1970年トリノ交通博シンポジウムで頼まれた講演の演題は、東京や大阪の、郊外電車の地下鉄乗り入れについてであった。<br /><br />ヨーロッパの都市は、都市内の鉄道と市内・郊外を結ぶ鉄道が分かれていて、ターミナルでの乗り換えが不便である。<br /><br />その問題を解決しようと当時各都市ではいろいろな計画が進みつつあり、日本での郊外から市内への直通運転は、当時各国から注目されていた。<br /><br />ヨーロッパの鉄道は最初都市間交通機関として発達し、都市内鉄道は後になって別のシステムとして造られた例が多い。<br /><br />例えばパリのメトロは、遠距離の列車が入らないように、小さな車両を使っている。<br />念の入ったことに、普通の鉄道は右側通行なのに、メトロは左側通行である。<br /><br />その結果、両者の間に不連続が残り、大都市が郊外に向けて発達した現在では、その接点が都市圏交通の癌になっている。<br /><br />わが国における郊外電車の地下鉄乗り入れは、世界各都市における交通網再編成の足がかりとして注目され、その解決方策を示唆するものとして大きな意味を持っていた。<br /><br />私に求められたのは、日本における実態と問題点の指摘である。<br />このテーマでの外国向けの発表は、これが初めてなのだった。<br /><br />先日のロンドン鉄道クラブでは、招待されたにも拘らず夕食以外全部自己負担で、さすがジェントルマンの国と感心したものだが、今回のトリノはシンポジウムの会期中快適なホテルを5泊も招待者側で負担してくれ、おまけにホテル内の食事はすべて無料、その文化の差に驚く。<br /><br />ただし両者とも、謝礼はなかった。<br />

世界漫歩1382トリノ・交通博シンポジウム

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1970/08 - 1970/08

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#鉄道・バス

ソフィさん

1970年トリノ交通博シンポジウムで頼まれた講演の演題は、東京や大阪の、郊外電車の地下鉄乗り入れについてであった。

ヨーロッパの都市は、都市内の鉄道と市内・郊外を結ぶ鉄道が分かれていて、ターミナルでの乗り換えが不便である。

その問題を解決しようと当時各都市ではいろいろな計画が進みつつあり、日本での郊外から市内への直通運転は、当時各国から注目されていた。

ヨーロッパの鉄道は最初都市間交通機関として発達し、都市内鉄道は後になって別のシステムとして造られた例が多い。

例えばパリのメトロは、遠距離の列車が入らないように、小さな車両を使っている。
念の入ったことに、普通の鉄道は右側通行なのに、メトロは左側通行である。

その結果、両者の間に不連続が残り、大都市が郊外に向けて発達した現在では、その接点が都市圏交通の癌になっている。

わが国における郊外電車の地下鉄乗り入れは、世界各都市における交通網再編成の足がかりとして注目され、その解決方策を示唆するものとして大きな意味を持っていた。

私に求められたのは、日本における実態と問題点の指摘である。
このテーマでの外国向けの発表は、これが初めてなのだった。

先日のロンドン鉄道クラブでは、招待されたにも拘らず夕食以外全部自己負担で、さすがジェントルマンの国と感心したものだが、今回のトリノはシンポジウムの会期中快適なホテルを5泊も招待者側で負担してくれ、おまけにホテル内の食事はすべて無料、その文化の差に驚く。

ただし両者とも、謝礼はなかった。