リヴィウ旅行記(ブログ) 一覧に戻る
【ウクライナ人コーシュチャ】その3<br />なみなみとグラス一杯に注がれたヴォッカの無色透明の水面が列車に揺られながら目の前のテーブルに置かれている。既にショット1杯分のヴォッカを一気飲みし空腹も相まって酔っ払いはじめている私は、私が揺れているのかヴォッカが揺れているのか、もう分からなくなりはじめていた。<br />視線を正面に向けると、ヴォッカの透明さとは対照的な赤ら顔のオヤジがニコニコしながら、乾杯しよう!と私の肩を叩く。私は奢られた手前、断ることも出来ず、苦笑いをしながら止む無くグラスを手にしてオヤジと乾杯!さすがにグラス一杯のヴォトカを一気飲みすることが出来ず3分の1程飲んで、すぐにチョコバーをかじる。焼け付く喉が甘さで癒される。オヤジの方はというと、ヴォッカが自分自身の燃料であるかのごとく、どんどん元気になっていく。『全くウクライナ人(ロシア人?)は皆こんなに酒豪なのか?』と私はその凄さに舌を巻きつつ、「ハラショー!ハラショー!」などと意味の分からないロシア語を言っていると、今までロシア語だけで勝手に話し続けていたオヤジが突然「telephone!」と言い出した。私は初めてオヤジから発せられた「telephone」という英語に驚きつつ、その言葉から想像するに、電話番号を交換しようと言っているのだと察したのであった。オヤジは「telephone」を取ってくるから、ちょっと待ってろ!」と言って、フラつきながら自分の車両に向かっていった。一時的に開放された私はちょっとホッとしつつ、取り合えず一人でここにいてもしようがないので、隣の自分の車両に戻り、酔っ払っている私は勢い込んで、同室のオバサンと男2人に事の顛末を知っている限りのロシア語と身振り手振りで話したら、みんな笑って喜び、さっきまでのシ〜ンとした室内に笑い声が広がり急に場が和んだ気がした。そうこうしていると、休憩室から人の話し声が聞こえてくる。私は親父が戻ってきたものと思い急いで戻ると、オッと!オヤジではなくカップルとおぼしき若い男女だった。私は自分のヴォッカの置いてある席に戻り、飲む振りをしながら隣の2人の様子をそれとなく観察していると、どうも喧嘩をしているようだ。女の子は押し黙り、男の方が懸命に女に話しをしており険悪な雰囲気が漂っている。私は素知らぬ顔をしながら、ちょっと楽しみつつその様子を眺めていると、バタバタと入口に音がした。見てみると赤鬼!!の登場である。ほとんど立つことさえも危うい泥酔状態の真赤な顔をしたオヤジがそこに立っていた。そして、手にしているものを見てさらにビックリ!『オイッ!電話じゃなくてカメラじゃねーか?一体、そのカメラで何を取るつもりなんだ!!』と一人思っていると、オヤジはそんな私の思いとは一切関係なく、カップルの方に向かって歩いていく。またまた私は『オイッ!オイッ!喧嘩の最中なんだから邪魔しない方がいいんじゃないの?』と思っていると、オヤジはカップルの男に向かって手を差し出し「俺は”コーシュチャ”だ!よろしく!」と言っている。<br />『”コーシュチャ”??あっ!!そうか!!あんたが”コーシュチャ”だったのか!なるほど。だからさっき、コーシュチャは好きか?と聞いてきたのか!』と一人、疑問が解決して喜んでいるのとは裏腹に、カップルの男の方はチラッとオヤジを見て酔っ払いと判断したのか、全く無視をして女に話続けている。オヤジの方はというと、相手にされないと分かったら今度はその手を女の方に向かって差し出す。女の方は、男との話にウンザリしたのか、ニコッと笑いながらコーシュチャと握手をした。男の方はちょっと嫌な顔をして女の腕をつかんで自分の方に向け直すと引き続き話はじめる。コーシュチャは握手をしてくれた事で気をよくしたのか、私の前の席に戻りヴォッカを喉に流し込んでから、私にカメラを見せ「写真を撮るぞ!」と言い出した。「えっ!しゃ、写真!ですか?」と私がたじろいでいるとコーシュチャは私の腕を引っ張ると同時に、カップルの女の子にむかってカメラを渡そうと「デーボシュカ!デーボシュカ!写真を撮ってくれ!」と大声で言いはじめる。私は『デーボシュカとは娘さんという意味だっけ!』などとどうでもいいことを考えていると、この状況にさすがに男も怒り出し、コーシュチャの差し出したカメラを振り払い、「オヤジ!うるさい!邪魔するな!」と言い出す始末。私は内心『ヤバイよな!』と思い、コーシュチャの手を引き戻そうとするが、コーシュチャはそれでも止めずに「デーボシュカ!デーボシュカ!撮ってくれ!・・・・デーボシュカ!デーボシュカ!」をひたすら大声で連呼してカメラを渡そうとする。男の方はそれに怒り心頭、あわや殴りかかりそうになりはじめた所で女の子が仲介に入り、男をなだめつつコーシュチャのカメラを受け取って「OK!撮りますよ!」と言う。男の方は止む無く殴るのを止めソッポを向き、コーシュチャはニッコリしながら私の肩に腕を回し、ジャージのチャックを勢いよく引き下ろし、真赤なTシャツに”ユシチェンコ万歳”と白文字で書かれた部分を胸を張って見せて、カメラでパチリ!!女の子はニッコリしながらカメラを返すと、すかさず男は女の子の腕をとってまた話し始める。私は冷や冷やしながらもやっと終わった事に胸を撫で下ろしているのも束の間、コーシュチャはまたもや「デーボシュカ!デーボシュカ!もう1枚写真を撮ってくれ!デーボシュカ!デーボシュカ!・・・」<br />この状況がこの後2回続く事になる。。。コーシュチャが殴られずに済んだのはまさに奇跡なのだが、そんな困った状態で冷や冷やして疲労困憊している私に天の声が聞こえたのは夜中の12時を過ぎた頃であった。同室のオバサンが現れ、「みんな寝るのでドアを閉めるから、あなたも部屋に戻りなさい。」と言ってくれたのだった。先ほど部屋で話を聞いて、酔っ払いに絡まれて困っている私を可哀想だと思って迎えに来てくれたのだ。何とありがたい事だろう。感謝感激雨あられ!!私は天の声に2つ返事でうなづき、そそくさとコーシュチャとカップルにサヨナラを告げて部屋に戻ったのであった。別れ際にコーシュチャと握手をした際、若干名残り惜しそうな顔をしているコーシュチャを見ていると、この私は余程物珍しい珍客だったのであろう。そうは言っても結局、グラス一杯のヴォッカも全て飲み切り酔っ払っていた私は既に限界にきていた。部屋に戻って2段ベットの上段に必死で登り、倒れるようにして横になったのであったが、頭がグラグラしている上に列車は揺れるし2段ベットで不安定だしで暫く眠る事が出来ずにいたのだが、常夜灯の点った薄暗いシーンとした部屋で窓から見える月夜の車窓を眺め、列車のガタンゴトン!ガタンゴトン!という一定のリズムを聞いていると次第に意識が遠くなっていく。その薄れていく脳裏にコーシュチャの「デーボシュカ!デーボシュカ!・・・」の声がいつまでも反響しつつ眠りに落ちるのでありました。そしてそんな事とは全く関係なく、夜汽車は月夜の幻想的な大ロシア雪原を淡々と真っ直ぐに走り続けて、夜は深々と更けていく。<br /><br />写真はサモワールの裏側の石炭をくべる炉です。<br />

初めてのヨーロッパ【ウクライナ・リヴィウ編】その2

1いいね!

2006/02/27 - 2006/02/28

104位(同エリア105件中)

0

0

hinotami

hinotamiさん

【ウクライナ人コーシュチャ】その3
なみなみとグラス一杯に注がれたヴォッカの無色透明の水面が列車に揺られながら目の前のテーブルに置かれている。既にショット1杯分のヴォッカを一気飲みし空腹も相まって酔っ払いはじめている私は、私が揺れているのかヴォッカが揺れているのか、もう分からなくなりはじめていた。
視線を正面に向けると、ヴォッカの透明さとは対照的な赤ら顔のオヤジがニコニコしながら、乾杯しよう!と私の肩を叩く。私は奢られた手前、断ることも出来ず、苦笑いをしながら止む無くグラスを手にしてオヤジと乾杯!さすがにグラス一杯のヴォトカを一気飲みすることが出来ず3分の1程飲んで、すぐにチョコバーをかじる。焼け付く喉が甘さで癒される。オヤジの方はというと、ヴォッカが自分自身の燃料であるかのごとく、どんどん元気になっていく。『全くウクライナ人(ロシア人?)は皆こんなに酒豪なのか?』と私はその凄さに舌を巻きつつ、「ハラショー!ハラショー!」などと意味の分からないロシア語を言っていると、今までロシア語だけで勝手に話し続けていたオヤジが突然「telephone!」と言い出した。私は初めてオヤジから発せられた「telephone」という英語に驚きつつ、その言葉から想像するに、電話番号を交換しようと言っているのだと察したのであった。オヤジは「telephone」を取ってくるから、ちょっと待ってろ!」と言って、フラつきながら自分の車両に向かっていった。一時的に開放された私はちょっとホッとしつつ、取り合えず一人でここにいてもしようがないので、隣の自分の車両に戻り、酔っ払っている私は勢い込んで、同室のオバサンと男2人に事の顛末を知っている限りのロシア語と身振り手振りで話したら、みんな笑って喜び、さっきまでのシ〜ンとした室内に笑い声が広がり急に場が和んだ気がした。そうこうしていると、休憩室から人の話し声が聞こえてくる。私は親父が戻ってきたものと思い急いで戻ると、オッと!オヤジではなくカップルとおぼしき若い男女だった。私は自分のヴォッカの置いてある席に戻り、飲む振りをしながら隣の2人の様子をそれとなく観察していると、どうも喧嘩をしているようだ。女の子は押し黙り、男の方が懸命に女に話しをしており険悪な雰囲気が漂っている。私は素知らぬ顔をしながら、ちょっと楽しみつつその様子を眺めていると、バタバタと入口に音がした。見てみると赤鬼!!の登場である。ほとんど立つことさえも危うい泥酔状態の真赤な顔をしたオヤジがそこに立っていた。そして、手にしているものを見てさらにビックリ!『オイッ!電話じゃなくてカメラじゃねーか?一体、そのカメラで何を取るつもりなんだ!!』と一人思っていると、オヤジはそんな私の思いとは一切関係なく、カップルの方に向かって歩いていく。またまた私は『オイッ!オイッ!喧嘩の最中なんだから邪魔しない方がいいんじゃないの?』と思っていると、オヤジはカップルの男に向かって手を差し出し「俺は”コーシュチャ”だ!よろしく!」と言っている。
『”コーシュチャ”??あっ!!そうか!!あんたが”コーシュチャ”だったのか!なるほど。だからさっき、コーシュチャは好きか?と聞いてきたのか!』と一人、疑問が解決して喜んでいるのとは裏腹に、カップルの男の方はチラッとオヤジを見て酔っ払いと判断したのか、全く無視をして女に話続けている。オヤジの方はというと、相手にされないと分かったら今度はその手を女の方に向かって差し出す。女の方は、男との話にウンザリしたのか、ニコッと笑いながらコーシュチャと握手をした。男の方はちょっと嫌な顔をして女の腕をつかんで自分の方に向け直すと引き続き話はじめる。コーシュチャは握手をしてくれた事で気をよくしたのか、私の前の席に戻りヴォッカを喉に流し込んでから、私にカメラを見せ「写真を撮るぞ!」と言い出した。「えっ!しゃ、写真!ですか?」と私がたじろいでいるとコーシュチャは私の腕を引っ張ると同時に、カップルの女の子にむかってカメラを渡そうと「デーボシュカ!デーボシュカ!写真を撮ってくれ!」と大声で言いはじめる。私は『デーボシュカとは娘さんという意味だっけ!』などとどうでもいいことを考えていると、この状況にさすがに男も怒り出し、コーシュチャの差し出したカメラを振り払い、「オヤジ!うるさい!邪魔するな!」と言い出す始末。私は内心『ヤバイよな!』と思い、コーシュチャの手を引き戻そうとするが、コーシュチャはそれでも止めずに「デーボシュカ!デーボシュカ!撮ってくれ!・・・・デーボシュカ!デーボシュカ!」をひたすら大声で連呼してカメラを渡そうとする。男の方はそれに怒り心頭、あわや殴りかかりそうになりはじめた所で女の子が仲介に入り、男をなだめつつコーシュチャのカメラを受け取って「OK!撮りますよ!」と言う。男の方は止む無く殴るのを止めソッポを向き、コーシュチャはニッコリしながら私の肩に腕を回し、ジャージのチャックを勢いよく引き下ろし、真赤なTシャツに”ユシチェンコ万歳”と白文字で書かれた部分を胸を張って見せて、カメラでパチリ!!女の子はニッコリしながらカメラを返すと、すかさず男は女の子の腕をとってまた話し始める。私は冷や冷やしながらもやっと終わった事に胸を撫で下ろしているのも束の間、コーシュチャはまたもや「デーボシュカ!デーボシュカ!もう1枚写真を撮ってくれ!デーボシュカ!デーボシュカ!・・・」
この状況がこの後2回続く事になる。。。コーシュチャが殴られずに済んだのはまさに奇跡なのだが、そんな困った状態で冷や冷やして疲労困憊している私に天の声が聞こえたのは夜中の12時を過ぎた頃であった。同室のオバサンが現れ、「みんな寝るのでドアを閉めるから、あなたも部屋に戻りなさい。」と言ってくれたのだった。先ほど部屋で話を聞いて、酔っ払いに絡まれて困っている私を可哀想だと思って迎えに来てくれたのだ。何とありがたい事だろう。感謝感激雨あられ!!私は天の声に2つ返事でうなづき、そそくさとコーシュチャとカップルにサヨナラを告げて部屋に戻ったのであった。別れ際にコーシュチャと握手をした際、若干名残り惜しそうな顔をしているコーシュチャを見ていると、この私は余程物珍しい珍客だったのであろう。そうは言っても結局、グラス一杯のヴォッカも全て飲み切り酔っ払っていた私は既に限界にきていた。部屋に戻って2段ベットの上段に必死で登り、倒れるようにして横になったのであったが、頭がグラグラしている上に列車は揺れるし2段ベットで不安定だしで暫く眠る事が出来ずにいたのだが、常夜灯の点った薄暗いシーンとした部屋で窓から見える月夜の車窓を眺め、列車のガタンゴトン!ガタンゴトン!という一定のリズムを聞いていると次第に意識が遠くなっていく。その薄れていく脳裏にコーシュチャの「デーボシュカ!デーボシュカ!・・・」の声がいつまでも反響しつつ眠りに落ちるのでありました。そしてそんな事とは全く関係なく、夜汽車は月夜の幻想的な大ロシア雪原を淡々と真っ直ぐに走り続けて、夜は深々と更けていく。

写真はサモワールの裏側の石炭をくべる炉です。

交通手段
鉄道

PR

この旅行記のタグ

1いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

ウクライナで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
ウクライナ最安 468円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

ウクライナの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

PAGE TOP