1995/05/15 - 1995/05/18
37位(同エリア62件中)
北風さん
イラン入国初日、英語が90%通じないショックの中、ボディランゲージを駆使してイスハーンまでやって来た。
そして、1週間経った現在、テヘランで「マー・ミホハン・ベー・ルゥドゥサー・べラバム(俺、ルゥドゥサーに行きたいんだけど・・)」と、ペルシャ語でバスを探す俺がいる。
我ながらすごい環境順応性だ。
(人間必要に迫られれば、いかようにも進化するもんらしい)
そう、イスハーンというイラン観光メイン・イベントを終えた現在、イランですべき事は、入国の時に知り合ったイラン元軍人エビの別れ際の一言「カスピ海の湖畔にある俺の実家RUDSAR(ルゥドゥサー)に遊びに来いよ!待ってるぜ!」に従うのみ!
カスピ海方面のベンツバスがやって来た。
バスに乗り込む途端、突き刺さるいつもの好奇の視線!
バスの乗客を見渡し言い放つ言葉は、
「サラーム・アレイクン(アラーは偉大なり)!」
一瞬静まり返る乗客、一呼吸おいて皆が合唱する。
「アレイクン・サラーム!」
俺は、既にイスラム式挨拶も完全にマスターしていた。
(本当にすごい環境順応性かもしれない)
- 同行者
- 友人
- 交通手段
- 高速・路線バス
-
イランの首都テヘランからバスで5時間かけて、カスピ海沿いの田舎町ルゥドゥサーへ友人エビを訪ねて行った。
エビは中流家庭と言ったが、でかい家にテラスまであり、おまけに犬まで飼っている。
これがイランの中流家庭なのか?
非常に裕福に見えるのだが・・・
イラン人が日本へ不法労働しに来る理由が俺にはわからなくなってきた。 -
<CASPIAN SEA(カスピ海)>
夕方、エビにカスピ海に連れて行ってもらった。
世界で一番大きい湖は、冬の日本海の様にどこかうら寂しく、寒々しい雰囲気で目の前に広がっている。
「ヒュルリー、ヒュルリララ〜、聞き分けのない女です〜」と口ずさみたくなるような・・・ -
世界の高級品と言われるキャビアもこの湖の特産品といわれる。
この湖の魚影は見た目より全然濃いらしい。
エビが遠い水平線を指差して言った
「この向こうはロシアだ」 -
夕暮れ時、人々が涼を求めて集まってきた。
子供たちは波打ち際でしゃがんで歓声をあげる。
一つ不思議な事は、皆片手に小さなざるみたいな物を持っている点だ。
近寄って中を覗いてみると、5mm程の半透明な生物がうごめいている。
・・・・・エビの子供?
子供たちが砂を掻き分けると、無数のエビの子供がビチビチ小さな水しぶきをあげている。
エビの子供なんて見たのは初めてだった。
これほど小さいものなのか! -
日もだいぶ傾いた頃、エビがカスピ海で漁師をしている友達の所で歓迎会をやると言い出した。
どこからとも無くエビの友達が続々と集まり、皆でカスピ海に繰り出す。
車のフロントガラスに、高床式の掘っ立て小屋らしき建物がだだっ広い砂浜にポツンと見えてきた。
どうやら、あそこらしい。 -
インドネシアの高床式住居を思い出すなぁ。
しかし、このサイズにこれだけの人数が入るものなのか? -
旅日記
『カスピ海のキャビア接待』
「ザバッ、ザバッ、ザバッ」と、夕陽を背にして1人の男がカスピ海から上がってきた。
エビが「俺の友達の漁師だ」と手を振る。
なんかものすごくワイルドな光景なのだが、どういう歓迎会になるのだろう?
掘っ立て小屋には既に男10人が座っていた。
部屋の広さは3畳ぐらいだ。
ギネスに載せられるほどのギュウギュウ詰めになる事は火を見るより明らかな状態だと思う。
小屋中にアルコールであぶられた魚が香ばしい匂いを漂わせる。
片言の英語と粗末な食べ物、それでも充分に笑いが広がる。
旅は不思議だ。
日本を振り返る事もできないぐらい遠い地で、さっきまで他人だった異国の人間と、ほとんど言葉も通じないにもかかわらず、笑いあって食卓を囲んでいる。
俺はこういう時間が欲しかったから旅を始めたんだろうか?
多分いつもの様に答えは出ないのかも。
しかし、確実なのは、俺は今、本当に笑えている。
エビが懐から訳ありがちにビニールに入った液体を出した。
・・・酒?
イスラム戒律で日本の麻薬と同じ扱いをされ、厳重に禁止されている物なのでは?
日本ではなんでもない酒の回し飲みだが、ここでは皆辺りを気にしてビニール袋に口をつける。
事情を知らない人間なら、中学生がシンナーをやっているようにしか見えない姿だ。
エビがまた懐に手を入れる。
一本のタバコをつかんでいる。
マリワナ?
このイラン製のドラエモンは、ご禁制品専門らしい。
そして、エビが背後に手を回した。
次はどんなご禁制品?
・・・「ビタン!」と食卓に小魚が並べられた。
「キャビアを見たことが無いと言ってただろう」と、エビがのたまう。
ではエビは俺の為に、イランでは食べる習慣が無いと言われるキャビアを用意してくれたのか!
感動で胸が熱くなる。
「好きなだけ食べろよ」と差し出してくれた魚は、チョウザメにしては、かなり小さかった。
エビ、それは日本では「子持ちシシャモ」と言われている魚だと思うのだが・・・ -
旅日記
『不法滞在未遂?逮捕?拘留?・・・刑務所?』
俺はまたしても警察署にいた。
またしてもVISA延長申請だ。
延長代が20円という安さはうれしいが、一回で一週間しか延長が出来ないとはどういう事だ!
小出しにするのはやめてくれ!
とにかく、今回の滞在期間のカラータイマーは、エビの所に訪れていた時に点滅しだした。
エビは「元軍人の俺が一緒に行けば、すぐに終わるさ」と頼もしくついて来てくれている。
警察署長らしき鋭い眼光の人間を前にして、今日で切れる滞在期間を延長してくれるように説明する。
一々頷いているところを見ると、この署長、英語を解するらしい。
一応の説明が終わると、署長は俺のパスポートをじっと見つめた。
やけにもっさりした口ひげが、おもむろに「ここでは延長できない」と動いた気がする。
一瞬、沈黙が訪れる。
追い討ちをかけるように「明日までに出国できなければ不法滞在で、裁判で有罪なら刑務所だ」と宣言された!
このカスピ海沿岸の田舎町から今日中にイラン国外に脱出できるルートはあるなら教えて欲しかった。
しかも、イランの即席裁判!
以前、旅行者が女性のチャドルをふざけて触った時、即座に右手を切り落とす裁決を出したと噂されるあの裁判? -
一瞬様々な不安が心をよぎるが、しかし、のび太にドラエモンがいる様に、俺にはお助けアイテム軍人エビがいた!
自信満々に署長の前にエビを投入!
署長の口ひげが再度持ち上がる。
「何だこいつは?俺は知らないぞ!君はこの男から何か盗られなかったか?」
との予想外の言葉が放たれた。
つまり、俺のお助けアイテムは一瞬で砕け散ったという事か?
しかもお助けアイテム自身、泥棒の嫌疑をかけられている。
・・・それからは、初心に帰り、自分で運命を変える事にした。
どうにか刑務所行きを思いとどまらせる事に1時間。VISAを3日間だけ延長してくれる事に2時間。
合計3時間で、自分の中に残っている交渉力をフルに動員させて無罪を勝ち取った!
「うおおおぉぉっ!」心の中で叫ぶ!さすがにうれしい!
一仕事終えたかの様な疲労感が全身を覆う。
とりあえず水を飲みに部屋を出ると隣室にエビの姿が!
・・・まだ尋問されていた。
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