1997/05/05 - 1996/06
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buchijoyceさん
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ザクセンハウゼン
ベルリンのツォー駅から、途中乗り換えてSバーンで1時間弱、オラニエンブルク駅に着く。ここから徒歩で30分余りのところに、ザクセンハウゼン強制収容所はある。
駅にはタクシーもバスもなく、しかたなく歩き始める。
カメラバッグの5kgが重い。
ほどなく日本でいえば中学生の1団に追い抜かれた。多分この子たちも、ザクセンハウゼンに行くのだろうと後を追うが、彼らの足は速い。なんとか彼らの後姿が視野におさまるくらいについていく。
やはり彼らの目的地もザクセンハウゼン。ドイツでは中学生になると、ナチスが行ったドイツの忌まわしい過去をきちんと教えることになっている。
黒塗りの鉄柵の入り口で「入場料は?」ときくと「フライ(無料)」と守衛が答えた。
門を入ると、緑の並木道が続いている。ただ、これから待ち受けているものを感じると、緑の木立も、小鳥の声も、単純に楽しんではいられない。
突き当たりは大きな展示館。左に折れると、広場があり、2階建ての建物がある。かっての管理棟だ。解放されたときは2階に横断幕が掲げられたそうだ。管理棟の中門を出ると、広大な敷地に、ぐるりと鉄条網のついた塀がはりめぐらされ、ところどころに映画で見たような監視塔がある。とにかく広いので、監視塔ははるかかなたなのだが、何ともいえぬ重圧感を覚える。
手前にはバラック1とかバラック2とか書かれた細長い小屋がある。以前はここに60棟のバラックが並んでいたそうだが、いまは3棟が展示室になっていて、新聞で見る当時のヨーロッパの様子や、収容所の状況が紹介されている。
先に入った中学生たちは、思い思いにバラックに入り、真剣な面持ちで、説明文を読んだり、ノートしたりしている。
塀を隔てて独房も並んでいる。ナチスの頃は勿論だが、ソ連の管理下になってからもここは政治犯の収容所として使われていた。ここで命を落とした人のだろうか、それぞれの独房には写真や経歴が掲げられ、花が手向けられている。独房近くには絞首刑に使った杭が並んでいる。
広場近くの展示館には、強制収容されたユダヤ人たちの収容所での写真や遺品が数多く展示されている。アウシュビッツの写真と同じ状態だ。生体実験室、切り取られた髪の毛の山、おびただしい靴、拷問具。薄暗い部屋でひとり見ていると、どこからかうめき声が聞えてきそうだ。
残念ながら解説はドイツ語だ。私も初級はやったのだが、解説を読むほどの読解力はない。ドイツ語は夫の領分だ。彼は解説を読みながら来るので遅い。仕方がないので、拾い読みしながら見当をつけている。
壁のドイツの地図には、当時あった強制収容所の場所が書き込まれている。すごい数だ。やりきれない気持ちで展示館を出ると、そこは広い広場だ。ここにはかってユダヤ人たちが働かされていた作業所がところせましと並んでいた。
今は何もない。ところどころに立つ大きな木が、かえって何かを訴えているかのようだ。
三々五々、中学生たちが監視塔や塀際を歩いている姿が小さく見える。
広場の中央近くに高いモニュメントが建っている。台座にはここに収容された人びとの国名が刻まれている。そのモニュメントの前を通り過ぎると、塀際に大きな屋根だけついた構築物がある。
まわりをフェンスで囲み、中には入れないが、側によって見ると、そこは浴場、すなわちガス室の跡、隣は焼却炉だ。ガス室で殺された死体は、すぐ焼却され、燃え残りの骨や灰はスロープを通って捨てられる仕組み。実に合理的な殺人工場だ。スロープも残灰捨て場も掘り起こされて、人目にふれるようになっている。
ソ連軍が入ってきたとき、ナチスは証拠隠滅を図って、この建物を焼き払ったようだ。そのままに保存されている。
管理棟近くで、ボランティアの人たちが草むしりをしていた。やわらかな日差しの中の、黄色いタンポポの花にほっとする。
戻って、大きな展示館に入ると、ここには英語の説明がついていた。それによると、この収容所はナチスの後、ソ連による政治犯の収容所として使われ、1万2千人もの政治犯がここで命を落としたという。そう、この地は旧東ドイツだ。あのモニュメントも旧ソ連による犠牲者のためのものかもしれない。
些か疲れてしまったので、解説を読むのをやめ、ロビーの椅子に腰掛けて、人々の様子を眺めていた。先ほどの中学生たちがグループになって床に座り、メモを見ながらさかんに話し合っている。
日本は忌まわしい過去は隠そうとしているが、ドイツでは過去の事実はきちんと教えられている。きちんと教えられなければ、反省も進展もない。日本の子ども達が教えられないが故に歴史をしらずにふるまい、非難されるのは可哀想だ。事実は事実として教え、判断させるのが、大人たちの役目ではなかろうか。
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