2004/03 - 2004/03
16位(同エリア21件中)
漣さん
錆だらけの怪物。時代に取り残された製鉄所。国の外れにあり訪れる人も余り無く、時代の寵児としてドイツの工業化に貢献したかつての威光は最早見る影も無い。
しかしながら、この建物が現代も生き続けるのは一体何故なのか。寒風の吹き付ける冬の最中に訪れてみた。もちろん内部見学が唯一可能なガイドツアーは休止中。
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ドイツ帝国の成立。宰相ビスマルクの指導の下、急進的な工業化政策が推し進められた。ケルンの技師ユリウス=ブッフはこの地に製鉄所を建て鋼鉄資材の生産に乗り出したが、この地で取れるのは低質な燐鉱石が多く、軌道に乗る事が無かった。
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当時画期的な発明とされていた鋼鉄生産用のベッセマー転炉は欧州の大部分で産出される燐鉱石には使用が難しく、アメリカに一足後れを取ってしまっていた。
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そんな時に開発されたヒット商品、トーマス転炉。塩基性の耐火煉瓦使用の炉壁により燐との化学反応を起こす事無く鋼鉄の生産が可能となり、世界中で使用が広まった。
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この画期的商品を搭載した一大製鉄所としてフェルクリンゲンをリニューアルした実業家カール=レヒリング。既存品とは比べ物にならないスピードで生産されまくる鉄鋼材。
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1882年に最初の高炉が建てられてから1903年までに5基の高炉、合計6基が建てられ、1900年には高炉への巨大送風機を備えた送風棟が建設された。
フェルクリンゲンにおいてこの高炉に関係する幾つもの発明が成された。選鉱棟と高炉を結ぶゴンドラ式トロッコ、高炉で発生したガスを送風機の燃料として転用する為の乾式ガス精錬装置、粉末状の鉄鉱石を燃料と共に加熱してから高炉へ送る連続焼結設備。
内部見学不可能だからこれらを目にする術も無い・・・。 -
これら数多くの画期的技術を生み出し20世紀の鉄鋼業をリードしてきた産業化時代の大聖堂、フェルクリンゲン製鉄所は以下の基準で世界遺産に登録されている。
()フェルクリンゲン製鉄所で幾つもの銑鉄の生産の重要な技術的革新が発展し、工業規模での初の採用が成功したと共に、現在では世界中でその技術が普遍的に使用されている。
()フェルクリンゲン製鉄所は19世紀から20世紀初頭にこの産業に著しく影響を与えた、一貫した銑鉄生産工場の顕著な例である。
※ユネスコのHPに記載されているものの私訳です。 -
しかし、第二次世界大戦後の1970年代のオイルショックの煽りを受けた鉄鋼業の衰退の波には逆らえず、フェルクリンゲンも解体の危機に直面した。かろうじて残っていた生産過程も閉業を迎えた1992年、ザールラント州は保存を決意。2年後には世界遺産にも登録され、現在に至っているとの事。
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欧州の中でもドイツは極めて産業遺産の保存に熱心である。フェルクリンゲン以外にも保存されている製鉄所は多く存在し、中には高炉の冷却用の貯水槽に水を溜めダイビングの教習に使用しているところもあるとか。
近代建築・産業遺産の宝庫、ドイツからはまだまだ目が離せない。
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この旅行記へのコメント (2)
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- 4nobuさん 2007/03/31 11:21:22
- 初めまして
- 今日は
技術史に関心が深い者です。この記事で長年行きたいと思いながら実現できなかった所を訪れることができました。有難うございます。
鉱山に関係ある世界遺産ではドイツ・ランメルスベルク鉱山博物館があります。また世界遺産になってませんがルール地方のエッセン近くのボッフムにある石炭鉱山の保存博物館が私には感銘深かったです。
今4トラでその2000年の旅行記を書いておりますが旅の後半ですのでかなり先になります。
- 漣さん からの返信 2007/04/01 00:38:48
- RE: 初めまして
- マニアックな地域の旅行記に投票下さりありがとうございます。実はフェルクリンゲン製鉄所はかなりお気に入りの場所だったりします。実は初ドイツ訪問時にドレスデン近郊の東端から入国して真っ先に向かったのがここでした(笑)。
近代化遺産系統の世界遺産に関しては、エッセンのツォルフェライン炭坑の他イギリスの幾つかの産業革命関連のものを訪問しているので旅行記もその内書きますのでこれからも宜しくお願いします。
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