1979/02 - 1980/01
4059位(同エリア6472件中)
kioさん
長い間、欧州を旅しながら一度、共産圏を覗いてみたいと思っていた。ボーダーレスになった今の時代と違う1970年代。東西は二つの陣営に色分けされ、互いに優位性を競いしのぎを削っていた。緊張感もあった。 私は一日10ドルの強制両替の課せられないハンガリーに行こうと考えていた。当時、東側陣営でドルの強制両替を課さない国はユーゴスラビアとハンガリーだけだった。
オーストリアのザルツブルグのユースホステルで、出逢った日本人バックパッカーによると、ハンガリーの闇ドル相場では公定レートの倍でドルが売れると聞いた。物価も西側と比べかなり安いと聞いていた。私は早速、アメリカ系BANKのドル小切手を100ドル分キャッシュに換えた。手数料で目減りにしても、余りある程に東側でドルの威力を甘受するつもりで居た。
ウイーンではドイツのハンブルグのユースホステルで同室になり、アドレスを交わしたウイーン大学の学生の家を訪ねることにしていた。顎髭を生やし老成してみえたが、それでも彼は私より二歳若かった。概して欧州の若者は20歳過ぎると老成してみえるのだ。
彼はハンブルグのユースホステルで別れ際に、私に、こう告げた。「もしウイーンに来るようなことがあれば必ず連絡をくれ、必ず街を案内するよ」 我々は電話番号を添えてアドレスを交換した。これは多少でも袖ふれあった者同士の慣習であり文字通りの極めつけの社交辞令である。今まで何十、何百ものアドレスを交換してきた。
私もその時、彼にこう返した。「もし 日本に来るようなことがあれば、必ず連絡をくれ、 我が家を宿代わりにしても構わないよ」 これもまた極め付きの外交&社交辞令だったかもしれない。 しかし、、、人の縁は不思議なものだとつくづく感じるのだ。
ウイーンで彼に逢おうとする私の強い気持ちが彼との再会をもたらし、更にはそれから7年後、彼が極東旅行に来た際、新婚の我が家に彼は二週間、文字通り宿代わりにして滞在していった。 2週間も滞在すると情がすっかり移るのか我が新妻や家人は別れ際には涙ぐむ程に至った。彼の穏やかな人柄、人間性に触れたという事だろう。 言葉は通じなくても仕草、態度で人柄や人間性は垣間見えてくるものである。
そんな彼ことKARLにウイーンのユースホステルのベッドを確保した後、私は連絡を取ってみた。ウイーンに行くということは旅先から数通の絵はがきで伝えておいた。私の要領の得ない拙い英語でようやく彼が電話口に出た時は正直ほっとした。電話口に出た彼から、今日は都合が悪いけど、明日なら大丈夫だ。待ってるという返事を貰い、翌日彼の住む学生アパートに向かった。 郊外にあるユースホステルから市内バスでアクセスする方法は同室のインスブルグから遊びにきているという高校生から教えて貰った。バロック建築の街並みを縫うようにバスはういーンの街中を走った。 ウイーンに限らず、欧州の国々はどんなに細くて小さな通りや横丁にも名前が付けられていて、更に番地が規則正しく順番に表記されているのでツーリスト・インフォメーションで市内地図さえ入手出来れば目的地まで比較的容易に辿り着くことが出来た。
学生アパートとおぼしき4階建てくらいの瀟洒な建物が森の中に並んでいた。オーストリアに限らず、欧州では大学に進学する人は日本ほど多くないらしい。ゆえに非常に優遇されていると聞いていた。 karl helbert riffatが彼のフルネームだった。彼のくれたアドレスと合致する学生棟はすぐに判った。その建物の2Fが彼の住居だった。建物のドアブザーを押すといかにも学生という感じの青年が応対に出た。 私は手短に用件を言ったつもりだったが相手には通じない。 仕方なく彼のフルネームを表記しているアドレス帳をみせた。 すると ヤーヤー・モメントと言いながら彼は奥に引っ込み やがてカール君が微笑みを浮かべながらやってきた。3ヶ月振りの再会だった。ギリシャのミコンス島で真っ黒に日焼けしていた私の顔に彼は大袈裟に驚いていた。 室内には20畳くらいのコミュニケーションルームがあり、TVやステレオ、大きな書架が幾つも置いてある。10人位の学生が談笑していた。彼は私の事を彼等に説明すると一様に感じのいい微笑みを彼等は返してくる。彼の部屋に入ると、12畳くらいの広さと大きな窓のある清潔な感じの部屋だった。ルームメートと部屋をシェアをしていると云った。ベッドとデスク&本棚、 クローゼットの他にあるものは時計付きの日本製のラジオだけのシンプルさだった。家賃はUSドル換算でどれくらいなのと尋ねると、一人当たり100ドル位だと云う。光熱費もすべて込みの下宿代としては格安に思えた。大学に進学するのは一割くらいなものらしい。国からも援助がでているとも云った。 ちょっと、電話してくるからと言い残した彼は、戻ってくると「日系のアメリカ人留学生に連絡を取ったからね。間もなく彼女 はここに来る」と思いがけない事を言った。
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この旅行記へのコメント (5)
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- さすらいおじさんさん 2005/04/17 09:20:16
- 自分の経験と重ね合わせながら、引き込まれて読んでしまいました。
- kio さん 一期一会ウイーン編1,2 拝読しました。
若者同志の触れ合いは心に残るものですね。1971年の私の旅でも多くの人達と住所、名前を交換し、『日本に来たら連絡をくれ』と言いながら、kioさんのような再会は無く、全員1度きりの交友に終わってしまいました。でもそのときのいっときの思いやりのある言葉、親切な心遣いは何十年立っても覚えているものですね。またまた、自分の経験と重ね合わせながら、引き込まれて読んでしまいました。
- kioさん からの返信 2005/04/17 13:03:44
- さすらいおじさん様、書き込み&投票まで頂戴しありがとうございます
- 一期一会ウイーン編 読んで頂き有難うございますm(._.)m ペコッ
日本滞在中のウイーンのカール君、さすがに旅慣れしているだけあって、
都バス、地下鉄を縦横無尽に駆使して我が家を拠点にして
箱根まで日帰りで出掛けたりしてました。
海無し国のオーストリア出身の所為か、何処で調べたのか築地の魚河岸に
行きたがって、早起きして私も付きあったもんです。(笑)
歌舞伎も幕間で一幕単位で見れば格安で鑑賞できると
何故かガイドブックでカール君が知っていて、天井桟敷のような席で
初めて歌舞伎座での歌舞伎を鑑賞したもんです(^-^;
20席位のその天井桟敷には、外人観光客ばかりでしたよ。
500円くらいでしたね
- さすらいおじさんさん からの返信 2005/04/17 14:21:22
- RE: さすらいおじさん様、書き込み&投票まで頂戴しありがとうございます
- >歌舞伎も幕間で一幕単位で見れば格安で鑑賞できると
何故かガイドブックでカール君が知っていて、天井桟敷のような席で
初めて歌舞伎座での歌舞伎を鑑賞したもんです(^-^;
20席位のその天井桟敷には、外人観光客ばかりでしたよ。
500円くらいでしたね
昨年12月にウイーン国立オペラ劇場の天井桟敷で2ユーロでオペラを見ましたが、日本の歌舞伎も外国人観光客に安く体験してもらう努力をしているのですね。
でもまだ日本は観光立国化を掲げる割りには外国人向けにコストを下げる努力が不足しているように思います。(m。_。)m
- kioさん からの返信 2005/04/18 22:24:03
- 観光立国への遥かな道・・・・・
- >でもまだ日本は観光立国化を掲げる割りには外国人向けにコストを下げる努力が不足しているように思います
う〜ん、、どうなんでしょうねえ お金を沢山落としてくれる外人観光客だけを
念頭に置いているのかも? しかし外人観光客は支払いにシビアですからねぇ・・
箱根なぞ超一級の国際観光地だと思うし、もっとリーズナブルな宿があれば
口コミであっという間に流行ると思うけど・・
- さすらいおじさんさん からの返信 2005/04/18 23:33:04
- RE: 観光立国への遥かな道・・・・・
- >う〜ん、、どうなんでしょうねえ お金を沢山落としてくれる外人観光客だけを
念頭に置いているのかも? しかし外人観光客は支払いにシビアですからねぇ・・
確かに金持ちの外国人をターゲットにしているように思います。中国、台湾、の金持ちは随分金を落とす人があると聞きました。
マレーシアで聞いたことがあるのですが、マレーシアから15万で2週間のヨーロッパツアーがあるが、日本は15万で6日、東京、富士、箱根 だからマレーシア人はヨーロッパを選ぶと言ってました。
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