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フィアメーラへ、いつもよりも意識が向くようになった。<br /><br />つまりいつもは、どんなに一緒にいるつもりでも四十近い赤ん坊を含む子供をみる中で、一人の女の子に向けられる関心は、限られてしまっているということ。<br /><br />フィアメーラは鏡の一件はなかったかのように、いつもどおりに過ごしていた。<br /><br />どうしたらいいんだろう。<br /><br />あの時、そんなことはない、あなたは可愛いのよ、とはいったけれど何の慰めにもなっていないだろう。<br /><br />どれだけ長い間、そんな悲しみを背負っていたんだろう。<br /><br />私はアフリカ人スタッフにすぐにそのことを話すのをためらった。<br /><br />それまでにタウンシップで、なぜかよそ者の私に、ひっそりと自分が感染していることを打ち明けてくる人に何人も出会っていた。<br /><br />よそ者だから話せることもある。<br /><br />フィアメーラはもうズールー語ではこの話しをしたのだろうか。<br /><br />信頼しているファーザー・ニコラスや、シスター・デリウィに相談しようか。<br />院内学級のルイーズに相談しようか。考えはしたものの、ためらった。<br /><br />フィアメーラがひっそりと、一人で背負った悲しみは、簡単に誰かに<br />言ってはいけないような気がした。<br />ひっそりと、その秘密を私もその日からしばらく抱えることにした。<br /><br /><br /><br />当時、私はアフリカ人スタッフに心を開いてもらうための試行錯誤をしていた。<br />例えば、食事のあとの皿洗い。<br /><br />私が皿洗いに参加するようになってレイジーなスタッフと働き者がくっきり分かれてしまった。<br />一緒に必ず洗う人、後ろでおしゃべりを続ける人。<br /><br />でも、持ち場を各自が離れるわけではないし、おしゃべりをきいていて皆のことがよく<br />理解できるようになったこと、「私の仕事」にされてしまっているわけでも<br />なかったから、皿洗いはずっと続けていた。<br /><br />フィアメーラの暮らしているレインボウ・コテージは<br />基本は病棟であって家ではない。<br />だから子供はサマリーや薬もある小さなキッチンには原則は入れない。<br />特別なときだけ、入れてもらえる。<br />子どもは、キッチンに入りたくてたまらない。<br />入れてもらえた子どもを、ドアからワイワイと見つけてうらやましがる。<br /><br />特別、といっても、お薬をもらうとか、みんなとの食事が喉をとおらずに、<br />ソフトポリッジを食べさせてもらうといった、ことなのだけれど。<br /><br /><br />毎日は無理だけれど、スタッフに「しばらく皿洗いは私に任せてね」と<br />宣言して、フィアメーラを誘って一緒に皿洗いすることにした。<br /><br /><br />今までやったことのない、新しいお手伝い。<br />彼女は目をキラキラさせて誇らしげだった。<br /><br />他の小さな子の入ってくるのをスタッフの口まねしながら追い出していく。<br /><br /><br />「私たちのお皿、こうやって洗うのね。<br /> 洗わないと、お腹壊して死ぬのよ。<br /> 私たち病気だもの。」<br /><br />本当にぎょっと哀しくてお腹が冷えるような、痛切な言葉をはく子だ。<br /><br /><br />「フィアメーラはいい子ね。<br /> 健康に育ってるよね。」<br /><br />「うん、でも友達はここでは死んじゃうの。」<br /><br />「自分もそうなると思う?」<br /><br />「わかんない。」<br /><br />「そうね、わかんないよね。神様以外わからない。<br /> でも何があっても、私はずっとフィアメーラが大好きよ。<br /> そのこぶもね。」<br /><br />「私はこぶが嫌い。<br /> みんなにはないのにな。」<br /><br />「みんなと違っていいの。<br /> フィアメーラはフィアメーラ。<br /> フィアメーラだから好きなのよ。可愛いのよ。」<br /><br />「えりこ、変なの。」<br /><br /><br />フィアメーラは、私の腕をつねって、走って消えてしまった。<br /><br />

小さな炎(4)

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2003/05/01 - 2005/02/17

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EriKoyama

EriKoyamaさん

フィアメーラへ、いつもよりも意識が向くようになった。

つまりいつもは、どんなに一緒にいるつもりでも四十近い赤ん坊を含む子供をみる中で、一人の女の子に向けられる関心は、限られてしまっているということ。

フィアメーラは鏡の一件はなかったかのように、いつもどおりに過ごしていた。

どうしたらいいんだろう。

あの時、そんなことはない、あなたは可愛いのよ、とはいったけれど何の慰めにもなっていないだろう。

どれだけ長い間、そんな悲しみを背負っていたんだろう。

私はアフリカ人スタッフにすぐにそのことを話すのをためらった。

それまでにタウンシップで、なぜかよそ者の私に、ひっそりと自分が感染していることを打ち明けてくる人に何人も出会っていた。

よそ者だから話せることもある。

フィアメーラはもうズールー語ではこの話しをしたのだろうか。

信頼しているファーザー・ニコラスや、シスター・デリウィに相談しようか。
院内学級のルイーズに相談しようか。考えはしたものの、ためらった。

フィアメーラがひっそりと、一人で背負った悲しみは、簡単に誰かに
言ってはいけないような気がした。
ひっそりと、その秘密を私もその日からしばらく抱えることにした。



当時、私はアフリカ人スタッフに心を開いてもらうための試行錯誤をしていた。
例えば、食事のあとの皿洗い。

私が皿洗いに参加するようになってレイジーなスタッフと働き者がくっきり分かれてしまった。
一緒に必ず洗う人、後ろでおしゃべりを続ける人。

でも、持ち場を各自が離れるわけではないし、おしゃべりをきいていて皆のことがよく
理解できるようになったこと、「私の仕事」にされてしまっているわけでも
なかったから、皿洗いはずっと続けていた。

フィアメーラの暮らしているレインボウ・コテージは
基本は病棟であって家ではない。
だから子供はサマリーや薬もある小さなキッチンには原則は入れない。
特別なときだけ、入れてもらえる。
子どもは、キッチンに入りたくてたまらない。
入れてもらえた子どもを、ドアからワイワイと見つけてうらやましがる。

特別、といっても、お薬をもらうとか、みんなとの食事が喉をとおらずに、
ソフトポリッジを食べさせてもらうといった、ことなのだけれど。


毎日は無理だけれど、スタッフに「しばらく皿洗いは私に任せてね」と
宣言して、フィアメーラを誘って一緒に皿洗いすることにした。


今までやったことのない、新しいお手伝い。
彼女は目をキラキラさせて誇らしげだった。

他の小さな子の入ってくるのをスタッフの口まねしながら追い出していく。


「私たちのお皿、こうやって洗うのね。
 洗わないと、お腹壊して死ぬのよ。
 私たち病気だもの。」

本当にぎょっと哀しくてお腹が冷えるような、痛切な言葉をはく子だ。


「フィアメーラはいい子ね。
 健康に育ってるよね。」

「うん、でも友達はここでは死んじゃうの。」

「自分もそうなると思う?」

「わかんない。」

「そうね、わかんないよね。神様以外わからない。
 でも何があっても、私はずっとフィアメーラが大好きよ。
 そのこぶもね。」

「私はこぶが嫌い。
 みんなにはないのにな。」

「みんなと違っていいの。
 フィアメーラはフィアメーラ。
 フィアメーラだから好きなのよ。可愛いのよ。」

「えりこ、変なの。」


フィアメーラは、私の腕をつねって、走って消えてしまった。

旅行の満足度
5.0
同行者
その他
航空会社
マレーシア航空
旅行の手配内容
個別手配

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