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 マーチャーシュ教会はハンガリー国王ベーラ4世により14世紀に築かれ、その後マーチャーシュ王がこの教会で歴代の王の中で初めて戴冠式を挙げた事から、その名が付いた。<br /><br /> ハンガリー王国は1526年にモハーチの戦いで大敗、国王ラヨシュ2世も戦死し、オスマン・トルコに殲滅された後、ブダペストは一時的にトルコの支配下に置かれた。そんなハンガリーの悲劇的な歴史の中、マーチャーシュ教会はモスクにすり替えられてしまった。しかしそのおかげで教会は破壊されることなく、永らえることができたのである。そんな激動のハンガリー史を生き抜いたマーチャーシュ教会も第二次世界大戦では、ブダペストが独ソ戦の戦場となったため、教会は最大の存亡の危機にも見舞われた。<br /><br /> その長い歴史の中で教会が最も華やいだのは、ハプスブルグ帝国とマジャール人との間で「アウグスライヒ(妥協)」が成立し、オーストリア・ハンガリーの二重帝国の成立、それによるハプスブルグ皇帝がハンガリー王を兼務し、皇帝フランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベートがこのマーチャーシュ教会で戴冠式を挙げた事が挙げたことだろう。その時シシィはハンガリーの民族衣装風の正装を身に纏い、マジャール人の心を射抜き、今も尚、マジャール人たちの心に留まっている。<br /><br /> 伝統と格式を持ち、その姿も美しいマーチャーシュ教会に私は惚れ込んでしまい、ブダペストに訪れて初めてこの教会を目にし、10年の歳月を経てこうしてシシィが戴冠式を挙げ、世界遺産にもなったこの教会に正装の姿で我々は立っていた。なんとも晴れやかな気分である。<br /><br /> 挙式に立ち会う神父様は、マーチャーシュ教会の司祭ではなくネメシュへジ神父様、嘗て上智大学でも教鞭を振るわれ、ハンガリーでは日本通としてテレビ出演もされる程有名な神父様なのだ。エージェントは我々が日本人であると言う事で、気を利かせてネメシュヘジ神父様にアポイントをとったのだ。<br /><br /> 教会には式が始まる15分くらい前に到着した。その間我々は時間が来るまで教会の外か車内で待たねばならない。幸い天気も快晴なので教会の正門前で正装のまま待っていたが、正装姿をしているだけで観光客たちは我々に近寄り、写真をパシャパシャと撮っていく。教会とは不釣り合いの我々東洋人を西洋人達が微笑みながら撮っていくのはなんか不思議な感じがする。<br /><br /> 暫く待っていると、教会内部からパイプオルガンの音が聞こえ始めた。正門が開くと同時に、大音響がまるで式を終えた二人の歩く道から障害を吹き飛ばすような、凄まじい風圧で流れ、正門近くにいた人ちをのけ反らせた。そして式を挙げたばかりの幸せそうに微笑んだ二人が教会から現れた。彼らが退場すると、いよいよ自分達の番だ。正門で扉の開閉をしていた女性に、列席者と新郎は中に入るように指示され、教会へと踏み入れた。祭壇の前には赤絨毯が敷かれ、ネメシュヘジ神父様と従者二人が待っていた。家族たちはこれから式が執り行われることにピンと来ていないようで、義妹は「これってリハーサル?」と聞いてきた。アホ!、これは歴然とした挙式の本番だ。<br /><br /> 私が祭壇前に立つ神父様の前でスタンバイし、身内も席に着くと、教会の鐘が二回鳴った。そしてパイプオルガンの演奏が始まると、正門で待っていた彼女と義父が入場した。そして扉はギィッと重く鈍い音をたてながら、バタンと音をたてて閉められ、外部と繋がりを一切遮断し、薄暗く厳かな雰囲気となった。<br /> 教会は大きく、正門から祭壇まで少なくとも50Mはある。その為妻が自分の前まで歩いて来るのにもかなり時間が掛かる。ようやく彼女が自分の前まで来ると父親は席の方へと向かい、新郎と新婦は神父様とともに、更に祭壇前に歩み、儀式が始まった。<br /><br /> 神父様はこれから歩んでいく二人の為に聖書の中の節を抜粋し、夫婦はどうあるべきかという話説かれた。そして説教が終わると演奏が始まり、聖歌隊により聖歌が歌われた―アベ・マリアだ。アベ・マリアは私が好きな曲で、その曲が自分達のために歌われる、それ自体に感動してしまった。<br /><br /> 指輪に聖水がかけられ、そして彼女のベールをあげる。普通誓いのキスが催されるが、ハンガリーではお互いの手を握り、互いに誓いの言葉を言わなければならない。その誓いの言葉もネメシュヘジ神父様が私たちの為に考えていただいたものだったのだが、それが余りに長く覚え切れていなかったので、予めカンペを持っていたにも拘わらず、音楽に気をとられてしまい、誓いの言葉のフレーズはもちろんの事、カンペを持っていることすらもスコーンと忘れてしまった。自分が彼女の指に付けるその手前でそのフレーズを青い顔で思い出そうと頭の中をフル回転していると、そんな緊急事態を察した神父様は、こそっと「この指輪は・・」と最初のフレーズをお教えになられたが、情けないかな、結局二人とも言葉が出ず仕舞、神父様がコソコソとお教えになられ、その言葉に沿って誓いの言葉を言う始末だった。式で最も大切な部分でこのような形で躓こうとは・・・。<br /><br /> 儀式はその後も続けられ、神父様が式の終わりを宣言し、自分達に背を向けると、いきなりパイプオルガンの伴奏が響き渡った―バッハの「トッカータとフーガニ短調」だ。バッハの曲はミサ曲が多いがこの曲が挙式の退場に使われるのは日本人からは考もしなかった。しかしその力強い伴奏はまるで音符の形となって教会の天井から我々に降ってきて頭に当たり、音楽が弾けているのではないかと思うほど鳥肌が立ち、頭からつま先までシビれてしまうほどだった。<br /><br /> 長いバージンロードを二人で歩き、ゆっくりと扉に近付いて行くと正門が開いた。すると薄暗い教会に強烈な光が差し込み、光は一本、我々が歩いたバージンロードを照射した。それは神の思し召しの道標のようでもあった。鳴呼、これが始まりなんだな。この時そう感じた。始まりの場所がエリザベートとフランツ・ヨーゼフが戴冠式を挙げた由緒ある教会。最高の舞台から二人の新たな人生がスタートした。

家族9人で新婚旅行~マーチャーシュ教会で挙式 その7挙式編

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2005/10/04 - 2005/10/15

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worldspan

worldspanさん

 マーチャーシュ教会はハンガリー国王ベーラ4世により14世紀に築かれ、その後マーチャーシュ王がこの教会で歴代の王の中で初めて戴冠式を挙げた事から、その名が付いた。

 ハンガリー王国は1526年にモハーチの戦いで大敗、国王ラヨシュ2世も戦死し、オスマン・トルコに殲滅された後、ブダペストは一時的にトルコの支配下に置かれた。そんなハンガリーの悲劇的な歴史の中、マーチャーシュ教会はモスクにすり替えられてしまった。しかしそのおかげで教会は破壊されることなく、永らえることができたのである。そんな激動のハンガリー史を生き抜いたマーチャーシュ教会も第二次世界大戦では、ブダペストが独ソ戦の戦場となったため、教会は最大の存亡の危機にも見舞われた。

 その長い歴史の中で教会が最も華やいだのは、ハプスブルグ帝国とマジャール人との間で「アウグスライヒ(妥協)」が成立し、オーストリア・ハンガリーの二重帝国の成立、それによるハプスブルグ皇帝がハンガリー王を兼務し、皇帝フランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベートがこのマーチャーシュ教会で戴冠式を挙げた事が挙げたことだろう。その時シシィはハンガリーの民族衣装風の正装を身に纏い、マジャール人の心を射抜き、今も尚、マジャール人たちの心に留まっている。

 伝統と格式を持ち、その姿も美しいマーチャーシュ教会に私は惚れ込んでしまい、ブダペストに訪れて初めてこの教会を目にし、10年の歳月を経てこうしてシシィが戴冠式を挙げ、世界遺産にもなったこの教会に正装の姿で我々は立っていた。なんとも晴れやかな気分である。

 挙式に立ち会う神父様は、マーチャーシュ教会の司祭ではなくネメシュへジ神父様、嘗て上智大学でも教鞭を振るわれ、ハンガリーでは日本通としてテレビ出演もされる程有名な神父様なのだ。エージェントは我々が日本人であると言う事で、気を利かせてネメシュヘジ神父様にアポイントをとったのだ。

 教会には式が始まる15分くらい前に到着した。その間我々は時間が来るまで教会の外か車内で待たねばならない。幸い天気も快晴なので教会の正門前で正装のまま待っていたが、正装姿をしているだけで観光客たちは我々に近寄り、写真をパシャパシャと撮っていく。教会とは不釣り合いの我々東洋人を西洋人達が微笑みながら撮っていくのはなんか不思議な感じがする。

暫く待っていると、教会内部からパイプオルガンの音が聞こえ始めた。正門が開くと同時に、大音響がまるで式を終えた二人の歩く道から障害を吹き飛ばすような、凄まじい風圧で流れ、正門近くにいた人ちをのけ反らせた。そして式を挙げたばかりの幸せそうに微笑んだ二人が教会から現れた。彼らが退場すると、いよいよ自分達の番だ。正門で扉の開閉をしていた女性に、列席者と新郎は中に入るように指示され、教会へと踏み入れた。祭壇の前には赤絨毯が敷かれ、ネメシュヘジ神父様と従者二人が待っていた。家族たちはこれから式が執り行われることにピンと来ていないようで、義妹は「これってリハーサル?」と聞いてきた。アホ!、これは歴然とした挙式の本番だ。

 私が祭壇前に立つ神父様の前でスタンバイし、身内も席に着くと、教会の鐘が二回鳴った。そしてパイプオルガンの演奏が始まると、正門で待っていた彼女と義父が入場した。そして扉はギィッと重く鈍い音をたてながら、バタンと音をたてて閉められ、外部と繋がりを一切遮断し、薄暗く厳かな雰囲気となった。
 教会は大きく、正門から祭壇まで少なくとも50Mはある。その為妻が自分の前まで歩いて来るのにもかなり時間が掛かる。ようやく彼女が自分の前まで来ると父親は席の方へと向かい、新郎と新婦は神父様とともに、更に祭壇前に歩み、儀式が始まった。

 神父様はこれから歩んでいく二人の為に聖書の中の節を抜粋し、夫婦はどうあるべきかという話説かれた。そして説教が終わると演奏が始まり、聖歌隊により聖歌が歌われた―アベ・マリアだ。アベ・マリアは私が好きな曲で、その曲が自分達のために歌われる、それ自体に感動してしまった。

指輪に聖水がかけられ、そして彼女のベールをあげる。普通誓いのキスが催されるが、ハンガリーではお互いの手を握り、互いに誓いの言葉を言わなければならない。その誓いの言葉もネメシュヘジ神父様が私たちの為に考えていただいたものだったのだが、それが余りに長く覚え切れていなかったので、予めカンペを持っていたにも拘わらず、音楽に気をとられてしまい、誓いの言葉のフレーズはもちろんの事、カンペを持っていることすらもスコーンと忘れてしまった。自分が彼女の指に付けるその手前でそのフレーズを青い顔で思い出そうと頭の中をフル回転していると、そんな緊急事態を察した神父様は、こそっと「この指輪は・・」と最初のフレーズをお教えになられたが、情けないかな、結局二人とも言葉が出ず仕舞、神父様がコソコソとお教えになられ、その言葉に沿って誓いの言葉を言う始末だった。式で最も大切な部分でこのような形で躓こうとは・・・。

 儀式はその後も続けられ、神父様が式の終わりを宣言し、自分達に背を向けると、いきなりパイプオルガンの伴奏が響き渡った―バッハの「トッカータとフーガニ短調」だ。バッハの曲はミサ曲が多いがこの曲が挙式の退場に使われるのは日本人からは考もしなかった。しかしその力強い伴奏はまるで音符の形となって教会の天井から我々に降ってきて頭に当たり、音楽が弾けているのではないかと思うほど鳥肌が立ち、頭からつま先までシビれてしまうほどだった。

 長いバージンロードを二人で歩き、ゆっくりと扉に近付いて行くと正門が開いた。すると薄暗い教会に強烈な光が差し込み、光は一本、我々が歩いたバージンロードを照射した。それは神の思し召しの道標のようでもあった。鳴呼、これが始まりなんだな。この時そう感じた。始まりの場所がエリザベートとフランツ・ヨーゼフが戴冠式を挙げた由緒ある教会。最高の舞台から二人の新たな人生がスタートした。

同行者
家族旅行
交通手段
鉄道 高速・路線バス
航空会社
エミレーツ航空
  • 13世紀ベーラ4世により作られましたが、15世紀マーチャーシュ王により棟が増築されました。教会ではマーチャーシュ王が結婚式を挙げたり、戴冠式を挙げたりしたことから教会の名前がマーチャーシュ教会となりました。<br />

    13世紀ベーラ4世により作られましたが、15世紀マーチャーシュ王により棟が増築されました。教会ではマーチャーシュ王が結婚式を挙げたり、戴冠式を挙げたりしたことから教会の名前がマーチャーシュ教会となりました。

  • マーチャーシュ教会に初めて訪れて以降、教会に魅了され、結婚式はここで挙げたいと思っていましたが、05年念願の挙式が叶いました。<br />

    マーチャーシュ教会に初めて訪れて以降、教会に魅了され、結婚式はここで挙げたいと思っていましたが、05年念願の挙式が叶いました。

  • 教会内部

    教会内部

  • マーチャーシュ教会の正門。普段は閉められたままで南門から入場します。結婚式などの特別な行事はここから入退<br />場します。<br />

    マーチャーシュ教会の正門。普段は閉められたままで南門から入場します。結婚式などの特別な行事はここから入退
    場します。

  • 教会の内部です。正門を入り、挙式を挙げる主祭壇まで約50メートルあり、結婚式で妻が入場し、やって来るまで2分近くかかりました。

    教会の内部です。正門を入り、挙式を挙げる主祭壇まで約50メートルあり、結婚式で妻が入場し、やって来るまで2分近くかかりました。

  • 教会のパイプオルガンは教会の高い位置にある為、入退場の時は頭から足に貫くような大音響でパイプオルガンが演<br />奏されます。指輪を交換する時にはアベ・マリアが流れ、聖歌隊が歌を歌い感激しました。<br /><br />

    教会のパイプオルガンは教会の高い位置にある為、入退場の時は頭から足に貫くような大音響でパイプオルガンが演
    奏されます。指輪を交換する時にはアベ・マリアが流れ、聖歌隊が歌を歌い感激しました。

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この旅行記へのコメント (2)

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  • まみさん 2006/12/08 12:17:26
    とてもすてきな結婚式です
    shijoさん、こんにちは。

    挙式の様子をとてもほほえましく思いながら、拝読させていただきました。
    緊張のあまり誓いの言葉をスコーンと忘れてしまったこと。
    お二人ともせっかくなら完璧に言いたかったでしょうけど、このあたりがとてもほほえましくかんじました。

    長いバージンロード。
    そうですね、あの長さを、急ぎ足でなくゆっくり来るわけですし、shijoさんにとっては、待ちに待った花嫁。確かにとても長く感じられたことと思います。
    力強いバッハの「トッカータとフーガニ短調」、そしてバージンロードを照らす一条の光。
    絵のようなシーンですね。

    worldspan

    worldspanさん からの返信 2006/12/09 11:12:14
    RE: とてもすてきな結婚式です
    家族が結婚式の様子をビデオで撮っているのですが、それをみると、何とまぁ、情けない姿が・・・。あの言葉を忘れてしまった時の心の動揺が表情にモロに出ていて、神父様がコソコソ教えていただいたはずだったのですが、何とそのお言葉までビデオで拾われていました(涙)。
     実は自分の服装を見て何か物足りないなーと思っていたら、結婚式の時に来ていた正装で自分はネクタイをするのをすっかり忘れてしまい、それに気づいたのはホテルの部屋に戻ってからの事でした。なんとも情けない話ですよね。

     式を挙げる際、ブダペストで衣装を準備する事も考えたのですが(実際に結婚式の衣装やはテレーズ環状通りに沢山あります)、式まで時間が無かったので、気に入ったものや、サイズが合うものがあるのかわからなかったので、日本から持ってきたので、荷物が大変かさばり、移動が大変でした。

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