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 岡山県備前市は、備前焼の産地として有名である。備前焼は、釉薬を使わず、陶土を成形・乾燥させたものを窯で焼く。<br /> 1300℃に達する窯の中で、「酸化焔焼成」によって堅く締められた赤みの強い味わい、釉薬を使っていないので、窯変と呼ばれる窯の中での様々な変化によって、「一つとして同じものができない。」といわれるような変化に富んだ焼き物である。<br /> 「田土(ひよせ)」と呼ばれる田んぼのそこから掘り出した粘土に、鉄分を含む山土・黒土を混ぜ合わせ陶土を作る。その配分には一定のルールがあるようだが、そこに作家の工夫が現れる。こうして作られた陶土は、熟成という期間を経て焼き物になっていくのだが、人間国宝の金重陶陽氏は、10年熟成させた陶土を使っていたといわれているように、作家によって熟成の期間などにも工夫がみられるのだ。<br /> こうして見てくると、備前焼の特徴は、まず、陶土を作る過程にあると思われた。粘土そのものも地域によって個性があり、そこに配合する山土や黒土にも成分の違いがある。たとえ同じ成分だとしても配合する比率が違う。さらに、熟成させる期間も作家によって異なる。この、作家による陶土の微妙な違いが備前焼の多様性につながっているのではないかと思うのである。<br /><br /> 次に備前焼を決定づけるのが焼き方である。<br /> 備前焼の焼き方は、一般的には「酸化焔焼成」であるが、青備前と呼ばれる独特の青みが勝った焼き上がりの作品を作る場合は「還元焔焼成」とする。酸化・還元といった化学変化がどのようなものかは高校生のころに勉強したことだが、普段の生活の中であまり考えることはない。それがこんなところで役に立とうとは・・・。<br /> 酸化の場合、窯の中を完全燃焼状態にする。つまり、窯に薪をくべるとき、煙が出てきたら不完全燃焼状態なので、薪の投入をやめるのである。そうすると煙が出なくなり薪は良く燃焼する。薪の燃焼に必要な酸素が十分に足りている状態なので、焼き物の中の酸素も残っており、鉄を含む焼き物は赤っぽくなるのである。<br /> 一方還元は、薪をどんどん入れ、煙が出ても薪を入れ続けるのである。こうすると窯の中は酸欠状態になり薪は不完全燃焼する。少しでも燃えようとするため焼き物の中に含まれるわずかな酸素も燃やしてしまう。すると焼き物は青みがかった焼き上がりとなるのである。<br /> この焼き方の違いにさらに、窯変が加わる。<br /> 胡麻(ごま)は、窯焼きの最中に、薪の灰が融けて生地にくっ付く事によりできる模様。 桟切(さんぎり)は、金・青・灰色などのさまざまな模様。 火襷(ひだすき)は、藁を巻き鞘などに詰め直接火の当たらない場所で焼くことによって、生地全体は白く、藁のあった部分は赤い模様になる。赤と白のコントラストが端麗で人気も高い。 こうして、焼物一つひとつに個性がにじみ出るのである。<br /><br /> 陶土づくり、熟成、成形、乾燥、窯焼きという単純な過程に、多様性のある変化が加わり、一つの焼き物ができある。形は同じでも色は一つとして同じものはない。そして、使い続けることで独特の味が出る。備前焼を特徴づけるのは、創作の過程から使用することで生まれる深い味わいにまで貫かれている『変化』なのだと僕は思うのだ。<br /><br /> 毎年10月の第3土曜日から二日間にわたって、JR赤穂線伊部駅周辺で「備前焼祭り」が開催されている。今年、備前に住む大先輩に誘われて、この祭りに出かけてみた。まず、大変な賑わいで驚いた。<br /> 宮城で活躍しているAさんが勇退する。記念に好本さんの冷酒用の平徳利とぐい飲みを買った。最近体調を崩され、新作を作られていないようだけれど、須恵器を復活させた功績は大きく、注目されている作家のお一人である。できれば、氏の新作を期待したいところだが、こればかりは体調のこともあり無理強いすることはできない。奥様から北海道から送られてきたというかち栗を御馳走になり、歓談する時間を与えていただいたのが良い思い出となったのである。<br /><br />参考:備前焼陶友会のHP<br />   http://www.touyuukai.jp/maturi.html

備前焼考

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2009/10/17 - 2009/10/17

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山菜迷人

山菜迷人さん

 岡山県備前市は、備前焼の産地として有名である。備前焼は、釉薬を使わず、陶土を成形・乾燥させたものを窯で焼く。
 1300℃に達する窯の中で、「酸化焔焼成」によって堅く締められた赤みの強い味わい、釉薬を使っていないので、窯変と呼ばれる窯の中での様々な変化によって、「一つとして同じものができない。」といわれるような変化に富んだ焼き物である。
 「田土(ひよせ)」と呼ばれる田んぼのそこから掘り出した粘土に、鉄分を含む山土・黒土を混ぜ合わせ陶土を作る。その配分には一定のルールがあるようだが、そこに作家の工夫が現れる。こうして作られた陶土は、熟成という期間を経て焼き物になっていくのだが、人間国宝の金重陶陽氏は、10年熟成させた陶土を使っていたといわれているように、作家によって熟成の期間などにも工夫がみられるのだ。
 こうして見てくると、備前焼の特徴は、まず、陶土を作る過程にあると思われた。粘土そのものも地域によって個性があり、そこに配合する山土や黒土にも成分の違いがある。たとえ同じ成分だとしても配合する比率が違う。さらに、熟成させる期間も作家によって異なる。この、作家による陶土の微妙な違いが備前焼の多様性につながっているのではないかと思うのである。

 次に備前焼を決定づけるのが焼き方である。
 備前焼の焼き方は、一般的には「酸化焔焼成」であるが、青備前と呼ばれる独特の青みが勝った焼き上がりの作品を作る場合は「還元焔焼成」とする。酸化・還元といった化学変化がどのようなものかは高校生のころに勉強したことだが、普段の生活の中であまり考えることはない。それがこんなところで役に立とうとは・・・。
 酸化の場合、窯の中を完全燃焼状態にする。つまり、窯に薪をくべるとき、煙が出てきたら不完全燃焼状態なので、薪の投入をやめるのである。そうすると煙が出なくなり薪は良く燃焼する。薪の燃焼に必要な酸素が十分に足りている状態なので、焼き物の中の酸素も残っており、鉄を含む焼き物は赤っぽくなるのである。
 一方還元は、薪をどんどん入れ、煙が出ても薪を入れ続けるのである。こうすると窯の中は酸欠状態になり薪は不完全燃焼する。少しでも燃えようとするため焼き物の中に含まれるわずかな酸素も燃やしてしまう。すると焼き物は青みがかった焼き上がりとなるのである。
 この焼き方の違いにさらに、窯変が加わる。
 胡麻(ごま)は、窯焼きの最中に、薪の灰が融けて生地にくっ付く事によりできる模様。 桟切(さんぎり)は、金・青・灰色などのさまざまな模様。 火襷(ひだすき)は、藁を巻き鞘などに詰め直接火の当たらない場所で焼くことによって、生地全体は白く、藁のあった部分は赤い模様になる。赤と白のコントラストが端麗で人気も高い。 こうして、焼物一つひとつに個性がにじみ出るのである。

 陶土づくり、熟成、成形、乾燥、窯焼きという単純な過程に、多様性のある変化が加わり、一つの焼き物ができある。形は同じでも色は一つとして同じものはない。そして、使い続けることで独特の味が出る。備前焼を特徴づけるのは、創作の過程から使用することで生まれる深い味わいにまで貫かれている『変化』なのだと僕は思うのだ。

 毎年10月の第3土曜日から二日間にわたって、JR赤穂線伊部駅周辺で「備前焼祭り」が開催されている。今年、備前に住む大先輩に誘われて、この祭りに出かけてみた。まず、大変な賑わいで驚いた。
 宮城で活躍しているAさんが勇退する。記念に好本さんの冷酒用の平徳利とぐい飲みを買った。最近体調を崩され、新作を作られていないようだけれど、須恵器を復活させた功績は大きく、注目されている作家のお一人である。できれば、氏の新作を期待したいところだが、こればかりは体調のこともあり無理強いすることはできない。奥様から北海道から送られてきたというかち栗を御馳走になり、歓談する時間を与えていただいたのが良い思い出となったのである。

参考:備前焼陶友会のHP
   http://www.touyuukai.jp/maturi.html

同行者
一人旅
一人あたり費用
3万円 - 5万円
交通手段
JRローカル
  • 車中の吊り広告に『備前焼祭り』を見つけた

    車中の吊り広告に『備前焼祭り』を見つけた

  • 備前焼祭りは、伊部の街全体が祭り会場となるのだ。

    備前焼祭りは、伊部の街全体が祭り会場となるのだ。

  • 店先に、所狭しと備前焼が並び、それぞれ、自分の目当ての焼き物を物色している。

    店先に、所狭しと備前焼が並び、それぞれ、自分の目当ての焼き物を物色している。

  • 一点物から大量生産ものまで、何万点という焼き物が並ぶ。

    一点物から大量生産ものまで、何万点という焼き物が並ぶ。

  • ここは備前市の山奥、和意谷の作家さんのブース。

    ここは備前市の山奥、和意谷の作家さんのブース。

  • 山のような展示品の中から、お気に入りの一点を探すのはなかなか大変な作業である。

    山のような展示品の中から、お気に入りの一点を探すのはなかなか大変な作業である。

  • 紅白の幕を張って。

    紅白の幕を張って。

  • ヒラメの大皿・・・ちょっと手が出ない。

    ヒラメの大皿・・・ちょっと手が出ない。

  • いつもまばらな通りも、この日ばかりは大賑わい

    いつもまばらな通りも、この日ばかりは大賑わい

  • 値切ったり、値切られたり

    値切ったり、値切られたり

  • 古い看板に歴史が刻まれている

    古い看板に歴史が刻まれている

  • 中には備前焼以外の露店も

    中には備前焼以外の露店も

  • こちら、正月飾りかな??

    こちら、正月飾りかな??

  • 天津神社山道も人だかりが

    天津神社山道も人だかりが

  • 青い空、白い壁、若い母親、道路に浮かぶ影

    青い空、白い壁、若い母親、道路に浮かぶ影

  • 壺専門の店先

    壺専門の店先

  • 歴史のにじむ看板

    歴史のにじむ看板

  • 本日のお目当て、好本宗峯さんのお宅を訪ねた。

    本日のお目当て、好本宗峯さんのお宅を訪ねた。

  • ぐい飲みを探しているんだよ

    ぐい飲みを探しているんだよ

  • 素敵な作品が並ぶ

    素敵な作品が並ぶ

  • 北海道から届いたというかち栗をごちそうになりました。

    北海道から届いたというかち栗をごちそうになりました。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • airpentaroさん 2009/11/14 15:59:51
    備前焼
    山菜迷人さん、こんにちは。

    「備前焼祭り」という祭りがあるんですね。
    ○○焼と聞くと、大きな壺だったり、高価な焼き物というイメージがありますけど、こういう祭りだと普段使える焼き物も販売してていいですよね。

    私も笠間焼の陶炎祭[ひまつり]で買ったビール用の小さな焼き物を愛用しています。
    ガラスとは違う焼き物の温かさのようなものが気に入っています。

    店先で窯元の方が販売されていたので、焼き方などの話をうかがったことを覚えています。
    山菜迷人さんは陶芸家の方の自宅で話をされたんですね。
    作品が居並ぶ陶芸家らしい素敵な自宅ですね。

    またお邪魔します☆(^∀^)ノ~~

    山菜迷人

    山菜迷人さん からの返信 2009/11/14 17:52:57
    お立ち寄りいただきありがとうございます
     お立ち寄りいただき、ありがとうございます。
     全国に備前焼ファンの方がいらっしゃるので、二日間で50万人くらいの来場者だったようです。この日は、どこでも通常価格の2割引きで焼き物を買い求めることができるので、県外から毎年来ている常連さんのグループもたくさんありました。
     常連さんによると、店頭価格の2割引きから、もう一声値引きをお願いすると、かなりの確率で負けてくれるそうですよ。
     僕がお邪魔したのは、備前焼の元になったといわれる須恵器を現代によみがえらせた好本さんという高名な作家さんなんですが、奥様も気さくな方で、楽しく焼き物の話ができるので好きなんですね。

     機会をこしらえて、一度のぞいてみませんか??(*^_^*)

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