昨年８月にオープンしたヘルシンキ・ミュージックセンター、コンサートホールでピエタリ・インキネン指揮ヘルシンキフィルハーモニーによる演奏でマーラー交響曲第５番を聴いた。<br /><br />このホールはヘルシンキ中央駅から徒歩10分、これまで中心的なコンサートホールとして名高いフィンランディアホールのすぐとなりに建設された。ベルリンのフィルハーモニーホールやサントリーホールと類似のワインヤード型、日本人の豊田泰久氏による音響設計は非常に高い評価が得られている。ヘルシンキフィルとフィンランド放送交響楽団の新しい本拠地となった。年間プログラムによれば、サカリ・オラモ、ユッサ・ペッカ・サラステ、オッコ・カムなどの地元スターに加え、マズア、ジンマン、準・メルクルなどが登場する。<br /><br />ヘルシンキ・ミュージックセンターは1704席のコンサートホールの他、シベリウス・アカデミーも同居、用途の異なる６つの小ホールや練習室、さらに地下には小規模な絵画、彫刻の展示室などを併設する複合建築である。コンサートホールはデザイン・コンペによって豊田泰久氏の設計案が採用された。設計者本人は設計コンセプトについて以下のようにコメントしている。<br /><br />「ワインヤード型の特徴は、シューボックス型に比べて各客席からステージまでの距離をより短く設定でき、ステージと客席の間の親密感をより増すことができること、さらにステージを取り囲むような客席配置によって向い側の聴衆の顔を直接見ることができるようになり、聴衆どおしの視覚的な親密感・連帯感を期待できることである。「中略」−素晴らしいコンサートが繰り広げられた時、満席の聴衆がそれを楽しむ様子が直に伝わってくること、これこそがワインヤード型ホール形状、客席配置の醍醐味である。」<br /><br />実際にマーラーの第５番を聴いて、このホールの音響の素晴らしいことを確認した。設計者の意図通り豊かな反響と同時にソロ楽器は明瞭にクリアーに響く、バランスは絶妙である。しいて難を言えば、音楽ホールと言うよりはアリーナ（体育館）に近いような天井や照明、急勾配で切り立った最上階の座席など、シューボックス型の伝統的ホールには見られないものである。<br /><br />インキネンは最近日本フィルや大阪フィルを指揮している。インキネンの名からネの字を取るとちょっとヤバい日本語になるため印象に残っている。1980年生まれというから32歳になったかどうか、秀逸な才能である。4歳でヴァイオリンを始めシベリウス音楽院で学ぶ。その後指揮者に転じ、レイフ・セーゲルスタム、ネーメ・ヤルヴィなどに指揮の指導を受け、北欧、英独、日本のオケを指揮している。北欧で最も古い129年の伝統を誇るヘルシンキフィルを相手に、奇をてらわず堂々と自分のマーラーを主張していた。なおチケットは６〜25ユーロ、7時開始の3時間前に窓口で購入したが、この時点で残券は10枚ほど、本番ではホールはほぼ完全に埋まっていた。インターネットではかなり前から完売していた。<br /><br />フィンランドと言えばもちろんシベリウス、このオケは2008年にサンクトペテルブルクでセーゲルスタム指揮でシベリウスの第５交響曲、ヴァイオリン協奏曲などを聴いている。さすがにお国物の演奏は一味違う。それほどパワーはないが、管楽器の音色は素晴らしく、シベリウスに対する愛情を感じた。シベリウスの作品は晩年になると伝統を超えて、自由で神秘的な作品を生み出しておりしびれる。私は後半の交響曲や、交響詩エン・サーガ、タピオラなどが大好きだ。近い将来、シベリウスの生家や彼が作曲活動をした家を訪れてみたい。<br /><br />この日チケットを購入した後、シベリウスのモニュメントのあるシベリウス公園を5年ぶりに訪れた。先回は12月の薄暗く、雪に覆われた冬枯れの寒い日であったが、今回白夜も近い青空のもと、美しい海岸も近くここが素晴らしい公園であることを知った。やはり北欧を訪れるのは夏に限る。

音楽都市ヘルシンキ：新しいミュージックセンターホールでヘルシンキフィルを聴く

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2012/05/23 - 2012/05/23

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#エンターテイメント

ハンクさん

昨年８月にオープンしたヘルシンキ・ミュージックセンター、コンサートホールでピエタリ・インキネン指揮ヘルシンキフィルハーモニーによる演奏でマーラー交響曲第５番を聴いた。

このホールはヘルシンキ中央駅から徒歩10分、これまで中心的なコンサートホールとして名高いフィンランディアホールのすぐとなりに建設された。ベルリンのフィルハーモニーホールやサントリーホールと類似のワインヤード型、日本人の豊田泰久氏による音響設計は非常に高い評価が得られている。ヘルシンキフィルとフィンランド放送交響楽団の新しい本拠地となった。年間プログラムによれば、サカリ・オラモ、ユッサ・ペッカ・サラステ、オッコ・カムなどの地元スターに加え、マズア、ジンマン、準・メルクルなどが登場する。

ヘルシンキ・ミュージックセンターは1704席のコンサートホールの他、シベリウス・アカデミーも同居、用途の異なる６つの小ホールや練習室、さらに地下には小規模な絵画、彫刻の展示室などを併設する複合建築である。コンサートホールはデザイン・コンペによって豊田泰久氏の設計案が採用された。設計者本人は設計コンセプトについて以下のようにコメントしている。

「ワインヤード型の特徴は、シューボックス型に比べて各客席からステージまでの距離をより短く設定でき、ステージと客席の間の親密感をより増すことができること、さらにステージを取り囲むような客席配置によって向い側の聴衆の顔を直接見ることができるようになり、聴衆どおしの視覚的な親密感・連帯感を期待できることである。「中略」−素晴らしいコンサートが繰り広げられた時、満席の聴衆がそれを楽しむ様子が直に伝わってくること、これこそがワインヤード型ホール形状、客席配置の醍醐味である。」

実際にマーラーの第５番を聴いて、このホールの音響の素晴らしいことを確認した。設計者の意図通り豊かな反響と同時にソロ楽器は明瞭にクリアーに響く、バランスは絶妙である。しいて難を言えば、音楽ホールと言うよりはアリーナ（体育館）に近いような天井や照明、急勾配で切り立った最上階の座席など、シューボックス型の伝統的ホールには見られないものである。

インキネンは最近日本フィルや大阪フィルを指揮している。インキネンの名からネの字を取るとちょっとヤバい日本語になるため印象に残っている。1980年生まれというから32歳になったかどうか、秀逸な才能である。4歳でヴァイオリンを始めシベリウス音楽院で学ぶ。その後指揮者に転じ、レイフ・セーゲルスタム、ネーメ・ヤルヴィなどに指揮の指導を受け、北欧、英独、日本のオケを指揮している。北欧で最も古い129年の伝統を誇るヘルシンキフィルを相手に、奇をてらわず堂々と自分のマーラーを主張していた。なおチケットは６〜25ユーロ、7時開始の3時間前に窓口で購入したが、この時点で残券は10枚ほど、本番ではホールはほぼ完全に埋まっていた。インターネットではかなり前から完売していた。

フィンランドと言えばもちろんシベリウス、このオケは2008年にサンクトペテルブルクでセーゲルスタム指揮でシベリウスの第５交響曲、ヴァイオリン協奏曲などを聴いている。さすがにお国物の演奏は一味違う。それほどパワーはないが、管楽器の音色は素晴らしく、シベリウスに対する愛情を感じた。シベリウスの作品は晩年になると伝統を超えて、自由で神秘的な作品を生み出しておりしびれる。私は後半の交響曲や、交響詩エン・サーガ、タピオラなどが大好きだ。近い将来、シベリウスの生家や彼が作曲活動をした家を訪れてみたい。

この日チケットを購入した後、シベリウスのモニュメントのあるシベリウス公園を5年ぶりに訪れた。先回は12月の薄暗く、雪に覆われた冬枯れの寒い日であったが、今回白夜も近い青空のもと、美しい海岸も近くここが素晴らしい公園であることを知った。やはり北欧を訪れるのは夏に限る。