2013/10/23 - 2013/10/24
16位(同エリア42件中)
極楽人さん
Cordes-sur-Ciel。
シュル・シェル(sur-Ciel)はフランス語で“空の”を意味するという。
よく晴れた春と秋の早朝、見事な円錐形の村は下半分が霧に覆われて、本物の『天空の村』になる。そんな写真を見て、どうしても訪ねたくなった。
ミディ・ピレネーと呼ばれるフランス南西部。この地域に点在する美しい村は、『カタリ派』の存在抜きに語れない。キリスト教の一派だが、物質世界を否定し、聖職者を否定し、汚れた世俗と関係を断ち切って禁欲生活を営んだ。秘境の村が生まれたゆえんだ。トゥールースを中心に広がった宗派は教皇庁から“異端”とされて迫害を受け、大規模な討伐軍(アルビジョア十字軍)を向けられる事態へと発展した。
13世紀、コルド・シュル・シェルは彼らに対抗する砦として築かれたという。最寄りの古都アルビで前泊し、一泊の小旅行を試みた。
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 20万円 - 25万円
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス
- 航空会社
- KLMオランダ航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
12:56 サン・シル・ラポピー(Tour de Faure)発
13:45 カオール着
カオール駅で15:00発のアルビ行きチケットを求めるが、「そんなバスはない」と、次の16:34発を勧めれれた。おかしい、信頼するサイトでしっかり調べてきたのに。
このバスは列車のダイヤを補完する『鉄道バス』なので、鉄道時刻表で確認できる。鉄壁の『ドイツ鉄道サイト』が間違うなんて・・・
停留所の時刻表で調べたら、15:00発のバスがちゃんとある。 なんだよ! 戻って、いま購入したチケットを交換した。 -
15:00発のバスは、ロデス(RODEZ)行き。
そこから鉄道とバスを乗り継いでアルビまで行くつもりだ。
この経路が、分かりにくかったんだろう。
遠回りになるが接続がよく、アルビへの到着時刻は早い。
予約した宿は夜9時でフロントが終了してしまい、それより遅い到着だと厄介になる。それに、通ったことのない道の方が新鮮だ。
写真は途中の、VILLEFRANCHEあたりか。 -
道路を行き交うのは、
農家のトラクターや刈り草満載の軽トラック。
観光とは縁の薄い道らしい。
すぐ前にこういうのが来ると、バスの運転手がイライラする。
フランスは、農業大国。
それに原発大国。付近のローヌ川沿いにもたくさんある。 -
17:40 RODEZ着(バス)
18:24 RODEZ →19:23 CARMAUX着(列車)
19:28 CARMAUX→19:58 ALBI VILLE着(バス)
切符は通しで33・6e。
当初、駅員が勧めたものより12eも高くついた。
最後の乗換えが5分しかなく、厳しい。
心配を告げると、英語が苦手らしい車掌はちょっと考えてから、選び抜いた英文を絞りだした。「バスはアナタをマッテイル。」
ほんとに? 「行く」とも伝えてないのに?
CARMAUXの駅前で、バスはワタシを待っていてくれた! -
アルビの宿は、鉄道駅から徒歩15分。
暗い道だが、ストリートビューで確認している。
きれいな街角にあるが、それより『喫煙可能』に惹かれた。最近は見つけるのが難しい。もっとも、日本ほど厳密に考えないので、窓から顔を出せば指摘されることはないし、バルコニー付なら遠慮さえ要らない。非喫煙者には、そういう問題じゃあないのだろうが・・・ -
アルビ鉄道駅では、翌日のコルド・シュル・シェルへのバス便を尋ねた。「路線バスを3回乗り継いで、最後の停留所でタクシーを呼べ。」に驚いた。そんな筈はないのだが・・・
それで、宿に着くとすぐ同じ質問をした。
フロントの老婦人は「学校が休みだからバスは走らないかも」。もっと驚いた。「アルビでゆっくりしたら?」は耳に入ったが、目の前が暗くなる。何かの間違いじゃないのか???
ちょっと落ち着かない気分のまま、遅い夕食に出た。
宿はサント・セシル大聖堂に近い。 -
アルビの夜は早く、夜9時過ぎて開けている店は少ない。
教会の裏手に小さな灯りを見つけて入った。
オムレツで一杯やるうちに、大事なことを思い出した。
そうだ、この街は鉄道駅とバス・ターミナルが別な場所だったんだ! 駅員は、鉄道駅発着のバスを教えてくれたんだ。
マスターに聞くと、バス・ターミナルはすぐ近くだという。
明日、朝いちばんの仕事ができた。 -
翌朝、まだ暗い6時過ぎに宿を抜け出した。
探し出したバスターミナルは、駐車スペースだけで建物はない。隣のカフェを訪ねて時刻表をもらったが、日本で見たのと同じ仏語版。注釈が多くて難解なやつだ。店員は「英語は苦手」と言いつつ、根気良く説明してくれた。
お陰でなんとか理解できた。お昼のバスに決めて、とりあえず一件落着。感謝のしるしにコーヒーを注文した。エスプレッソ1.3e、苦さが沁みる。
バスの時間まで、晴れてアルビ観光。
景観を求めて、まずはタルン河畔に向かう。 -
タルン川は
トゥールースを流れていたガロンヌ川の支流。
11世紀に建設されたビュー橋は、ヨーロッパに現存する最古の橋のひとつだという。ここが旧市街への入口になる。 -
アルビは、古代ローマが流域に築いた町が起源だ。
15世紀に染料交易で黄金期を迎え、赤レンガで統一された重厚で美しい旧市街には今も繁栄時の面影がよく残っている。
ビュー橋の上流と下流に、もう一本ずつ古い橋が見えた。 -
前述のカタリ派は、別名『アルビ派(アルビジョア)』と呼ばれる。
異端を受け入れた街としても、歴史に強烈な名をとどめる。 -
ムーランルージュのポスターがよく知られる、
画家ロートレックはこの街で生まれたそうだ。
彼が風景を描いたかどうか知らないが、
デジカメをアート・モードに切り替えて、一枚。 -
旧市街の中心は、サント・セシル大聖堂。
正統カトリックの威厳を誇示する巨大なカテドラルは、カタリ派制圧の勝利の象徴。13世紀末から200年かけて完成した。 -
付近に、ロートレック美術館。
そして、インフォーメーション(写真)も。
10時開館の直後に訪れて、バスの時間を再確認しておいた。 -
街をひと廻りしたあと、リュックを取りに宿へ帰った。
この界隈も赤レンガで、可愛い。
「どうしてみんな、コルドシュルシェルなんかに行っちゃうの。アルビの町をもっと見るべきだわ。バスに乗れなかったら、戻っておいで。」と宿の主人。 -
長距離バスステーションは、宿と鉄道駅の中間にある。
バスの運行は曜日ごとに違っていて、街の祭日や学校行事などのカレンダーに合わせて決められているようだ。
コルド・シュル・シェル行きの乗り場は707番。
確認してから、今朝お世話になった隣のカフェで発車を待った。
レモネード2e。 -
12:15 発車の時間だ。
最前席に、カメラを構えて陣取った。
後部座席に、地元の学生と思われる二人が座っている。
発車間際にもう一人、軽装の女性が飛び乗ってきた。欧州旅行中のブラジルのお嬢さん、彼女は運転席のすぐ後に席をとった。
これで乗客4人。片道2eはレモネードと同価格。 -
陽気な運転手が振り向きながら、最前列の我々に、交互に話しかけてくる。
完全な脇見運転。「東京にも黒人は多いかい?」「リオは毎日カーニバルだって?」「どっちの街へも行きたいねえ。」
英単語がすぐに出ないようで、脇見が長くなる。 -
お陰で、ブラジルのお嬢さんと仲良くなった。
トゥールースに荷物を置いて日帰りでやって来たという。
バスは三人の笑い声を響かせて、のどかな畑の道を危険運転で疾走する。
後の席にいる乗客は無視されたが、文句を言う気配はない。 -
およそ50分、村の入口が見えた。
写真を撮りやすいよう、
ゆっくり走ってくれる気遣いが嬉しい。
バスの中から撮る必要はないが、
遠距離旅行者ふたり「親切を無にしちゃまずい」とシャッターを押しまくった。
フィルムカメラなら、こうはいかない。 -
バスはロータリーで停車し、次の村へ走り去る。
ロータリー周辺にはスーパーや雑貨店、ヘアサロンなど、生活に必要な店舗が集中している。水を買っておいた方が良さそうだ。
雑貨屋で水と、フランスタバコのゴロワースを二箱買った。
ゴロワース一箱 7.2eは高いが、アランドロンの気分に浸りたい。無理か。 -
雑貨屋の横が、村への登り道。
自動車で登る道は、もう少し先にある。
町を巡るプチトレインがあった筈だが、この時期は運休らしい。 -
円錐形の町は、どこも急な登り坂。
ブラジルのお嬢さんと頂上を目指して歩き出す。
彼女は、いままで何処を周ってきたとか、どの街が良かった、とか
歩きながらいろいろ話してくれた。
石造りの堅牢な城砦、
侵入者を惑わす曲がりくねった迷路。
城壁の内側はそれなりに魅力的だが、
ここだけの特徴、という風でもない。
この村の個性は、あくまで
圧倒的な外観にあるようだ。 -
そのうち、登りがきつくなって会話は途切れがちに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
彼女は午後5時のバスで帰ると言う。
あと3時間の滞在だ。 -
15分かかって到着した、ここが頂上。
一気に登ってへとへとになった。
市場が開かれる場所らしい。
村で平坦な場所は、広場周辺の僅かなスペースだけ。
忙しい彼女とは、ここから別行動とした。
ひとり宿へ向かったが、扉が閉まっていた。
ドアの張り紙で、午後4時までチェックインできないと知る。 -
市場まで戻り、すぐ上のレストランで昼食にした。
テラスはほぼ満員の状態で、端の方にようやく空席を見つけられた。
路線バスはガラガラだったから、皆さん自家用車で来ているに違いない。 -
テラスから、"下界"が眺められる。
民家の先に、小高い丘が見える。
あのあたりからこの村を撮れば、いい全景写真になりそうだ。そう見当をつけて、ウエイター氏に行き方を聞いたが「行ったことがありません。」
しょうがない、食事が済んだら頑張って行ってみるか。 -
少し離れた席で、ブラジルの彼女も食事中だった。
気がついた様子はないのでそのままにした。
声をかけては、夕方便で帰る彼女の貴重な時間を奪ってしまう。 -
食後の楽しみ、ゴロワースに火をつける。
干し草に似た香りは懐かしいが、なんだか少し薄味になったような・・・
フィルターが付いたせいか、気のせいか。 -
食事のあと、意を決して村を降りた。
また登って帰ることを思うと、気が重くなるが・・・ -
村を降りるのも、たいへんだ。
いきなり別の丘に登るのはしんどく、まずはバスで来た道を少し戻って、あぜ道を村の周囲に沿って歩きだした。
陽射しが強い。このあたりは牧草地帯か。馬がいて、 -
羊がいて、
-
鳥が群れている。
-
草原の上に、
-
畑の向こうに、高台の村が望める。
カメラを向けたが、ちょっとイメージと違う。
半周ほど廻って、やっぱり、テラスから見えた丘へ行こうと決めた。 -
方向の見当をつけて、ロータリーから駐車場の先に進む。住宅が途切れるあたり、林の脇から細い道が上の方に続いている。無駄足を覚悟で登り始めたが、きつい、暑い、苦しい・・・
もう下りようか、とあきらめかけたとき、
木立の切れ目からパノラマが眼に飛び込んできた。 -
そうだ、この姿を見るために、はるばる来たのだ。
足は既に棒になっていたが、
一歩登るごとに丘の町の表情が変わり、黄葉が色を増す。
歩みを止められない。
結局、頂上まで来てしまった。
こちら側の高さはコルド・シュル・シェルの村と同じくらいか。
いや、少し高いかもしれない。 -
30分ほど、眼と胸とカメラに風景を刻み込んだ。
ここには、また来なくてはいけない。
登ってきた道はハイキングコースのようで、
尾根づたいに反対側の雑木林へ続いていた。 -
村へは、自動車道路を歩いて戻った。
最初にたどった歩行者道より距離はあるが、なだらかで急な階段もない。
道は村の北側に沿って、最西端の、西門(写真)の外側に廻りこんでいる。 -
西の城門の脇に、コルドシュルシェル全図があった。
現在地はいちばん左の端だ。
頂上の市場からも近く、その坂を100mほど下った位置になる。 -
宿は西門のすぐ隣の建物だ。古い邸宅を、そのままホテルにしている。
管理人は別な住居に住んでいて、決めた時間だけやってきて仕事をするようだ。
夕方5時過ぎ、チェックインした。
ちょうど、ブラジルのお嬢さんが帰りのバスに乗った頃だ。 -
部屋は、おそらく昔のままだろう。
石の床、天蓋ベッド、木組みの柱も壁の漆喰もホンモノだ。改修は水廻りを除いて、最低限に留めたらしい。
これだけ広いと、部屋の中で走れる。 -
調度もいい。
簡素で剛健、騎士らしい趣味だ。
写真を見たとき、ここなら泊まってもいいな、と思った。
宿を地の利で選ぶ自分には珍しいことだ。
シングル料金はなく、朝食付き64e。 -
朝食が、またいい。
質素だが、客とホスト夫妻がひとつのテーブルを囲んで団欒する。
客はもう一組、フランス人老夫婦(手前)だった。 -
夜、窓を開けると漆黒の空にぼおっと白く
天の川が見えた。 -
翌日の早朝、霧が出ていて小躍りする。
霧は、太陽が昇ると消えてしまう。
宿を出て、まだ暗い中を下って上って、あの丘へ急いだ。 -
霧は村の背面から左手にかけて濃くただよい、
残念ながらカメラの正面にはかかっていない。
70%の満足度。 -
しばらくして、空にかすかな赤味がさしてきた。
それとともに、左側の霧が少しだけ正面に流れてきた。
満足度が、80%に上昇。 -
もっと来い、もっと来い・・・
このへんが限界かな。 -
そして、日の出。
村のいちばん高い部分に朝陽が当たり始め・・・ -
15分もすると、全体に広がった。
「・・・・・・・・・・・・」
今回の旅は、この瞬間に終ったことになる。
これ以降は、撤収作業だ。 -
13:05 コルド・シュル・シェル発(バス2e)
13:55 アルビ長距離バスターミナル着
14:20 アルビ・ヴィレ鉄道駅発(バス、臨時便 10.1e)
15:50 トゥールース長距離バスターミナル着
4日ぶりのトゥールース。駅前ホテルは前と同じ部屋だった。預けておいた荷物を受け取り、PCを取り出して帰国便のチェックインを済ませた。 -
それから街へ出て、眼についた中華レストランでビーフンの汁ソバを注文。旅が終ったせいか、強い酒のせいか、なんだかボーとした気分だった。
翌日の朝 09:00、路線バスで空港へ(5e)。
ラッシュに遭い、40分かかった。 -
トゥールース空港は完全禁煙。することがない。
11:45 KLM便でアムステルダムへ出発。
13:40 AMSスキポール空港到着 -
アムステルダム空港には、随所に喫煙所がある。
ドアを開けて入ると、先客の二人が小声で話していた。
どこかで見た顔だ。(嘘。喫煙所のポスター)
TAX FREE SHOPで自分用のウイスキーを買い、ついでに煙草を見ると37eもする。1e≒\135で換算すると
一箱 \500、日本で、普通にコンビニで買うより高くなる。
因みに、先に帰国した妻は高値に気づかず、“1カートン購入していた。 -
14;55 アムステルダム出発
08:45 成田空港到着(翌日)
成田には、冷たい雨が降っていた。
(完)
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この旅行記へのコメント (2)
-
- さん太さん 2013/11/12 19:34:00
- コルド・シュル・シェルは素晴らしい
- 極楽人さん
やはり素晴らしい所ですね。
行くのに極楽人でさえ苦労されたご様子、やはりとても私には無理のようです。
しかしレストランテラスからはるかかなたに臨む丘まで、カメラポイントを求めて歩いて行かれる、それも翌朝朝早く霧に浮かぶ、朝日を浴びる天空の村を拝むために再度向かわれるなど、その健脚ぶりと熱意に感服いたします。(ひょっとして極楽人さんって若い人ですか?)
他の人の同地の旅行記を見ると、ほとんどレンタカーで行かれてます。
しかし最後の霧に浮かぶ天空の村、朝日を浴びて赤く染まる写真は素晴らしい、まるで極楽浄土のようですね(笑)
一気に今までの疲れがとれたことでしょう。
素晴らしい写真をありがとうございました。
- 極楽人さん からの返信 2013/11/12 21:52:53
- RE: コルド・シュル・シェルは素晴らしい
- さん太さん
暖かいコメントをありがとうございます。
何よりの励みになります。
コルド・シュル・シェルは、憧れの場所でした。
夢がひとつ叶って喜んでおります。
それから、決して「行きにくい所」ではありません。
アルビから707番のバスに乗れば、
目を閉じていても、陽気な運ちゃんが連れて行ってくれるでしょう。
さん太さんも、ぜひお出かけください。
ご推察の通り、よく「若いですね」と言われます。
歯茎は多少ぐらついていますが、
入れ歯はまだ、一本もありません。
若さ自慢です。
極楽人
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