立つムンクの伯父の像、ムンクに「ローマのP. A. ムンクの墓」というリトグラフがある

  • オスロ国立美術館のファサード

    オスロ国立美術館のファサード

  • オスロ国立美術館の正面階段

    オスロ国立美術館の正面階段

  • ローマ時代の彫刻の展示

    ローマ時代の彫刻の展示

  • 天井採光が明るい展示室

    天井採光が明るい展示室

  • エル・グレコ、スペインで見てきたばかり

    エル・グレコ、スペインで見てきたばかり

  • モネのエトルタ風景

    モネのエトルタ風景

  • ロダンの「考える人」

    ロダンの「考える人」

  • セザンヌの間

    セザンヌの間

  • ムンクの展示室だけは撮影禁止、「叫び」を隣室から撮影

    ムンクの展示室だけは撮影禁止、「叫び」を隣室から撮影

  • ムンクの展示室だけは撮影禁止、「思春期」を隣室から撮影

    ムンクの展示室だけは撮影禁止、「思春期」を隣室から撮影

  • 王宮前の公園

    王宮前の公園

  • 王宮のファサード

    王宮のファサード

  • ムンク美術館のカフェ

    ムンク美術館のカフェ

  • ムンクの「マドンナ」

    ムンクの「マドンナ」

  • ムンクの「叫び」のポスターを撮影

    イチオシ

    ムンクの「叫び」のポスターを撮影

  • ムンクの「アダムとイヴ」

    ムンクの「アダムとイヴ」

  • ムンク美術館の内部

    ムンク美術館の内部

  • オスロフィルハーモニーの主会場コンサートホール

    オスロフィルハーモニーの主会場コンサートホール

  • コンサートホールの内部、ロックコンサートのリハーサル中

    コンサートホールの内部、ロックコンサートのリハーサル中

  • 国立劇場のファサード

    国立劇場のファサード

  • 国立劇場の正面に立つイプセンの像

    国立劇場の正面に立つイプセンの像

  • 国立劇場のロビー

    国立劇場のロビー

  • 国立劇場の内部、今日の出し物はカフカの「変身」

    国立劇場の内部、今日の出し物はカフカの「変身」

  • 国立劇場の天井画とシャンデリア

    国立劇場の天井画とシャンデリア

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