2001/04/28 - 2001/05/09
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金魚のじいちゃんさん
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ウイーンと聞けば何を連想するだろうか。
シェーンブルン宮殿にシュテファン大寺院、ザッハートルテにシュニッツエル、ハプスブルグ家とマリア・テレジアを思い浮かべたのはかみさんであり、旅行社だった。
観覧車、地下水道、さらにはオーソンウェールズ、アリダバリ、ジョセフコットンときたのは私だ。そう、往年の名画「第三の男」である。
今回の中央ヨーロッパツアーは、ドイツ、チェコ、オーストリア、ハンガリーというより、ベルリン、プラハ、ウイーン、ブタペストを回る点と線のツアーであり、それぞれの定番名所をめぐり、定番名物を食するもので、私の希望は100%叶えられていなかった。
いわく、ベルリンの科学博物館で展示されている、かのベルリン大空輸作戦で、市民に食料を運んだC-47輸送機。いわく、小説「プラハの春」で主人公が勤務していた日本大使館。そして、ウイーンの「第三の男」の撮影地など。個人的な思い入れのある施設ばかりである。
個人旅行ではないし、過激なスケジュールで有名な旅行社のツアーだ。アクの強いリクエストは「無理」と納得してツアーに参加した。
チェコからオーストリアに入ったツアーバスは、ウイーンに直行し、観光レストランで昼食、ブランド店が軒をならべるケルントナー通りでショッピング後、シェーンブルン宮殿の見学と、分刻みのスケジュールを消化していった。
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翌日も朝からウイーンの森に足を伸ばしたかと思うと、石畳の街路を白馬の馬車で散策し、再びウイーンの森に戻って、新酒の白ワイン、ホイリゲを味わうという強行軍である。
「第三の男」の旧跡を訪ねる時間など、あるわけがない。
映画に出たカフェモーツアルトだけは、ショッピングの途中で、立ち寄ることができたが、往時(映画)の面影はまったくなくなっていた。
偉大な映画プロデューサー、セルズニックがプロデュースした「風とともに去りぬ」が、ほとんどハリウッドのセットで撮影されたのに対して、おなじ彼の手になる「第三の男」は、全編現地撮影をした作品なのだ。アトランタはパスしてもかまわないが、ウイーンにきてホンモノをこの目で確認しないのはなんとしても悔しい。次というチャンスは99%ないのだから。 -
訪ねたいのは、観覧車とラストシーンに出てきた中央墓地の並木道である。
恋人の葬儀を終えたアリダバリが、待ち受ける友人ジョセフコットンを、これ以上はない非情さで無視し、歩き去ってゆくというラストシーンは、「太陽がいっぱい」「ニューシネマパラダイス」と並ぶ、私の選ぶベストラストシーンでもある。
ワンチャンスあるとしたら、二日目の夕刻からの自由時間である。私はかみさんを誘ってみたが「映画オタクみたいに、コケの生えたような映画の遺跡見物はゴメン」とあっさり拒否された。仕方なく当初の予定通り、シェーンブルン宮殿で催されたウイーンナワルツのコンサート鑑賞にでかけた。それはそれで本場の匂いを嗅ぎ、意義ある一夜ではあったが、あきらめきれない私は、最後のあがきをすることにした。 -
翌朝はやく、かみさんをベッドに残してホテルをでた。地図を片手に観覧車と墓地探しをしようというのだ。時計は五時をさしていた。
八時半には、ブタペストに向かって出発なのだから、七時までには戻らなければならない。
五時といってもじゅうぶん明るくなっていた。
まずは大観覧車だ。タクシーで行くつもりだったが、運悪くホテルの玄関にはタクシーが一台も見当たらない。この時間帯だ、流しのタクシーなんぞは走っていない。
ホテルの前で立ち往生しているところへ、始発らしい市電がゴトゴトとやってきた。
行き先幕が読めないし、どこで降りればよいかもわからない。第一、この電車がプラーター公園へ行くかどうかも明らかじゃない。北東方面に線路が延びているというだけの話だ。
ドアを開けて待っている運転手に声をかけた。「グーテンモルゲン」「モルゲンなにやらかにやら」挨拶はいいから、早く乗れというジェスチャーだ。「パルク プラーター?」まったく通じない。
ママヨと乗車した。これが大きなミステークと反省したのはこの後であり、まさに後悔先に立たずであった。
白熱灯のような天井灯が付いたクラシックな車内には、早出の通勤客が二、三人乗っていたが、興味しんしん事の成り行きを見守っている。私は運転席の横にへばりついて、プラーター公園の観覧車に行きたいと必死にジェスチャーと単語とで訴えた。
観覧車というドイツ語ぐらい覚えてくるのだったと後悔したがもう遅い。手をぐるぐる廻して「ヴィール」っていってみたが無理なものはやっぱり無理で、運転手も乗客も、このエイリアンの訴えを理解してはくれなかった。市電は、ドンドン東北から西方に折れてゆく。しだいに街並みが低くなり、工場や空き地が目立つようになってきた。
とうとう終点に着いてしまった。 -
窓から周りを一瞥したが、観覧車なんか影も形もない。
運転から開放され、ひと息ついている運転手に市内地図を見せた。彼が指差した現在地は、なんと観覧車のある公園とは、ほぼ正反対のウイーンのはずれだった。私が公園を指差すと、彼は肩をすくめただけだった。
仕方がない。戻ってやり直すしかない。運転手の「降りないのか?」というような素振りには、「ニヒト イッヒ カムバック」と応じたが、判ったかどうか。
ふたたび電車は走り出した。見覚えのあるホテルの前に戻ってきたときは、心底ホッとした。小銭を掌に広げて「ビッテ」といったが、人のよさそうな運転手君は受け取ろうとはせず、ヤレヤレ降りてくれて助かったという表情を、露骨にした。
「ダンケ シェーン」礼をいって降りた。時間は六時半に近かった。ホテル前にはタクシーが何台も待機していたが、観覧車も墓地ももう無理だった。 -
「どこに行ってたの」。朝っぱらからの散歩を非難するかみさんに謝って、いそいで朝食を摂りに食堂へ走った。
季節のホワイトアスパラガスを食しながら「旅行から帰ったら、もう一度『第三の男』のビデオを見ることにしよう」と自分をなぐさめた。
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この旅行記へのコメント (6)
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- 花やんさん 2005/01/27 16:16:09
- 第三の男について
- 録画ビデオをお持ちかとぞんじますが、テレビ番組情報誌によりますと
2月22日20:00〜21;45NHKBS2で再放送があります。
私も観覧車に乗り、あの地下水道の出口や墓地の道を見てきましたし、チターでのテーマ音楽も聴きました。
再度ビデオに撮りあの感動を再度大観しようと思っています。
- 金魚のじいちゃんさん からの返信 2005/01/27 17:26:53
- RE: 第三の男について
- うらやましい。実際に「観覧車」に乗り、「中央墓地」を歩き、地下水道に「潜った」とは。映画の主人公たちでも、三箇所とも経験しているのは居ないんですから。
アメリカとソ連という超大国が張り合っていた時代でなきゃ、あんな緊張感溢れる映画は出来ないのでしょうね。アメリカとイラク、ロシアとウクライナじゃイジメ映画になりますよね。
映画の予告ありがとうございました。さっそくVTRテープを買ってこなきゃ。
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- violaさん 2004/11/12 19:17:06
- 観覧車乗ってきました!
- ウイーンに行ったら絶対プラーター遊園地の例の観覧車に乗ろうと思っていたので
ガイドブックで所在地と市内からのアクセスを調べて行きました。
私はSバーン(国鉄)に乗りWien Nord で下車し大観覧車目指して歩いていきました。帰りは行く途中に見つけた路面電車(番号は忘れました)に乗りました。
観覧車の車体がかなり大きいのにはおどろきましたが、「第三の男」を思い感慨深いものがありました。天気もよく観覧車の窓からはウイーン市街が見渡せました。
- 金魚のじいちゃんさん からの返信 2004/11/12 20:29:56
- RE: 観覧車乗ってきました!
- うらやましい!!オーソンウエールズとジョセフコットンが乗った観覧車。うらやましいったら、うらやましい。何人乗りでした? いくらでした? 一回り何分でした? 何が見えました? どんなことでもいいのです、教えてください。くやしいなあ。
- violaさん からの返信 2004/11/12 23:25:58
- かなり大きな車体(?)でした!
- 観覧車はかなり車体が大きいなと感じました。そうですね、、、20人は乗っていたと思います。もちろん立ってですが(座れるスペースもあったのですが殆どの人が立っていました)。 他の車両を見ているとかなり内装が違っているようでした。
10分から15分くらいは一周するのにかかったと思います。わりとゆっくりと周り、写真をとっている人もいました。私は写真は撮りませんでしたが少し後悔しています。外の様子はどれどれと具体的には名前を挙げることは出来ませんが、同じ遊園地の中には現代の新しい、若者に受けそうなもっとスピードがあり、怖そうな乗り物もありました。 料金は普通は7,5ユーロですが、私はウイーンカードを持っていたので、割引料金で6,5ユーロでした。このウイーンカードは16,90ユーロで市内の乗りもの(Sバーン、Uバーン、バス、路面電車など)に72時間乗り放題で、主な観光スポットで割引があるという、便利なカードです。( ウイーン空港までのリムジンバスも1ユーロ割引でした)。
初めて訪れたウイーンですが、まだまだ見るところが沢山あり近いうちに訪れたいと思っています。 そうそう、地下鉄もとても使いやすく分かりやすいと思いました。
- 金魚のじいちゃんさん からの返信 2004/11/13 08:13:20
- 羨ましいな、観覧車
- ウイーンの観覧車の詳しい説明ありがとうございました。ウーン、ますます口惜しい。馬車に乗って観光コースを一回りしたり、ウイーンの森に行って、ホイトケというんですか、ワインの新酒を飲んだりしましたが、観覧車イノチでウイーンを尋ねたので、かえすがえすも残念です。次の機会があったらゼッタイ乗ってやろうと思います。そして地下水道にもぐりこんでみたいものです。
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