
2007/06/16 - 2007/06/16
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フーテンの若さんさん
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そのとき、僕はアムステルダム中央駅からすぐのダムラーク通りを歩いていた。
この通りは、レストランやデパートや土産物屋が所狭しと立ち並ぶ、おそらくアムステルダムいちのメインストリートで、週末ということもあってか、道に群がるように観光客たちが騒ぎ、ワイワイと賑わっていた。僕はコンビニで買い物をした帰りで、左手には水のペットボトルとバナナを抱え、右手には先ほどから急に振りだした小雨を遮るため、傘を握っていた。
時計の針は20時過ぎをさしていた。せっかくのアムステルダムの夜だが、あいにくの雨なので、ホステルに戻ってさっさと寝てしまおうか、それとも少しだけ遊んでみるか、などとこれからの行動について思案中のところであった。
ふと、後ろにいる男が気になった。さっきから何かおかしい。等間隔でずっと後をつけられているような。中南米での旅の経験から、こういうときはやり過ごすのが得策だとわかっている。そこで、相手を先へ行かすため、一瞬立ち止まったのだった。
その瞬間、男の手がものすごい速さで僕の右ポケット目掛けて伸びてきた。そこにはデジタルカメラが入っている。僕はすかさず闘牛士のように身をかわす。
「おりゃ、オメエなにしとんじゃ!!」
日本語で男に怒鳴りつけた。
男は小柄で、南米人のインディヘナのように浅黒い顔をしていた。僕が怒鳴ったので、少しはひるんだ様子だが、まだ諦めていないようだ。その証拠に、僕に向かって鋭い眼光で睨み続けている。それは、野獣のようにギラギラしていて、獲物を渇望している目だった。間違いなくプロのスリに違いない。
やむなく僕は「やんのか!こらぁぁ〜!」と更に大声をあげ、傘を頬リ投げて、右手に拳を作って相手を威嚇した。それでやっと男は逃げるように立ち去っていった。周りの数人は何事かと立ち止まったものの、他の大勢は一連の事件を気にも留めてもいない様子だった。
しかし、男の犯行はこれだけでは終わらなかった。
僕が泊まっていたホステルは、襲われた場所から数分の飾り窓地区の側にあった。そこはお世辞にも治安がいい感じではなく、一本奥へ入れば、薄暗く、どんな事件が起きていてもおかしくない場所だった。
男は僕のことを執拗に追っていたようだ。僕はかなり注意していたにも関わらず、二度目の尾行にはまったく気が付かないでいた。
人通りのない橋の上で、男は一気に襲ってきた。突然のことで僕はさっきのようにかわし切れない。男の右手が、僕の後ろポケットにスルッと入った。幸い後ろポケットには、ガイドブックしか入れていないのだが、お札が入っているものと男は勘違いしているようだった。
「おりゃ、てめぇ、またか!」
今度は叫んでも、男は逃げなかった。周りに人がいないので、男も開き直っているようだ。それどころか、「マネー!!!!」と言い返してきた。
僕は、ポケットに入った男の腕を捕まえ、思いっきり捻り上げてやった。左手に抱えていた荷物を放り出し、強烈な左ストレートをお見舞いしてやる。僕のパンチは男の顎を完全に捉え、男は立ってはいられない・・・はずだった。
実際、僕のパンチはむなしく空を切っていた。
イメージと違って、パンチはあまりにも遅く、簡単に交わされていたのだった。パンチがダメならと、右足で男の股間を狙い、前蹴りをした。これは交わすどころか、射程距離にも入っておらず、またまた空を切っていた。
ま、まずい。最近の運動不足が祟って、まったく体が動いていない。僕のヘタレなパンチとキックを見て、男はますます調子付いてくるに違いない。案の定、パンチで身を引いた男が、また徐々に近づいてきた。相変わらず鋭い眼光を放っていて、先ほどよりも余裕を感じさせる。
どうする、どうする?
「おらぁぁぁぁっ。こら〜、どりゃ〜。やんのか!」
とりあえず、今まで出したこともない大声で怒鳴りあげた。
「絶対に殺すぞ!それでもやんのか?掛かって来い!!ユー・ノー・空手ぇ〜!!!!」
といって、両腕を振り回し、空手のポーズをとった。そして、落とした傘を拾い上げ、振り回し、フェンシングのポーズもとってみた。完全にやけっぱちである。そして僕のなかで一番怖いと思われる形相をして、相手を睨み付けた。
男は僕のポーズや顔よりも、奇声に驚いたようだった。誰かが聞きつけて、駆け寄ってくるのを心配したのかもしれない。今思えば、「泥棒!」と英語で叫べばよかったが、このときは興奮していて、「泥棒」という英単語がうまく出てこなかった。
男は後ずさりして、名残りそうに去っていった。去ってしばらくも、僕は奇声を発して続けていた。
「おら、ほんとに殺したるからな。絶対やぞ!!もう来んなよぉ!!」
男の姿が見えなくなったのを確認すると、僕は落とした荷物を拾い上げ、周れ右をして、ホステルに向かって走った。走りながら、少し足がガクガク震えているのがわかった。
橋を渡り切って、後ろを振り向くと、あの男が追って来るのが目に入った。
しつこいやっちゃ。次に捕まったら、間違いなく殴り合いになる。勝てるだろうか。上背は同じくらいだが、腕周りは僕の倍くらいあった。こりゃ分が悪い。奴は何か武器を持っているとも考えられる。そう考え、追いつかれぬよう、雨の中を全速力で逃げた。
ようやくホステルの入口に辿り着いたとき、男との距離はあと5メートルのところまで縮まっていた。
僕は、ほっと安心して「かかって来いや」のポーズで挑発した。男も負けじとカモンと両腕を挙げている。男の目は未だに鋭く、いつでも本気で襲ってやるぞと言っているようだった。
本当に来そうだったので、慌ててホステルの中へ一旦入ると、男は警察を呼ばれると思ったのか、やっと諦めて去っていった。
ポケットを確認したところ盗られたものは何もなさそうだ。とにかく厄介な武道派スリだった。次にあの男に会うまでに、何か対策を考えておかねば。かめはめ派のポーズの練習でもしておこうか。それとも奇声に拍車をかける練習のほうが有効なのか。
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街中を走る自転車が多いこと、多いこと。自転車専用道路をスイスイ走っていく姿は見ていて、とってもカッコイイ。老若男女が色んな形の自転車に乗っていて、サイクリングタイプ、ベビーカー付き、サイドカー付き、横向きに漕ぐタイプのもあれば、バイクのアメリカンタイプのように車高が低いものもありと、バラエティーに富んでいる。六本木にあるサイクリング・タクシーもたくさんあった。
当然のように、警察はマウンテンバイクでパトロールをしていたし。狭い路地と橋が多いアムステルダムでは、自転車は生活の足として欠かせないものなのだろう。 -
飾り窓地区(売春エリア)は、大阪の飛田新地と、東京の歌舞伎町と、長崎の川沿いの町を足して割ったような感じだった。週末ともなれば、観光客で川べりの道は溢れんばかりとなる。飾り窓の女性たちの人種は、東欧系、アジア系、黒人系と様々であった。また純粋な売春だけでなく、SEXライブショー、DVDショップ、SEXグッズ、覗き見の店、SMクラブ等があり、色々な角度から性を楽しむお店たちで賑わっていた。これら全て合法なのだから、大っぴらにやって何の問題もないでしょてな訳だ。
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マリファナはもっとバラエティーに富んでいる。この国では合法で、コーヒーショップというお店に入れば、問題なく吸うことができる。色々な種類があるのだが、どう違うのか僕にはよくわからなかった。街中にドラッグの専門ショップもあって、そこにはマジックマッシュルームや幻覚サボテン、カプセル系など古今東西のあらゆるドラッグの品揃えがあった。面白かったのは花市に行くと、マリファナ・スターター・キットとして、種のセットが缶入りで販売されているのだった。果たしてこれはお土産として、日本へ持ち帰っても問題ないのだろうか。
一つ困ったことがあった。泊まっている宿の宿泊者ほとんどが四六時中、マリファナを吸っていることだった。24時間部屋が煙たく、キメている人間が騒ぐものだから、おちおち寝ることができやしない。だから、ずっと睡眠不足で悩まされていた。 -
ある日の朝、そんなアムステルダムの喧騒から離れたく、ザーンセ・スカンスという風車で有名な村にやって来た。
アムステルダムから、列車でたった15分の距離に関わらず、そこは嘘のような静けさだった。昔ながらの民家やチーズ工場などがあって、観光地だけど素朴な村だった。橋から見えるたくさんの風車は、形と色が全て異なっており、目的もそれぞれに違うのだという。チーズ工場にある数多くのチーズの種類、お土産屋にある目に余るほどの木靴の種類しかり。なるほど、オランダという国は、バラエティー豊かに取り揃えるのが何でも好きなのだ。
それにしても、人間の欲望を剥き出しにしたアムステルダムの街と、ザーンセ・スカンスのようなほのぼのとした牧歌的な村が同じ国に存在するだなんて。これも数多く持っているバラエティーの一つなのだろうか。
オランダという国は、ほんとうに奥が深いなぁ。
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この旅行記へのコメント (1)
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- noda-pinpangoさん 2010/10/30 20:15:20
- 怖いもんですね。
- ドイツの方はあぐれっしぶですね。
何度も追いかけてくるとは。。
周りの人も助けないんですね…
私もパリの地下鉄で子供のスリに遭遇しました。
無被害でしたが、女の子の目が怖かった。
道徳教育がなっていないような気がします。
しかしニースでは偽警官に250ユーロ騙し取られました。
フランスの将来など思うと心配です。
ふだん万引きとかやっているんだろうなとは思いますし。
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