手漉き和紙職人訪問　 （4） 越前和紙・九代目岩野市兵衛 - Echizen-city, Fukui pref.

2010/07/01 - 2010/07/01

福井県の越前和紙・八代目岩野市兵衛さんが昭和43年に人間国宝に指定され、現在の九代目岩野市兵衛さんも平成12年に人間国宝に指定されました。岩野さんが漉く奉書は、手漉き和紙の伝統を継承していて、一切薬品を使用しないで、手で漉き上げるものです。木の皮の下準備である、塵取りなどに相当の時間と手間を掛けていて、実際に作業場にお邪魔して、その様子を見せて頂きました。ただ只管に、質の良い紙作りに徹したその姿勢に敬服しました。
岩野さんの和紙は、強靭で浮世絵、版画、刀剣の拭紙等広く愛用されています。
楮の繊維の不純物である澱粉質を徹底的に洗い落とすことで、紙の強度が増し、反対に伸縮性は抑えられるという他に類を見ない和紙となっています。
ピカソも先代の市兵衛さんの漉いた和紙を愛用していたそうです。私も、現在の市兵衛さんの漉いた和紙でプリントしましたが、その質感は素晴らしいものでした。
市兵衛さんの和紙を地元のうめ田で買ったところ、約2倍でした。後で市兵衛さんのところで、値段を聞いてびっくりしました。
なんと東京で扱っているところでは、7倍もの値段が付いていました。人間国宝という名前に託けて、酷く値上がりしてしまったものだと悲しくなりました。
市兵衛さんは、良心的な値段で販売しているので、直接注文して欲しいと言われました。

福井県越前市大滝町３１−７　岩野市兵衛さん
Tel & Fax:[phone]

この越前市大滝には、無形文化財指定の岩野平三郎さんによる手漉き和紙・打雲、飛雲、水玉の技術があります。

エリア 越前海岸(福井)

• 交通手段: 自家用車

和紙の里として造られた散歩道です。

卯立の工芸館では、手漉き和紙のお話が聞けます。
この近くのパピルス館で、色んな手漉き和紙の工芸品の販売、手漉き和紙体験などができます。火曜日は休館です。

越前和紙直売のうめ田です。
ここで最初に和紙を買ってしまいました。現地でも、そんなに値段の差があるとは思いませんでしたが、後に、近江和紙の成子哲郎さんのお話で、価値のあるものがあまり安く売られてしまうと仲買の人たちの仕事にも影響してしまうし、手間の掛かる手漉き和紙全体の問題にもなるということで、色々考えさせられる問題でした。

マンホールにも手漉き仕事の人が描かれています。

岡本川の川沿いの五箇地区では、古い町並みが見られます。

福井県和紙工業共同組合なるものを探しながら、五箇地区を歩き廻りましたが、後で紙の文化博物館で訊くと、今はそこには無いそうでした。炎天下の元、初めから、訊くべきでしたが、町を歩くと色んなことが分かるので、面白かったです。

この岡本川をずっと行きます。道が細くなるので、コンパクト自動車以下の車がお勧めです。

成願寺へ

展望台があるというので、少し上ってみましたが、暑くて途中で引き返しました。

ネットで出した地図があまり正確でなかったので、地元の人に訊いても、まだ間違えてやって来た大滝神社。
紙祖神の岡太神社も同じところです。
ブナ林の中を30分上って行くと、奥の院に行けるそうですが、今日は取り敢えず岩野市兵衛さんのお宅へ急ぎます。無事辿り着けますように。

カーナビは、目的地周辺に来ると、勝手に終了してしまうので、困りますが、無事到着しました。
お昼休みにも拘らず、親切にお話をしてくださって、また仕事場へ戻って実際の仕事風景を見せてくださいました。
写真のようにかなり疲れる無理な前傾姿勢で、長時間木の繊維の塵や汚れ部分を取る大事な下準備です。もっと体が楽な作業台はないのでしょうか、と愚問をしたのですが、昔からこれでやっているので、と言われました。胸に枕の付いた木を当てて、やるのだそうです。農作業もそうですが、腰にくるでしょうね。
ありがとうございました。
紙を購入する目的が無い方は、やはり遠慮した方が良いと思います。
町には、パピルス館があり、そこで紙漉の実習などやってくれますから。

写真のように繊維が長いのが、和紙の特徴です。

奥さんや息子さんと共に、今もなお現役で紙漉をすべてやっておられます。
2日間かけて、ごみ取りの下準備をして、明日から紙漉に入るそうです。
パルプを混ぜた和紙も多い中、こういう手仕事は貴重です。

北陸自動車道から日本海へ出て、舞鶴へまわり、綾部の黒谷へ向かいます。久しぶりの日本海です。暫し休憩。