韓国釜山フェリーの旅 その１

2010/03/05 - 2010/03/08

物価の安いアジアでB級グルメを楽しむケチケチ旅行。今回は超格安フェリー旅行で釜山市内街歩き。

エリア 釜山(韓国)

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 1万円 - 3万円
• 交通手段: 船

　　　　初日
　今回韓国の釜山旅行をわざわざ大阪からのフェリー旅行にしたのは、値段の安さもさることながら、瀬戸内海から見る船上の景色を一度体験したかったからである。特に瀬戸内の洋上に架かっている明石大橋、瀬戸大橋、しまなみ海道と関門海峡を船の上から見上げることが一番の目的である。いずれも電車やバスで渡ったなじみのある橋である。４年前にしまなみ海道をマラソンレースで走った時は、橋の上から海上に漂ういろいろなフェリーを見ていつか乗ってみたいと思っていたが、今回たまたまフェリーを使った格安ツアーを見て、チャンス、と思って思わず申し込んでしまった。今回はフェリーの滞在がメインで、韓国滞在はたったの２日間である。
　大阪市地下鉄を降りてシャトルバスで５分、大阪南港国際フェリーターミナルは思っていたよりもこじんまりとしており、本当にここが国際港かと思うくらいひっそりとした外観だった。ところが中に足を踏み入れると景色は一変、狭い待合室に大きな荷物を床に広げたおばちゃん集団、館内に響き渡る韓国語の嵐、行商や出稼ぎの里帰りでうれしそうなアジュンマ（おばさん）たちがぎっしり、本当にここが日本国内かと思わせるような異様な雰囲気だった。
　他には団体ツアーの韓国人観光客ばかりで自分のような日本人は客は見当たらない。そのためかターミナルの案内表示はすべてハングルで書かれておりどこに行ったらよいのか分からない。かろうじて日本が通じる受付を探して乗船手続きをとったが、昨日の大雨の影響で出航がかなり遅れているとのこと、予定が大幅に狂いそうだ。
　なかなか動き出さない船のデッキの上から大阪港を見ると不思議なデザインのビルやタワーが林立しておりまるで未来都市のようである。昔と比べて大阪の町はまったく変わってしまったなあ。
　３時間半待たされてようやく船出したころにはもう薄暗くなっていた。この分では明石大橋の通過は真っ暗になってしまう、残念だ。船内に入って指定された船室へ。そこは２段ベッドが２つ並んだ狭い部屋だった。
　

さっそく荷物を置いて船内探索へ。このフェリーは老朽化しているものの、昔は国内航路の豪華客船だった「さんふらわあ号」の払い下げで、現在は韓国籍の「パンスター号」に転用、大阪−釜山を１９時間で結んでいる。案内板によると全長１６０M、収容客数６８０名、速度２５ノット、.サウナつき展望風呂やレストランホール、カジノ、コンビニエンスストアと設備も充実している。
　風呂に入って窓から外を眺めると、神戸の街明かりがごく間近に見られて、海というよりはまるで運河を進んでいるようだ。夜景を見ながら湯船に浸かってかすかな波の揺れに身を任せる、何かとても贅沢な気分になってくる。
　　レストランはビュッフェ形式で主に韓国料理、客の大半が韓国人のため仕方ないが、プルコギや、キムチばかりがずらりと並んであまり日本人の口に合いそうなものはなかった。
　レストランの窓からふと外を見上げると、ライトアップされた巨大な瀬戸大橋が目の前に迫ってきた。あわてて食事を済ませて、甲板に駆け上がると、ちょうど橋の下を通り過ぎたところだった。近くにはイルミネーションで飾られた小型遊覧船がすれ違う。みるみるうちに離れていく瀬戸大橋に、意外と速いスピードでフェリーが進んでいるのがわかる。次に通過するのはしまなみ海道の尾道大橋だが真夜中のため見ることは難しいだろう。帰りに期待しよう。
　レストランホールではディナータイムが終わり、ショータイムでマジックをやっていた。韓国人の乗客は大はしゃぎで歓声を上げている。日本人よりは表情を表すのが積極的だ。見ているうちに眠くなってしまい早々に部屋に帰って早めにベッドに入る。隣のベッドは日本人の親子連れのようだが、ひっそりとしていた

　　　２日目
　翌朝早く目が覚めてしまい、デッキに出るとちょうど関門大橋が近づいてくるところだった。あわててシャッターを押しフェリーから真上に見える橋の裏側をカメラに収める。右側に下関の港、左側には門司港を走る車まで見えて、本州と九州がこんなに接近していたことに改めて驚く。泳いでも渡れそうだ。
　朝食が終わったころ、雨が降り出し風とともに船が大きく揺れだした。玄界灘が時化の状態で前線の影響もあってしばらくは揺れが続きますとの船内放送が入る。甲板は強風で目も開けられないほどで、対馬の島影がかすんで見える。廊下を歩くにも手すりをつたわらないと転がってしまいそうな横揺れが続く。仕方がないので休憩室のソファでウトウトしながら時間をすごす。

　何時間も座ったり、立ったり横になったりして、いい加減飽きてきたころようやく釜山港に入港。出港するまでの待ち時間も入れるとほぼ丸一日船の中にいた勘定だ。やっと上陸できると思ったが、今度は入国手続きまで延々と待たされる。飛行機と違って一度に何百人もの乗客が小さなターミナルに入国するため手続きにやたらと時間がかかる。

現地ではすべて自由行動なので、事前に調べて釜山からバスで１時間半ほどの世界遺産、慶州へ日帰り旅行する予定だった。しかし結局入国が午後２時になってしまい計画を大幅に変更せざるを得なくなった。
　代わりに市内の観光名所に切り替え、ホテルに荷物を預けると地下鉄で４０分ほど行った釜山の名所ポモサ寺へ。霧雨でぬれる駅を降りて市バスで坂を登っていくと、山の中腹に位置する山門が見えてきた。四国のお遍路で回った山寺を思い出した。古ぼけた山門からも察せられるように、ここは１０００年の歴史を誇る仏教寺で、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、日本軍によって焼失され、その後再建されたものであるらしい。由緒ある建物であるとともに韓国人にとっては、対日感情の面からしても特に思い入れの深い寺だ。
　古い木造の本堂は朱色の壁に青色の装飾が施され、仏教寺としては中国よりも沖縄の寺に似ている。意外なところで朝鮮文化が琉球文化に影響を与えていることが良く分かる。小雨で霞がかかった参道は趣のある雰囲気で写真栄えしそうだ。
　本来なら本堂裏の山道を上がっていくとちょっとしたトレッキングコースになっており、新羅時代の山城（金井城）の遺跡の城壁が見られるらしいが、この小雨の中では残念ながら難しそうだ。観光を断念し、また地下鉄に乗って釜山最大の繁華街、西面（ソミョン）に行くことにした。