1997/04/28 - 1997/04/30
3862位(同エリア5275件中)
北風さん
「ラスベガス=ギャンブル」と思っている日本人は、多分俺だけじゃないと思う。
「世界を代表する歓楽街」、「世界の巨大ホテルベスト10のほとんどがこの街のメインストリートに肩を並べる」「一晩で億万長者」等々、夜、金、欲望を暗示するキャッチフレーズで着飾るこの街は、実は意外とお金を使わなくても十分に、いや十二分に楽しめる。
生き物の生存を拒絶する様な砂と荒野の景色が続く中、その街は突然、あまりにも人工的な緑とネオンの光で出現する。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス
-
旅日記
『ROUTE 66』
フラッグ・スタッフからラスベガスの道はアフリカが広がっていた。
地平線まで続く乾いた大地にかろうじて緑を添えるサバンナ。
オーストラリア内陸部に似ている気もする。
はっきりとした違いは、火傷しそうなほどの太陽とそれを支えるかのようなアカシヤの逆三角形のシルエットが見当たらない事だ。
いつしか道沿いに人々が増えてきた。
あちこちに「ROUTE66」というサインボードが立てられている。
どうやら、今日はこの国道66号線の記念日らしい。
たかが道路に記念日など在ること事体アメリカ的だが、実はこの国道、アメリカの東西を最初に結んだ大陸横断道路との事。
「おい、コーヒー・タイムだ。外に出れるぞ!」
隣の一見ヘルス・エンジェルのO・Bみたいなマッチョのおっちゃんが眠っている俺を揺さぶった。
起きぬけの目に、ばかでかいクモの入墨が飛び込んでくる。
それがへばりついている毛むくじゃらの上半身は、皮のベストだけがTシャツ代わり。
おまけに腰にはランボー張りのナイフが鈍く光っている。
・・・こんな目覚め方をしていたら、心臓がいくつあっても足りない。
というか、何故こんなおっちゃんがバスに乗っているんだろうか?
そして、最も気がかりなのは、このおっちゃん、外見の物凄さに関わらず意外と親切だ。
マイケル・ジャクソンをメドレーで歌えるほどの高い声で、あれこれ世話を焼いてくれる。
・・・おっちゃん、ゲイ? -
おっちゃんに続いてバスを降りると、そこは中東だった。
シリア・ヨルダンの間で散々苦しめられた砂の世界が、
アフリカとバトンタッチしていた。
「暑い!」一年ぶりにTシャツ一枚になれる気候に巡り合えた。
しかし、この暑さは熱帯のものではなかった。
乾燥した環境に極端に弱い俺の身体から、見る見るうちに水分が失われていく。
寒いぐらいのエアコンが効いたバスとの違いに、他の乗客は大丈夫なんだろうか?
他の乗客は、皆、駐車場に集まっていた。
そこには、砂漠を埋め尽くすような何百、何千のバイクが並んでいる。
まるで暴走族の武装集会だ。
ピカピカに磨き上げられたハーレー・ダビッドソンの海が広がっていた。
バイク・フリークと言われても、さすがアメリカ、スケールが違う。
殺人的な太陽を背に、鉄の馬に跨る凶悪犯の様なキングコング達。
今ではおっちゃんのナイフがただのキーホルダーに見えてきた。
バスを降りる度に、アメリカは違う驚きを見せてくれる。
さて、このびっくり箱、次は何処へ連れて行ってくれるんだろう? -
旅日記
『ラスベガス到着』
夕焼けが染める砂の海の彼方、陽炎にゆらめく巨大ビル群が浮上してきた。
いきなり砂漠に線が引かれたかのように草木が出現!
家々の庭先には戻りの芝生が広がっている。
あまりにも不自然な光景だった。
ホテルを飾る為だけに造られた巨大な人工湖、全てを乾き尽くす真昼の太陽以上に人の欲望を照らし出すネオンの洪水。
浪費と消費と無駄を満たす為だけに、力任せに自然を捻じ曲げて造られた街が目の前にあった。
現代版、ソドムとゴモラに、バスはPM6:00に滑り込んだ。 -
メインストリート「Lasvagas Brd.」を南に向かう。
何千、何万というネオンが放つ熱は、砂漠の夜を吹きすさぶ凍てつく寒気さえも拒んでいた。
天を突き刺すかのようにそびえる巨大ホテルが、たった1本のメインストリート沿いに群がっている。
世界の巨大ホテルのベスト10の7つまでが、ここに並んでいると言う。
確かにこんなホテル、今まで見たことなかった。
気がつくと、2時間以上歩き続けていた。
ホテルの前で本当の炎を吹き上げている人工火山、エジプトのピラミッドの形をしたホテル、音楽に合わせて噴水が踊る人工湖、まるでディズニーランドだ。
そのアトラクションが、アメリカのスケールで造られている。
くだらない子供だましもここまで金をつぎ込むと驚嘆に値した。
ホテルは歌い続ける。
「15分に一人、億万長者が誕生!」
ネオンの光さえ届かない裏通りにある、質屋の看板がささやく。
「何でも買います。あなたの勝負はこれから!」 -
世界最大のホテルと言われる、「MGM」は、入り口がライオンの口になっていた。
-
いやーすごい!
物凄い音と炎!
火が燃え盛る!
水が吹き上がる!
照明が踊る!
たかがアイ・キャッチの為だけにアメリカはここまでやるのか! -
日本人が設計した最新ホテル「ニューヨーク、ニュヨーク」では、ホテルに自由の女神が合体していた。
しかも、その周りにジェットコースターが敷かれている。 -
旅日記
『ディーラー』
ラスベガス、この街は欲望という牙を隠した羊達をいなす為に、「ディーラー」と呼ばれる特別のカウボーイを用意していた。
「観光案内所で地図が読めないガイド」、「サービス業で怒鳴り散らすキャッシャー」、「発着時間がわからないグレイハウンド」、この1億総素人集団のこの国で、これほどプロ意識を持った人間は日本でカブトガニを見つけるぐらい珍しかった。
東洋系美人ディラーは、8時間に及ぶ緊張の連続など何処吹く風と際立った外見にポーカーフェィスを浮かべてカードを配り続ける。
ルーレットには、初老のディーラーが穏やかな表情と共にひっそりと立っていた。
一人、酒癖の悪そうなおっちゃんが強引に割り込み「17」と言い捨てた。
銀玉はあっけなく「19」に飛び込む。
「シット!」と捨て台詞を残して去って行ったおっちゃんを見送りながら、次の玉は見事「17」にキスをした。
驚嘆すべき技術だった。
本当に狙った場所に投げられるらしい。
水際立った仕事だ!
・・・よく考えると、俺もそれにしてやられたわけだが・・ -
ラスベガスは、楽しい。
ギャンブルをしなくても、めちゃくちゃ楽しい。
(やったら、もっと楽しい)
平日3000円から泊まれる巨大ホテル、各ホテル毎に行われるハリウッド映画並みの無料アトラクション、朝3時からのモーニング・サービス(ビフテキ400円)、そして5円からできるギャンブル。
意外と多いじいちゃん、ばあちゃん、をかき分けて、無料の世界一長いホットドッグをほおばって、グルグルと回るルーレットから目を上げると、朝焼けが砂漠を染めていた。 -
旅日記
『シュリンプ・カクテル』
きらびやかなネオンの点滅が、チョコパフェのガラスの容器に浮かんでは消えていく。
午前1時、俺は疲れていた。
12時ちょうどに引き降ろしたスロットレバーが見事160倍を引き当てたはしゃぎ疲れもある。
その後、サル男君と化した俺が演じた失態のせいも多々ある。(30分で全部すった)
しかし、一番俺を疲れさせているのは「ラスベガスで一番美味しい!シュリンプ・コックテイル」なるものを、オーダーしてからだった。
昼から何も食べていないせいもあった。
わずか99セントという値段のせいもある。
とにかく、腹が減っていた。
「シュリンプ・コックテイル」、直訳すると、「海老鶏の尾」
一体何物だろうか?
現在、俺の目の前に茹でた海老が目一杯詰め込まれた、チョコパフェの容器がある。
これは一体、人間の食い物なのか?
ギャンブルでやけになった者の為の自殺用薬物ではないのだろうか?
隣に「豚に真珠」の格言が、カクテルドレスに身を包んで「デン!」と座っていた。
コレステロールで武装した首元の真珠が、脂ぎった肌に良く似合う。
このおばちゃん、俺と同じ薬物をパクパク口に運んでいる。
確かに彼女なら、地球上のいかなる食べ物でも、敵ではないかもしれない。
思い切って、この薬物の名前の由来を聞いてみた。
「これは、エビ用のソースの名前よ、あなた田舎者ね」と、お答え頂く。
俺は人類に属さない生物からの侮辱は気にしない。
しかし、「コックテイル」とは、つまり、「カクテル」と発音するわけか!
ゆで海老と、ソースのカクテルだなんてわかっていたら、こんな羽目にならなかったのに!
こうして、俺は英語を覚えていく。 -
実は、現在巨大ホテルが建ち並ぶメインストリートは新しくできたものらしい。
オリジナルのメインストリートは、巨大ホテル群からバスで15分の駅前にあった。
当然、もともとラスベガスができて以来のカジノもここに固まっている。
どことなく、日本の田舎のアーケード街を思わせるような庶民的な雰囲気だ。
これでもかとぶら下げられたネオンが余計に、しなびた雰囲気を出している。 -
通常ギャンブルの街と言えば、治安の悪さを浮かべるものだがラスベガスはその逆だった。
連日拳銃事件が秒刻みに起こるこの国で、毎日信じられないぐらいのキャッシュが動いているこの街では、その分、治安に物凄い力を入れていた。
石を投げれば、スロットとガードマンに当たるほど警備に余念がない。
ここは逆に世界一安全な街かもしれない。
そしてさすがラスベガス。
警察のパトカーは、なんとフルチューンのスーパーカーまで装備していた。
これは、マセラッティ?
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