1970/07/04 - 1970/07/04
124位(同エリア218件中)
片瀬貴文さん
私のためにデモンストレーションをやるというので、はるばる汽車に乗り、訪ねることにする。
列車を乗り換えながら、ニオールに降りて一泊。
翌日グリモーさんが迎えに来てくれて、会うことが出来た。
芯の強い人を想像していたが、顔から笑みを絶やさない、好々爺だった、
車で30分あまり、ようやくたどり着いた最終目的地は、パリの西南西400キロ、大西洋に近い百戸足らずの小さな村。
その村外れに、彼の「工場」があった。
「工場」といってもバラックが一軒、工員は農夫が二人である。
バラックの壁には世界地図が貼られていて、施工実績のある個所ごとに小さなフランス国旗が立てられている。
アジアではベトナムに集中しており、中国、韓国、日本がブランクのままだ。
訛りが激しくて、言葉が充分通じ切れない歯がゆさがある。
私を歓迎して彼は、自ら愛車を駆って近くの町々を案内し、たくさんの人を紹介してくれた。
彼は、単に技術を見せるだけでなく、この地方の文化を私に教えようとしている。
柔道クラブの主催者から、「ぜひ本場の技を」と所望されたのを断ったのは、残念至極だった。
1945年、進駐軍から武道禁止令が出てから16年間、一度もやっていないので、怪我が怖かったからだ。
が、わずかな期間にこの地方にとけこんだ自分を感じた。
彼の愛車は映画「パリ祭」に出てきそうな、戦前のシトロエン。
何もクラシックカーが好きなのではなく、節約して買い替えていないだけだ。
腰が曲がって速く歩けない彼も、ハンドルを握れば一人前の行動力を発揮する。
曲がりくねった田舎道を時速100キロで飛ばし、村の入口のマリヤ像には速度を落とさないまま、目をつむって十字を切る。
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