2006/04/29 - 2006/05/07
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彷徨人MUさん
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1).旅の始めに
鑑真和上は、60歳過ぎても、日本への渡海を諦めず、748年6月、故郷「揚州」から揚子江を下り、外海に出たが、台風に遭遇。船は、「海南島」の南端に流れ着き、2年余掛け、「揚州」へ戻っている。今回の旅では、鑑真和上の、広東省での足跡を辿ろうと、まずは、省都「広州」へ向かった。
2) 「広州」へ、そして「雷州半島」の軍港、「湛江」市へ
「広州」の「白雲空港」は、新たに開港した空港であり、空港ビル内を電気自動車タクシーが走っているほど大規模な空港である。「黄金周」に、恒例の「広州交易会」が重なり、空港は人で溢れていた。
僕は、「広州」から、「雷州半島」の軍港がある「湛江」市に向った。中国大陸最南端の街、「湛江」市徐聞県は、亜熱帯にあり、真夏の太陽が、ぎらぎらと照りつける暑さであった。最南端にある「灯楼角岬」では、観音菩薩が住んでおられる「普陀落」が、嘗て「海のシルクロード」と呼ばれた光る海の上に見えるのではと、在り得ぬ景色を、僕は探し始めていた。
木々抜ける 風みな涼し 五月晴れ
鑑真和上一行が、「海南島」から船出し、大陸で第一歩を踏まれた地を求め、海岸線に沿って、「海安」から「白沙湾」へ向かった。近年、「徐聞城」の南方に、嘗ての海のシルクロードの出発地の古港の遺跡が発見されたという話を聞き、地図を見ているうちに、其処は、鑑真一行が、「海南島」から辿り着き、上陸した地点に違いないと、思えて来た。
海岸線に沿って行くと、間もなく、車の通れる道が無くなり、再び国道へ出て、「雷州」へ向かった。「天寧禅寺」は、鑑真一行が訪れた可能性のある数少ない現存する禅寺である。寺内では、在家信者と、出家僧の経の大合唱の真っ最中であった。
鑑真一行は、「湛江市」、「廉江市」を通り、「広西壮族自治区」に入り、「桂林」から河を下り、再び広東省の「肇慶」市に入っている。
3).再び、「広州」へ、そして「東莞」、「肇慶」市へ
僕は、「湛江空港」から「広州」に戻った。1840年台に、不法な阿片の流入の取締りに敢然と挑んだ、福州出身の「林則徐」の、阿片戦跡を見るために、タクシーで、「東莞市」に向かった。「虎門林則徐記念館」には、穏やかな表情の「林則徐」の座像があり、記念館脇には、没収した阿片を処理した「銷煙池」があった。
「広州」に戻る途中、小型のフエリーで「珠江」を渡ると、軍事基地の一部に、「黄埔軍学校」があった。第一次国共合作で出来たこの軍学校は、「蒋介石」が校長、「周恩来」が主任であり、その後の中国で活躍した人々を多く輩出している。
この後、鑑真一行の足跡記録の残る「古端渓」の硯石でも有名な北回帰線下にある、「肇慶市」に向かった。
鑑真一行には、二人の日本人がいた。仏教の正式の受戒制度を確立する為、優れた戒師となる僧侶を日本に迎えるという使命を受けた「大安寺」の僧侶「普照」と、美濃の人で、「興福寺」の僧侶「栄叡」であり、共に732年、「留学僧」として第9次遣唐使船で中国に渡っている。
鑑真は、この「肇慶」で亡くなった「栄叡」の死を痛み、嘆き悲しんだと言われている。「肇慶市」の「鼎湖山」に、古刹「慶雲寺」があり、その近くに、『栄叡碑亭』と彫られた石碑が、五月闇の中にひっそりとあった。雨が降り出したので、傍の東屋で雨宿りをしていたら、この地で亡くなられた「栄叡」師の無念が、何故か伝わってくるような気がしてきた。
「広州市」の下町に「光孝寺」がある。「広州」に着いた日、僕は、このお寺を尋ねたが、丁度夕べの読経の最中であった。メロデイーの豊かな中国語の「般若心経」の読経を聞きながら、亡き妻の初盆で、このお経を詠んだ時のことを、僕は思い重ねていた。
『公元749年、唐代高僧鑑真第5次東渡日本時、被台風吹至海南島、然后来広州也在此住過一个春天』(西暦749年、唐代の高僧鑑真和上が日本に行く途中、台風に流され「海南島」に至り、「広州」に来て、一春をこの寺で過ごす)と、書かれた石碑を、この寺内で見つけた。
4).旅の終わりに
マロニエの 愛しさ余る 魔都を行く
旅の終わりは、僕の中国の旅の出発点でもある「上海」である。日本の「黄金周」の連休の所為もあり、「南京東路」は、わが同胞で溢れていた。
広東省の街では、「檳榔樹」の街路樹が多く見られたが、時に、熟した実の濃厚な香りの茘枝の並木道をも、散策した。上海の旧フランス租界では、道路一面を覆う「マロニエ」や、「プラタナス」の緑陰に、暑さを凌げるそのありがたさを感じつつ、控えめな花の、微かな香りを楽しみながら、この旅の終わりを、惜しんでいたのである。(完)
表紙写真:肇慶市の鼎湖山の古刹「慶雲寺」近くにある、日本僧「栄叡」の碑亭
* Coordinator: H. Gu
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