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 ともだちから、宿題を出された。<br />テーマが【心が帰れる場所】とゆーことらしい。<br /><br /> 【はるるの故郷】と言えば、物理的には今も住み続けているとちぎけんの片隅だけれど、【心の故郷】となったら何処だろう。<br />やはり、アジアの片隅の名も知れぬ何処か、なのかも知れない。もう見つかっているのに、ただ本人が気付かないだけなのかも知れないし、まだ出遭っていないのかも知れない。<br />ただ、「ここに帰って来たな~!」と、思える場所は既にいくつかの心当たりなら・・・ないでもない。<br /><br /> はるるが10年間近く常宿にしていたバンコク下町のATTゲストハウスのスタッフ、アモ-ンは、タイ人にしてはひょろりと長身でとてもはにかみや。心優しいのが仇になって好きなガールフレンドにも思うように告白できません。<br />彼女のスナップ写真を一枚撮るにも、はるるに依頼する始末。・・・まあ、そこが良いんだけどね~(笑)<br /><br /> タイ正月ソンクラーンの里帰りにつきあって、彼の故郷の村を初めて訪れた日のこと。長距離バスの旅を終え、いちばん風通しの良い部屋をあてがわれて自分の荷物を降ろし、同じようにひょろひょろの彼のばあちゃんと、カタコトのタイ語で喋ってた。アモ-ンは、繰り返し「ぼくんちは、ビンボーだから」と言うけど、タイの農村の家の中は何処も同じだ。つまり、家具なんて、ほとんど無い。たいていの家の床は黒くぴかぴかに光る板張りで、暑い日中はひんやりして風通しも良くって昼寝には最適で、気持ちいい。フローリングなんて言葉は、ここには無いけれど・・・・日本で流行るずっと前から、南国ではこのスタイル(笑)<br /><br /> ピサヌロ-ク郊外のこの村、ワット・ボーでも青少年の憧れはモーターサイクル、略して「モトサイ」です。ホンダやスズキ、そしてヤマハを乗り回さないと、女の子にも相手にしてもらえません。でも、とアモ-ン「ぼくの家は貧しいから、自転車しか買えないんだ」そう言えば、ここには黒いちゃりんこしか無いや。ごめんね、と言いながら暫らくすると何処からかモトサイを借りてくる。「HARUO、ちょっとタラートに行こう。パイ・ティアオ!(遊びにね!)」<br /><br /> モトサイに2人乗りして少し傾いてきた陽射しの中を行くと、大きな町のタラート(市場)と違ってここのバザールは、粗末な屋根の下に簡単に長い板が数列ほど差し渡してあるだけ。まだまだ陽射しの照り返しは強くて、屋根の下の日陰は嬉しい。その広い板の上には、さまざまな野菜、色とりどりの果物に混じって村を流れるナ-ン川で捕れた生きのいい川魚が並ぶ。冷蔵設備やショーケースなんて有るはずは無いから、元気なハエもぶんぶん飛んでる。ぐりぐり茶色のハエ捕り用リボンが沢山下がってて、ちょっと懐かしい風景だ。ふわふわしたハタキのようなもので追い払ってるおばちゃんも居る。ほっぺに化粧パウダーをぐりぐりしてる、ハッとするような美少女も居る。ここでの主役は、買う者も、売る者も、みんな女性だ。なぜか、お魚さんのとなりに、ちょっとだけ電気製品が並んでたりする。電池とラジオ。懐中電灯にウオ-クマンもどき(笑)<br /><br /> 大したモノも買わず、彼の同級生に出会って紹介されたりして笑ってると、ずっと前から知っているふるさとに戻ったような気分になった。でも、それにしてもまだ暑い。さっき、荷物を降ろして着替えて来たばかりなのに、汗っかきのはるるはTシャツの背中がべたべたする。「アプ・ナーム」水浴びしたい、つまり風呂に入りたいと、カタコトのタイ語でアモ-ンの肩をたたく。彼は無言で頷いて、いっしょにモトサイが停めてある場所へと足を返す。<br /><br /> 家へ戻って、部屋で石鹸やタオル、着替えの準備も整うと、アモ-ンが呼びに来る。「パイ、HARUO!」行こうぜ、と言われて彼の後を追う。台所を抜けて、家の裏手に出てしまう。「あれれ」昔の日本みたいに、風呂が庭先にでもあるのかなあ?!どんどん歩いて、敷地を抜けてしまうのに、止まらない。あれれ、原っぱの斜面を下って行くと、村をつらぬくナ-ン川が大きくカーブを描いているのに出会う。<br /><br /> ふと、気がつくと同じような仕度をした人々が、対岸からも降りてくる。こちらからも、夕暮れの風に誘われるように三々五々、老若男女を問わず川辺に出て来ている。<br />あ。<br />・・・そうなんだ。<br /><br /> みんなのお風呂は、このナ-ン川でした。そう、思うとちょっとだけ涼しくなった空気よりも温かい、やさしく流れる川の水が、ものすごく雄大な露天風呂に見えて来ました・・・。立ち止まってると、ちいさな魚たちが足先をつんつんつつきます。その、絶え間の無いかすかなくすぐったさが、ぼくの心を包むように歓迎してくれている、ナ-ン川のメッセージのような気さえして身震いして来てしまう。嬉しさがこみ上げる内に、夕もやがたなびいて無数のホタルが飛び交い始めました。ほんとはゆっくりゆっくりと時間が経っていたのかも知れませんが、気が付いたらあっという間に闇が押し寄せて、頭上には星くず銀河の流れが広がっていました。ふつう、これは沐浴と呼ぶものかも知れませんが。はるるにとって、これは生涯最高の露天風呂との出会い体験で、生きているしあわせを、ほろほろと実感したものでした。<br /><br /> 人生をリタイアしたら、と配偶者と約束していることがある。熱帯の何処かのしずかな水辺の村で暮らそうと、前から話し合ってる。<br />海辺でも、川辺でも構わない。<br />水の上を渡って来る、明るくて軽やかな風があれば。<br />定住する必要もないし、季節が移り行くごとに日本と東南アジアを往復するのもいいね、なんて。<br />そんな場所で、人生の終わりの季節に、人知れず伴侶だけに見取られて死を迎えるのも悪くないよね、なんて気持ちよく冷やした純米酒を酌み交わしながら微笑む。<br /><br /> 心が帰れる場所って、自分が気付かない内に無意識に求めている【心静かな死に場所】のこと、なのかも知れないね~最終的には。<br />間違っても、「満開の桜の下」なんかじゃ死にたくないな。<br />きっと心がざわざわしちゃって、踊ったり騒いじゃうよ。あはは。<br /><br /> <br />

【心が帰れる場所】~タイの片田舎で。

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1989/04 - 1989/04

55位(同エリア73件中)

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はるる!

はるる!さん

 ともだちから、宿題を出された。
テーマが【心が帰れる場所】とゆーことらしい。

 【はるるの故郷】と言えば、物理的には今も住み続けているとちぎけんの片隅だけれど、【心の故郷】となったら何処だろう。
やはり、アジアの片隅の名も知れぬ何処か、なのかも知れない。もう見つかっているのに、ただ本人が気付かないだけなのかも知れないし、まだ出遭っていないのかも知れない。
ただ、「ここに帰って来たな~!」と、思える場所は既にいくつかの心当たりなら・・・ないでもない。

 はるるが10年間近く常宿にしていたバンコク下町のATTゲストハウスのスタッフ、アモ-ンは、タイ人にしてはひょろりと長身でとてもはにかみや。心優しいのが仇になって好きなガールフレンドにも思うように告白できません。
彼女のスナップ写真を一枚撮るにも、はるるに依頼する始末。・・・まあ、そこが良いんだけどね~(笑)

 タイ正月ソンクラーンの里帰りにつきあって、彼の故郷の村を初めて訪れた日のこと。長距離バスの旅を終え、いちばん風通しの良い部屋をあてがわれて自分の荷物を降ろし、同じようにひょろひょろの彼のばあちゃんと、カタコトのタイ語で喋ってた。アモ-ンは、繰り返し「ぼくんちは、ビンボーだから」と言うけど、タイの農村の家の中は何処も同じだ。つまり、家具なんて、ほとんど無い。たいていの家の床は黒くぴかぴかに光る板張りで、暑い日中はひんやりして風通しも良くって昼寝には最適で、気持ちいい。フローリングなんて言葉は、ここには無いけれど・・・・日本で流行るずっと前から、南国ではこのスタイル(笑)

 ピサヌロ-ク郊外のこの村、ワット・ボーでも青少年の憧れはモーターサイクル、略して「モトサイ」です。ホンダやスズキ、そしてヤマハを乗り回さないと、女の子にも相手にしてもらえません。でも、とアモ-ン「ぼくの家は貧しいから、自転車しか買えないんだ」そう言えば、ここには黒いちゃりんこしか無いや。ごめんね、と言いながら暫らくすると何処からかモトサイを借りてくる。「HARUO、ちょっとタラートに行こう。パイ・ティアオ!(遊びにね!)」

 モトサイに2人乗りして少し傾いてきた陽射しの中を行くと、大きな町のタラート(市場)と違ってここのバザールは、粗末な屋根の下に簡単に長い板が数列ほど差し渡してあるだけ。まだまだ陽射しの照り返しは強くて、屋根の下の日陰は嬉しい。その広い板の上には、さまざまな野菜、色とりどりの果物に混じって村を流れるナ-ン川で捕れた生きのいい川魚が並ぶ。冷蔵設備やショーケースなんて有るはずは無いから、元気なハエもぶんぶん飛んでる。ぐりぐり茶色のハエ捕り用リボンが沢山下がってて、ちょっと懐かしい風景だ。ふわふわしたハタキのようなもので追い払ってるおばちゃんも居る。ほっぺに化粧パウダーをぐりぐりしてる、ハッとするような美少女も居る。ここでの主役は、買う者も、売る者も、みんな女性だ。なぜか、お魚さんのとなりに、ちょっとだけ電気製品が並んでたりする。電池とラジオ。懐中電灯にウオ-クマンもどき(笑)

 大したモノも買わず、彼の同級生に出会って紹介されたりして笑ってると、ずっと前から知っているふるさとに戻ったような気分になった。でも、それにしてもまだ暑い。さっき、荷物を降ろして着替えて来たばかりなのに、汗っかきのはるるはTシャツの背中がべたべたする。「アプ・ナーム」水浴びしたい、つまり風呂に入りたいと、カタコトのタイ語でアモ-ンの肩をたたく。彼は無言で頷いて、いっしょにモトサイが停めてある場所へと足を返す。

 家へ戻って、部屋で石鹸やタオル、着替えの準備も整うと、アモ-ンが呼びに来る。「パイ、HARUO!」行こうぜ、と言われて彼の後を追う。台所を抜けて、家の裏手に出てしまう。「あれれ」昔の日本みたいに、風呂が庭先にでもあるのかなあ?!どんどん歩いて、敷地を抜けてしまうのに、止まらない。あれれ、原っぱの斜面を下って行くと、村をつらぬくナ-ン川が大きくカーブを描いているのに出会う。

 ふと、気がつくと同じような仕度をした人々が、対岸からも降りてくる。こちらからも、夕暮れの風に誘われるように三々五々、老若男女を問わず川辺に出て来ている。
あ。
・・・そうなんだ。

 みんなのお風呂は、このナ-ン川でした。そう、思うとちょっとだけ涼しくなった空気よりも温かい、やさしく流れる川の水が、ものすごく雄大な露天風呂に見えて来ました・・・。立ち止まってると、ちいさな魚たちが足先をつんつんつつきます。その、絶え間の無いかすかなくすぐったさが、ぼくの心を包むように歓迎してくれている、ナ-ン川のメッセージのような気さえして身震いして来てしまう。嬉しさがこみ上げる内に、夕もやがたなびいて無数のホタルが飛び交い始めました。ほんとはゆっくりゆっくりと時間が経っていたのかも知れませんが、気が付いたらあっという間に闇が押し寄せて、頭上には星くず銀河の流れが広がっていました。ふつう、これは沐浴と呼ぶものかも知れませんが。はるるにとって、これは生涯最高の露天風呂との出会い体験で、生きているしあわせを、ほろほろと実感したものでした。

 人生をリタイアしたら、と配偶者と約束していることがある。熱帯の何処かのしずかな水辺の村で暮らそうと、前から話し合ってる。
海辺でも、川辺でも構わない。
水の上を渡って来る、明るくて軽やかな風があれば。
定住する必要もないし、季節が移り行くごとに日本と東南アジアを往復するのもいいね、なんて。
そんな場所で、人生の終わりの季節に、人知れず伴侶だけに見取られて死を迎えるのも悪くないよね、なんて気持ちよく冷やした純米酒を酌み交わしながら微笑む。

 心が帰れる場所って、自分が気付かない内に無意識に求めている【心静かな死に場所】のこと、なのかも知れないね~最終的には。
間違っても、「満開の桜の下」なんかじゃ死にたくないな。
きっと心がざわざわしちゃって、踊ったり騒いじゃうよ。あはは。


  • パトナム(日本語読みだと、プラトゥーナム)のランドマーク、バンコクでいちばんの高さのビル「バイヨーク2」を見上げる、インドラホテルのプールサイド。

    パトナム(日本語読みだと、プラトゥーナム)のランドマーク、バンコクでいちばんの高さのビル「バイヨーク2」を見上げる、インドラホテルのプールサイド。

  • 15年ほど前の、とてものんびりしたピサヌローク駅。<br />(現在も、駅舎そのものは変わってないと思います)<br />ちゃちなコンパクト・カメラで撮影したものなので、こうやって見るとあまり鮮明ではなくって、ごめんなさい。

    15年ほど前の、とてものんびりしたピサヌローク駅。
    (現在も、駅舎そのものは変わってないと思います)
    ちゃちなコンパクト・カメラで撮影したものなので、こうやって見るとあまり鮮明ではなくって、ごめんなさい。

  • ピサヌローク駅前で待機している三輪タクシー(サムロー)たち。<br />バンコクなどに比較すると、車体のペイントが素朴で可愛いです。

    ピサヌローク駅前で待機している三輪タクシー(サムロー)たち。
    バンコクなどに比較すると、車体のペイントが素朴で可愛いです。

  • ピサヌローク中央を流れるナーン川に面した、風の吹きぬける名物のラーメン屋さん。<br />なぜか食卓カウンターがみんな外を向いていて、足をぶらぶらさせながら、楽しそうにバーミー・ナムの到着を待っている友人家族たち。<br />向かって左から、おかあさん(中学校と高校の家庭科の先生)、息子兄弟たち(学生)、おとうさん(有名牛乳販売会社の地域責任者)です〜♪

    ピサヌローク中央を流れるナーン川に面した、風の吹きぬける名物のラーメン屋さん。
    なぜか食卓カウンターがみんな外を向いていて、足をぶらぶらさせながら、楽しそうにバーミー・ナムの到着を待っている友人家族たち。
    向かって左から、おかあさん(中学校と高校の家庭科の先生)、息子兄弟たち(学生)、おとうさん(有名牛乳販売会社の地域責任者)です〜♪

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この旅行記へのコメント (2)

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  • 鯨さん 2006/04/30 10:05:41
    全く同感です。
     「はるる」サンの言うとおり、心が帰り着けるところと言ったらタイの田舎だと思います。
    ヨーロッパもアメリカも行ってみましたが、どうしても馴染めません。

     今年は10月頃、ピッサヌロークからはいって、スコータイ、カンペーン
    ペッを見てバンコクから帰ってこようと思っています。タイの世界遺産のうち残ったのがスコータイですので。

    このコースで7日間で十分でしょうか?。
    心から落ち着ける仏陀の顔をじっくり見て来たいのですが!!!!!!。

    はるる!

    はるる!さん からの返信 2006/05/01 20:27:23
    スケジュール
    きっと、あんまり欲張らず、この日程だと2ヶ所くらいに絞ってゆっくり滞在して来るのがいいですね。

    スコターイでは、現地でレンタサイクルかレンタバイクを借りて、走り回ると楽しいですよ。

    歩くだけでは、周辺に田園風景の中に点在する沢山の遺跡を見切れません。

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