2009/09/20 - 2009/09/20
692位(同エリア2009件中)
がりさん
旅行博で行われた沢木耕太郎さんの講演会のレポートです。
沢木さんが語られた話の内容に、僕の個人的な感想を加えて紹介します。
旅をするうえで大切なのは、やって来た偶然に柔軟に対応する力があるかどうか…、沢木さんの言葉は心の中に大切に留めておきたいものばかりで価値ある講演会だったと思います。
行かれなかった方も、こんな感じだったんだ!と知ってもらえたら嬉しいです。
なお、講演会は撮影禁止だったため、写真はありません。
ここに掲載している写真は旅行博の会場で撮影したもので、講演会自体とはまったく関係ありませんので、写真はあまり気にせず読んでくださいね!
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初めて『深夜特急』を読んだのが5年前。
それ以来、沢木耕太郎さんの作品はほとんど全部読んできました。
僕にとって沢木さんは、一番好きな作家であり、一番尊敬する作家であり、一番影響を受けている作家です。
沢木さんの講演会にやって来たのは昨年の早稲田祭につづいて2度目です! -
しかし、今回は早稲田祭のときとは随分と雰囲気が違う様子。
270ほどの席はすべて埋まっていて僕は立って聴くほかありませんでした。
それはかまわないのですが、講演会を行うステージは旅行博の会場内に特設されているために周りから音楽やら歌声やらいろんな声やらが聞こえてきてとにかく騒々しい感じなのです。
沢木さんの講演会を行うステージとして相応しいのだろうか…。
そんなことを考えてるうちに、大きな拍手の中、沢木さんが姿をあらわしました! -
今回の講演会のテーマは「旅から旅へ」のようです。
相変わらずのかっこよさで颯爽と登場した沢木さん。
「こういう所で話すのは初めてなので、うまくできるかわからないけれど、やってみましょう」
この最初の言葉を聞いて、ちょっと思うことがあって…。 -
沢木さんが旅行博にゲストで来る、と聞いたときに正直なところ、えっ?と思いました。
昨年のような大学の学園祭に来るというのならわかるんだけど、旅行博のような商業的イベントになぜ沢木さんが?とちょっと不思議に感じました。
で、その辺も確かめたくて今日は来たのです。
来て思ったのは、これは僕の勝手な推測なので間違ってるかもしれないけど…。
もしかしたら沢木さんは、「こういう所」で話すということをよく知らぬまま、この仕事を引き受けちゃったんじゃないかな〜、と。
実際どうなのかはわからないですけどね。 -
しかしさすが沢木さん、こういう所でもしっかりと聴衆の心を惹きつけて、全然周りの騒々しさが気にならないほどでした。
講演会は、数日前に会ったというウェイン・ワンとの話を軸に展開していきました。
ウェイン・ワンは香港で生まれ、アメリカに渡った「スモーク」などで知られる映画監督で、この秋に「千年の祈り」が公開されます。 -
まず話してくれたのは、まもなく出版されるという新刊『ライフ・アフター・ライフ』の話。
ライフ・アフター・ライフとは、終身刑を宣告されたあとの人生、という意味。
これはイギリス人作家トニー・パーカーが12人の殺人者へインタビューしたノンフィクションで、沢木さんがそれを翻訳してこのほど出版されます。
翻訳を引き受けたのは十数年も前のことでやっと本になるとのこと。
たとえばそれはこんな話で…。 -
単純なことから人を殺害した小柄な男。
刑務所内でも暴れる彼に対して、同じく拘置されているおじいさんが言います、
「そんなことをしてないで、勉強をするんだよ」
その後も「勉強をしろよ」と諭された男は、やがて本を読み、大学を出て、就職をする。
そしてその男は今、こう語るのです。
「俺には希望なんてない。ただ本を読むことしかできないんだ」
映画の一場面のような、しかし事実の物語なのです。 -
それにしても、沢木さんの話し方は本当に素敵です。
作家の人って朴訥なイメージがあるけど、沢木さんは優しく軽快な語り口ですごく聴き心地が良い声なのです!
なんか親近感が湧く感じなんですよ〜。 -
つづいては、ブラジルで遭遇した飛行機の墜落事故の話。
ただこの話は『イルカと墜落』を読んだ人にとっては、すでに知ってる話でもっと知らない話をして!と思わないでもなかったです。 -
しかし後半の話は素晴らしいものでした。
沢木さんは司馬遼太郎の『街道をゆく』をヒントに、四国の檮原街道を歩いて旅したそうです。
さらにその後、中国へわたり「蜀と雲南の道」の旅をしました。
香港から昆明、成都を経てカシュガルまで乗り合いバスで旅しました。
深夜特急の旅で本当は通りたかった、幻のルートだったのです。 -
その旅で沢木さんは、少数民族であるイ族の村を訪ねました。
しかし時代は変わり、その村にいるのは漢族ばかり。
一人の女性に「イ族ですか?」と尋ねても、やはり「漢族です」と同じ答え。
でもその女性の子供がなにか顔が違う気がして尋ねると、その子はイ族との混血だったのです。
そこから写真撮影などをするうちにその家族と親交が深まり、やがておじいさんに誘われます。
「うちで夕食を食べていかないか?」
ありがたく夕食を共にしながら、沢木さんは尋ねます。
「どうして僕達を夕食に誘ってくれたんですか?」
これに対するおじいさんの答えが素晴らしく美しい。
「それは、あなた達が私の家の前で足を止めたからです」 -
旅はつねに予想を「超えたもの」を僕らに与えてくれる。
沢木さんはこのひとときを、中国の旅で一番幸せな時間だった、と語ります。
もし最初の女性に話しかけていなかったら、この時間はなかった。
これは偶然が与えてくれた時間だった…。
そして、「旅における偶然」に話は移ります。 -
旅において、誰にも等しく「偶然」はおこる。
大切なのは、その偶然に柔軟に対応する力があるかどうかだ、と沢木さんのメッセージ。
では、その力はどうすれば身に付くのか?
やって来た偶然をまず受け止めて、そこで判断する。
その偶然を受け入れるか、拒絶するか。
それを繰り返すうちに、自分がどこまでの偶然に対応できるのかがわかってくる…。
これは、今後の旅の指針としたいメッセージでした〜。 -
それにしても沢木さんは、還暦過ぎとは思えないかっこよさでした!
やっぱり人々を惹きつける力があるんですよね…。
この賑やかな会場内のステージで、場を統一させるというのは見事でした。 -
最後に沢木さんが話してくれたのはこういうことでした。
ガイドブックをもつ旅もいいけど、旅は「知らない」ほうが良い場合もある。
だから、なんにも調べずになんにも知らないまま旅に出るのもいいんじゃないか、ということです。 -
沢木さんは今、博打のバカラについての小説を書いていて、もしかしたらウェイン・ワンがそれを映画化するかもしれない!?みたいな意味深なことを言ったあと、少し時間が余ったとのことでなんと質問コーナーがありました。
3人が質問しましたが、最後の男性の質問が良かったです。
「旅をしている時、仕事はどうされているんですか?」
沢木さんは旅にいつも大学ノートを持っていき、そこに走り書き程度に旅での出来事を書いておくそうです。
たとえば食堂で女の子に親切にしてもらったら「食堂、女の子」とだけ書いておく。
そしてそれを見ながら旅を思い出し、紀行文を書くのだそうです。
これはもしかしたら、ブログで旅行記を書くのにも応用できるやり方かもしれないですね。 -
90分の講演会が終わり、沢木さんが颯爽とステージをあとにしました。
あっという間の90分でした〜。
その後、自然発生的にサインを求める列が出現。
でもサイン会など無いので係員さんが「サインは致しません!」と…。
そりゃそうだよね…、でも気持ちわかります。 -
90分も立ちっぱなしで足が疲れましたが、聴きに来てほんとに良かったです。
心に残しておきたいメッセージをいくつもくれた、価値ある講演会だったと思います。
最初は沢木さんが旅行博って何でまた?なんて思ってましたが、まあこれでいいのかな〜と。 -
最近の沢木さんは、講演会を多く行ったりと、前とはちょっと変わってきてるようにも思えます。
沢木さんのファンとしては、その変化を良い方向のものと捉えたいと思ってます。
小説も書き始めたようだし、たぶん今の位置に留まっていたくないって思いがあるんでしょう。
沢木さんにはこれからも、新しい作品を書いていってほしいです! -
ところで、沢木さんが最後に話していた言葉。
「ガイドブックをもつ旅もいいけど、旅は知らないほうが良い場合もある」
この言葉を聞いて、ひとつ思い出すことがありました。
実は以前、沢木さんから僕宛てにメールを頂いたことがあって…。
そこで贈ってもらったメッセージが…。
と、この話はたぶん長くなるので、またいずれ書くことにしますね。
講演会レポートを最後まで読んで下さり、ありがとうございました!
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この旅行記へのコメント (3)
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- ゆういちろうさん 2009/09/24 21:14:18
- 偶然と必然
- がりさん、こんばんは。
沢木耕太郎さん講演会、まるで自分がそこにいるかのように感じられ
最後まで一気に読んでしまいました。 今はとても充足した気持ちです。
私はあまり深く考えずに旅行をしてしまいがちですが、
「偶然」についての話や「下調べをせずにする旅」の話は興味深かったです。
色んな事を興味を持って受け止め、自分なりに消化し、成長せねば!と思いました。
あ、もちろん自分に対して強要する訳ではなくて
自然に受け入れられるようになって行きたいと言う事です。
沢木さんの本は面白そうですね。是非読んでみたいと思います。
ゆういちろう
- ゆういちろうさん からの返信 2009/09/24 21:25:15
- RE: 偶然と必然
- ごめんなさ〜い(^^;
↑のタイトルに「偶然と必然」と書いておきながら
「必然」について書きませんでしたね。スミマセン…。
偶然と思われている事柄って、その人が無意識に必要としている事を、
無意識な行動によって導いているのではないかと思うのです。
つまり偶然と思っていた事が、実は必然だった事もあるのではないかと。
もちろん全ての「偶然」に関してではないのですけどね。
ちょっと超自我的なお話になってしまいました。
お耳汚しになってしまったら申し訳ありません。
ゆういちろう
- がりさん からの返信 2009/09/25 20:39:31
- RE: 偶然と必然
- ゆういちろうさん、こんばんは!
講演会レポートを読んでいただき、ありがとうございます〜。
沢木さんのお話は、旅の捉え方を変えてくれて、すごく新鮮な考え方を教えてくれました。
そして何より、旅することの素晴らしさを感じさせてくれます。
> 私はあまり深く考えずに旅行をしてしまいがちですが、
> 「偶然」についての話や「下調べをせずにする旅」の話は興味深かったです。
> 色んな事を興味を持って受け止め、自分なりに消化し、成長せねば!と思いました。
そうですね、感受性を持つことが大切なのかな〜と。
自分が鋭敏な感受性を持っているかと聞かれると…、足りないと思う。
もっといろいろなことに素直に感動しないと!と思ってます。
沢木さんが本に(また沢木さんの話で恐縮ですが)、旅行記を書くうえで大切なのはアクションではなくリアクションだ、と書いていて…。
つまり、どこへ行ったかというアクションではなく、そこでどう思ったかというリアクションをしっかりと描くと、旅行記が生き生きとしたものになる、と。
ブログでもそんな旅行記を書いていきたいですね!
> 偶然と思われている事柄って、その人が無意識に必要としている事を、
> 無意識な行動によって導いているのではないかと思うのです。
> つまり偶然と思っていた事が、実は必然だった事もあるのではないかと。
良い発想ですね〜!
僕の考えでは、「偶然を呼ぶ力」は「好奇心の強さ」に比例するんじゃないかな、と思います。
好奇心を強く出している人には、向こうがそれに応えてくれる気がするんです。
> 沢木さんの本は面白そうですね。是非読んでみたいと思います。
絶対おすすめできますよ!
とくに『深夜特急』は、旅が好きな人でしたら感動できる作品だと思います。
僕もこの本に出会っていなかったら、たぶん一人旅なんてしてなかったでしょう。
いつかは深夜特急のような旅をしてみたい、と思っています。
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