1997/09/19 - 1997/09/23
7位(同エリア12件中)
北風さん
以前、東欧を北上しながら「ロシアVISA物語」という実写版ロールプレイングゲームもどきの旅をした。
あの時は、ロシア入国にあたって必要な「ロシアVISA」を入手する為に、何カ国ものチェックポイントを経て謎を解いたのだが・・・
(詳細は旅行記「ロシアVISA物語」参照)
今回は、「ブラジルVISA」編になりそうだった。
その理由は、北米・南米を通じて水戸黄門の印籠のごとく威力を発揮してきた菊の御門のこのパスポートが、ブラジルでは通用しないから。
正確には日本人はブラジル入国にはVISAが要求される。
そして、そのVISA申請には「ブラジル出国用の航空チケット」を提示しなければならない。
そして、バックパッカーとして南米大陸をテクテクと歩き回っていた俺が航空チケットなぞ持っているはずも無かった。
裏情報では南米のいくつかの国では、リターンチケット無しでもVISAを発行してくれる事は調べてあった。
そしてその一つが、俺が向かっているこの観光とは縁のないオリノコ川沿岸の灼熱の田舎町にあった。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 高速・路線バス
-
旅日記
『ブラジル・VISA裏情報』
日本人旅行者にとって南米は、ある意味優しい。
ほとんどの国はVISA不要、パスポートだけで3ヶ月の滞在を許してくれる。
が、しかし、北米・南米を通じて水戸黄門の印籠のごとく威力を発揮してきた菊の御門のこのパスポートが、ブラジルでは通用しない。
何故かブラジル入国にはVISAが要求される。
そして、そのVISA申請には「ブラジル出国用の航空チケット」を提示しなければならない!
南米大陸をテクテクと歩き回っていた俺が、航空チケットなぞ持っているはずも無かった。
「蛇の道は蛇」との諺がある。
世界を放浪してきた者が「国のタテマエ」だけを信じるはずが無かった。
貧乏旅行者には金は無い。
が、同じ境遇に立たされた者の情報は山ほどあった。
偉大な先人達の情報では、南米各地で航空チケット無しでVISAが手に入る場所が点在していた。
・ペルー : イキトス US$65
・ベネズエラ : カラカス US$70 要2日
: シウダッド・ギアナ ?
: サンタエエレーナ US$70 要1日
・ボリビア : サンタクルス US$50 要1日
・アルゼンチン: ブエノスアイレス US$60 要2日
: プエルト・イグアスUS$65 要30分
本来ならばボリビアが一番安いのだが、ブラジルを縦断しなければ行けない国は意味がない。
あまりにも滞在費が高いカラカスから脱出したばかりならば、次に一番近いブラジル領事館は、この「シウダッド・ギアナ」だった。
(情報はあやふやなのだけど・・・) -
旅日記
『ブラジルVISA物語 ~領事館は何処?~』
1997年9月19日 朝8時、カラカスからの夜行バスは、無事シウダッド・ギアナへ到着!
どういう訳かバスの中で一睡もできず、しょぼしょぼの目に朝日がしみる。
ハードな一日になりそうだった。
「ブラジルVISA入手!」これだけの目的でこんな所までやって来たものの、手持ちのガイドブックにはこんなオリノコ川流域の田舎町など載っているわけも無い。
ましてや、現在ここにブラジル領事館なるものが存在しているかも定かではなかった。
頼りにしている情報は、
① ガテマラで1年前、この場所でVISAを手にした旅行者がいたらしい。
② カラカスの本屋で立ち読みした英語版ガイドブックにブラジル領事館が載っていた。(94年発行だったが・・)
この2つだけだ。しかも、詳しい住所さえわからなかった。
全くブラジルVISAはやっかいだ。
「入出国用航空チケット提示義務」なるものがある為、飛行機を使わず陸路入国で、VISAを発行してくれる領事館はここを入れてほんのわずかしかない。
さて、バスターミナルで歯も磨いた。
領事館を探さねば!
カラカス観光局の親切なスタッフによると、この街は2つの市が合併されたばかりだという事だが・・ -
そして、領事館は川向こうのプエルトオルダスなる町にあるらしい事が判明した。
よりによって、川向こうの町だ。
重いバックパックを引きずってローカルバスの狭苦しいドアに身体を押し込む。
ドライバーのおっちゃんに、プエルト・オルダスに行きたいと告げると「OK!」との返事が返ってきた。
この頃バスをタクシーのように使っている自分がいる。
ドライバーのおっちゃんが、俺が安宿を探していると聞くと、なんと安ホテルの前でバスを停めてくれた。
車体をきしませながら去っていくバスの窓からは、乗客の皆が手まで振ってくれている。
本当に信じられないぐらい南米の人々は親切だ!
(カラカスの白人は別だが・・)
大通りを30分もうろちょろすると、一番安いホテルが見つかった。
さて、これからが本番だ。
立ち読みした本の地図を頭の中で思い出す。
確か通りの名は「アメリカ通り」だった気がする。
キョロキョロと周りを見渡していると、そこは南米、必ずお助けが入った。
「何しているんだ?」との問いかけに、「ブラジルVISAを取りたいんだが、領事館が見つからない」と答えると、「このバスに乗れ!」とのありがたい返答があった。
バスの運ちゃんが心得顔に「ここだ!」と、ドアを開けた。
直感的にはずれのような気がした。
ビルの前には長蛇の列ができている。
ここがインドならば、これもありなのだが、通常領事館にこれほどの人だかりができるはずは無い!
ブラジルと肩を並べる経済大国の人間が、同じ位の物価の隣国に出稼ぎに行くはずも無い。
案の定、ビルには「領事館」らしき表示は一つも無かった。 -
人だかりをかきわけて、ちょび髭セニョールが出てきた。
「ここでブラジルVISAが入手できるのか?」と聞くと、「そんなもん、領事館に行くしかない!」とのたまう。
(いや、だからこのビルに来たのだが・・)
とりあえず、ビルの中の職員らしき人間に同じ事を聞くと、「カラカスに行かなきゃ、無理だよ」との答え。
(いや、だから、そこから来たのだが・・)
俺は知っている。
現地の公共機関が現地の事を知らないのは珍しい事ではない。
日本以外では、百の公務員の意見より一人の旅行者の情報の方が圧倒的に当たりが潜んでいる。
「領事館はある!この街のどこかに!」
とりあえず、初心に帰ってアメリカ通りを探そう!
道路脇に立ち尽くしていたケンタッキーフライドチキンのカーネルおじさんそっくりのセニョールに、「アメリカ通りはどこ?」と尋ねる。
もはや、そこら辺のRPGゲーム顔負けの捜索だった。
このまま、ゲームオーバーにならない事を願うだけだが・・
なんと、カーネルさんは俺を20分も連れ歩いて、その場所に連れて行ってくれた。
I Love South America !
それから30分、俺は領事館の前に立っていた。
この感激をどう言い表せればいいものだろう?
薄暗く狭い階段を駆け上る!
ブラジル領事館なるサインボードが貼り付けられたドアを懇親の力で開け放った。
なんという展開!
目の前で俺の申請書がVISAカードの提示だけで受理されていく。
神様ありがとう!
汗だくの埃まみれの顔に満面の笑みを浮かべている俺に、セニョリータが甘い声でささやいた。
「じゃあ、月曜日に取りに来て!」
(・・えっ、今日は木曜日だぞ。あと4日もこの街にいなきゃいけないのか?)
「VISA代は、3500ボリバールよ」
(・・ええっ、そりゃUS$70になるぞ)
南米の神様は、ただでは喜ばせてはくれないらしい。 -
旅日記
『ベネズエラの家庭料理』
真昼間12時、先程少しだけ外に出てみると、街はゴーストタウンになっていた。
無理も無い。
この暑さは異常だ。
炎天下のアスファルトの焦げる匂いまでしている。
こうなると、やる事はシェスタ(昼寝)しかなかった。
が、しかし、この状況で眠ったら死んだばあちゃんに会ってしまいそうな気がする。
きちがいじみた太陽のおかげで、天井、壁、床までもがものすごい熱さだった。
オーブンの中の七面鳥もこういう思いをしているんだろうか?
10分前に床にまいた水が、既に蒸発しているのはどういう事だ?
夕方、この我慢大会にスコールの雨が終止符をうってくれた。
雨音に誘われてホテルのおばちゃんもやって来た。
いきなり、後ろに隠した娘2人の背中を押して、「この2人のどちらか連れて帰ってもいいよ!」とのたまう。
Dカップはゆうに越えるであろう胸が半分以上も露出しているシャツから目を離す努力をしていると、今度は隣のおばちゃんもやって来た。
どうやら、俺は珍しい存在らしい。
隣のおばちゃんは、片手に5寸釘、片手に大亀を持っている。
なかなか想像できない光景だが、何でもありのこの大陸ではもはや驚くレベルではなかった。
「かわいいペットだね」とのお世辞を言うと、「ええ、美味しいわよ」との返答。
5分後、恐る恐るおばちゃんの部屋を覗くと、おばちゃんが台所で片ひざ立てていた。
そしてその足の下には、先程見かけたようなでかい甲羅がある。
おばちゃんが5寸釘を片手にハンマーを振り下ろす瞬間、俺は部屋に戻っていた。
スコールが洗うホテルの廊下に、「カコーン、カコーン」とハンマーの音が響いている。
そのうち、「ガコ、コ、コ」と、音が変わった。
(つまり、甲羅を貫いたのか?)
そして、「ウィィィーン」という金属音が聞こえてきた。
これは、まさか・・
ベネズエラ、台所の7つ道具にハンマーと、電動のこぎりを常備している国。
この隣国には、亀を保護しようと世界に呼びかけている、ガラパゴス諸島がある。 -
旅日記
『ブラジルVISA物語 〜ブラジルVISAと忍耐〜』
1997年9月23日、朝8:30、俺は走っていた。
一見、ただの雑居ビルにしか見えない建物の薄暗い階段を2段跳びに駆け上がる。
佐川急便そこのけの勢いでブラジル領事館のドアを開け、受付のおばちゃんにパスポートを差し出した。
・・・これが、忍耐を学ぶ今日という日のスタートとも知らず。
10:30、まだ俺のパスポートは、雑誌を読みふけるおばちゃん事務員の机の上に放置されている。
10:40、そろそろ、イライラが限界に達しようとする頃、おばちゃんの前の電話が鳴り響いた。
10:45、電話を機におばちゃん仕事を思い出したらしい。俺のパスポートがやっと放置プレイから解放されページが捲られる。「やった!」おばちゃんがパスポートの記号をタイプで打ち始めた。
10:50、「ガタ、ガタ」という音と共に、タイプリボンが切れた!俺のこめかみの血管も切れそうになる。
10:55、おばちゃんが、外出用の帽子を取り出した。(まさか、タイプリボンを買いに行くのか?)
11:30、おばちゃん、野菜が詰まった買い物籠を片手に帰ってきた。おばちゃんの頭に「仕事中」という言葉をマジックで書きなぐりたくなる。
11:35、買い物籠の奥底に眠っていた新品のタイプリボンがようやく仕事をしだした。オフィスに子供が叩くようなぎこちないタイプ音が響き渡る。
11:50、パスポートがついに隣の偉そうなおっちゃんのデスクに移動!
12:00、おっちゃん、真新しいコンピューターの前で、古ぼけたノートを広げてなにやら記帳を始めた。ボケ老人のように何度もページをめくりなおす。
なんとも、ワンダフルな仕事運びだった。
タイプリボンの予備もなく、コンピューターがオブジェと化している。
しかも、職員全員、イグアナ並みの運動機能しか持っていない。
90で死んだ俺のばあちゃんの方が、数100倍チャキチャキ動いていた気がする。
領事館のドアを開けて、既に3時間半、未だ俺の手にパスポートは帰ってこない。 -
12:30、パスポートが幸運にも俺の元に返ってきた。恐る恐るめくったページには、ブラジルVISAのスタンプが捺されている!
飛び上がるほどのうれしさを胸に、俺は「Hotel Monte Calro」に急いだ。
13:00、ホテルの宿泊客が手を振る中、ホテルをチェックアウト!目指すは、中央バスターミナル。
14:00、午後の忍耐の時間だった。
バスターミナルで訪ねたサンタエレーナ村行きのバスは、なんと21:00発との事!
何度指折り数えてみても、あと7時間はある。「うぉぉっ」と叫びたくなる衝動の中、心のスィッチを「インド・モード(無抵抗主義)」に切り替えた 。
バスの前で振り仰ぐ空が、青から、赤に染まり、そして黒へと変わっていく。
これほど長く空を見ていたのは何年ぶりだろう?
今日この日、これ程長く空を見ていた日本人は他にいまい!
(それ程暇な日本人がいるはずが無い)
22:00、バスが来た!「21:00発じゃなかったのか?」と尋ねるのはやめにしよう。今日一日でこの大陸の時間に対する考えが理解できた。
しかし、このバスのボロさ加減は驚嘆に値する。
バスオフィスのおじちゃんが見せてくれた写真は、50年前のものだったのだろうか?
しかも、何故これ程大勢の兵隊達が同乗するのだろう?
俺の行く手は現在兵隊を必要としている地域なのか?
まぁ、いい!
とにかく眠らせてくれ!
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