旅行者がホテルに求めるものは人それぞれです。
私がホテルを選ぶ場合、優先するのは、安全性、サービス、設備、そして地の利です。
さて、このホテルですが、地の利を第一に考えてホテルをお選びになる方ならば理想的といえるでしょう。その理由は、
(1)サンマルコ広場から一歩は入ったところにあり、サンマルコ広場の夜景を楽しんだ後、すぐに部屋に戻れるという利点があります。
(2)ホテルのレセプションの前がゴンドラの船着場です。目の前に集合したゴンドラのこぎ手に値段を交渉するのも一興でしょう。
(3)空港から水上バス、水上タクシーを利用してベネチアに入った場合、ホテルの前に乗り付けるのは無理ですが、サンマルコ広場の周りはアーケードに囲まれており、雨の日に着いたとしてもアーケードづたいに歩いていけばほとんど濡れずにホテルにたどり着くことができます。(重いトランクを自分で運ばなければならないときは重要なポイントです。)
以上、このホテルの美点を並べてまいりましたが、難点もいくつかあります。
(1)このホテルは、聞くところによるともともと巡礼者の宿泊施設のようなものであったらしく、したがって若干安普請です。決してダニエリのように「邸宅」をホテルに改装したものではありませんので「折角ベネチアに来たのだから贅沢な雰囲気に浸りたい」という向きにはお勧めしません。
(2)基本的に従業員の数が足りないと言う印象を受けました。レセプションの対応もあまり懇切丁寧というわけには行かず、ハイアット、インターコンネンタル系のサービスになれている方は少々むっとされるかもしれません。
(3)ホテルのポーターがドアの前に立っておりますが、こちらがトランクを運びながらここに泊まるのだと合図をしても悠然とドアの前に立ってトランクを運ぶそぶりもありませんでした。
(4)掃除をするスタッフも不足しているようです。いつ廊下に出ても掃除機の音がどこかからしているといった状態でした。ドアを閉めていても聞こえるというのは安普請に由来しているのかもしれませんし、マニュアルがシッカリしていないのかもしれませんが。
(5) 枕の下にチップを置いておいたにもかかわらず、テーブルにおいておいた小銭が部屋に帰ると消えていました。私が時々行うホテルの職員教育度チェックです。これでこのホテルの信用度はかなり落ちました。これでホテルでの安全性もある程度推し量ることにしています。
(6) 朝食つきでしたが、暖かいものは飲み物だけでした。朝食もそこそこに観光に出かける方には十分かもしれませんが、ホテルの滞在体験も旅の一部と考える私には不十分でした。しかし、レストランのスタッフはこのホテルの中で一番がんばっているように感じました。 朝食をとる場合、できれば窓際の席をリクエストするといいでしょう。目の前をくだんのゴンドラが通り、ベネチアに来た気分を盛り上げてくれるかもしれません。うるさいのが苦手な方にはお勧めしませんが。
というわけで、地の利を第一優先順位にしてベネチアを楽しみたいという方にはぜひお勧めするホテルです。
それ以外のものも求める、という方にはお勧めできません。