2007/03/31 - 2007/07/01
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captainさん
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「遥かなるホシャップ城」
完全に日が落ちた山間の道を大型バスが突き進む。起伏を感じなくなったバスの車内から、
うっすらと月光を受けて、青白く光る水面が木々の間から垣間見える。ヴァンの湖に違いなかった。
客もまばらなバスの車内から見る湖面は不気味で、この深夜に初めて見知らぬ街に到着して、
さらに宿を確保しなければいけないという僕の不安を、より大きなものにした。
しばらくして深夜の市街地に入り、バスが停止したのは深夜二時を過ぎた頃だった。
気のいい運転手のおっさんにヴァンに着いたことを確認し僕が降りたったのはオトガルではなく
街の中心部らしいところで、まだ灯が消えていない商店がちらほら見え、僕は少し安心した。
事前の情報で目を付けていた宿を探すために気合いを入れ直した僕は地図を広げ、
当たりを見回すと、目的のホテル「ビュユックアスル」は目の前だった。
これは幸福だった。さらに深夜にも関わらず、流暢な英語を話すマネージャーにチョルバ(スープ)と
巨大パンの出前をとってもらうことができ、幸福に浸りつつ泥のように眠った。
この時のチョルバは単なる名も無い出前のものなのだが、恐ろしく幸福感に包まれた味だった。
不安な移動後の「深夜のチョルバ」これはトルコで旅人が食す最高の贅沢1つに違いない。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス ヒッチハイク
-
翌朝、朝食をがっついたり、ホテルのマネージャーからカッコイイ煙草の吸い方のレクチャーを受けたりした後、
「ホシャップ城」を見に出かけた。たどり着くまでが大変で、乗り合いバスの乗り場を間違える。
乗り場を見つけたものの、バスが来ない。タクシーを検討するが予算が。。。60キロの往復と待ち時間を入れると
高くなるのは当然だ。気長に乗り合いバスを待っていると案の定、地元のおっちゃん達にからまれる。
「どこへ行くんだ!」「日本人か!」「トヨタは最高だ!」みたいな感じだ。ホシャップ城へ行きたいことを告げると、
おっちゃん達の会議が始まった。やたら真剣である。どうやら、ホシャップ城はいつ開くかわからない。
それでも行きたいなら、ちゃんとした乗り合いバスはまだ来ないから、乗り合い自家用車に乗ってけということになった。
値段を確認すると、乗り合いバスと同じぐらいだったので渡りに船だ。 -
多少ボロいトヨタに乗せてもらい、市街地を後にする。青々とした空に、大草原が広がる。
小川が流れ、羊が草を食んでいる。牧歌的な最高の景色がを楽しんでいると、車内の空気が少し変わった。
「パサポルトパサポルト」と言われ前方を見ると、臨時の検問所が見える。
忘れていた。ヴァンの街も、クルド人の街なのだ。同乗者は皆緊張の面持ちで、日本の検問所の雰囲気とは明らかに
違う。実施しているのはお巡りさんではなく、自動小銃をぶら下げた兵士なのだから。
「外国人を乗せていることで、この人達にあらぬ疑いが賭けられるのではッッ」などと勘ぐっていたが、
僕のパスポートを受けとった若い兵士は、厳つい見かけとは裏腹にかなりフレンドリーで、「ジャポンかーい。」
「良い旅をー。」と笑顔だったが、受け取った僕のパスポートや同乗クルド人の登録証をチェックする表情は、
真剣だった。地元4人と外国人1人の一行は、誰も降ろされることもなく検問を通過した。
蛇足かもしれないが、検問や現地行政には真摯に対応しよう。トルコ軍にも死傷者が多いこの地域では、
兵士も命を賭けて任務についている。誤解を与えるようなバカな行為やふざけた態度は、大きなトラブルを招くことになるだろう。
眼前に展開する自動小銃装備を見れば、そんなことをする気分は消し飛ぶだろうが。 -
ヴァンから1時間程で、小さな村に到着。お礼を言って、同乗者達に別れを告げた。
村の中心からすぐに城が見えたので、チャイハネに集まる村人の好奇な視線を背に、
坂を上ってゆく。だんだんと眼前に迫る迫るホシャップ城。崩れ具合、草の色とくすんだ城壁のコントラスト。
周辺で優雅に草を食み続ける牛。最高です。城ファン、廃墟ファン、双方に訴求する素晴らしい景色です。
オスマン朝時代にクルド人領主が建てたこの城には、ハマムが3つもあるという話だ。
期待を胸に正面ゲートに到着したのだが、人がいない。というか門が固く閉ざされている。
街での噂通り、やはり入れないのか?そうなのか?
ゲート前のチケットハウスのプレハブの裏でおじさんが煙草を吸っているのを発見したので、
入れないの?リペアリング?と聞いてみる。
おじさんは残念そうな顔をして、「リペアリングはフィニッシュさ。でも、まあ、ジャンダルマに聞いてくれ」
多少、複雑な事情がありそうだ。
似てはいるものの、ドンドルマではない。というか甘くない。ジャンダルマ。
ジャンダルマは元々フランス語で、憲兵隊のことである。
トルコにおけるジャンダルマは、内務省所属の重装備の警察組織だ。
往路で受けた検問もジャンダルマによるもので、トルコ旅行をすれば必ず一度は目にするだろう。
内務省が実行力として武装を求められるということは、国内に問題があるということが予想される。
ここトルコの場合では、もちろんクルド人武装組織の問題だ。
観光名所であるホシャップ城が、地方の行政ではなく内務省によって立ち入りが禁止されている。
これはなんともきな臭い話だ。そういうことなら仕方がない。今日の観光客は僕だけっぽかったし、
城内の3ハマムや、内側からの景色には未練がたっぷりあったが、おじさんが「あの門、いいだろう?」
とおススメしてくれたライオンの彫刻が施された正門をたっぷり拝んで、麓の村へ戻った。 -
ホシャップ城ゲート前から望む町の中心。
中央やや左の円形ドームがモスク。
モスクが人々の社交の中心になっていることが解る。 -
行きの乗り合い自家用車を降りた所のチャイハネの隣にモスクの周辺には、お祈り時だったのか
さっきより人が多かった。とりあえず、帰りの足を確保するため、チャイをすすりつつ乗り合いバスの時間を
聞いてみる。夜まで来ない。そうですか。早めにヴァンに戻って、ヴァン城見学にシフトするプランは早々にあきらめ、
地元の人にクルド語を習ったり、バックギャモンをしたりして過ごしていると、ジャンダルマのパトカーが大通りに停車した。
地元の人の表情が少し固くなったのは、気のせいではないだろう。
僕は「ホシャップ城の内部探索」にまだ未練を捨て切れていなかったので、思い切って本当に「ジャンダルマに聞いて」みることにした。
パトカーから降りた2人の若い軍人に歩み寄り「メルハバ。エクスキューズミー。」と話しかけると。
後部座席からおりて来た上官っぽい人が、「Can I help you sir?」と力強い調子で答えた。その軍人らしい姿勢と体躯はドルフラングレンだ。
「ホシャップ城にはいつ入れますか?」「入れません sir。城は今修理工事中です。sir。」言葉は丁寧だったが、眼は笑っていない。
もちろんドルフラングレンを前にして、食い下がる勇気は持ち合わせてはいない。「わかりました。ありがとう。」と彼の対応に礼をのべた僕に「残念ですが。よいご旅行をsir。」と意外ににも優しい声をかけ、ドルフラングレンは車に戻った。
僕も再びチャイハネに戻り「ダメだったよ。」と伝えると、「次は入れる!また来い!」と数杯目のチャイが置かれた。
「クルドの城なのにな」クルド語かトルコ語か解らないが、チャイハネの客達は口々にそんなことを言っていたと思う、
僕は人々とジャンダルマの間にある壁をはっきり感じたし、往路の車から見た鉄条網によって厳重警備をされたジャンダルマの基地はその象徴のように感じられた。クルドの村の昼下がりを堪能した後、ヴァンに行くという客の車に同乗させてもらうことになり、乗り合いバスを待つことなくヴァンに戻る。初夏にさしかかるこの地方の景色は最高だ。湿度の無い爽やかな風。晴れ渡る空に緑濃い草原、見渡す限りが穏やかな大自然だ。
風渡る緑の大草原を遠慮がちに貫くアスファルト。その先に突如現れる検問の武装した兵士。
瑞々しい自然に抱かれても、僕たちは争いをやめない。
ホシャップ城は遺跡といえど、城塞だ。城が一般に開かれるということは、彼らの関係が改善したということになるだろう。
ホシャップ城までの道のりは未だ途中なのだ。僕はそんなことを考えていた。大げさかもしれないが。 -
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白熱するバトル。かなりの注目を集めていたので。タイトルマッチと思われる。
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「!」
勝負がつく。ルールが解らないため、盤上のドラマよりリアクションに夢中でした。。。 -
中央の人物が、ヴァンまで送ってくれたおじさん。
これから乗せてもらうというのに、ずいぶんと偉そうな自分ですが。
ごめんなさい。。。 -
翌日はヴァン城を訪れた。ヴァン城は、ヴァン市街地の郊外のヴァン湖の畔に位置する山城だ。
前述のホシャップ城に比べると風化が激しく、基礎部分しか残されていない。とはいえ、城の上から眺める湖は美しく、足場の悪い通路を踏破する価値は十分にあるだろう。湖の逆サイドにあるヴァンの街を一望できるし、その先にある雪解けを待つエイジス山がなんとも凛々しい。
遺跡ファンにはたまらないが、お城マニアには物足りない。そんな場所である。 -
ヴァン城への登り口。
国内旅行のトルコ人観光客がチラホラ。
マイナーである。 -
所々足下が危うい箇所があるので、スニーカーでの観光をオススメ。
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頂上付近からの、ヴァンの街。
背後に聳えるのはエイジス山。 -
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清々しいヴァンの湖
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ヴァンの街も、散策にはちょうどいい規模だ。
レストランのウェイターにかまってもらい、この街の若者事情を教えてもらう。まとめると、店のオーナーはほとんどがトルコ人で、
労働者はクルド人なんだそうだ。僕が夕食に選んだこの店もその一つだった。店で働く若者に不満気な様子は無かったが、
クルドの街であるこのヴァンに、トルコ人の資本家が幅を利かせていることに、不思議な感触を覚えた。こういうことなのかもしれない。
ヴァンの町はオドアイ(左右の瞳の色が異なる)の猫の産地として有名らしい。
ローカルのバス会社のマスコットも、もちろんである。 -
ヴァンの町を堪能した次の日、ホテル近くのどローカルハマムで今夜の夜行列車に備えた後、町外れにあるヴァン駅へむかった。
ヴァンから列車で国境を越え、イランの首都テヘランに向かうプランだ。
トルコの町の多くで鉄道駅は町の外れに配置されているため、トルコの人々にとってもトルコ国内の移動手段として、すこぶる評判が悪い。
そして、多くのトルコ国民からの評判をさらに下げているもう一つの理由を、僕は今夜、身をもって知ることになる。
ロゴは最高にかっこいいのだが。。。
「火曜日18時34分発 テヘラン行」という事前情報を元に、駅についたのが夕方5時頃だったが、チケットを取ってみれば夜10時20分発だった。同日中に列車に乗れるだけありがたいと考え、駅周辺のチャイハネでも探そうと思ったが、笑えるぐらいに何もない。
夕方の駅前広場は、文字通り「広い場所」で、サッカーの練習をしている子供達が牧歌的な景色を繰り広げてくれているだけだったのだ。
旅行者に興味津々の地元キッズ達の案内のおかげで、徒歩10分ほどの場所にちいさな商店を発見。軽食等を買い求め、列車が来るまでの長期戦に備えた。 -
僕が旅行にロマンを、特に列車での移動に限りないロマンを感じるのは、幼少期のころに読んだ「銀河鉄道999」の影響がある。
主人公である鉄郎は序盤、長い旅に耐えられるかを試される。旅人が直面する最大の苦難、それは「退屈」という名の強敵である。
「退屈」を克服できるものが真の旅人になれる。
僕はそれを思い出し、この思想を実感した。「退屈」を感じる時、それが旅人としての終わりなのである。
僕は、この駅での待ち時間を楽しむことに決めた。
年季の入った貨物車両を見学したり、地元キッズと空手ごっこをしたりして遊んでいるうちに日が暮れ始める。
日の高いうちは良かったが、辺りが暗くなるに従ってやることがなくなってくる。相手をしてくれた子供達も夕飯時には家に帰り、
ガランとしたヴァンの駅には、同じく電車を待ってそうな旅行者が二人ほど。駅舎には駅員の姿も無く、いよいよ寂しくなってくる。 -
来ないのである。。。
ガイドブックを読んだりしているうちに時間は10時半になるが、列車は来る気配が無い。。
ベンチに座り込み昼寝を決め込んでいると意外にも静々と、申し訳なさそうに長い車列を組んだ夜行列車がやってくる。
列車の到着と共に、喜び勇み足で荷物を持って向かうと、いつの間にか現れた駅員に止められる。
どうやら、これから切り離し作業と車内清掃を行うらしい。この列車はたった今イランから到着し、前部はヴァンの湖をフェリーで渡った後、一路イスタンブールへ、後部が折り返しでイランへ再び向かうのである。
ようやく乗車のお許しが出た頃には日付が変わっていた。
乗り込むと、どうも昨年乗ったTCDDの夜行列車とは勝手が違う。スタッフの案内も無ければ、車内も雑然としている。
この辺はイラン国鉄との共同運行だからか、いや、車体や車内の番号表示は本式のアラブ数字である。
これはどうやらイラン国鉄の運行車両であるらしい。
ドイツ人旅行者、日本人旅行者がもう一人、そして里帰りっぽいイラン人との4人での相部屋だったのだが、
のりこんでしばらくしてようやく列車が動き出すと、4人で拍手をしていた。旅客機の着陸か。
真夜中のヴァンの駅をスルスルと、列車はイランを目指しようやく走り出したのだ。
約4時間遅れで。結局、僕はヴァンの駅で9時間を過ごしたのだった。ちょっとした駅員である。
トルコ国鉄の内外からの評判を貶めているのは、この「遅れ」である。急ぐ旅ではないからという余裕もあるが、
メーテルがいなくても僕は列車の旅がたまらなく好きだ。まるで宇宙空間のような漆黒の闇の中を列車が突き進む。
相部屋の日本人の愚痴に適当に相づちを打ちながら、気分が高まっていくのを感じていた。
イランへ。
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