2011/03/31 - 2011/04/12
42位(同エリア107件中)
ハンクさん
インドに行くようになるまであまり気に留めなかったが、巷には実に多くのインドに関する書籍が並んでいる。私もこの機会に何冊かの本を読んだ。これらの書籍は大きく二種類に分類できる。ひとつは歴史、宗教、文化を客観的に研究した学術的な内容であり、もうひとつは異国の旅人を気取って、インドの異文化を面白おかしく描写したり、ことさらに強調し笑いのネタにしたものである。
しかし我々の立場はいずれとも違う。インドに長期滞在し、インド人とともにプロジェクトを進め、アメとムチで彼らを動かし、彼らにとって大いなる異文化、我々がグローバル基準と勝手に呼んでいるシステムに無理やり同調させている、と言ってもいいかもしれない。彼らに働いてもらわないいけないので、異文化をネタにして笑い飛ばす、ではすまされないのだ。
まず大方の日本人が精神的にやられるのは時間感覚の違いだ。インド神話は43億2千万年の時間単位で、3億3千万の神が存在する。実際の歴史は紀元前2500年前のインダス文明にさかのぼる。とにかく長くゆったりしている。製造業のように緻密なタイムスケジュールで時間を管理する産業にははっきり言って向かないのである。
インド人はよく「2分待って」とか「5分待って」「明日まで待って」と口にする。私も彼らと付き合うようになってしばらくしてその意味が違うことに気がついた。彼らの言う2分は大体30分、5分は1時間、ただし2分と5分は使い分けられている。そして今日中、と言うのは大体3日後であり、明日、と言うのは1週間後、時によっては永遠なる未来を意味することを覚悟しなければいけない(もちろん個人差はある)。製造業でこれをやられてはたまらない。ひとつのパーツがこなければ製品にならないのだ。更に恐ろしいのは、いつの間にか自分自身がこれに慣れてしまい「2分待って」とか口にするようになっているのだ。
インド人と接してみて、ヒンドゥー教の教義によるものなのか、支配を受けた歴史によるものか、意外なことにインド人は総じて心優しくて押しが強くなく、争いを好まず、心優しい国民性である、と感ずることが多い。そして基本的にノーと言えない国民である。
彼らの会話を聞いて(見て)いると頭を横に振る、と言っても首の付け根を中心軸にして頭の頂上部を左右に揺らすしぐさが必ず登場する。これは我々には少し練習しないとマネができない。通常の首を横に振る、というしぐさは否定を意味するのはインドでも同じであるが、この頭を左右に揺らすしぐさは実はイエスなのだ。しかしうなずくイエスとは違う、曖昧な肯定であるようだ。特に上司からの指示には、できることもできないことも常に頭を振りながら「イエッ・サー」、実行されなかった時の言い訳はなかなか巧みでこちらも脱帽させられる。また町で道を尋ねる時は要注意である。道を知らなくても決して知らない、とは言わない。善意にとれば、知らないことが申し訳ないから知ったか振りをするのかもしれないが、回答が曖昧な時はまず知らないと踏んで、別の人を探した方がよい。
インド人は基本的には親日的である。欧米でしばしば遭遇するアジア人蔑視、白人優位主義、または世界大戦の敵国という感情についてはインドでは当然ながら出会うことはない。同じアジア人として先進国となった日本は、インドでは尊敬されている、と言ってもいい。では、日本人としてはインド人とどう付き合っていけばいいのだろうか?
日本人が嫌うのはインド人の「厚かましさ」だろう。大都市の空港の出口で襲いかかってくるおびただしいタクシー、リキシャの運転手、観光地では必ずみやげ物売りと物乞いに取り囲まれる。片言の日本語で近寄ってくるガイドと物売り。空港やショッピングセンターの行列では、少し前に間ができると必ず割り込んでくる。車の運転を見ていると、インド人の本性を見ることができる。割り込み、逆走、無茶苦茶な追い越し、信号無視は当然、どうしてこのような無秩序な国ができてしまったのか、と哀れにも思う。
データによると、2006年交通事故死者数でインドは中国を抜いて世界一になった。途上国はどこでも大差ない、日本も数十年前は同様だった、と言えばそうかもしれない。貧しい彼らが生きるためのすべがあの厚かましさ、なのであろう。また彼らの教義は、富めるものに恵みを求めるのは当然の行為であって、物乞いは当然の行為をしているだけなのだ。ともあれ、インド人の「厚かましさ」は日本人の美意識の対極にある、といっても過言ではない。
ついつい恨み言になってしまうのでこれくらいにしておくが、インド人の精神構造を理解するためにはヒンドゥー教について知ることが不可欠である。ヒンドゥー教についての本を読み、インド人からその教義について聞いたが、実に奥が深い。ヒンドゥー教について語るにはもう少し時間が必要である。人口で中国を追い抜く最後の巨大市場であるから、だけではなく、日本人にとって重要な友人、インド人についてもっともっと知らなくてはいけない。
- 旅行の満足度
- 2.0
- 観光
- 2.0
- ホテル
- 3.0
- グルメ
- 3.0
- 同行者
- その他
- 一人あたり費用
- 25万円 - 30万円
- 交通手段
- タクシー 飛行機
- 航空会社
- シンガポール航空
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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この旅行記へのコメント (2)
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- tadさん 2016/09/07 08:50:08
- すばらしいインド論です。
- 日本企業の最先端で活躍しておられる意気込みがよく理解できるエッセイですね。大変な複合文化をもつインドへの対応は並大抵ではないだろうと思います。ハンクさんに続くような日本の若者がもっと増えるといいのですが。。。ますます委縮しつつある日本です。。。
- ハンクさん からの返信 2016/09/09 07:41:16
- RE: すばらしいインド論です。
- tadさん、お久しぶりです。ただいまマレーシア出張滞在中です。
インド旅行記に過分の評価をいただきましてありがとうございます。すでに4年前のお話ですが、インドに長期滞在した経験は、私にとって忘れ得ないものです。近い将来中国を抜いて人口で世界一となるインド、さまざまな課題を抱えながらも適切に近代化を進めて、日本とは緊密な関係が築かれることを念じています。
今年はマレーシアの年、人口規模は比較になりませんが、アジアでの重要な親日国だけに、一歩踏み込んだ交流を記録していきたいと思います。
tadさんの過去の旅行時の写真は私にも思い出深いところが多く、興味深く拝見させていただいております。今後の投稿を楽しみにしております。ハンク
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