2007/07/21 - 2007/07/21
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フーテンの若さんさん
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ハルカダでちょっと後悔した紅海のスノケーリング。場所を移してダハブまでせっかく来たのだからと思い、気を取り直して再チャレンジしてみることにした。
正直あまり期待していなかったのだが、宿の目の前のビーチですらスンゴイ綺麗!ハルカダよりも海の透明度が高い上、遥かに魚の種類が多く、珊瑚もカラフルで迫力があった。
サーファーである僕は、今まで海の上の波にしか興味がなかった。しかし、このダハブの魚と珊瑚は、「うーん、海の中の世界もなかなかいやいやスゴイじゃない」と考えを改めさせるに充分足るものであった。
小船の影に隠れた生まれて間もない稚魚の大群たち、豪華な戦艦のような鎧を着飾ったカサゴ、修学旅行生みたいに群れで泳ぐハナダイたち、派手なキャバ嬢の化粧を想像させるチョウチョウウオ、海底で不気味にトグロを巻いている海蛇、高校時代の友人そっくりの惚けた顔のテッポウウオ。個性溢れた魚たちを見つけ、その行動を観察することがこんなに楽しいことだったなんて!
竜宮城とは正にこんな世界なのかもしれないなあ。
※
かつて僕も魚に大いに興味を持ったことがある。
それは社会人生活1年目のとき。彼女がいなくて悩んでいたところ、会社の先輩からあるアドバイスを受けた。
「おい、若。オマエ彼女が欲しいだったらな。まずオマエが住んでいる部屋からなんとかせえよ。どうせオマエのことだから、掃除もしてなくて、気取ったインテリアが一つもない殺風景なワンルーム部屋やろ」
その先輩はいつも上から目線でモノを言うやたらエバッタ人で、僕はあまり好きではなかった。だから、なるだけ接点を持たず、疎遠にしていたはずなのに、僕に彼女がいないことを誰から聞いたのだろう。しかも、その先輩が言うように僕の部屋は壊滅的なほどに汚く、彼女ができても呼べるような部屋でないことまで見事に言い当てられていた。
「はあ、まあそのとおりなんすけどー」
僕が気のない返事をしているにも係わらず、仕事が終わって暇なのか、その先輩は更に雄弁になってアドバイスを続けた。
「ええか、まず女性にモテルためには演出が大事なんや。女性はどういうものが好きか考えてみぃ。オエマ、たぶん部屋にガンダムのプラモとか、ゲームとかマンガとかオタクなものばかり置いてるやろ。そんな部屋に女性が入りたいと思うか?そりゃ、思うわけないわなー」
プラモとかゲームが部屋に散らばっていることまで全て当たっている。話の内容も確かに正論っぽい。「ほな、どうしたらいいんですか?」と質問すると、先輩は待ってましたとばかりにこう答えた。
「そりゃな、今は熱帯魚やで。これで女は乗ってくんねん」
その先輩曰く、「俺ぇ、熱帯魚が趣味やねんか〜。水槽の中を静かに泳ぐネオンテトラの群れ。電気を消すとまるでほんまにネオンが灯っているように見えんねん。そんな幻想的な姿見たことあるけ?ほんっとに小さな俺だけの水族館やねんけど、君にだけ今日だけ入場券渡すから見にけぇーへんか」という文句で大概の女性は部屋に招けるのだという。
アホらしい。単なる口説き文句のためだけに熱帯魚を買うなんて馬鹿げている。先輩の話をなるほどわかった振りをして、とっととその場を離れた。
しかし、その週の日曜日、僕は近所の熱帯魚屋でどの水槽を買うか迷っていた。先輩の話を真に受けた訳ではない。僕は突然、魚が買いたくなっただけなのだ。仕事帰りに一人暮らしの部屋に帰っても寂しいだけだし、魚を見れば心が癒されるだろう。と自分に言い聞かせながら、僕は水槽と熱帯魚を持ちきれんばかりに買ったのだった。
ところが僕は大きな失敗を犯してしまった。当時の僕の部屋は6畳のワンルーム部屋だったのに、間取りをまったく考えず、1mもある大型水槽を買ってしまったのだ。テレビよりもさらに二周りもデカく目立つ水槽。さらにテトラだけ買わないといけないはずが、ヒゲの生えた愛嬌のある魚や縞々模様の格好いい魚、体がスケルトンでグロテスクな魚など様々な種類の魚をつい出来心で買い揃えてしまったのだった。
飼い始めてわかったのは、ポンプの音がうるさいのとライトが明るすぎて眠れないということだった。水槽の中はごった似のようで、群れを成すどころか、縄張り争いをしている。特にネオンたちは縞々の魚にいつも追いかけられていた。どうやらこの縞々魚たちは凶暴で、大人しいネオンと相性が悪かったようだ。会社から帰って餌をあげる度に、ネオンの数が減っているような気がする。
大型水槽であるため、簡単に水を換えることができないということも大きな問題だった。ベランダに水を捨てようとも、水槽が重くて持ち上がらない。小分けして、水を入れ替える作業のために休日のほとんどの時間が奪われてしまった。やがてその作業は億劫になり、水を替えることをしなくなったのは、購入してからまだ3ヶ月も経たない頃であった。
会社の友人と呑みに行き、友人の終電がなくなったため、僕の部屋に彼が泊まりにきたことがあった。ドアを開けるなり彼は一言、「この部屋、なんだか異臭がするよね?」。僕の部屋に入って彼はさらに驚いた。「そのテレビの横にある藻の化け物はいったいなに???」
水槽は、めっきり汚れて藻だらけになり、ネオンたちはいつの間にか絶滅し、やたらと元気な縞々模様魚だけが一応は生きている状態に変わっていたのだった。掃除もろくにしていないため、水槽のろ過がうまくいっておらず、ものすごい腐敗臭を放っていた。
「若ちゃん。こんなん置いていたら絶対に彼女できないよ。不気味すぎるよ!よくこんな部屋で暮らせるね」
こう友人に言われたその週の日曜日。僕は近所のクリーニング屋に熱帯魚をお分けしますと言って、半ば強引に縞々の魚を置いてきた(そのお店にはいつも小さな水槽が置いてあった)。数日後にそのクリーニング屋のおばちゃんから「前から飼っていた魚が全部食べられた」というクレームを言われてから、そのお店には二度と行けなくなってしまったのだけど。ただその水槽に僕の魚を放したとき、魚たちは開放感に溢れ、とても元気に泳いでいたことだけはやたら鮮明に覚えている。
※
玉手箱を空けた様にあっという間にあれから10年以上が過ぎ、海の上の波に乗ることを覚えてからは、めっきり魚のことなど考えもしなかった。もう僕はスノーケリングをすることはあっても、魚を飼う事は二度とないだろう。竜宮城は、水槽などで作らずとも、自然の海の中何処にでも在るのだなあということをダハブの海を見て学んだからだ。
ちなみに熱帯魚を飼っていた数ヶ月間、家に女の子を呼ぶどころか、ずっと彼女がいないままであった。うまい作り方だけは未だによくわからない。
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