2004/08/20 - 2004/08/23
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night-train298さん
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8月20日 FINISTELLEへ(バスで)
朝の支度は慌ただしかった。
まだ寝ていた私を、ラウラがやさしく起こしてくれた。
今までこんなに優しく人に起こされたことはないと、みょうな感動を
おぼえながら、暗い中、支度を整える。
パキたちも、ラウラから起こされていた。
出発は雨だったが、数歩歩いて雨は止んだ。
今日は最果ての地、フェニステーレに行くのだ。
サンティアゴの首のない遺体がパドゥロンに流れ着いたと先に書いたが、
本によると、フェニステーレで遺体が発見されたとも書いてある。
サンティアゴまで巡礼に来たものは、フェニステーレまで行き、これ以上
道はないという、大西洋の海に向かい、そこで巡礼中着ていた衣服を燃や
して、生まれ変わるのである。いよいよその時がきたのである。
朝、カテドラルのすぐそばのオスタルにチェックインし、荷物を置いてバス
ターミナルへ向かう。
その時だった。これから帰国するために駅に向かうリチャードに会ったのだ。
まだ誰も歩いていないような静かな時間だったが、神様は私たちを再びめぐり
会わせてくれた。不思議である。
短い別れをし、それぞれの方向へ向かう。
-
バスの時間は8時。間に合わないと思っていたら、ターミナルに着いたのは
8時2〜3分前で、切符を買ってバス停に着いたのが、ちょうど8時であった。
慌ててエスカレーターを下る私たちとは逆方向から階段を上ってきたのは、
今朝フェニステーレから戻ったカルメンだった。
すれ違いざまに挨拶するのがやっとだったが、これも不思議な出会いだ。
確かにこの街で巡礼者と会う可能性は高いかもしれないが、観光客の数が多い
のである。カテドラルの回りの広場や道は人で溢れているのだ。
近くをすれ違ってもわからいに違いない。
今や私たちは、この街の中でほんの小さいグループでしかないのだ。
後で聞いたのだが、パキたちは、別のバス乗り場に立っているファビオを
見たと言う。
手を振ったが、たぶん彼は気が付かなかったと言うことだった。
バス乗り場で、グリちゃんとあけみさんに会うはずであったが、
そこにいたのはあけみさんだけであった。
グリちゃんは、夜にコーヒーを飲んだため、眠れなくて、今日は行くのを
断念したという。 -
-
二時間程で最果ての町に着く。
ここにもアルベルゲがあり、スタンプを押してもらう。
まずはバルで朝食。
そして目指す岬は、ここから3km歩くと言う。
サンティアゴまで800kmを歩いてきたというのに、たった3kmでブーイング。
岬までは緩やかな坂だった。左手に海が見え、その青の美しいこと。
海を見たのも久しぶりのことだった。
北の海とは思えない、エメラルドグリーンだ。確かアイルランドもこんな
色だった。
ここもガリシア地方の例外ではなく、雨の多い場所だと聞いていたが、
空は天高く、海は輝いて、緑も鮮やかで美しい。
ここを車で走ってしまったら、もったいないような美しい景色だった。
私たちは、巡礼という一つの仕事を終えて、ものすごくリラックスしていた。
私たちの背中にいつもくっついていた荷物からも解放されていた。
まさにご褒美の遠足のようだった。
昨日のサンティアゴ様に挨拶した瞬間から禁煙を始めたアンヘルと
ミッチェルはスーパーの袋いっぱいにお菓子を持っている。
そしてふたりで飴をなめたり、グミをかじったりしながら歩いていた。
みんなから、『赤ちゃん』とはやし立てられている。 -
今日から禁煙?!
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岬の上には土産物屋があり、その先に行くと、北側の海が見えた。
その色は、今まで見ていた色とは違い、濃い青で、私はこちらの色も
美しいと思った。
この先に道はない。
だからスペイン人もポルトガル人も、海の向こうを目指したに違いない。
誰もがその美しい海に見とれ、それぞれの場所を見つけて、しばらく海と、
自分と向き合った。
遠くでラウラ&ミッチェルが寝ている。
私のすぐ真下でアンヘルも寝ている。
少し離れたところであけみさんとパキは海を見つめて座っている。
私も海を見たり、少し寝てみたり、のんびりした時間を過ごした。
もう、アルベルゲのベッド争奪戦もなければ、朝になって、歩く必要もない。
それはある意味、開放感があったが、同時に家族のようになった仲間
との生活の惜別でもあった。 -
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そこへ昨日会ったイタリア人のおばさん二人がやってきた。
なんと、最初にピレネーを一緒に越えたおじさんも来ている。
おじさんは、足の故障で途中で帰国したのだったが、今日二人を迎えに車を
運転してイタリアから来たのだった。
本当に最初から最後まで一緒だった。
三人は、服を燃やす場所を探していた。
三人につられ、ばらばらにいた私たちも
集まって、石に囲まれた海に面した一角に、黒い煤が付いた場所を見つけて
いよいよ服を燃やすことになった。
まず、イタリアのおばさんが白いTシャツを燃やす。
ああ、このシャツは見覚えがある。
次々と燃やし始める。
私は前日に、(まだ旅行中なので)燃やすものがないとアンヘルに言うと、
彼はいいアイデアをくれた。
靴ひもを燃やしたらどうかと言うのだ。そうだ、靴ひもなら替えのものを
持っているし、常に私と歩んだものだ。
燃やされる衣服を見ていると、私は何もかも燃やしてしまいたい心境になって
しまった。
まずは、靴ひも。そして一枚服を燃やした。
その瞬間拍手が起こる。
生まれ変わりを祝ってくれているのだ。 -
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-
私はその瞬間、『オープン ザ ドア』というパキの言葉を思い出して、
一人みんなとは逆方向の北に向かって目を閉じた。
そして『オープン ザ ドア』
と、唱え、ドアノブに手を当て、開けた。(目を開けた)
その瞬間に飛び込んできたものは、心地良い風と青く光る海だった。
私はしばらくその余韻に浸った。
仲間に囲まれ、この美しい海を共有できることを幸せに思った。
みんなの顔も、心からリラックスして、何かをやり遂げた自信と満足感に
あふれていた。
今はすぐ目の前に迫った『わかれ』のことは考えなかった。
幸せな気持ちで、満たされていた。 -
-
のんびりと、来た道を歩く。
バス停まで来て、ここで名物のシーフードを、食べていくことにする。
ここでチョイスした魚介のスープは、濃厚で絶品だった。
食べきれない程の多種の魚のフライも食べ、ワインを飲み、4時発のバスに
乗り込んだ。
フェニステーレという名は、英語のfinish、フランスのfinと同じらしい。
まさにフィナーレを飾るにふさわしい場所であった。 -
絶品のフィッシュスープ。
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バス停であけみさんは帰って行き、私たちはそこでお茶を飲んだ。
そしていつも通るたびにパキが歓声を上げていた、ケーキ屋さんに寄り、
甘いものを買う。
今日がみんなの最後の夜なのだ。やりたいことのすべてをやってしまう
気らしい。
オスタルに戻り、みんなはお土産物屋へ飛び出していったが、私は10時半
の夕食の時間までシャワーを浴びたり、絵はがきを書いたり、荷物の整理
をして過ごすことにした。
小さいシングルルームだったが、シャワーも付いていたし、必要なものは
何でも揃っていた。
久しぶりに一人になって、静かな時を過ごした。
時間が余れば、少し休みたいと思っていたが、結局雑用をしているあいだに、
お迎えが来てしまった。 -
外に出ると、あちこちでパフォーマンスをやっている。
昨夜ここを通った時も、すごい人の出だった。その時は、横目で見るしか
なかった。
そして、パキが『明日ね!』と言って我慢していたのだった。
今日こそは、私たちは眠らないくらいの覚悟で望んでいた。
各地の小さなお祭りは、やはり主役はそこに住む人のためであり、内輪で
楽しむ要素がある。
ここサンティアゴでの主役は、私たち、巡礼者なのである。
最初にみつけたパフォーマンスは、舞台で前衛的な踊りや詩の朗読であった。
しばらくそれを立ち見し、バルに行き、ビールを片手に外に出ると、
ブラジルの音楽を演奏していた。みんな路上クラブのように、踊っている。
私たちも体を動かしながら、それを見学し、ライブが終わるとカテドラルの
正面の、オブラロイド広場に行く。
昼間は露天と観光客でいっぱいだったこの広場には、今は数人しかいない。
まるで、10年前に来た時のようだ。
そうだ、その時は、この正面からカテドラルに入っていったのだった。
栄光の門をくぐり、巡礼者の手の跡が付いた柱にそっと手を当てて、
わけもわからずに数人が並んでいた列に加わり、サンティアゴ様の背後に回った。どうするべきかもわからず、その背中だけを見て、通り過ぎてしまったので
あった。
広場の真ん中で、突然パキが
「今からティピカルなゲームをするわよ。」
と言って、カテドラルに背を向けて座った。全員それに習う。
軽い反動をつけて、そして頭からゴロンと倒れて後ろを見ると、そこには
逆さまになったカテドラルのファサードがあった。
視点を変えると、とても新鮮である。
群青の夜空にカテドラルが浮かび上がる。
おりしも、カテドラルに光のショーが始まったところであった。
しばらくは寝ころがりながら、そのショーを見ていた。 -
飽きると今度は別の店へ向かう。すでに12時を過ぎている。
門限の心配もないし、明日は歩くことはない。オスタルもすぐ近くである。
次の店は、地元の人と巡礼者で溢れたディスコであった。ビール片手に踊り
まくる。
踊り疲れ、仕上げはここの名物でもある、ケイマダスを飲ませる店に行く。
5人分には多すぎる量の強いリキュールとレモンの皮が入った素焼きの鍋に
コーヒー豆を入れる、リキュールに火がつき、かきまわす。
そして全員で、配られた紙に書いてある呪文を声を揃えて唱える。
火が落ちついたら出来上がり。
もう二時になるというのに、ここも空席がない程繁盛していた。
この時に、wishを言うと聞いていたので、パキにどのタイミングでそれを
するのか聞くと、彼女の声は急に魔女の声になり、話ぶりも魔女になりきって
いる。
そして、いい加減なことを言っている。
困った私にラウラは、彼女は『ウン ポコ ロカ』(ちょっと頭が変なの)』
と言う。
それでもめげずにパキはしつこい。そしてひとりで受けている。
液体は器に取り分けられ、飲んでみると、甘いけど、おいしい。
しかしこれを美味しいと思ったは、私だけのようであった。
オスタルに着いた時には3時を過ぎていた。
私たちの祭りは終わった。 -
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この旅行記へのコメント (2)
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- チビケイさん 2005/07/14 20:24:15
- スペイン巡礼10>> もう一度読んじゃったぁ(*^m^*) ムフッ
- スペイン巡礼10完読して約1ヶ月たってみて
もう一度最後の章を読みたくなりました。
不思議ですね・・バリ島のビーチで読んでいるのとは
また違った感覚になってしまいます。
長い間皆で歩いた巡礼・・・最後の日に皆で
何か不思議な儀式!パキさんがトランス状態になったのも
バリ島で読んでいる時は「そうなんだぁ〜」と、全然当たり前に
読んでたけれど今読んでると「ど、どうしたんだろう〜」
自分の置かれた環境でまるで違った見方になってしまってる(・・?
nightさんのスペイン巡礼は沢山の事を教えてくれました(#^.^#)
この巡礼をきっかけに今まで目を向けなかったものにも
目を向ける自分がいたのが嬉しかったですよぉ〜
例えば学生時代に仕方なく勉強してた世界史の一部にも興味が
持てて・・・↓
ここ数日前までベッドにいたのでパソコン読書が出来ず
主人に頼み、図書館でルイ14世の事を書いた本を借りてきて
貰ったのです(ルイ14世の体にはスペイン人の血が流れていて
后もスペイン人と言うところなど興味深く(笑))
(人を信頼できず愛せない人の孤独が太陽王と言われた
ルイ14世・・孤独感ゆえにあんなに華美な宮殿を作らせたんですかねぇ)
次のnightさんの巡礼も楽しみにしています♪
ご出発前に教えてくださいね<(_ _)>
PS:最後の祭り、最後の写真・・真ん中の方が
イエスキリストに似ていましたぁ〜何となくパステル画のような
あの写真・・お気に入りです(*^m^*) ムフッ
- night-train298さん からの返信 2005/07/16 22:57:26
- チビケイさ〜〜〜ん!
ほんと、ギリシャ人もおもしろいですよ〜。
道を聞いてもね、すごくアバウトなの。「その辺だよ」ていうのがいったいどこなのか?半径数百メートルって感じなので、自分のカンが大切でした。
スペイン人も、ソウトウだと思っていたのですが、いまやそのスペイン人の常識や感覚もズレがなくなってきた私なのですが、そんな私にもギリシャ人のパワーはすごかったです。
ブラピね、ほんと〜〜〜にカッコヨカッタのです。本物のブラピよりかっこいいんじゃないのかな?と思うくらい!!
でも、立場上は敵のような(いや、警察は見方のはずだよね?!)関係だったので、写真を撮れなくて残念だったー!
母の財布は最後まで出てきませんでした。
実は私はよく被害に遭うタイプ?なので、いつもおこられているのですが、さすがにこの時は本人もしょげていました。
シャルルドゴールでの女性、もう少し誠意のある一言が欲しかったよね。
でも、チビケイさんの存在に、安心したことでしょうね。
ところで再び巡礼の旅行記を読んでくださったのですね。
ほんとうにありがたいことです。
写真はパキの弟アンヘルでしょうか!?
ルイ14世を読んでいるんですね!旅行をしていると、歴史にも目がいきますよね。
どんどん広がる世界。どうぞしばらくは静かに、本の中で素敵なトリップをしてくださいね!
そして次の旅の計画を立てて、おでかけください!
では、いよいよ私も明日、行ってきますね〜!
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