シベリア旅行記(ブログ) 一覧に戻る
 さて、この連載は前回一旦終わりそうに見えましたが、肝心の世界一寒い街、ヴェルホヤンスクへ辿りつかないまま終わるわけにはいきませんので、もうちょっと続けます。というより、ここからが本番ですよ。<br /><br /> 私が滞在中、ヤクーツクの気温は大体マイナス33℃前後でした。これから向かうヴェルホヤンスクは、来る直前にモスクワで調べたところマイナス54℃ということです。インターネットって便利ですね!(^▽^)…なんて無邪気なことを言っている場合ではありません。54℃(以降、マイナスは略します)、レベルが違います。某国の通貨ほどじゃないですが、こんなにインフレしちゃって大丈夫なんでしょうか。<br /><br /> こういう未知の気温のところへ行くのに、一般的な日本人である我々はどんな準備をしていけばいいのか、ちょっと想像がつきません。特に服装が心配です。<br /><br /> 私の大好きな映画に「八甲田山」という大変暗い作品があります。そこでは、雪中行軍訓練中の日本兵たちが寒さの中で錯乱し、狂態を演じながら次々に死んでいくのです。それも、「敵は酷寒零下四十度に於いてなお戦うことを習得しているロシア軍である。」とばかりに、燃やさなくてよいライバル心を燃やし、貧弱な服装で出発したがために(ほかにも様々原因はありますが)自滅していくのです。そんな壮絶きわまる雪中行軍でさえも、気温は30℃程度だったのではないでしょうか。「八甲田山」は映画ですが、史実を基にした小説が原作です。先人の尊い犠牲をないがしろにして、50℃台をなめてかかると罰が当りそうです。<br /><br /> ですので、この旅の前に装備のヒントを見つけるべく、私は年の瀬の大阪の登山用品店で、たっぷり1時間ほど品定めしました。そして結論を出しました。<br /><br />―必要なものは現地で買えばいいや。<br /><br /> 正直に言って、あれこれ考えるのが面倒くさかったから逃げたんですが、それは秘密で、実際に合理的な判断であるとも思ったからそうしたのです。だって、人跡未踏の地へ行くわけではないのです。ちゃんと人が住んで生活しているのだから、その人たちと同じ服装をしていればいいはずですよね。というわけで、身も心も軽く、いつも通勤に使っているスーツとダウンジャケットの組み合わせで、ヤクーツクに降り立ちました。<br /><br /> きっと大丈夫だろうとは思っていましたが、確かにヤクーツクではこれで問題ありませんでした。あまり長時間連続で屋外にいることはお勧めできませんが、ウール製のスーツは幅広いシーンで適応力を発揮する、汎用性の高い衣料なんです。しかし、いよいよ明日はヴェルホヤンスクへ行くという日、現地旅行社のサルダナさんに言われました。「その格好でヴェルホヤンスクへ行くことはできません。」<br /><br /> やはりそうですよね。「できれば、死なずにすむ服装を購入したいです。」とお願いして、防寒服の買える店へ案内してもらいました。<br /><br /> 連れて行ってもらったところは、ヤクーツク市内中心部の特殊防寒服の専門店でした。作業服と呼ぶのがふさわしい、見た目のごつい上下服が店内ところ狭しと吊り下げられています。いくつか試着して体に合うものを選びました。この防寒服はみな、最近の繊維製品としては珍しくロシア製なのです。早速身を包んでみると、確かに全然寒くない!すばらしい性能です。さすが本場の品物であると感心しました。<br /><br />この服、防寒性能に妥協がないのは当然ですが、値段が安いのがまた結構。一応、上下合わせて1万数千円はするので激安とまでは言えないですが、日本で極地用の防寒具を入手しようとしたらこの10倍くらいはするでしょう。一生に1度あるかどうかの寒冷地に行く機会のために、そんな高価でかさばる防寒着を揃えるのは現実的ではないですが、これなら旅行者にもどうにか利用できそうです。

エクメネの最果てへ ―サハ共和国 冬の旅― (6)

4いいね!

2009/01 - 2009/01

116位(同エリア149件中)

0

1

JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

 さて、この連載は前回一旦終わりそうに見えましたが、肝心の世界一寒い街、ヴェルホヤンスクへ辿りつかないまま終わるわけにはいきませんので、もうちょっと続けます。というより、ここからが本番ですよ。

 私が滞在中、ヤクーツクの気温は大体マイナス33℃前後でした。これから向かうヴェルホヤンスクは、来る直前にモスクワで調べたところマイナス54℃ということです。インターネットって便利ですね!(^▽^)…なんて無邪気なことを言っている場合ではありません。54℃(以降、マイナスは略します)、レベルが違います。某国の通貨ほどじゃないですが、こんなにインフレしちゃって大丈夫なんでしょうか。

 こういう未知の気温のところへ行くのに、一般的な日本人である我々はどんな準備をしていけばいいのか、ちょっと想像がつきません。特に服装が心配です。

 私の大好きな映画に「八甲田山」という大変暗い作品があります。そこでは、雪中行軍訓練中の日本兵たちが寒さの中で錯乱し、狂態を演じながら次々に死んでいくのです。それも、「敵は酷寒零下四十度に於いてなお戦うことを習得しているロシア軍である。」とばかりに、燃やさなくてよいライバル心を燃やし、貧弱な服装で出発したがために(ほかにも様々原因はありますが)自滅していくのです。そんな壮絶きわまる雪中行軍でさえも、気温は30℃程度だったのではないでしょうか。「八甲田山」は映画ですが、史実を基にした小説が原作です。先人の尊い犠牲をないがしろにして、50℃台をなめてかかると罰が当りそうです。

 ですので、この旅の前に装備のヒントを見つけるべく、私は年の瀬の大阪の登山用品店で、たっぷり1時間ほど品定めしました。そして結論を出しました。

―必要なものは現地で買えばいいや。

 正直に言って、あれこれ考えるのが面倒くさかったから逃げたんですが、それは秘密で、実際に合理的な判断であるとも思ったからそうしたのです。だって、人跡未踏の地へ行くわけではないのです。ちゃんと人が住んで生活しているのだから、その人たちと同じ服装をしていればいいはずですよね。というわけで、身も心も軽く、いつも通勤に使っているスーツとダウンジャケットの組み合わせで、ヤクーツクに降り立ちました。

 きっと大丈夫だろうとは思っていましたが、確かにヤクーツクではこれで問題ありませんでした。あまり長時間連続で屋外にいることはお勧めできませんが、ウール製のスーツは幅広いシーンで適応力を発揮する、汎用性の高い衣料なんです。しかし、いよいよ明日はヴェルホヤンスクへ行くという日、現地旅行社のサルダナさんに言われました。「その格好でヴェルホヤンスクへ行くことはできません。」

 やはりそうですよね。「できれば、死なずにすむ服装を購入したいです。」とお願いして、防寒服の買える店へ案内してもらいました。

 連れて行ってもらったところは、ヤクーツク市内中心部の特殊防寒服の専門店でした。作業服と呼ぶのがふさわしい、見た目のごつい上下服が店内ところ狭しと吊り下げられています。いくつか試着して体に合うものを選びました。この防寒服はみな、最近の繊維製品としては珍しくロシア製なのです。早速身を包んでみると、確かに全然寒くない!すばらしい性能です。さすが本場の品物であると感心しました。

この服、防寒性能に妥協がないのは当然ですが、値段が安いのがまた結構。一応、上下合わせて1万数千円はするので激安とまでは言えないですが、日本で極地用の防寒具を入手しようとしたらこの10倍くらいはするでしょう。一生に1度あるかどうかの寒冷地に行く機会のために、そんな高価でかさばる防寒着を揃えるのは現実的ではないですが、これなら旅行者にもどうにか利用できそうです。

  •  服はこれで何とかなりました。次は靴のことも気になります。もちろん、日本で普段使っている通勤用の革靴でいいはずがありません。そこで購入することになったのが、ヴァーレンキ(ВАЛЕНКИ)という履物。これがどんなものかご存じですか?ヴァーレンキはフェルトでできたブーツです。つなぎ目のない、巨大なフェルトの靴下のような見た目をしています。いや、もういっそ、外も歩ける靴下と言った方が正確な気がしてきました。あんまり「靴」らしくないのです。何しろ底まで全部フェルトでできていて、つまり全部が布な訳ですから、持ったら妙に軽いし、押さえたらペコペコへこむし、申し訳ないけど、頼りない。<br /><br />いきなりこれだけで履くと足が全然固定できないので、インナーブーツも重ね履きします。このインナーブーツは毛足の長い正体不詳のフワフワ素材でできているのですが、また何とも言えず安っぽいのです。実際に値段は安いのですが。このヴァーレンキとインナーブーツ、ひと揃いで2千円くらいでした。そんな代物なのに、いい意味で期待は裏切られます。履いてみると驚きの暖かさ!フェルトの底なのに、屋外もビシバシ歩けて滑らない!<br /><br /> もちろんロシア製(購入したものにはヤロスラヴリ製と書いてありました)のこのアイテム、当地では古くから普及している冬用履物で、モスクワあたりでも話には聞いたことがあったのですが、うわさ通りの性能のよさでした。<br /><br /> さて、そうやって完成度の高い防寒装備を安価に揃えることができた訳ですが、ヤクーツクの街中には、似たような格好をして歩いている人は実はほとんどいないのです。地元の人の身なりでは、服も靴も、毛皮製品がやたらと目につきます。どうやら特殊防寒服やヴァーレンキは、現地では相当ダサい格好みたいです(いや、ヤクーツクじゃなくても明らかにファッション性ゼロ)。たぶん、ホームセンターで全身コーディネートしたような感じなのでしょう。<br /><br />この地でダサくないと言える格好は、やっぱり毛皮製品が筆頭のようです。ヤクーツクでは毛皮は普段着並みの存在です。が、さすがに上述のような安価では揃えることができません。旅行の間だけで使うにはちょっともったいないのです。結局、特殊防寒服やヴァーレンキが、妥当な選択肢になってしまうんですね。<br /><br /> 性能に関しては申し分のない装備を揃えた次の日、いよいよ「世界一寒い町」ヴェルホヤンスクへ出発する日が来ました。

     服はこれで何とかなりました。次は靴のことも気になります。もちろん、日本で普段使っている通勤用の革靴でいいはずがありません。そこで購入することになったのが、ヴァーレンキ(ВАЛЕНКИ)という履物。これがどんなものかご存じですか?ヴァーレンキはフェルトでできたブーツです。つなぎ目のない、巨大なフェルトの靴下のような見た目をしています。いや、もういっそ、外も歩ける靴下と言った方が正確な気がしてきました。あんまり「靴」らしくないのです。何しろ底まで全部フェルトでできていて、つまり全部が布な訳ですから、持ったら妙に軽いし、押さえたらペコペコへこむし、申し訳ないけど、頼りない。

    いきなりこれだけで履くと足が全然固定できないので、インナーブーツも重ね履きします。このインナーブーツは毛足の長い正体不詳のフワフワ素材でできているのですが、また何とも言えず安っぽいのです。実際に値段は安いのですが。このヴァーレンキとインナーブーツ、ひと揃いで2千円くらいでした。そんな代物なのに、いい意味で期待は裏切られます。履いてみると驚きの暖かさ!フェルトの底なのに、屋外もビシバシ歩けて滑らない!

     もちろんロシア製(購入したものにはヤロスラヴリ製と書いてありました)のこのアイテム、当地では古くから普及している冬用履物で、モスクワあたりでも話には聞いたことがあったのですが、うわさ通りの性能のよさでした。

     さて、そうやって完成度の高い防寒装備を安価に揃えることができた訳ですが、ヤクーツクの街中には、似たような格好をして歩いている人は実はほとんどいないのです。地元の人の身なりでは、服も靴も、毛皮製品がやたらと目につきます。どうやら特殊防寒服やヴァーレンキは、現地では相当ダサい格好みたいです(いや、ヤクーツクじゃなくても明らかにファッション性ゼロ)。たぶん、ホームセンターで全身コーディネートしたような感じなのでしょう。

    この地でダサくないと言える格好は、やっぱり毛皮製品が筆頭のようです。ヤクーツクでは毛皮は普段着並みの存在です。が、さすがに上述のような安価では揃えることができません。旅行の間だけで使うにはちょっともったいないのです。結局、特殊防寒服やヴァーレンキが、妥当な選択肢になってしまうんですね。

     性能に関しては申し分のない装備を揃えた次の日、いよいよ「世界一寒い町」ヴェルホヤンスクへ出発する日が来ました。

この旅行記のタグ

4いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

ロシアで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
ロシア最安 422円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

ロシアの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

PAGE TOP