2011/02/02 - 2011/02/02
421位(同エリア1625件中)
ホーミンさん
ご訪問をありがとうございます。
白洲正子先生が「初めて石の美しさを知った」と言う石塔寺に行ってから二十日ほど後、牛塔を訪れました。
先生が「石塔寺と匹敵する」とおっしゃるくらいのものであるにもかかわらず、地元にありながら、私は牛塔の存在を知りませんでした。
「これと匹敵するのは、逢坂山を越えた所にある、関寺の牛塔であろう。石塔寺との間には、約三百年のへだたりがある。ここはもはや大陸の残り香はなく、完全に日本のものに化している。人工から再び自然に近づいたといえようか。はっきりした形は失ったかわり、漠然とした大きさと、暖かみにあふれ、笠をのせたような印象をうける。牛塔とか牛塚と呼ばれるのは、横川の恵心僧都が、関寺の再興をはり、工事のために牛を使役していた。その牛が、迦葉菩薩の化身であるという噂が立ち、前関白道長や、頼通が、拝みに来るという騒ぎだったが、噂にたがわずその牛は、工事の終了とともに死んでしまった。その供養のために建てたのが、この宝塔であるというが、俗に和泉式部とか、小野小町の塔とも呼ばれている。「年々に牛に心をかけながらこそ越えね逢坂の関」と、式部が詠んだからで、小町の方は、謡曲の「関町小町」から出た伝説に違いない。が、牛や美女では不似合いで、よほど名のある高貴な人か、もしかすると、恵心その人の供養塔だったかも知れない。いずれにしても、こんな美しい石塔が、二つながら近江の地にあることは、良材に富んでいたのはもちろんだが、その裏にある石の信仰と伝統のたまものといえよう。」
『かくれ里』より
-
京阪電鉄京津線の上栄町駅近くに、それはありました。 -
駅から南に約150m。
この階段を上っていくと、 -
牛塔が目の前に現れます。
最初は民家のそばに無造作に置かれた感じを受けましたが、民家の方が後に建てられたわけだし、重要文化財にこれほど接近して家を建てられるのにも驚きです。
それにしても、大きい石です。
大人二人で抱え込むほど。 -
本に書かれているように、大陸の残り香はありません。
白くてぼってりとした形が、確かに暖かみを感じます。
まるで、母のぬくもりのような。 -
淡海の国の枕言葉のひとつに、「石走る」があります。
昔から滋賀県は、石に恵まれていたからなのでしょうね。
市の教育委員会によると、牛塔は鎌倉時代初期に造られたそうです。 -
せっかくここまで来たのだし、ちょっと散歩をすることにしました。
国道一号線を下ります。 -
旧逢坂山ずい道東口なるものを見つけました。
こんなものがあったのも、私はこの日まで知りませんでした。 -
一年八ヶ月の歳月を費やして1880年に竣工した、東海道本線の下り線トンネルです。
全長664.8m。 -
日本人の技術者、技能者が主体となって、設計施工。
生野銀山の労働者が、ノミやツルハシで掘り抜いたそうです。 -
ツルハシの音や、労働者の声が聞こえてきそうです。 -
多くの人が撫でたであろう坑道の壁。 -
ここでもまた、先人たちにちょっと触れ合えたような気がしました。 -
坑門上部にある「楽成頼功」の文字。
時の太政大臣、三条実美によるもので、「落成」は「落盤」に通じる忌み言葉であることから、「楽成」に字をあてたそうです。 -
トンネルの入り口には、石仏がありました。
掘削工事の安全を祈って安置されたものでしょうか?
鉄道事故がないようにと置かれたものでしょうか?
トンネルが封鎖されて後、人々に忘れ去られたのか、ひっそりと佇んでいました。
あまりに寂しくて、近くに野の花でも咲いていたなら、摘んでお供えをしたかったです。 -
逢坂の関に来ました。
ここから東海自然歩道を少し歩こうと思ったからです。
ここまで来ると、うなぎのいい匂いが漂ってきます。
「うなぎのかねよ」さんの匂いです。 -
ひなたぼっこをしていたニャンコ。 -
足元を見ると、牛塔に似たものが。 -
歩道にポンポンと置かれています。
このそばを何度か車や自転車で通っていますが、全然気が付きませんでした。
牛塔を知らなかったら、歩いていても見過ごしていたかも知れません。 -
モチーフは、やはり牛塔のようです。
私って地元の歴史や文化財にさえたいそう疎いなと、つくづく感じる今日この頃です。
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
この旅行記へのコメント (12)
-
- ゆうこママさん 2011/02/15 20:03:27
- 白洲正子先生の
- 近江という国は、本当に奥が深いですね。ますます近江ファンになってしまいます。
白洲正子氏の著書、
生前は見向きもせず、5、6年前に初めて読んで、以来ファンに。
婦人画報だか家庭画報だかによく出てくるので、お姫様育ちのセレブマダムかと勝手に想像して、食わず嫌いでいたのです。
もっと早くに読んでおけば・・・と後悔。
彼女の愛した地を歩く、素晴らしいシリーズですね。
写真に添えて、親切丁寧にかくれ里の文章を添えてくださるのは、ずいぶん前に読んだため、ほとんど忘れてしまっている私にとって、大変ありがたいことです。
正子氏は健脚で有名であったらしく、野山をまさしく駆けるように旅していたそうです。
ホーミンさんも健脚のご様子。
平成の白洲正子目指して、よい旅を続けてください。
続きも楽しみにしてますよ〜!
- ホーミンさん からの返信 2011/02/15 22:17:43
- RE: 白洲正子先生の
- ゆうこママさま
こんばんは。
旅行記を読んでくださってありがとうございます。
書き込みと投票もありがとうございます。
> 彼女の愛した地を歩く、素晴らしいシリーズですね。
ありがとうございます。
たまたま繖山に登るときに、足跡を辿ったまでです。
山登りに興味のない人にとっては、登山の旅行記など面白くないだろうと思いまして、ちょっと工夫してみたつもりでした。
でもシリーズものにするつもりはないんですよ。
繖山に登ったついでに近くの石塔寺に行って、石塔寺に行ったら牛塔も見とかなくっちゃ、という具合で、これでお終いのつもりでした。
でも296さんも次回を楽しみにしていて下さるようなので、気が向いたらまた書こうかなと思っています。
> 正子氏は健脚で有名であったらしく、野山をまさしく駆けるように旅していたそうです。
そうでしたか。
繖山に登られたのも還暦の頃だったようですしね。
> ホーミンさんも健脚のご様子。
足腰の強さだけは先生に勝てそうです。(笑)
-
- morino296さん 2011/02/06 18:16:42
- お近くに
- ホーミンさん
こんにちは!
牛塔、本当にお近くにあったようですね。
確か、逢坂の関、以前、自転車でぶっ飛ばして(?)いらっしゃったですよね。
京阪電鉄京津線上栄町駅からも直ぐなんですね。
湖国では、巨石は採れなかったのでしょうが、
湖を利用して運んできたのかも知れませんね。
トンネル入り口の石仏も良いですね。
花一輪でもお供えしたいですね。
またまた、かくれ里シリーズを楽しませていただきました。
morino296
- ホーミンさん からの返信 2011/02/06 21:04:12
- RE: お近くに
- 296さま
こんばんは。
もう浜にお帰りになったのですか?
いつも旅行記を読んでくださってありがとうございます。
書き込みと投票もありがとうございます。
> 牛塔、本当にお近くにあったようですね。
> 確か、逢坂の関、以前、自転車でぶっ飛ばして(?)いらっしゃったですよね。
近くでしたね。
大津も外れの方で、ここまで先生がいらっしゃったのかと思うと、嬉しくなりました。
隠れたようにあるものを、よくはるばると見に来て下さったものです。
何が彼女をそこまで動かしたのでしょう?
今はまだそれがわかりませんが、足跡を辿るうちにわかってくる可能性はあると思います。
わからずに終わっても、それはそれでよしですよね。
私は今、先生を通して先人に想いを馳せられるのが楽しいです。
案内人のようですね。
いずれはこれに慣れて、先生の仲介なしでも動けるようになりたいです。
そうそう、私が自転車で山科に行くときは、ここをぶっ飛ばすのです。
但し、登りは自転車から降りて押します。
> 京阪電鉄京津線上栄町駅からも直ぐなんですね。
すぐそこですよ。
けんけん(片足跳び)で行ける距離です。
> 湖国では、巨石は採れなかったのでしょうが、
> 湖を利用して運んできたのかも知れませんね。
なるほど!
舟で運ぶのは最短距離、しかも楽に運べますからね。
> トンネル入り口の石仏も良いですね。
> 花一輪でもお供えしたいですね。
「現役を引退した石仏」って感じがしました。
忘れられた存在のようで、ちょっともの悲しかったです。
> またまた、かくれ里シリーズを楽しませていただきました。
全部読んで下さってありがとうございます。
これでお終いのつもりだったんですが、気が向いたらまた・・・。
-
- rokoさん 2011/02/05 17:41:37
- 地元再発見!
- ホーミンさん こんにちは〜
まるでもう春がきたって感じの、ずいぶんと暖かい日が続いてますね(*^^)v
牛塔
白州先生が「石塔寺と匹敵する」と言われた牛塔の存在
なるほどそういうことだったのですか・・・
知らないことばかり(^^ゞ
勉強になります、いいお散歩でしたね。
ご紹介、ありがとうです。
roko
- ホーミンさん からの返信 2011/02/05 19:48:49
- RE: 地元再発見!
- roko先生
こんばんは。
いつも旅行記を読んでくださってありがとうございます。
書き込みと投票もありがとうございます。
二月に入って、急に暖かくなりましたね。
節分は過ぎたけれど、セツブンソウももう終わったんでしょうか?
今年も見逃してしまいました。(ToT)
白洲先生は、地元でそんなに有名でないものも、よくご存じだったのですね。
既に亡くなった人、ご存命の人、日本人に外国人、世の中先生だらけですね。
ありがたいことです。
- rokoさん からの返信 2011/02/05 21:08:17
- RE: RE: 地元再発見!
- ホーミンさま
> 二月に入って、急に暖かくなりましたね。
> 節分は過ぎたけれど、セツブンソウももう終わったんでしょうか?
> 今年も見逃してしまいました。(ToT)
大丈夫!
セツブンソウはまだ雪の下
今年は豪雪だったから3月中旬ごろかしら?
まだ1か月先ですよ〜
見ごろになったらお知らせしますね、ご心配なく(^_-)-☆
roko
- ホーミンさん からの返信 2011/02/05 21:13:34
- RE: RE: RE: 地元再発見!
- > 今年は豪雪だったから3月中旬ごろかしら?
> まだ1か月先ですよ〜
> 見ごろになったらお知らせしますね、ご心配なく(^_-)-☆
わ〜〜い♪
まだだったんですね?
東京の昭和記念公園のは、ずいぶん前にチラホラ咲きと聞きました。
クチコミにまで投票していただき、ありがとうございます。
ネット登山箱は使いやすいです。
-
- zzr-cさん 2011/02/04 18:32:42
- これは見事だ。
- ホーミンさま こんにちは!
牛塔の石、特に下の石はあれだけ大きいものを持って来たってことですよね?
一枚物の石をここまで鎌倉時代に運んだのも凄いですが、
あれだけ曲線美を出して削ったのも凄いと思います。
現代では当たり前でも、鎌倉時代には機械なんて物はない筈ですからねぇ〜
そして東海道線の今は使われていないトンネル。
愛知県の春日井市に定光寺って駅がありますが、
そこから岐阜に向けて沢山のトンネルがあり、
毎年トンネル内を歩くイベントがありますよ!
じぃ〜
- ホーミンさん からの返信 2011/02/05 09:29:09
- RE: これは見事だ。
- じぃ〜さま
おはようございます。
いつも旅行記を読んでくださってありがとうございます。
書き込みと投票もありがとうございます。
寒さがゆるみましたね〜。
そしてもうすぐひな祭り♪
くーちゃんより周りの大人の方が張り切ってしまいますよね。
赤ちゃんを中心に家族が団結する時って、ホントに幸せです。
> 牛塔の石、特に下の石はあれだけ大きいものを持って来たってことですよね?
> 一枚物の石をここまで鎌倉時代に運んだのも凄いですが、
> あれだけ曲線美を出して削ったのも凄いと思います。
どこから持ってきたんでしょうね〜。
私だったら、粘土ででもこれだけの形はよく作りません。
ましてや石ですもんね。
優しい丸みを、どうやって削ったんでしょう???
造った人たちは、信仰心が篤かったんだと思います。
そうでないなら、大金を積まれた?
牛塔といいトンネルといい、昔の人たちは凄いです。
> 愛知県の春日井市に定光寺って駅がありますが、
> そこから岐阜に向けて沢山のトンネルがあり、
> 毎年トンネル内を歩くイベントがありますよ!
おおっ!
それは面白そうなイベントですね。
私は軽い閉所恐怖症があるのですが、行ってみたい気がします。
貴重な情報をありがとうございます。
-
- 一歩人さん 2011/02/04 16:05:14
- ふ、ふ、バックに謡曲の世界かも
- ホーミンさんへ
ふ、ふ、謡曲ファンの一歩人です。
牛塔は初めて知りました。
小野小町のゆかりは圧巻です。
とっても感動しました。
バックに謡曲の世界が流れているようでした。
ありがとうございました。
- ホーミンさん からの返信 2011/02/05 09:09:37
- RE: ふ、ふ、バックに謡曲の世界かも
- 一歩人さま
おはようございます。
ご無沙汰しております。お元気でしたか?
毎日一万歩、歩いていらっしゃいますか?
HNが一万歩人さんに変わるかな〜と思っていましたが。(笑)
この度は、旅行記を読んでくださってありがとうございます。
たくさんの書き込みと投票もありがとうございます。
> ふ、ふ、謡曲ファンの一歩人です。
おお、これはまた高尚なご趣味をお持ちで。
能つながりで、白洲先生の名前を見つけて下さったのですね?
ありがとうございます。
私は能、歌舞伎などはとんとわかりません。
狂言ならほんの少しわかるかな?程度です。
お恥ずかしいことで・・・。
能が理解できるようになれば、先生の作品ももっと違う観点から読めるのでしょうがね。
> 牛塔は初めて知りました。
そうでしたか。
牛塔を知らない大津市民も、たくさんいると思いますよ。
地元にあるものを他府県の人から教えてもらうなんてね。
> バックに謡曲の世界が流れているようでした。
なんと羨ましい。
こうなったら今度牛塔を見に行くときは、iPodでも持って行くかな、謡曲の。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
大津(滋賀) の旅行記
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
12
19