2012/12/24 - 2012/12/24
641位(同エリア1225件中)
経堂薫さん
現在の日本は47都道府県に分かれてますが、江戸時代までは六十余の州で構成されていました。
各州ごとに筆頭の神社があり、これらは「一之宮」と呼ばれています。
その「諸国一之宮」を公共交通機関(鉄道/バス/船舶)と自分の足だけで巡礼する旅。
14カ所目は志摩国(三重県)の伊射波神社を訪ねました。
【伊射波神社(いさわじんじゃ)】
[御祭神]稚日女尊/伊佐波登美命/玉柱屋姫命/狭依姫命
[鎮座地]三重県鳥羽市安楽島町加布良古
[創建]不詳
〈追記〉
「諸国一之宮“公共交通”巡礼記[志摩國]伊射波神社」を全面改稿し、ブログ「RAMBLE JAPAN」にて「一巡せしもの〜志摩國一之宮[伊射波神社]」のタイトルで連載しております。
是非ご高覧下さい。
ブログ「RAMBLE JAPAN」
http://ramblejapan.blog.jp/
http://ramblejapan.seesaa.net/
(上記のURLの内容は、どちらも同じです)
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス 私鉄
-
志摩國一之宮の伊射波神社は辿り着くまでの道のりが過酷なことで知られる。
鳥羽駅から「かもめバス」で終点の安楽島バス亭まで行き、更に山道を歩くこと一時間余。
クルマで行っても安楽島から山道の往還が必要なので大変さは変わらない。
だが、グーグルマップの航空写真を穴が空くほど見つめたところ、海側からアクセスできる可能性を発見。
ダメもとで行ってみることにした。 -
鳥羽駅から「かもめバス」に乗車するのは同じだが、行き先は安楽島ではなく鳥羽小涌園。
そのひとつ手前のウィスタリアン前バス停にて下車。
ホテル「ウィスタリアンライフクラブ鳥羽」に前泊し、朝早く出発する。
伊射波神社についてフロントマン(というか管理人)に聞いてみた。
「行って行けなくはありませんが、道は獣道みたいなものですし、危険なのでお勧めはしません」
しかし、欲しかったのは「行って行けなくはない」の一言。
なければ「ない」と断言するはず。
やはり、海側からアプローチできるルートは存在したのだ。 -
本館の右脇を通り抜けると庭園があり、更に先へ進むと藪。
その真ん中に細い隘路と、立て看板。
もちろん伊射波神社への案内板などではなく、密漁者への警告だ。
この獣道は獣じゃなく密漁者が行き来しているようだ。 -
「獣道」を抜けると、そこは紺碧の伊勢湾。
あまりの美しさに見とれてしまう。 -
岬の先端へ向け海岸線に沿って進むと、確かに道がない。
途中、道どころか陸地すらない場所もある。
岩場にしがみつき、潮が引くタイミングを見計らってジャンプ!
タイミングを外すと海にズボッとハマッてしまう危険性もある。
このルートをフロントマンが勧めない理由が体感できた。
しかし、この程度の難所は想定内も想定内。
怯むことなく先へ進む。 -
30分だったか1時間だったか、だいぶ歩いた頃。
広い場所に出た。
太いロープが何本も係留してある。
漁師が舟を上げる場所か?
それとも定置網を設置してあるのか? -
スマホの地図を頼りに、山の麓を丹念に調べていく。
すると、漂流物が山のように堆積している一角が目に止まった。
木の板が置かれているが、何も書かれていない。
だが、灌木に隙間があり、そこから中へ入ってみる。 -
隙間の内側から海側を見る。
これは明らかに何らかの道ではないか?
周囲が漂流物のゴミで溢れかえっているので、よほど注意深く見ないと気付かないだろう。 -
しかも木の板の裏側に、井戸があった。
伊射波神社と何か関係があるのだろうか? -
道は山の上へと続いている。
迷わず先へ進む。 -
朽ちかけてはいるが、木による階段らしきものが整備されている。
間違いなく、伊射波神社への海側からの参道だろう。 -
期待に胸を踊らせつつ先へ進むと、道が急に広く、そして立派になった。
-
暫く進むと、更に広い道と合流。
こちらが安楽島から来る“表参道”か。 -
ウィスタリアンライフクラブから2時間以上かかったろうか。
ようやく伊射波神社にたどり着いた。
しかし海側からの入口を探しながらの道程だったので、時間がかかったのはやむを得ない。
海沿いの道程の大変さと入口の場所が最初から分かっていたら、多分30分ぐらいで着いたのではないか?
ただ、風雨の強い日は絶対に避けたほうが良い。
下手したら遭難してしまう。 -
拝殿の中に入る。
もちろん無人だ。
芳名帳が置いてあり、参拝者が結構いる。
そこへ自分も名を連ねさせてもらう。
壁には「御朱印御希望される方は宮司宅へ」との案内図。
そこに携帯電話の番号も明記されている。
見ると宮司さんのご自宅は安楽島バス停の近くにある。 -
伊射波神社の創建は不詳だが、1500年以上の歴史があるとのこと。
安政元(1854)年の大地震と大津波で社伝が失なわれ、正確なところは不明。
現在の社殿は昭和51(1976)年に造営されたものだ。 -
裏手の本殿へ。
まさに「古神道」という形容詞が相応しい建物。
拝殿には次の四柱が祭神として掲げられていた。
・稚日女尊(わかひるめのみこと)
・伊佐波登美命(いざわとみのみこと)
・玉柱屋姫命(たまはしらやひめのみこと)
・狭依姫命(さよりひめのみこと)
伊佐波登美命以外の三柱は「女神様」。
参拝すると女の“性”に包まれたような、なにやら暖かい気持ちで心が満たされる。
伊射波神社が鎮座する一山これすべて「女神の山」だからなのかも知れない。 -
参拝を終え、今度は安楽島への「表参道」を辿って帰る。
そういえば、海側からの参道に鳥居はなかった。
何も書かれていない木の板ではなく、せめて小さな鳥居でも建てておいてもらえたら、入口を一発で発見できたのに。 -
急坂の参道を延々と下る。
石畳あり未舗装道ありで、それほど足場は良くない。
海岸線の岩場よりはマシだが。
坂を降り切ったところで突然視界が開け、再び紺碧の伊勢湾と再会。
その美しさにフッと息を呑む。 -
ここに一の鳥居と社号標。
先ほど潜った二の鳥居、拝殿前の三の鳥居と異なり、一の鳥居は石造り。
人気のない山中にひっそりと佇む、華美な装飾のないシンプルな鳥居からは、現世での御利益ではない、もっと原始的な“信仰”の念が伝わってくる。 -
社号標には「式内 伊射波神社」の刻銘。
「延喜式」には伊射波神社が二座あると記載されている。
確かに志摩には現在、伊射波神社に伊雑宮と一之宮が2つある。
ただ、過去に両社は伊雑宮に合祀されたという説もあり、ここが「式内 伊射波神社」ではないとする見方もある。
けど自分は学者ではなく単なる旅人なので、この伊射波神社が尊い存在でありさえすれば、それでいい。 -
安楽島氏子会が設置した案内板。
すっかり塗料が剥げ落ち、案内図としての役割を十全に果たしているとは言いがたい。
だが、伊射波神社の位置と御利益の「家内安全 五穀豊穣 縁結びの神」はハッキリと明示されている。 -
入江に出る。
小さな木製の標識が置いてある。
エメラルドグリーンの海とのコントラストは、一幅の絵のようだ。 -
ここにも木製の標識。
歩く横を軽トラックが通り過ぎていく。
このあたりまでは車で入って来られなくはないらしい。
しかし極端な隘路の上、下手に脱輪すると助けを呼ぶだけで一苦労だろう。
道に慣れた地元の人でもなければ、とても車では無理だ。 -
道は一応舗装されているので、それほど歩くのに苦ではない。
ここにも木製の標識。
「車|歩行者近道」とある。
不覚にも歩行者近道の存在には気付かなかった。
道理で道が舗装されていたわけだ。 -
石で出来た「右一ノ宮」の標識。
極めて素朴ながら清冽な神々しさを感じる。 -
切通しになった竹林の中などを通り過ぎ、標識の石柱と遭遇。
麓が近づいてきたようだ。 -
伊射波神社から歩くこと1時間ほど。
ようやく社殿以来の建物に遭遇した。
カギでおなじみ美和ロックの海の家。
ここにも密漁者への警告板が設置されていた。
それほど参拝者を装った密漁者が多いのだろうか? -
ようやく安楽島に到着。
ここに、最後の案内板を発見。
安楽島側から参詣すれば最初の案内板になるか。
考えてみたら、ここから伊射波神社まで“一本道”。
下手に寄り道しなければ道に迷うこともないだろう。
海側からのアプローチよりも時間はかかるが、安全にたどり着けるのは確かだ。 -
かもめバスの停留所がある安楽島舞台。
鳥羽市の有形民俗文化財に指定されている。
車で参拝する場合、ここに駐車するのが一般的のようだ。 -
御朱印を賜るため安楽島バス停から10分ほど歩き、宮司さんのご自宅近くから携帯に電話を掛けた。
すると今、入れ違いに伊射波神社にいる由。
こちらに車で向かってくれるという。
目の前にある安楽島漁港の駐車場で待つことになった。 -
宮司さんの到着まで少々時間がかかりそうだし、朝から何も食べてないので、安楽島フードセンターに立ち寄る。
だが、あんパンを買ってる僅かな間に、宮司さんは到着していた。
やはり移動時間では徒歩と車じゃ比べ物にならないと、改めて思い知る。 -
御朱印を賜りつつ、宮司さんと色んな話をする。
「寒かったでしょう」と参詣の労をねぎらわれる。
夏だったら蚊の大群に追われていたかもしれない。
最悪の場合、蝮に遭遇していた可能性だってある。
「つくづく真冬で良かったと思います」と答えた。
そうこうするうち、安楽島バス停から鳥羽駅行きのバスが姿を現した。
今までで最も辿り着くことが困難だった一之宮に別れを告げ、バスに乗り込んだ。
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