2011/08/09 - 2011/08/09
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まつじゅんさん
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建築界のノーベル賞と例えられるプリツカー建築賞を2010年に受賞した妹島和世氏(受賞は西沢立衛氏と共同で設立した設計事務所「SANAA」が世界各国で手がける建築プロジェクトへの評価。)設計の建物を訪れる機会がありました。
「SANAA」は、小笠原資料館(長野県)、金沢21世紀美術館(石川県)、トレド美術館(米オハイオ州)のガラスパビリオン、ニューミュージアム現代美術館(ニューヨーク)、ロレックス研修センター(スイス・ローザンヌ)や、ルーブル美術館がランスに建設する別館、等々の建築設計を手がけ、現在日本で一番活躍されているデザイナー建築家ではないでしょうか。
私も、一応建築を生業としていますので、非常に興味があり、ワクワクしながら見せて頂きました。
感想は・・・。
一口で言えば、私は料理人が盛りつける器を造り、有名建築家と称される多くの方々は、器に合った料理を造れ。ということでしょうか。
芸術は難しいです。
- 同行者
- その他
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
- 交通手段
- タクシー 新幹線
- 旅行の手配内容
- 個別手配
-
早朝、JR名古屋駅着。
しばらく振りですが、凄い変貌を遂げていました。
駅前には高層のホテル&事務所ビルが建ち、ビジネスマンが忙しく行き交っています。 -
待ち合わせまで時間があったので、ホテルのラウンジでしばし休憩。
ホテルのエントランスから市内方向が一望できました。 -
市営地下鉄と名古屋鉄道豊田線が相互乗り入れ(各停ですが・・。)しており、名古屋市駅まで約50分です。
-
豊田市駅前。
市名は、トヨタ自動車の創業者の姓「豊田(とよだ)」に由来し、市内に本社を置くトヨタ自動車との企業城下町です。
愛知県下最大の面積で、人口(2011年8月1日現在)423,299人の中核都市ですから、当然です。
鳥取県の人口の半分以上ですものね。 -
イチオシ
逢妻交流館は豊田市駅から西へ約5km、タクシーで約10分位ですかね。
点在した民家を抜け、県道沿い四方畑等に囲まれた、丘陵地の頂上近くにありました。
隣接して小清水小学校、逢妻中学校の文教地区でしょうか。
タクシーを降りるとそこには丘陵地に建つガラスの城が・・・。
綺麗!です。
周辺に眺望を遮断するものはなく、青空の中に浮かび上がる、光るアメーバーというのが第一印象です。 -
イチオシ
まず、周囲を一周します。
この建物には裏も表もありません。
外壁は曲面ガラスで構成されています。
また、3階部分はガラス壁はありませんが、3層の建物が少し芯ズレしながら積層するダイナミックな動きを表現するため、鋼製メッシュで外壁線を演出しているとのことです。 -
南西面外観です。
ガラスの外壁の中にある白い壁が、地震に耐えるための耐力壁なんでしょうね。 -
北面全景です。
とは言っても、外壁線が曲線ですから○○面とは言えないんですね。
強いて言うなら、北側から見た外観というところでしょうか。 -
イチオシ
南側から見た3階部分。
丸く開いた穴は何?と、考えてはいけないんでしょうね。
感覚で見なくては・・・。 -
人の立ち位置、目線、角度を模型で研究し、才能ある芸術家の美的感覚にヒットした場所に開けた穴。
デザインとはそういうことなんでしょうか。 -
きっと樹木の位置も検討を重ね、決められたんでしょうね。
でも、10年後には樹木は大きく成長しているでしょうね。 -
周辺は、鳥取を彷彿させる景観です。
逢妻交流館は、地域の生涯学習の拠点で、市内に25の交流館があるようです。
逢妻地区は、面積31.8ha、人口726人(男性345人、女性381人、270世帯と市のHPにはありましたが、700人の為の施設なんですかね。 -
1層部と2層部が、微妙にずれているのが解りますね。
もし、私がこんな設計をしたら、「歪んでる・・・。」と鋭い指摘が飛んでくるのでしょうね。 -
こうして、何の変哲もない学校のデザインと対比すると、逢妻交流館はきっと、「かっこいい!」と思われるでしょうね。
-
それでは館内に入りましょう。
-
館内案内図。
各部屋は、色が付いた大小の丸の部分です。
基本的に、曲線の外壁に囲まれた内部に円筒状の個室があり、その間が通路や開かれたスペースです。
ガラスの外壁と、中の円筒の部屋には隙間があり、建物をぐるり回遊できるようになっています。 -
階段横の空間です。
構造は本当に勉強になります。
佐々木睦朗氏の構造理論をもって、初めて可能となったものかもしれません。
私の知識では、この柱では地震力は負担できないと思いますが、コア部(トイレ、エレベーター、倉庫等の入っている部分)の壁と、一部多目的室の壁で集中的に水平力を負担しているのでしょうか。
コア部の剛性強度と、大きな鉄骨梁に水平力を負担させて、この細い柱を可能としているかと、マニアックに考えてしまいました。
確かに、細い柱は空間の邪魔にはなりませんね。 -
子育てサロン。
1階の玄関脇に設置されていました。
横には授乳室もあります。
スーパーの子供コーナー・・、のようなものでしょうか。 -
多目的室。同じく1階にあります。
舞台もあり、地区の成人式やイベントに利用しているようです。
収容200人と聞きましたが、ちょっと無理じゃないのと言う感覚です。 -
外部(ロビー側)からの遮音のため、二重ガラスとなっています。
マァ、この隙間は無駄と感じるか、デザインと捉えるかによって、評価が変わってくる気がします。 -
2階の小会議室。21人収容らしいです。
これも机一杯になりそうですね。
丸い部屋に四角の机を入れると、どうしても隙間が多くなりますね。 -
中会議室。42人定員です。
どうしても遮光カーテンが必要になるんでしょうね。
講師の顔を見たら、その向こうには風景が広がっているのでは、落ち着かない気がします。
また、逆光ではっきり見えないかもしれませんね。 -
2階から3階へ吹き抜けの大会議室です。78人収容とのことですが、机が無くオルガンがありましたので、簡単なコンサートも出来るんでしょうか。
ダンス教室などにも利用できそうですね。 -
建物外周部の通路。
通るのは少しコワイ気がしますが・・・。 -
3階調理実習室。
実は3階は外部扱いで、外壁のガラスは無く、風が通る半屋外になっている。
そこにも、ガラスの円筒壁で構築された部屋が点在しています。
当然、雨も降ります・・・。 -
3階工芸室。
屋上ですから、防水保護のコンクリートブロックの上で、陶芸等ハードなものも出来るんでしょうね。 -
和室。
ここだけは、周囲を障子で区画しています。 -
和室の外壁も透明ガラス。
障子に光が入り、綺麗です。 -
給湯室。
簡易な湯茶対応ですね。 -
3階から見る景色は、あたかも展望台のようで、屋上で料理やお茶をしている、非日常を上手に表現しているのでしょうか。
-
屋上に開けられた丸い開口・・。
外部との一体感を醸し出しています。 -
きっと、開口の位置も模型で凄く検討し、外観とのバランスを決めたんでしょうね。
太陽の動きも検討し、どこに影を落とすかまで計算して開けられている気がします。 -
影を見ていると、そんな拘りがあると思います。
-
ちょうど11時頃。太陽の南中時刻に近いです。
建物の外に、開口の影を落とさないこと、これは大方針ですかね。 -
イスにも非常に拘りを感じます。
ただ、ここに座ろうとしたら、旨くバランスを取って座らないと、反対側が浮き上がり、ひっくり返ってしまいましたが・・・。 -
図書コーナーに置かれていた、SANAAラビットチェァ。
フリーハンドで書いたような左右非対称の「耳」とその存在感、どこにでも置けるコンパクトさがポイント。
愛くるしい「ラビット」フォルムのチェアは、一脚でも部屋の印象をがらりと変える存在感を持っている・・・らしいです。 -
逢妻交流館から帰り道、少し寄り道をして豊田市美術館を見学しました。
展示も良かったですが、設計は、土門拳記念館や葛西臨海水族園、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、ニューヨーク近代美術館新館で知られる谷口吉生氏です。
鉄とガラスのシンプルな形態のモダニズム建築で、展示や鑑賞や収蔵品の管理に対する配慮の行き届いた機能的な建築である。また、展示室から別の展示室がわずかに見えたり、順路の途中の廊下から豊田市の眺望が開けるなど、意外性や面白さも併せ持っている。
「ウィキペディア」より抜粋 -
前庭です。
全てに隙が無く、本当に谷口先生の代表作と思います。
デザインと機能、それに建物の配置計画に明確な主張を感じました。
私が学生時代、建物は主張しながらも都市デザインの柱となる建築を目指そうと教えてもらっていたのですが・・。 -
中央階段。
乳白色のガラスと切り立った壁面の対比。
その間をまっすぐに通る階段。
構成力に圧倒されます。 -
美術館は、江戸時代末期に築城された山城、七州城跡地に建築されており、西側は駐車場から正面玄関へのアプローチに隅櫓が復元され、当時の面影を伝える歴史的な景観を形成している。
逆に、この東側は切り立ったテラスから中心市街地を望み、あたかも過去と現在の境界線のように、南北に配置されています。 -
ここから、デザイン云々ではなく、日常の維持管理を考えざるを得ない建築屋さんとして、逢妻交流館を見てみます。
まず、エントランス部。
車両の通過を考慮した高さとなっていない。
少なくとも、ワゴン車はエントランス内に入れるようにしないと、車椅子等の利用者が横付けできません。 -
建物本体のデザインには強い拘りを感じますが、附属施設(ある意味重要な設備棟)の納まりは、ウ〜ンです。
建物はインダストリアルデザイン(industrial design)と見て良いのかとの議論もあると思います。
産業・工業においては、美しさやユーザビリティの追求し、その結果として製品の商品性を高めることが目的です。美それ自体が目的である美術・芸術品とは区別されものですが、半分位は使いやすさの要素もあるのではないでしょうか。 -
隣接して建っているのに、仮設材で壁造って、囲っているだけです。
排熱等のエネルギー効率も考えた方が・・・。 -
ここからは細かな細かなDetailです。
建築に興味のない方は、スル〜して下さい。。。
使用者からのクレームで後付けで補修したのでしょうが、工夫の余地が多くあります。
これは、床の隙間から物が落ちるとのクレームがあったんでしょうね。
ただ、中からの見え方に拘り、透明な下敷き状の物を取り付けています。
普通は、壁を立ち上げて床を収めるのでしょうが、中から見たとき透明感が出ないんでしょうね。 -
これも外部廻りの納まり。
同じですね。
外から薄い床と見せるため、表面仕上げを後で延ばしたんでしょう。
熱で見切りの金属が曲がってしまうのは、当然です。 -
床の設備取り出し口。
私の日曜大工レベルですね。
施工者の技術の問題なのでしょうか・・・。 -
計算された開口でしょうが、子供達がこの柱を伝って、屋上に登ることは想定していなかったようです。
-
どうでも良いことかもしれませんが、天井の下地ピッチ、納まり等雑すぎます。
私はこれは許せません。
将来的に下地が腐食したり、下地ピッチが広すぎて、最悪天井板が落ちてきたりする危険性もあると思うのですが。 -
各室には扇風機は必需品。
恐らく省エネで扇風機が不足したのとは違う理由で、扇風機を使わざるを得ない状況だったんでしょう。 -
利用者としては暑さ対策で、苦肉の策として設置したんでしょうが、拘った外観も、これでは台無しですよね。
当日、施設を利用していた人に聞くと、窓が開かない、風が通らない。見られすぎて落ち着かない、なにより暑い。etc・・・。
酷い評価ばかりでした。
この建物の目隠しを排除し名部屋の利用者と通路を歩く人の間に、ガラス越しに軽いコミュニケーションを産みだし、開放感をもった部屋に「交流」という機能を持たせたいと考えたと思います。
設計者が求めるスケルトンのデザインコンセプトは、利用者の求める機能には必ずしも一致しないし、押しつけに近いと利用者から支持されないと言うことなのでしょうか。
ただ、私も利用者側の声のみを重視したり、経済性のみで建物を造れと言う、建築は単なる箱という考えには、100%賛同は出来ないのですが・・・。 -
建築には、風景・空間を構成し、都市のシンボル的な要素もあると思います。
そのため、都市デザインの意味合いも多く含み、確かに芸術性も求められる必要な要素であると思います。
その考えを単純に、費用対効果や効率、コスト等で判断できるものではないのは確かです。
二度と同じものが作られないだろう、というのが芸術たる所以だとも思います、このような地域の交流館に求める内容として重すぎたのではという気がします。
豊田市はトヨタショックにより、一気に法人市民税が97%減になったと聞きましたが、仕分けされずに建った、という意味では奇跡的な建物かもしれません。
芸術性を云々する前に、人が建物という物を作り始めた根底には、雨風を凌ぎ、平穏な日常生活の場を確保するという、第一議の目的があり、『衣食足りて礼節を知る。』ではないが、まさしく、いくらデザインが美しく、優れていたとしても、食事に使えないようなカタチの食器は、意味が無いと判断されるのかもしれません。
今は芸術品として名高い、備前、九谷焼等の陶芸品も、元は日用品として流通し、長い時間の中で希少性、美しさ、芸術性等が評価され、今の評価を得たという歴史と同様に、建物に求められるものは何か、という本題に戻り、日々研鑽していきたいと思います。
本日これまで!
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この旅行記へのコメント (2)
-
- poemyさん 2011/09/21 13:32:08
- 建築…
- まつじゅんさん、こんにちは。
今更ながら知ったのですが、まつじゅんさんは建築関係のおしごとをされていらっしゃるのですね。
この建物探訪記興味深く拝見させて頂きまいした。
実は私、建築設計、施工に関しては全くのド素人ですが、建物見学、住宅展示場見学好きなのです。
家を建ててからは、建築目的もないのに展示場行くのは気が引けて、行きにくいので行けてませんが^_^;
玄関はいって、実際ここに住んで生活してみたら…目線で見学を楽しんじゃいます。
機能性、熱効率、居住性とおしゃれなデザインと共存させていくのは、建築家の方の腕の見せ所なのでしょうね。
住人の方の建築、維持費にかけられる経済力も絡んでくるでしょうし、
居住性の長い個人の家と、滞在期間の短い人の多い、公共の建物とでは、
また、重視する点も違ってくるでしょうし。。。
でも、豊富な専門知識の引き出しから、お客様ニーズに提案、提供していける、大変でしょうけど、やりがいのある奥深いお仕事の様な気がします。
金沢の21世紀美術館、同じ建築家の方の作品なのですね。
そう言われてみれば納得です。
poemy
- まつじゅんさん からの返信 2011/09/21 21:36:32
- RE: 建築…
- poemyさん、書き込みありがとうございました。
私も建築関係とは言いながら、陸に上がった建築屋さんで、今は口だけで生きています。
おっしゃるとおり、建築って本当に楽しく奥の深いものだと、poemyさんの文章を読んで、いまさらながら感動しました。
金沢21世紀美術館はSANAAの代表的な作品で、建築と展示が融合したすばらしい建物だと思います。
色んな角度から街中に無数にある建物を見て、そこに携わった人が何を考えていたのか、少しでも解ってもらえるような建築を目指して生きたいと思います。
何も考えない事が一番良くないですよね。建築は独りよがりが許される、本当に少ない業種だと改めて考えさせられました。
matujyunn
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